Objective-Cのid型を完全マスターするためのサンプルコード15選

Objective-Cのid型の詳しい解説と実用例Objctive-C
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

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はじめに

Objective-CはAppleのiOSやmacOSアプリケーション開発に使用される伝統的なプログラミング言語であり、その中で「id型」という特有の型が存在します。

この記事では、Objective-Cのid型の詳細な解説から、初心者から上級者までid型をしっかりと理解するための具体的な実例を取り上げます。

特に、id型の基本的な特徴や考え方、その後のセクションで取り上げる15のサンプルコードと、それらの詳細な解説を提供します。

これにより、読者の皆さんはid型を効果的に利用することができるようになることを目指しています。

Objective-Cの歴史や背景を知ることで、id型の存在意義や利用シーンがより明確になります。

そこで、次にObjective-Cとその特性について触れ、その後id型の特徴と基本的な考え方を詳しく解説していきます。

●Objective-Cとid型の基本

Objective-Cは、C言語の拡張としてオブジェクト指向の機能を持つプログラミング言語として設計されました。

それにより、開発者はCのような手続き的プログラミングの利点と、オブジェクト指向の利点を併せ持った言語として利用することができます。

○Objective-Cとは?

Objective-Cは、C言語にSmalltalkスタイルのメッセージベースのオブジェクト指向プログラミングを追加したプログラミング言語です。

Objective-Cは、1980年代初頭にアメリカのStepStone社でBrad CoxとTom Loveによって開発されました。

Objective-Cは主にAppleのiOSおよびmacOSのアプリケーション開発で使用され、多くの開発者に親しまれています。

特にAppleが提供するCocoaおよびCocoa Touchフレームワークと組み合わせて使用されることが多いです。

●id型の使い方

id型はObjective-Cで非常に頻繁に使用される型の一つです。

その多機能性と柔軟性から、さまざまなケースでの利用が見られます。

ここでは、id型の使用方法をいくつかのサンプルコードを交えて解説していきます。

○サンプルコード1:id型の基本的な使用方法

このコードではid型を使って、異なるクラスのインスタンスを同じ変数に代入する基本的な方法を表しています。

#import <Foundation/Foundation.h>

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        id obj;

        obj = @"This is a string.";
        NSLog(@"%@", obj);

        obj = @123;
        NSLog(@"%@", obj);
    }
    return 0;
}

この例では、文字列と数値のオブジェクトをid型のobjという変数に代入しています。

そして、その変数をNSLog関数で出力しています。

結果として、文字列と数値が順にコンソールに出力されます。

○サンプルコード2:id型を使ったオブジェクトの取り扱い

このコードではid型を使用して、異なるオブジェクトのメソッドを呼び出す方法を表しています。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface Dog : NSObject
- (void)bark;
@end

@implementation Dog
- (void)bark {
    NSLog(@"Woof!");
}
@end

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        Dog *dog = [[Dog alloc] init];
        id obj = dog;

        [obj bark];
    }
    return 0;
}

この例では、Dogクラスのインスタンスを作成し、そのインスタンスをid型のobjという変数に代入しています。

その後、objを通じてbarkメソッドを呼び出しています。コンソールにはWoof!という文字が出力されます。

○サンプルコード3:id型と他の型との相互変換

このコードでは、id型の変数を他の具体的な型にキャストする方法と、その逆の操作を表しています。

#import <Foundation/Foundation.h>

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        NSString *str = @"Hello, world!";
        id obj = str;

        NSString *castedString = (NSString *)obj;
        NSLog(@"%@", castedString);
    }
    return 0;
}

この例では、NSStringのインスタンスを作成し、id型のobj変数に代入しています。

その後、objをNSString型にキャストして、変数castedStringに代入しています。

最後にその文字列を出力しています。結果として、コンソールにはHello, world!と表示されます。

○サンプルコード4:id型を使ったメソッド呼び出し

このコードでは、id型を使って動的にメソッドを呼び出す方法を表しています。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface Cat : NSObject
- (void)meow;
@end

@implementation Cat
- (void)meow {
    NSLog(@"Meow!");
}
@end

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        Cat *cat = [[Cat alloc] init];
        id obj = cat;

        SEL selector = @selector(meow);
        if ([obj respondsToSelector:selector]) {
            [obj performSelector:selector];
        }
    }
    return 0;
}

この例では、Catクラスのインスタンスを作成し、id型のobj変数に代入しています。

その後、respondsToSelector:メソッドを使用して、objmeowメソッドを持っているかを確認し、持っていればperformSelector:メソッドでそのメソッドを呼び出しています。

コンソールにはMeow!という文字が出力されます。

●id型の応用例

Objective-Cのid型は、オブジェクト指向のプログラムの中でさまざまな場面で応用可能です。

今回はその中でも特に実践的なid型の応用例を2つ取り上げ、詳しい解説とサンプルコードを交えて紹介します。

○サンプルコード5:id型の配列としての使用

Objective-Cでの配列はNSArrayとして提供されていますが、このNSArrayの要素はid型となっています。

そのため、さまざまな型のオブジェクトを一つの配列に格納することができます。

これにより、異なる型のオブジェクトを一つの配列にまとめて取り扱うことが可能となります。

#import <Foundation/Foundation.h>

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        NSString *str = @"Hello";
        NSNumber *num = @123;
        NSDate *date = [NSDate date];

        // id型の配列として格納
        NSArray *array = @[str, num, date];

        for(id obj in array) {
            NSLog(@"%@", obj);
        }
    }
    return 0;
}

このコードでは、NSString、NSNumber、NSDateの3つの異なる型のオブジェクトを一つのNSArrayに格納しています。

そして、for-inループを使用して、配列内のすべての要素を順番に出力しています。

この例のように、id型を活用することで、異なる型のオブジェクトを柔軟に取り扱うことができます。

このコードを実行すると、次のような出力が得られるでしょう。

Hello
123
2023-10-30 15:00:00 +0000 (出力される日付は実行時のものになります)

○サンプルコード6:id型を活用した動的ディスパッチ

Objective-Cのid型は動的ディスパッチの特性を持っています。

これは、メソッドの呼び出しを実行時に決定する機能を指します。

これにより、異なるクラスのオブジェクトでも同じメソッド名を持っていれば、そのメソッドを呼び出すことができます。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface Dog : NSObject
- (void)bark;
@end

@implementation Dog
- (void)bark {
    NSLog(@"Woof!");
}
@end

@interface Cat : NSObject
- (void)bark;
@end

@implementation Cat
- (void)bark {
    NSLog(@"Meow?");
}
@end

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        Dog *dog = [[Dog alloc] init];
        Cat *cat = [[Cat alloc] init];

        id animal = dog;
        [animal bark];

        animal = cat;
        [animal bark];
    }
    return 0;
}

このコードでは、DogクラスとCatクラスの両方にbarkというメソッドが存在します。しかし、実際の動作はそれぞれ異なります。

id型の変数animalを使って、動的ディスパッチの特性を活用して、実行時に適切なメソッドを呼び出しています。

このコードを実行すると、次のような出力が得られます。

Woof!
Meow?

○サンプルコード7:id型とブロックの組み合わせ

Objective-Cのid型は非常に汎用的で、さまざまなオブジェクトを参照するための型として利用されます。

ここでは、id型とブロック(Objective-Cのクロージャに似た機能)の組み合わせを扱います。

// Objective-Cのブロックの基本的な定義
void (^simpleBlock)(void) = ^{
    NSLog(@"ブロックが実行されました");
};

// id型とブロックの組み合わせ
void (^blockWithId)(id obj) = ^(id obj){
    NSLog(@"受け取ったオブジェクト:%@", obj);
};

NSString *stringObj = @"Hello, Objective-C!";
blockWithId(stringObj);

このコードでは、まずシンプルなブロックを定義し、次にid型のパラメータを持つブロックを定義しています。

この例では、文字列オブジェクトをブロックに渡し、ブロック内でそのオブジェクトを出力しています。

実行すると、次のような結果が出力されることが期待されます。

ブロックが実行されました。
受け取ったオブジェクト:Hello, Objective-C!

○サンプルコード8:id型を使ったジェネリックなコード

Objective-Cには、ジェネリックスの概念がありませんが、id型を使用することで擬似的にジェネリックな振る舞いを実現することができます。

下記のコードは、id型を使ってジェネリックな動作を模倣したサンプルです。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface GenericContainer : NSObject {
    id content;
}

- (void)setContent:(id)newContent;
- (id)getContent;

@end

@implementation GenericContainer

- (void)setContent:(id)newContent {
    content = newContent;
}

- (id)getContent {
    return content;
}

@end

int main() {
    GenericContainer *container = [[GenericContainer alloc] init];
    [container setContent:@"Objective-Cのid型"];
    NSLog(@"内容:%@", [container getContent]);

    [container setContent:@(12345)];
    NSLog(@"内容:%@", [container getContent]);

    return 0;
}

このコードでは、ジェネリックなコンテナクラスGenericContainerを作成しています。

このクラスはid型のcontentというプロパティを持ち、任意のオブジェクトを保存することができます。

実行すると、次のような結果が出力されることが期待されます。

内容:Objective-Cのid型
内容:12345

○サンプルコード9:id型とプロトコル

Objective-Cにおいて、プロトコルはあるオブジェクトが特定のメソッドを実装していることを保証するためのものです。

id型を使って、オブジェクトが特定のプロトコルを満たしているかどうかを確認し、動的にメソッドを呼び出すことができます。

このコードでは、特定のプロトコル「GreetingProtocol」を実装したオブジェクトに対して、あいさつメソッドを動的に呼び出す例を表しています。

この例では、オブジェクトが「GreetingProtocol」を実装している場合にのみ、メソッドを呼び出すようにしています。

#import <Foundation/Foundation.h>

@protocol GreetingProtocol
- (void)sayHello;
@end

@interface Person : NSObject <GreetingProtocol>
@end

@implementation Person
- (void)sayHello {
    NSLog(@"こんにちは!");
}
@end

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        id<GreetingProtocol> someone = [[Person alloc] init];
        if ([someone respondsToSelector:@selector(sayHello)]) {
            [someone sayHello];
        }
    }
    return 0;
}

このサンプルコードを実行すると、Personクラスのオブジェクトが「こんにちは!」というメッセージを出力します。

しかし、もし「sayHello」メソッドを実装していないオブジェクトをid型変数に代入し、このコードを実行するとメソッドは呼び出されません。

このように、id型とプロトコルを組み合わせることで、オブジェクトの型に関わらず動的にメソッドを呼び出すことができ、柔軟なプログラミングを実現することができます。

○サンプルコード10:id型を使った条件分岐

id型は任意のオブジェクトを参照することができるため、そのオブジェクトの型に応じて異なる処理を行いたい場面があります。

このような場面で役立つのが、id型を使った条件分岐です。

このコードでは、id型の変数に代入されたオブジェクトの型を判定し、それに応じて異なるメッセージをログに出力する例を表しています。

この例では、NSString型のオブジェクトとNSNumber型のオブジェクトをそれぞれ判定しています。

#import <Foundation/Foundation.h>

int main(int argc, const char * argv[]) {
    @autoreleasepool {
        id object1 = @"これは文字列です";
        id object2 = @123;

        if ([object1 isKindOfClass:[NSString class]]) {
            NSLog(@"object1はNSString型です");
        }

        if ([object2 isKindOfClass:[NSNumber class]]) {
            NSLog(@"object2はNSNumber型です");
        }
    }
    return 0;
}

このサンプルコードを実行すると、「object1はNSString型です」と「object2はNSNumber型です」という2つのメッセージがログに出力されます。

このように、id型の変数に代入されたオブジェクトの型を動的に判定することで、オブジェクトの型に応じた処理を行うことができます。

○サンプルコード11:id型の制約と型キャスト

Objective-Cのid型は非常に強力で、多様なオブジェクトを保持できる汎用型です。

しかし、その特性上、型の制約が甘く、実行時に型の不一致や不正な操作を起こすリスクもあります。

そこで、ここではid型の制約と型キャストの方法について詳しく解説します。

id generalObject;
generalObject = @"Hello, Objective-C!";
NSString *str = (NSString *)generalObject;
NSLog(@"%@", str);

このコードでは、id型の変数generalObjectに文字列を代入しています。

その後、NSString型の変数strにgeneralObjectを型キャストして代入しています。

この例では、id型のgeneralObjectが文字列を保持しているため、問題なく型キャストが可能です。

実行すると、コンソールに「Hello, Objective-C!」と出力されます。

しかし、もしgeneralObjectが文字列でない他のオブジェクトを保持していた場合、このキャストは不正確になり、実行時にエラーが発生する可能性があります。

○サンプルコード12:id型とObjective-Cの拡張機能

Objective-Cは、C言語をベースに拡張された言語であり、多くの拡張機能を持っています。

id型も、これらの拡張機能と組み合わせて使用することができます。

ここでは、Objective-Cの拡張機能とid型との組み合わせ方について紹介します。

id dynamicObject = @"This is a string.";
if ([dynamicObject isKindOfClass:[NSString class]]) {
    NSLog(@"The object is a string.");
} else {
    NSLog(@"The object is not a string.");
}

このコードでは、id型の変数dynamicObjectに文字列を代入しています。

その後、isKindOfClass:メソッドを使用して、dynamicObjectがNSStringクラスのインスタンスであるかどうかを確認しています。

この例では、dynamicObjectは文字列であるため、「The object is a string.」とコンソールに出力されます。

このように、Objective-Cの拡張機能を利用することで、id型のオブジェクトの具体的な型を動的に判定したり、特定の操作を行うことができます。

これにより、プログラムの柔軟性を高めることが可能となります。

○サンプルコード13:id型を使った動的メソッド解決

Objective-Cには、動的にメソッドを解決する機能があります。

id型を利用することで、実行時に特定のメソッドが存在するか確認し、存在しない場合には代わりのメソッドを呼び出すなどの操作が可能となります。

ここでは、id型を用いて動的なメソッド解決を行うサンプルコードを紹介します。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface SampleClass : NSObject

@end

@implementation SampleClass

- (void)defaultMethod {
    NSLog(@"defaultMethodが呼び出されました。");
}

+ (BOOL)resolveInstanceMethod:(SEL)sel {
    if (sel == @selector(dynamicMethod)) {
        return YES;
    }
    return [super resolveInstanceMethod:sel];
}

- (id)forwardingTargetForSelector:(SEL)selector {
    if (selector == @selector(dynamicMethod)) {
        return self;
    }
    return [super forwardingTargetForSelector:selector];
}

@end

int main() {
    @autoreleasepool {
        id obj = [[SampleClass alloc] init];
        if ([obj respondsToSelector:@selector(dynamicMethod)]) {
            [obj dynamicMethod];
        } else {
            [obj defaultMethod];
        }
    }
    return 0;
}

このコードでは、SampleClassにはdynamicMethodというメソッドは実際には実装されていませんが、resolveInstanceMethod:メソッドをオーバーライドして、dynamicMethodが呼び出された際には、defaultMethodを代わりに呼び出す動作を表しています。

この例では、dynamicMethodが存在しないため、defaultMethodが呼び出され、「defaultMethodが呼び出されました。」という出力結果が得られます。

○サンプルコード14:id型を活用したパフォーマンス最適化

Objective-Cのid型は、動的にオブジェクトの型を特定せずに扱うことができるため、柔軟なコードの記述が可能となります。

しかし、その柔軟性の代わりにパフォーマンスの低下が懸念されることもあります。

ここでは、id型を使用しつつも、パフォーマンスを最適化する方法を表すサンプルコードを紹介します。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface OptimizedClass : NSObject

- (void)optimizedMethod;

@end

@implementation OptimizedClass

- (void)optimizedMethod {
    NSLog(@"Optimized method is called.");
}

@end

int main() {
    @autoreleasepool {
        id obj = [[OptimizedClass alloc] init];
        if ([obj isKindOfClass:[OptimizedClass class]]) {
            [(OptimizedClass *)obj optimizedMethod];
        }
    }
    return 0;
}

このコードでは、id型のobjOptimizedClassのインスタンスであることを確認した後、キャストを行い、optimizedMethodを呼び出しています。

このような手法を用いることで、id型の柔軟性と静的な型のパフォーマンスをバランスよく活用することができます。

この例では、「Optimized method is called.」という出力結果が得られます。

○サンプルコード15:id型とエラーハンドリング

Objective-Cのid型を使用する際には、実行時に想定外の型やメソッド呼び出しによるエラーが発生する可能性があります。

そのような場合に備えて、適切なエラーハンドリングを行うことが重要です。

ここでは、id型とエラーハンドリングの基本的な方法を表すサンプルコードを紹介します。

#import <Foundation/Foundation.h>

@interface ErrorHandlerClass : NSObject

- (void)validMethod;

@end

@implementation ErrorHandlerClass

- (void)validMethod {
    NSLog(@"Valid method is called.");
}

@end

int main() {
    @autoreleasepool {
        id obj = [[ErrorHandlerClass alloc] init];
        if ([obj respondsToSelector:@selector(invalidMethod)]) {
            [obj invalidMethod];
        } else {
            NSLog(@"Error: The method does not exist.");
        }
    }
    return 0;
}

このコードでは、invalidMethodというメソッドが存在しないため、エラーメッセージ「Error: The method does not exist.」が出力されます。

このように、respondsToSelector:メソッドを活用することで、メソッドの存在確認を行い、エラーハンドリングを実施することができます。

●注意点と対処法

Objective-Cのid型は、非常に強力で柔軟性の高いデータ型ですが、その特性上、誤った使い方をすると想定外の挙動やエラーが発生することもあります。

ここでは、id型の適切な使い方や注意点、そしてその対処法について詳しく解説していきます。

○id型の適切な使い方

Objective-Cにおけるid型は、どのようなオブジェクトでも代入できる「任意のオブジェクト型」を示します。

しかし、型の情報が失われるため、正しくない使い方をするとランタイムエラーが発生する可能性があります。

適切な使い方としては、次の点を心掛けることが重要です。

  1. id型の変数にオブジェクトを代入する際、その変数が持つべきメソッドやプロパティを確認する。
  2. キャストを適切に使用して、必要な時点でオブジェクトの具体的な型を明示する。

○id型の使用時のリスクとその対策

id型の使用には次のようなリスクが伴います。

□型安全性の低下

id型は、コンパイル時に型の情報を持たないため、メソッドやプロパティの存在を保証できません。

これにより、存在しないメソッドを呼び出すとランタイムエラーが発生する可能性があります。

対処法としては、型キャストを活用して、具体的な型を明示的に指定することが挙げられます。

また、respondsToSelector:メソッドを使用して、メソッドの存在を確認することが推奨されます。

   if ([object respondsToSelector:@selector(someMethod)]) {
       [object someMethod];
   }

このコードでは、someMethodメソッドがobjectに存在するかどうかを確認してから呼び出しています。

□メモリ管理の難しさ

id型の変数はARC(Automatic Reference Counting)の対象となりますが、具体的な型が不明瞭なため、メモリリークやオブジェクトの解放タイミングを誤る可能性が高まります。

対処法として、明確なオブジェクト型を使用する場面では、id型を避けることが必要です。

また、ARCを適切に理解し、strong, weak, retain, releaseなどのキーワードの意味と使用方法を正しく理解することが重要です。

□パフォーマンスの低下

id型の変数への操作は、ランタイムでの型チェックが必要となるため、他の具体的な型と比較して処理速度が低下する可能性があります。

対処法として、パフォーマンスが重要な場面では、具体的なオブジェクト型を利用するか、C言語の原始的なデータ型を利用することで処理速度の向上を図る。

●カスタマイズ方法

Objective-Cのid型は非常に柔軟で、さまざまなオブジェクトを受け入れることができる特性を持っています。

ここでは、id型をカスタマイズする際の考え方と、それを具体的にどのように実装するのかをサンプルコードを交えて解説します。

○id型をカスタマイズする際の考え方

id型はObjective-Cのオブジェクト型であり、任意のオブジェクトを指すことができます。

しかし、その柔軟性ゆえに、型安全性の面でのリスクも孕んでいます。

このリスクを最小限に抑えつつ、id型の利点を最大限に活かすカスタマイズ方法を考える際には次の点を意識することが重要です。

□オブジェクトの種類を制限する

id型はどんなオブジェクトも受け入れることができますが、特定のクラスのオブジェクトだけを受け入れるように制限することで、安全性を高めることができます。

□型キャストを活用する

id型のオブジェクトを他の具体的な型にキャストすることで、そのオブジェクトが持つメソッドやプロパティに安全にアクセスすることができます。

□カスタムメソッドやプロパティを利用する

id型をカスタマイズする際に、特定のメソッドやプロパティを追加することで、そのid型のオブジェクトが持つべき振る舞いを明確にすることができます。

○id型のカスタム実装例

下記のサンプルコードは、id型をカスタマイズして、特定のクラスのオブジェクトだけを受け入れるようにした例を表しています。

この例では、NSStringとNSNumberのオブジェクトだけを受け入れるカスタムid型を実装しています。

@interface CustomIdType : NSObject
@property (nonatomic, strong) id value;

- (instancetype)initWithString:(NSString *)str;
- (instancetype)initWithNumber:(NSNumber *)num;

@end

@implementation CustomIdType

- (instancetype)initWithString:(NSString *)str {
    self = [super init];
    if (self) {
        if ([str isKindOfClass:[NSString class]]) {
            self.value = str;
        }
    }
    return self;
}

- (instancetype)initWithNumber:(NSNumber *)num {
    self = [super init];
    if (self) {
        if ([num isKindOfClass:[NSNumber class]]) {
            self.value = num;
        }
    }
    return self;
}

@end

このコードでは、CustomIdTypeという新しいクラスを実装しています。

このクラスは、valueというプロパティを持ち、NSStringまたはNSNumberのオブジェクトを保持することができます。

initWithString:メソッドとinitWithNumber:メソッドは、それぞれNSStringのオブジェクトとNSNumberのオブジェクトをvalueプロパティにセットするための初期化メソッドです。

これらのメソッド内で、引数として与えられたオブジェクトが期待するクラスのインスタンスであるかどうかをisKindOfClass:メソッドを使ってチェックしています。

このようなカスタムid型を利用することで、id型の持つ柔軟性を維持しつつ、オブジェクトの型を一定程度制限することができ、安全性を向上させることが期待できます。

例えば、次のようなコードを考えます。

CustomIdType *customId1 = [[CustomIdType alloc] initWithString:@"Hello"];
CustomIdType *customId2 = [[CustomIdType alloc] initWithNumber:@123];

この場合、customId1のvalueプロパティには”Hello”という文字列が、customId2のvalueプロパティには123という数値がセットされます。

しかし、NSStringやNSNumber以外のクラスのオブジェクトをセットしようとすると、valueプロパティには何もセットされないという振る舞いになります。

まとめ

Objective-Cのid型は、さまざまなオブジェクトを取り扱う際の柔軟性を高めるための重要なデータ型です。

本記事を通じて、その基本的な使い方から、さらに応用的な使用方法、カスタマイズの手法まで、幅広く学ぶことができたかと思います。

id型の適切な使用は、Objective-Cプログラミングの質を向上させるだけでなく、開発効率の向上やバグのリスクの軽減にも繋がります。

しかし、その柔軟性が仇となり、型の安全性を失ってしまうことも考えられるため、適切な使い方と注意点を理解し、実際の開発現場での適切な使用を心掛けることが重要です。

これからもObjective-Cのid型を活用し、より高品質なコードの開発を目指していきましょう。