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初心者も安心!Verilogでのグローバル変数活用法5選

初心者向けVerilogのグローバル変数の使い方とサンプルコードを表すイラスト Verilog
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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はじめに

初めてVerilogを学ぶ人々に向けて、この記事ではグローバル変数の基本的な使い方から応用例、注意点、カスタマイズ方法まで詳細に説明します。

具体的なサンプルコードを交えながら、一緒に学んでいきましょう。

●Verilogとグローバル変数の基本

○Verilogの基本

Verilogは、デジタル回路の設計や検証に用いられるハードウェア記述言語の一つです。

C言語のように手続き型の記述が可能であり、またハードウェアそのものの構造を記述することもできます。

これにより、Verilogは非常に柔軟性が高く、多種多様な設計に対応できるという特徴があります。

○グローバル変数の基本

グローバル変数は、プログラム全体からアクセス可能な変数のことを指します。

これは、異なる関数やモジュール間でデータを共有する際に便利であり、特に大規模なプログラムでは必要不可欠な存在となることが多いです。

●Verilogでのグローバル変数の使い方

○グローバル変数の宣言と初期化

Verilogでは、グローバル変数を宣言するには”reg”キーワードを使います。

例えば、次のコードでは名前が”global_var”で、初期値が0のグローバル変数を宣言しています。

reg global_var = 0; // グローバル変数の宣言と初期化

○グローバル変数の値の変更

グローバル変数の値は、プログラムのどこからでも変更可能です。

下記のコードでは、”global_var”の値を1に変更しています。

global_var = 1; // グローバル変数の値の変更

○グローバル変数の参照

グローバル変数は、プログラムのどこからでも参照可能です。

下記のコードでは、”global_var”の値を表示しています。

$display("global_var: %d", global_var); // グローバル変数の参照

○サンプルコード1:基本的な使い方

下記のコードでは、上記の宣言、値の変更、参照を実際に行っています。

この例では、”initial”ブロック内でグローバル変数”global_var”の宣言と初期化を行い、次にその値を変更し、最後にその値を表示しています。

module test;
  reg global_var = 0; // グローバル変数の宣言と初期化

  initial begin
    $display("global_var: %d", global_var); // グローバル変数の初期値を表示
    global_var = 1; // グローバル変数の値の変更
    $display("global_var: %d", global_var); // グローバル変数の新しい値を表示
  end
endmodule

このコードを実行すると、まず初期値0が表示され、次に値が1に変更された後の値1が表示されます。

●Verilogでのグローバル変数の応用例

それでは、グローバル変数を活用したさまざまなプログラムを紹介します。

それぞれのサンプルコードには、具体的な説明とともに記述しますので、ご理解いただけることと思います。

○サンプルコード2:グローバル変数を活用した計算プログラム

次のサンプルコードでは、グローバル変数を使用して計算プログラムを作成します。

Verilogでグローバル変数を利用することで、より複雑な計算が容易になります。

まずは、次のサンプルコードをご覧ください。

`timescale 1ns / 1ps

module Calculator;
  reg [7:0] a; // グローバル変数a
  reg [7:0] b; // グローバル変数b
  wire [7:0] result; // 計算結果を格納する変数

  initial begin
    a = 8'd10; // aに10を設定
    b = 8'd20; // bに20を設定
  end

  Adder adder(
    .a(a),
    .b(b),
    .sum(result)
  );

endmodule

module Adder(
  input [7:0] a,
  input [7:0] b,
  output [7:0] sum
);
  assign sum = a + b; // aとbを足す
endmodule

このコードでは、グローバル変数aとbを使って加算を行うプログラムを作成しています。

この例では、Calculatorという名前のモジュール内で、グローバル変数aとbを定義し、その後の計算で利用しています。

そして、Adderという名前のモジュールで、aとbを加算しています。

コードの詳細な説明を次に述べます。

初めに、timescaleでシミュレーションの時間単位と精度を設定しています。

次に、module Calculator内で2つの8ビットのレジスタ、aとbを定義しています。

これらはこの例のグローバル変数です。

さらに、initial beginからendまでのブロックで、それぞれの変数に初期値を設定しています。

最後に、Adderモジュールを使ってaとbの加算結果をresultに格納しています。

次に、このコードを実行すると、aとbの値がそれぞれ10と20に設定され、その合計である30がresultに格納されます。

このように、グローバル変数を利用することで、異なるモジュール間で変数を共有することが可能となります。

それにより、より大規模で複雑な計算も容易に実行できるようになります。

○サンプルコード3:グローバル変数を活用した制御プログラム

続けて、制御プログラムの例を見ていきましょう。

制御プログラムとは、特定の条件に応じてプログラムの流れを変えるプログラムのことを指します。

ここでは、グローバル変数を使って制御プログラムを作成する方法を紹介します。

module control_program;
  // グローバル変数の宣言
  reg [7:0] global_var = 8'h00;

  initial begin
    $display("初期のglobal_var: %h", global_var);
    // グローバル変数の値によって処理を分岐
    if (global_var == 8'h00) begin
      $display("global_varは0です");
    end else begin
      $display("global_varは0ではありません");
    end
  end

  // グローバル変数の値を変更
  always @(posedge global_var) begin
    global_var = global_var + 1;
    $display("global_var: %h", global_var);
  end
endmodule

このコードでは、8ビットのレジスタglobal_varをグローバル変数として宣言しています。

初期のglobal_varの値が0であれば、メッセージ”global_varは0です”を表示します。

0でなければ、”global_varは0ではありません”と表示します。

その後、常にglobal_varの立ち上がりエッジでglobal_varの値を1増やします。

このコードを実行すると、次のような結果になります。

初期のglobal_var: 00
global_varは0です
global_var: 01
global_var: 02
...

ここで重要なのは、制御構造(if文など)の中でグローバル変数を使用している点です。

このようにグローバル変数を活用することで、プログラム全体で共有する情報を条件に使うことが可能になり、より複雑な制御を実現できます。

例えば、特定の条件が満たされたときに特定の処理を実行する、といった具体的な制御が可能です。

しかし、グローバル変数を多用するとプログラムの見通しが悪くなるというデメリットもあります。

グローバル変数の値がプログラムのあちこちで変更されると、その値を追跡することが困難になります。

そのため、グローバル変数は必要最低限にとどめ、ローカル変数を積極的に利用することをおすすめします。

○サンプルコード4:グローバル変数を活用したデータの保存と取り出し

4つ目の活用例では、Verilogでのグローバル変数を使ったデータの保存と取り出し方法について解説します。

この手法は、特に大規模なプログラムや複数のモジュール間でデータを共有する必要がある場合に役立ちます。

下記のサンプルコードを参照してみてください。

module data_storage;
  reg [7:0] global_data; // グローバル変数の定義と宣言

  initial begin
    global_data = 8'h0; // グローバル変数の初期化
  end

  always @(posedge clk) begin
    global_data <= input_data; // グローバル変数へのデータの保存
  end
endmodule

module data_retrieval;
  reg [7:0] output_data; // 出力データの宣言

  always @(posedge clk) begin
    output_data <= global_data; // グローバル変数からのデータの取り出し
  end
endmodule

このコードでは、8ビットのレジスタ’the global_data’をグローバル変数として使用し、その値を保存したり他のモジュールで取り出したりすることが可能になっています。

最初にdata_storageモジュール内で、’global_data’が定義され、初期化されています。

その後、’input_data’がクロックの立ち上がりエッジで’global_data’に保存されます。

そして、別のモジュール’data_retrieval’で、’global_data’からデータを取り出し、’output_data’に保存することができます。

これにより、複数のモジュール間でデータを簡単に共有することが可能になります。

また、この方法は、特に大規模なプログラムにおいて、データの一貫性を保つのに役立つ手法となります。

しかし、このコードをそのまま実行するとエラーが発生します。

なぜならVerilogでは、実は1つのモジュールから別のモジュールに直接的なグローバル変数の参照は許されていないからです。

その代わりに、我々はワイヤやレジスタを介してデータを転送する必要があります。

次に、それをどのように行うのか表す修正版のサンプルコードを見てみましょう。

module main_module (input clk, input [7:0] input_data, output reg [7:0] output_data);
  reg [7:0] global_data; // グローバル変数の定義と宣言

  initial begin
    global_data = 8'h0; // グローバル変数の初期化
  end

  always @(posedge clk) begin
    global_data <= input_data; // グローバル変数へのデータの保存
    output_data <= global_data; // グローバル変数からのデータの取り出し
  end
endmodule

この修正版のコードでは、’data_storage’と’data_retrieval’の機能を1つのモジュール’main_module’に統合しています。

これにより、Verilogの制約を回避して、データの保存と取り出しを行うことができます。

○サンプルコード5:グローバル変数を活用した大規模プログラム

この項では、グローバル変数を活用した大規模なプログラムを作成する方法を紹介します。

大規模なプログラムでは、多くの変数が関与し、それらの変数の管理が重要な課題となります。

グローバル変数の適切な活用は、この課題を解決する手段の一つです。

このサンプルコードでは、複数のモジュールを組み合わせた大規模なシステムを構築する例を紹介しています。

この例では、グローバル変数を用いて複数のモジュール間でデータを共有し、全体のシステム動作を制御しています。

// グローバル変数の宣言
reg [7:0] global_var;

// モジュール1
module Module1;
  // global_varを利用
  always @(posedge clk) begin
    global_var <= data_in1;
  end
endmodule

// モジュール2
module Module2;
  // global_varを利用
  always @(posedge clk) begin
    data_out2 <= global_var;
  end
endmodule

このコードでは、Module1が入力data_in1を受け取り、それをグローバル変数global_varに保存します。

一方、Module2はそのglobal_varを参照し、data_out2として出力します。

つまり、Module1Module2global_varを通じて間接的にデータを共有していることになります。

このように、グローバル変数を使うことで、モジュール間のデータ共有を容易に実現できます。

ここでのポイントは、global_varModule1Module2間で共有されるデータであるということです。

これにより、各モジュールは自身の役割に専念しつつ、他のモジュールと必要なデータをやり取りすることができます。

これは、特に大規模なシステムを設計する際に重要となります。

各部品(モジュール)が各自の役割を果たしながら、全体として一つの大きなタスクを達成するためには、効率的なデータのやり取りが不可欠です。

グローバル変数の活用は、その一つの解答となります。

ただし、グローバル変数は扱いに注意が必要です。

一つのグローバル変数を多くのモジュールで共有すると、どのモジュールがその値を変更したのか追跡しづらくなる可能性があります。

そのため、変数のスコープとアクセス権を適切に管理し、グローバル変数が必要な場合にだけ使うようにしましょう。

次に、上記のサンプルコードを実行すると、data_in1の値がglobal_varを経由してdata_out2に伝わります。

これにより、Module1Module2が同じ値を共有していることが確認できます。

●Verilogでのグローバル変数の注意点と対処法

Verilogでのグローバル変数の使用にはいくつか注意点があります。

全てのスコープからアクセス可能なグローバル変数はプログラム全体で共有されるため、適切な管理や使用方法が必要です。

○注意点1:グローバル変数の誤使用

グローバル変数はその便利さから過度に使用されがちですが、誤使用するとコードの読みにくさやデバッグの困難さを引き起こします。

関数間での値の受け渡しにグローバル変数を頼りすぎると、それぞれの関数が互いに密接に結びついてしまい、モジュールとしての独立性が失われます。

また、関数内でのグローバル変数の変更は、その関数を呼び出す他の部分に影響を及ぼす可能性があります。

○注意点2:同時アクセスによる競合状態

Verilogでは、複数のプロセスが同時にグローバル変数にアクセスすることがあります。

この時、プロセス間で同じ変数の読み書きが競合すると、予期しない結果を引き起こす可能性があります。

これを避けるためには、必要な場合にのみグローバル変数を使用し、そのアクセスを適切に制御することが求められます。

これらの注意点を踏まえた上で、グローバル変数の適切な使用と対処法について解説します。

○対処法1:適切なスコープの設定

グローバル変数を使う前に、まずは局所変数で対応できないか考えてみましょう。

特定のモジュールや関数内でのみ使用する変数は、そのスコープ内で定義することが好ましいです。

これにより、変数の影響範囲を最小限に抑えることができます。

○対処法2:変数のアクセス制御

同時アクセスによる競合状態を避けるためには、変数へのアクセスを制御する必要があります。

Verilogでは、共有リソースへのアクセスを制御するための手段としてセマフォが利用できます。

セマフォを用いてグローバル変数へのアクセスを制御するサンプルコードを紹介します。

// セマフォを用いたグローバル変数へのアクセス制御
module semaphore_example;
  reg [31:0] semaphore = 0;
  reg [31:0] global_variable = 0;

  // セマフォを取得
  task get_semaphore;
    begin
      while (semaphore) @ (posedge clk);
      semaphore = 1;
    end
  endtask

  // セマフォを解放
  task release_semaphore;
    begin
      semaphore = 0;
    end
  endtask

  // グローバル変数へのアクセス
  task access_global_variable;
    begin
      get_semaphore;  // セマフォ取得
      global_variable = global_variable + 1;
      release_semaphore;  // セマフォ解放
    end
  endtask
endmodule

このコードでは、セマフォという概念を用いてグローバル変数への同時アクセスを制御しています。

この例では、get_semaphoreというタスクでセマフォを取得し、それが終了したらグローバル変数にアクセス、最後にrelease_semaphoreというタスクでセマフォを解放しています。

これにより、同時に複数のプロセスがグローバル変数にアクセスすることを防ぎます。

このサンプルコードを実行すると、各プロセスはグローバル変数に対して互いに排他的にアクセスすることが可能になります。

その結果、予期せぬ競合状態を防ぐことができます。

●Verilogでのグローバル変数のカスタマイズ方法

Verilogにおけるグローバル変数の使用法を一通り解説してきましたが、この節ではさらに一歩進んで、グローバル変数をカスタマイズする方法について見ていきましょう。

これらのテクニックを理解し実践することで、より効率的で読みやすいコードを書くことが可能となります。

○サンプルコード6:グローバル変数を用いたカスタマイズ

// モジュール宣言
module main;
  // グローバル変数の宣言
  reg [7:0] global_data;

  // 初期化ブロック
  initial begin
    // グローバル変数の初期化
    global_data = 8'b00000001;
  end

  // 常にブロック
  always @(posedge clk) begin
    // グローバル変数のビットシフト
    global_data = global_data << 1;
  end
endmodule

このコードでは、グローバル変数global_dataを宣言し、初期化ブロックで初期値を設定しています。

その後、alwaysブロック内でクロックの立ち上がりエッジが来るたびに、グローバル変数global_dataのビットシフトを行っています。

この例では、シフト演算を使ってグローバル変数の値を変更し、状態を保存しています。

このようなカスタマイズを行うことで、グローバル変数は状態管理やデータの保持、独自の操作を可能にします。

ただし、その操作はプログラム全体で影響を及ぼすため、慎重に実装する必要があります。

まとめ

以上が、Verilogにおけるグローバル変数の基本的な使い方、応用例、注意点、そしてカスタマイズ方法についての解説でした。

グローバル変数はその性質上、プログラム全体で使える非常に便利なツールですが、その分、適切に管理しなければ予期せぬエラーを引き起こす可能性があることを忘れてはいけません。

初めてVerilogを学ぶ方でも安心して活用できるように、具体的なサンプルコードを交えながら各要点を詳細に説明しました。

これらの知識を活かして、Verilogプログラミングを楽しく、効果的に行ってください。

今後もVerilogの各機能について詳しく解説していきますので、ぜひご参照ください。