VHDLモジュール完全ガイド!初心者でも10ステップでマスター – Japanシーモア

VHDLモジュール完全ガイド!初心者でも10ステップでマスター

VHDLモジュールの基本から応用までの図解入りガイドブックVHDL
この記事は約18分で読めます。

 

【サイト内のコードはご自由に個人利用・商用利用いただけます】

このサービスは複数のSSPによる協力の下、運営されています。

この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を凌駕する現役のプログラマチームによって監修されています。

サイト内のコードを共有する場合は、参照元として引用して下さいますと幸いです

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
(送信された情報は、プライバシーポリシーのもと、厳正に取扱い、処分させていただきます。)

はじめに

VHDLは、ハードウェア記述言語として広く使用されています。

この記事では、初心者を対象として、VHDLでのモジュールの作成からカスタマイズまでの手順をわかりやすく解説します。

VHDLのモジュールは、ハードウェアの機能や動作を抽象的に表現するための重要な要素です。

そのため、モジュールの作成と利用方法を正しく理解することは、VHDLプログラミングの基本となります。

本ガイドでは、VHDLモジュールの基本的な概念から、具体的なサンプルコードを交えながらの詳細な説明、注意点やカスタマイズの方法まで、モジュールに関する全ての情報を網羅的に学ぶことができます。

実際のプログラミングを始める前に、VHDLとモジュールの基本的な概念を押さえることで、より効果的に学習を進めることができます。

また、サンプルコードを実際に手を動かしながら試すことで、理解を深めることができます。

VHDLモジュールの作成やカスタマイズは、実際のハードウェア設計においても非常に役立つスキルです。

この記事を通じて、VHDLモジュールの魅力や可能性を感じ取り、自信を持ってプログラミングに取り組むことができるようになれば幸いです。

それでは、VHDLモジュールの世界への入口としてお楽しみください。

●VHDLとは

VHDL(VHSIC Hardware Description Language)は、高性能IC(VHSIC)のハードウェア記述言語として、1980年代に開発されました。

電子回路やデジタルロジックの設計・シミュレーションを目的としており、実際の回路の物理的な形状や動作を詳細に記述することが可能です。

○VHDLの基本概念

VHDLは、ハードウェアの動作や構造を表現するための言語として設計されています。

この言語において、主要な概念としてエンティティ、アーキテクチャ、プロセスなどがあります。

エンティティはモジュールの入出力インターフェースを定義する部分で、アーキテクチャはその内部の動作や構造を定義します。

また、プロセスはアーキテクチャ内での具体的な動作やシーケンスを記述するためのものです。

このコードではエンティティとアーキテクチャの簡単な定義を表しています。

この例ではANDゲートを定義しています。

-- ANDゲートのエンティティ定義
entity AND_GATE is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           Y : out STD_LOGIC);
end AND_GATE;

-- ANDゲートのアーキテクチャ定義
architecture Behavior of AND_GATE is
begin
    Y <= A and B; -- AとBのAND操作
end Behavior;

上記のサンプルコードを見ると、エンティティでANDゲートの入力AB、出力Yを定義しています。

アーキテクチャでは、出力Yが入力ABのAND操作によって得られることを示しています。

○VHDLでのプログラミングの特徴

VHDLの特徴的な点としては、ハードウェアの並列的な動作を自然に表現できる点が挙げられます。

つまり、通常のプログラミング言語でのシーケンシャルな動作とは異なり、VHDLでは複数の操作が同時に進行するという点が特徴です。

また、VHDLは強い型付けを持つため、設計時のミスを早期に発見することができます。

この特性は、複雑なハードウェア設計において非常に役立ちます。

さらに、シミュレーションのサポートが充実しており、実際のハードウェアを持っていなくても、設計した回路の動作確認が行えるという点も大きな利点と言えるでしょう。

●モジュールとは

VHDLを学び始めると、すぐに「モジュール」という言葉に出会います。

モジュールとは、VHDLでのデザインを構築するための基本的な単位であり、電子回路の一部や機能を表すものです。

言い換えると、複雑な回路を簡単な部分に分割する際のブロックのようなものと考えることができます。

○モジュールの役割と特性

モジュールは、特定の機能を持つVHDLのコード群を表します。

そのため、再利用や編集が容易です。

具体的には、一つのモジュール内で完結するような小さな処理を作成し、それを組み合わせて大きなシステムを構築します。

VHDLのモジュールは次の特性を持ちます。

  1. 再利用性:一度作成したモジュールは、他のプロジェクトやシステムでも使用可能。
  2. 隠蔽性:モジュール内部の詳細を知らなくても、そのインターフェースだけを使って機能を利用できます。
  3. 組み合わせ性:複数のモジュールを組み合わせることで、複雑な機能やシステムを実現します。

○モジュールの基本的な構造

このコードでは基本的なモジュールの構造を表しています。

この例ではモジュールの宣言、入力・出力ポートの定義、および内部の処理を行っています。

-- サンプルのモジュール
module sample_module(input a, input b, output y);
    -- a, bは入力ポート
    -- yは出力ポート

    assign y = a & b; -- ANDゲートの処理
end module

上記のコードは、二つの入力ポートabを持ち、そのANDゲートの結果を出力ポートyに出力する単純なモジュールです。

このモジュールを使用すると、abのANDの結果を得ることができます。したがって、もしabがともに1の場合、yは1となります。

それ以外の場合、yは0となります。

モジュールの構造を理解することで、VHDLでの回路設計がより簡単になります。

●モジュールの作り方

VHDLでのモジュールの作成は、初心者にとっては少々難しいと感じるかもしれませんが、基本的な構造と手順を理解すれば、難しくないものとなります。

ここでは、モジュールの基本的な作成方法を紹介します。

○サンプルコード1:基本的なモジュールの作成

このコードでは、シンプルなモジュールを作成する方法を表しています。

この例では、モジュールの基本的な定義と、それに伴うシンプルな動作を表しています。

module SimpleModule;
begin
  -- ここにモジュールの動作を記述します。
end module SimpleModule;

上記のコードは、VHDLで最も基本的なモジュールの形となります。

こちらは動作を持たない、単なる枠組みを示すサンプルとなっています。

○サンプルコード2:入力・出力を持つモジュールの定義

このコードでは、入力と出力を持つモジュールの作成方法を表しています。

この例では、入力として2つのシグナルを受け取り、それらの和を出力するモジュールを定義しています。

module Adder(input a, input b, output sum);
begin
  sum <= a + b;  -- 入力のaとbの和をsumに代入
end module Adder;

上記のモジュールを利用すると、2つの入力シグナルの和を計算することができます。

○サンプルコード3:モジュール内でのシグナルの使用方法

このコードでは、モジュール内部でのシグナルの使用方法を表しています。

この例では、入力シグナルの和を計算し、一時的なシグナルに保存する方法を表しています。

module SignalExample(input a, input b, output sum);
  signal temp: integer;  -- 一時的なシグナルの宣言
begin
  temp <= a + b;        -- aとbの和をtempに代入
  sum <= temp;          -- tempの値をsumに代入
end module SignalExample;

このコードを使用すると、計算結果を一時的なシグナルに保存し、その後でそのシグナルを使用して出力を生成することができます。

●モジュールの応用例

VHDLを使用してモジュールを作成する際、基本的な機能だけではなく、さまざまな応用的な技法を駆使することで、より効率的かつ高機能なシステムを構築することができます。

ここでは、モジュールの応用例について、具体的なサンプルコードを交えて詳しく解説していきます。

○サンプルコード4:複数のモジュールを組み合わせる方法

このコードでは、2つの独立したモジュールを定義し、それらを組み合わせて新しい機能を持つモジュールを作成する方法を表しています。

この例では、モジュールAとモジュールBを作成し、それらを結合してモジュールCを作成しています。

-- モジュールAの定義
module ModuleA;
-- モジュールAの内容
end ModuleA;

-- モジュールBの定義
module ModuleB;
-- モジュールBの内容
end ModuleB;

-- モジュールAとBを組み合わせたモジュールCの定義
module ModuleC;
-- モジュールAのインスタンス
ModuleA instanceA;
-- モジュールBのインスタンス
ModuleB instanceB;
end ModuleC;

このようにして、2つの独立したモジュールを組み合わせて新しいモジュールを作成することができます。

○サンプルコード5:外部ライブラリを利用するモジュールの作成

VHDLでは外部のライブラリを使用して、高度な機能や効率的な処理を実現することができます。

このコードでは、外部ライブラリを取り込み、その機能を活用してモジュールを作成する方法を表しています。

-- 外部ライブラリの取り込み
library externalLib;

-- ライブラリを使用したモジュールの定義
module UsingLibrary;
-- ライブラリの関数やコンポーネントを使用
end UsingLibrary;

ライブラリを取り込むことで、そのライブラリが提供する機能やコンポーネントをモジュール内で利用することができます。

○サンプルコード6:モジュールを再利用するテクニック

VHDLの強力な特徴の一つは、一度作成したモジュールを再利用し、別のプロジェクトやシステムに簡単に適用することができる点です。

このコードでは、モジュールを再利用する際の基本的なテクニックを表しています。

-- 再利用したいモジュールの定義
module ReusableModule;
-- モジュールの内容
end ReusableModule;

-- 別のプロジェクトでモジュールを再利用
module NewProject;
-- 再利用モジュールのインスタンス化
ReusableModule reusedInstance;
end NewProject;

このように、一度定義したモジュールを別のプロジェクトで再利用することができ、効率的なプログラミングが可能となります。

●注意点と対処法

VHDLのモジュール設計には、非常に多くのメリットがありますが、一方で初心者が陥りがちな注意点やエラーも存在します。

ここでは、VHDLのプログラミングやモジュール設計時に出てくる一般的なエラーや注意点について、具体的なサンプルコードとともに解説します。

○VHDLプログラミング時の一般的なエラーとその対処法

❶シンタックスエラー

VHDLのプログラムを書く際には、言語の構文規則を厳密に守る必要があります。

少しのタイポや文法の間違いもエラーの原因となります。

このコードではシンタックスエラーを起こすコードを表しています。

この例では、end processの後にセミコロンを忘れています。

process
begin
  -- 処理内容
end process

正しくは次のように、end processの後ろにセミコロンを付ける必要があります。

process
begin
  -- 処理内容
end process;

このように、VHDLでは文の終了を示すセミコロンが重要で、それを忘れるとエラーが発生します。

❷未定義のシグナルの使用

VHDLで未定義のシグナルを使用した場合、エラーとなります。

このコードでは未定義のシグナルを使っているコードを表しています。

この例では、signalAが未定義のまま使用されています。

process
begin
  signalB <= signalA;
end process;

このエラーを解消するためには、シグナルを適切に定義する必要があります。

signal signalA, signalB : bit_vector(7 downto 0);
process
begin
  signalB <= signalA;
end process;

以上のように、シグナルを使用する前に適切に定義することでエラーを回避できます。

○モジュール作成時の注意点と解決策

❶モジュール間の信号接続のミス

モジュール同士を接続する際、信号の接続をミスると、想定外の動作を引き起こす可能性があります。

このコードでは、モジュール間の信号接続のミスを紹介しています。

この例では、モジュールmodAとmodBの接続時に、信号の順序が逆になっています。

modA(input1, input2, output1);
modB(output2, input3);

信号の順序を正しく接続するためのコードは次のようになります。

modA(input1, input2, output1);
modB(input3, output2);

このように、モジュール間の信号接続は非常にデリケートな部分であり、接続順序やシグナル名を間違えるとエラーの原因となります。

常に接続の正確さを確認し、ミスを防ぐよう心がけることが重要です。

❷モジュール内部でのシグナルの競合

モジュール内部で、同じシグナルに対して複数の出力源があると、シグナル競合が起こります。

このコードでは、モジュール内部でのシグナル競合を表しています。

この例では、同じシグナルoutputAに対して、異なる二つの値が同時に割り当てられています。

vhdl
process
begin
  if condition = '1' then
    outputA <= '1';
  else
    outputA <= '0';
  end if;
  outputA <= '1';
end process;

この競合を解消するためのコードは、一つのシグナルに対して一つの出力源を持つように修正する必要があります。

process
begin
  if condition = '1' then
    outputA <= '1';
  else
    outputA <= '0';
  end if;
end process;

以上のように、シグナル競合は動作上の問題を引き起こすため、適切に対処する必要があります。

●モジュールのカスタマイズ方法

VHDLモジュールのカスタマイズは、設計の要件やニーズに合わせてモジュールの機能や動作を変更するための方法を指します。

ここでは、具体的なカスタマイズの手法やテクニックについて、サンプルコードとその詳細な説明を交えながら解説します。

○サンプルコード7:モジュールのパラメータ変更方法

このコードでは、モジュールのパラメータを変更して、異なる動作を持つモジュールを生成する方法を表しています。

この例では、シグナルのビット幅をパラメータとして持つモジュールを定義し、それを変更しています。

entity sample_module is
    generic (
        DATA_WIDTH : integer := 8
    );
    port (
        input_data : in bit_vector(DATA_WIDTH-1 downto 0);
        output_data : out bit_vector(DATA_WIDTH-1 downto 0)
    );
end entity sample_module;

architecture behavior of sample_module is
begin
    output_data <= input_data;
end architecture behavior;

このモジュールは、DATA_WIDTHというジェネリックを持ち、それによって入力・出力のビット幅が変わります。

初期値は8ビットに設定していますが、この値を変更することで動作をカスタマイズできます。

モジュールをインスタンス化する際に、DATA_WIDTHの値を16に変更する場合のコードは次の通りです。

module_instance : sample_module
    generic map (DATA_WIDTH => 16)
    port map (input_data, output_data);

これによって、モジュール内のシグナルのビット幅が16ビットになります。

○サンプルコード8:モジュール内の動作をカスタマイズするテクニック

このコードでは、モジュール内部の処理を条件分岐を使ってカスタマイズする方法を表しています。

この例では、モードという入力によって、シグナルの処理を切り替える動作を表しています。

entity mode_switch is
    port (
        mode : in bit;
        input_data : in bit_vector(7 downto 0);
        output_data : out bit_vector(7 downto 0)
    );
end entity mode_switch;

architecture behavior of mode_switch is
begin
    process (mode, input_data)
    begin
        if mode = '1' then
            output_data <= input_data;
        else
            output_data <= not input_data;
        end if;
    end process;
end architecture behavior;

モードが1の時、入力データをそのまま出力として渡し、モードが0の時、入力データのビット反転をして出力します。

このモジュールを使用した場合、modeに’1’を入力すると、output_dataはinput_dataと同じ値になります。

一方、modeに’0’を入力すると、output_dataはinput_dataのビット反転した値となります。

○サンプルコード9:外部ライブラリを活用したカスタマイズ

外部ライブラリを使って、モジュールの機能を拡張するテクニックを表しています。

この例では、外部ライブラリで提供されている乗算器をモジュール内で使用しています。

library lib_math;  -- 外部ライブラリのインクルード
use lib_math.multiplier.all;

entity custom_multiplier is
    port (
        input_a, input_b : in bit_vector(7 downto 0);
        output_result : out bit_vector(15 downto 0)
    );
end entity custom_multiplier;

architecture behavior of custom_multiplier is
    signal result : bit_vector(15 downto 0);
begin
    result <= input_a * input_b;  -- 外部ライブラリの乗算器を使用
    output_result <= result;
end architecture behavior;

このモジュールでは、lib_mathという外部ライブラリのmultiplierを使用して、2つの8ビット入力の乗算結果を16ビットの出力として提供します。

このモジュールを使用した場合、output_resultにはinput_aとinput_bの乗算結果が得られます。

○サンプルコード10:モジュールの拡張・継承方法

VHDLにおいて、モジュールを拡張または継承することで、すでに定義されているモジュールの機能を引き継ぎながら新しい機能を追加することができます。

これにより、再利用性と可読性を高めることが可能です。

ここでは、モジュールの拡張と継承の基本的な方法について説明し、具体的なサンプルコードとともに実際の作成方法を紹介します。

まず、モジュールの拡張とは、すでに定義されているモジュールに新しい機能やインターフェースを追加することを指します。

一方、継承とは、既存のモジュールをベースにして新しいモジュールを定義し、既存の機能を再利用することを意味します。

このコードでは、既存のbase_moduleを継承してextended_moduleを作成します。

この例では、base_moduleの機能を継承しつつ、新しい機能を追加しています。

-- 既存のbase_module
module base_module;
  -- 既存の機能やインターフェースの定義
end module;

-- extended_moduleの定義
module extended_module is new base_module
  -- 新しい機能やインターフェースの追加
end module;

上記のサンプルコードでは、extended_modulebase_moduleのすべての機能を引き継ぎながら、新しい機能を追加しています。

このようにVHDLでは、継承を活用して既存のモジュールをベースに新しいモジュールを簡単に作成することができます。

この拡張・継承を行うことのメリットとして、次の点が挙げられます。

  1. 既存のモジュールの再利用性が向上し、開発効率がアップします。
  2. コードの可読性が向上し、保守性が向上します。
  3. 新しい機能の追加や変更が容易となります。

もちろん、拡張・継承を行う際には注意も必要です。過度に継承を重ねると、コードが複雑化してしまったり、予期しない動作が生じる可能性がありますので、適切な継承の深さや範囲を保つことが大切です。

まとめ

VHDLのモジュール拡張・継承機能は、既存のモジュールを再利用し新しい機能を追加する際の効率的な方法を提供します。

モジュールの拡張では既存のモジュールに新機能を追加し、継承を使用して既存の機能を新しいモジュールで再利用します。

この機能の利点として、開発の効率化、コードの可読性の向上、そして新しい機能の容易な追加が挙げられます。

ただし、過度に継承を使用するとコードが複雑化する可能性があるため、適切な継承の範囲と深さを保つことが重要です。

VHDLプログラミングにおいて、このモジュールの拡張・継承機能を適切に活用することで、高品質で効率的な設計を実現することができます。