C++でマスターするべき5つの継承とオーバーライドテクニックと応用例

C++の継承とオーバーライドを初心者から上級者までが理解できるように徹底解説するイメージC++
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説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

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はじめに

この記事では、C++における継承とオーバーライドの概念を深く掘り下げます。

C++は多機能で強力なプログラミング言語であり、継承とオーバーライドはその重要な部分を占めています。

本記事を通じて、読者の皆さんがこれらの概念を初心者から上級者まで幅広く理解し、実際のプログラミングに応用できるように詳細に解説していきます。

●C++における継承とは

C++プログラミング言語における継承とは、一つのクラスが別のクラスの特性や機能を引き継ぐことを意味します。

この概念は、コードの再利用を促進し、効率的なプログラム設計を可能にします。

継承を使うことで、既存のクラス(基底クラスまたは親クラス)の属性やメソッドを新しいクラス(派生クラスまたは子クラス)が継承し、拡張やカスタマイズが行えます。

○継承の基本概念

継承の基本概念は、コードの重複を避け、プログラムの構造を明確にすることにあります。

共通の機能や属性は基底クラスに定義し、それを派生クラスが継承することで、同じコードを何度も書く必要がなくなります。

これにより、プログラム全体のメンテナンスが容易になり、拡張性と柔軟性が高まります。

○継承の利点とは

継承の最大の利点は、コードの再利用と整理整頓にあります。

基底クラスに定義されたメソッドや属性は、派生クラスでも自動的に利用できるため、新たな機能を追加する際に既存のコードを再利用できます。

また、継承を使用することで、プログラムの構造が明確になり、理解やデバッグが容易になるというメリットもあります。

○継承の種類(単一継承と多重継承)

C++には単一継承と多重継承の二つの継承形式が存在します。

単一継承では、一つの基底クラスから派生する形式で、これは最も一般的で理解しやすい継承形式です。

一方、多重継承では、複数の基底クラスから派生する形式で、これにより複数の基底クラスの属性やメソッドを一つの派生クラスが引き継ぐことができます。

ただし、多重継承は複雑性が増し、特有の問題に直面する可能性があるため、慎重に使用する必要があります。

●C++でのオーバーライドとは

C++におけるオーバーライドとは、派生クラスが基底クラスのメソッドを新しい振る舞いで再定義するプロセスです。

この技術はオブジェクト指向プログラミングにおいて非常に重要であり、多様な機能を持つ派生クラスを作成する際に頻繁に利用されます。

オーバーライドを使用することで、既存のメソッドを派生クラスのニーズに合わせてカスタマイズできるため、コードの再利用性と拡張性が向上します。

○オーバーライドの基本概念

オーバーライドの基本的な考え方は、派生クラスが基底クラスのメソッドを「置き換える」ことにあります。

基底クラスで定義されたメソッドと同じ名前、戻り値の型、引数リストを持つメソッドを派生クラスで定義することで、基底クラスのメソッドをオーバーライドすることができます。

これにより、派生クラスのオブジェクトは、基底クラスのメソッドを呼び出す代わりに、オーバーライドされたメソッドを実行することになります。

○オーバーライドの役割と重要性

オーバーライドはオブジェクト指向プログラミングの核心的な要素であり、ポリモーフィズムを実現する上で重要な役割を果たします。

ポリモーフィズムにより、異なるクラスのオブジェクトが同じインターフェースを共有し、実行時に異なる振る舞いを表すことが可能になります。

これは、プログラムがより柔軟で再利用可能なコードを持つことを意味し、大規模なアプリケーションの開発において非常に有用です。

オーバーライドを効果的に使用することで、プログラムの可読性が向上し、メンテナンスが容易になります。

さらに、オーバーライドによって新しい機能を追加または既存の機能を改善することができるため、プログラムの拡張性が高まります。

C++プログラミングにおいては、この概念の理解と適切な利用が、効率的で強力なコードの作成に不可欠です。

●継承とオーバーライドのサンプルコード

継承とオーバーライドの概念をより深く理解するために、具体的なサンプルコードを通じてこれらのテクニックを実際に見ていきましょう。

C++における継承とオーバーライドは、コードの再利用性を高め、より洗練されたプログラムを作成する上で重要な役割を果たします。

○サンプルコード1:基本的な継承の実装

基本的な継承を表す最初のサンプルでは、一つの基底クラスとその派生クラスを定義します。

基底クラスでは一般的な機能を提供し、派生クラスではこれらの機能を拡張またはカスタマイズします。

// 基底クラスの定義
class Base {
public:
    void show() {
        std::cout << "基底クラスのshow関数" << std::endl;
    }
};

// 派生クラスの定義
class Derived : public Base {
public:
    void show() {
        std::cout << "派生クラスのshow関数" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    Derived obj;
    obj.show();  // 派生クラスのshow関数が呼ばれる
    return 0;
}

このコードでは、DerivedクラスがBaseクラスから継承されており、show関数をオーバーライドしています。

この結果、Derivedクラスのオブジェクトでshow関数を呼び出すと、派生クラスで定義された内容が実行されます。

○サンプルコード2:オーバーライドの基本

下記のサンプルでは、基底クラスの関数を派生クラスで再定義しています。

これにより、基底クラスの振る舞いを派生クラスで変更できます。

// 基底クラス
class Animal {
public:
    virtual void speak() {
        std::cout << "動物が鳴く" << std::endl;
    }
};

// 派生クラス
class Dog : public Animal {
public:
    void speak() override {
        std::cout << "犬が吠える" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    Dog myDog;
    myDog.speak();  // "犬が吠える" が出力される
    return 0;
}

この例ではAnimalクラスのspeak関数をDogクラスでオーバーライドしています。

Dogクラスのオブジェクトでspeak関数を呼び出すと、オーバーライドされたDogクラスのバージョンが実行されます。

○サンプルコード3:多重継承の使用例

多重継承を使用するサンプルでは、二つの基底クラスを持つ派生クラスを作成します。

これにより、派生クラスは二つの基底クラスの属性やメソッドを引き継ぎます。

// 二つの基底クラスの定義
class Base1 {
public:
    void func1() {
        std::cout << "Base1のfunc1" << std::endl;
    }
};

class Base2 {
public:
    void func2() {
        std::cout << "Base2のfunc2" << std::endl;
    }
};

// 多重継承を使用した派生クラス
class Derived : public Base1, public Base2 {
public:
    void func3() {
        std::cout << "Derivedのfunc3" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    Derived obj;
    obj.func1();  // Base1のfunc1が呼ばれる
    obj.func2();  // Base2のfunc2が呼ばれる
    obj.func3();  // Derivedのfunc3が呼ばれる
    return 0;
}

このコードでは、DerivedクラスがBase1Base2の両方から継承しており、それぞれのクラスのメソッドを使用できます。

これにより、複数の基底クラスからの属性やメソッドを一つの派生クラスで統合することが可能になります。

○サンプルコード4:オーバーライドとポリモーフィズム

下記のサンプルコードでは、基底クラスのメソッドを派生クラスでオーバーライドし、異なるクラスタイプで異なる動作を表しています。

これにより、同じインターフェースを通じて異なる実装を提供することができます。

// 基底クラス
class Shape {
public:
    virtual void draw() const {
        std::cout << "形状を描画" << std::endl;
    }
};

// 派生クラス1
class Circle : public Shape {
public:
    void draw() const override {
        std::cout << "円を描画" << std::endl;
    }
};

// 派生クラス2
class Square : public Shape {
public:
    void draw() const override {
        std::cout << "四角形を描画" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    Shape* shapes[2] = {new Circle(), new Square()};
    shapes[0]->draw();  // 円を描画
    shapes[1]->draw();  // 四角形を描画
    delete shapes[0];
    delete shapes[1];
    return 0;
}

このコードでは、ShapeクラスのdrawメソッドがCircleクラスとSquareクラスで異なる方法でオーバーライドされています。

ポリモーフィズムを活用することで、Shape型のポインタを使ってこれらのメソッドを動的に呼び出すことができます。

○サンプルコード5:抽象クラスと純粋仮想関数

抽象クラスと純粋仮想関数を使用するサンプルでは、特定のメソッドの実装を派生クラスに強制します。

これにより、一貫性のあるインターフェースを提供しつつ、具体的な実装を子クラスに委ねることができます。

// 抽象基底クラス
class AbstractShape {
public:
    virtual void draw() const = 0;  // 純粋仮想関数
};

// 派生クラス
class ConcreteCircle : public AbstractShape {
public:
    void draw() const override {
        std::cout << "具体的な円の描画" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    ConcreteCircle circle;
    circle.draw();  // 具体的な円の描画
    return 0;
}

このコードでは、AbstractShapeクラスが純粋仮想関数drawを持っており、これを実装することでConcreteCircleクラスが具体的な円の描画方法を提供します。

これにより、基底クラスではどのように描画されるかを定義せずに、派生クラスで具体的な描画方法を定義することが強制されます。

●継承とオーバーライドの応用例

C++における継承とオーバーライドの概念は、実際のプログラミングにおいて多岐にわたる応用が可能です。

これらのテクニックを使用することで、より効率的で柔軟性のあるコードを書くことができます。

ここでは、継承とオーバーライドの応用例として、デザインパターンの活用とライブラリのカスタマイズに焦点を当てたサンプルコードを紹介します。

○サンプルコード6:デザインパターンにおける継承の活用

デザインパターンでは、継承を利用して柔軟で再利用可能なコード構造を作成します。

例えば、ファクトリーメソッドパターンでは、オブジェクトの作成をサブクラスに委ねることで、クラスのインスタンス化の柔軟性を高めます。

// 製品の基底クラス
class Product {
public:
    virtual void use() = 0;
};

// 具体的な製品クラス
class ConcreteProduct : public Product {
public:
    void use() override {
        std::cout << "ConcreteProductを使用" << std::endl;
    }
};

// クリエーターの基底クラス
class Creator {
public:
    virtual Product* factoryMethod() = 0;
};

// 具体的なクリエータークラス
class ConcreteCreator : public Creator {
public:
    Product* factoryMethod() override {
        return new ConcreteProduct();
    }
};

// メイン関数
int main() {
    Creator* creator = new ConcreteCreator();
    Product* product = creator->factoryMethod();
    product->use();
    delete product;
    delete creator;
    return 0;
}

このコードでは、CreatorクラスのfactoryMethod関数をConcreteCreatorクラスでオーバーライドし、ConcreteProductのインスタンスを生成しています。

○サンプルコード7:ライブラリのカスタマイズ

既存のライブラリを継承とオーバーライドを使ってカスタマイズすることも一般的な応用例です。

この方法により、ライブラリの基本的な機能を維持しつつ、特定の用途に合わせた機能を追加することができます。

// ライブラリの基底クラス
class LibraryClass {
public:
    virtual void standardOperation() {
        std::cout << "標準操作" << std::endl;
    }
};

// ライブラリをカスタマイズした派生クラス
class CustomizedClass : public LibraryClass {
public:
    void standardOperation() override {
        std::cout << "カスタマイズされた操作" << std::endl;
    }
};

// メイン関数
int main() {
    LibraryClass* lib = new CustomizedClass();
    lib->standardOperation();  // "カスタマイズされた操作" が出力される
    delete lib;
    return 0;
}

このサンプルでは、LibraryClassstandardOperationメソッドをCustomizedClassでオーバーライドし、カスタマイズされた動作を実現しています。

●注意点と対処法

C++での継承とオーバーライドの実装には、いくつかの重要な注意点があります。

これらのポイントを理解し、適切に対処することで、プログラムの安全性と効率を高めることができます。

○継承の際の共通の落とし穴

継承を行う際には、特に下記のような点に注意する必要があります。

基底クラスのデストラクタがvirtualでない場合、派生クラスのオブジェクトが基底クラスのポインタや参照を通じて削除された時に未定義の動作が発生する可能性があります。

この問題を避けるためには、基底クラスのデストラクタをvirtualにすることが重要です。

また、派生クラスで新たなメンバを定義する際に、同名のメンバが基底クラスに存在すると、基底クラスのメンバが隠蔽されてしまいます。

これを避けるためには、異なる名前を使用するか、基底クラスのメンバを適切に参照する必要があります。

○オーバーライド時の注意事項

オーバーライドを行う際には、メソッドのシグネチャが基底クラスのメソッドと同じである必要があります。

これが一致しない場合、オーバーライドではなく新しいメソッドの定義と見なされます。

基底クラスのメソッドがvirtualで宣言されていなければ、そのメソッドはオーバーライドできません。

オーバーライド可能なメソッドを作るには、基底クラスでvirtualキーワードを使用する必要があります。

C++11以降では、派生クラスのメソッドをオーバーライドする際にoverrideキーワードを使用することが推奨されています。

これにより、コンパイラがオーバーライドの正確性をチェックし、意図しない間違いを防ぐことができます。

まとめ

この記事では、C++における継承とオーバーライドの基本概念から応用例、そしてカスタマイズ方法に至るまでを詳しく解説しました。

初心者から上級者までが理解できるように具体的なサンプルコードを交えながら説明し、プログラミングの際の注意点も紹介しました。

これにより、読者はC++の継承とオーバーライドを効果的に活用し、より洗練されたコーディングを実現できるようになるでしょう。