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C++における派生クラスを5つのサンプルコードで徹底解説

C++の派生クラスを解説する記事のサムネイル C++
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

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はじめに

C++は、多くのプロフェッショナルなソフトウェア開発者にとって重要なプログラミング言語です。

この記事では、C++の核心であるオブジェクト指向プログラミングと派生クラスについて、初心者から上級者まで理解できるように徹底的に解説します。

特に、派生クラスの作成方法や使い方を、実践的なサンプルコードと共に学べる内容となっています。

この記事を読むことで、C++のオブジェクト指向の概念と派生クラスの強力な機能を、実際のコード例を通じて深く理解することができます。

●C++とオブジェクト指向プログラミングの基礎

C++は、オブジェクト指向プログラミングを完全にサポートする言語です。

オブジェクト指向プログラミングは、データとそのデータを操作する手続きを一つの「オブジェクト」として扱うプログラミングパラダイムです。

C++では、このオブジェクトを使って効率的で理解しやすいコードを書くことが可能です。

オブジェクト指向プログラミングの三大要素は、カプセル化、継承、多態性です。

カプセル化はデータの隠蔽と保護を提供し、継承はコードの再利用性を高め、多態性は異なるオブジェクトで同じインターフェースを使用できるようにします。

○C++プログラミング言語の紹介

C++は、C言語の拡張版として開発されました。

C++は、C言語の効率性と低レベルの操作能力を維持しつつ、クラス、オブジェクト、例外処理、テンプレートなどの高レベルの抽象化を導入しています。

これにより、ソフトウェア開発者は、より複雑なプログラムをより簡単に、効率的に記述できるようになります。

また、C++はコンパイラ言語であり、実行時に高速なパフォーマンスを提供します。

○オブジェクト指向プログラミングの原則

オブジェクト指向プログラミングにはいくつかの基本的な原則があります。

これらの原則を理解することは、C++での効果的なプログラミングに不可欠です。

第一に、カプセル化はデータ構造とデータを操作する方法を組み合わせることにより、プログラム内でのデータの安全な使用を保証します。

第二に、継承は既存のクラスを基に新しいクラスを作ることができ、コードの重複を避けることができます。

最後に、多態性は同じインターフェースに対して異なる実装を提供することにより、プログラムの柔軟性を高めます。

これらの原則を理解し、適切に適用することで、C++での効率的で保守しやすいコードの記述が可能になります。

●C++のクラスとは

C++でのクラスの概念は、オブジェクト指向プログラミングの中核を成すものです。

クラスは、データとそのデータを操作するメソッドを組み合わせた構造体として機能し、実際のプログラミングで使用されるオブジェクトの設計図のようなものです。

このクラスを用いることで、プログラムの各部分が互いにどのように作用するかを定義し、データのカプセル化や情報の隠蔽を行うことができます。

C++におけるクラスの利用は、プログラムの構造を明確にし、再利用しやすく、また保守しやすいコードを作成するために不可欠です。

○クラスの定義方法

クラスを定義するためには、C++ではclassキーワードを使用します。

クラス内には、そのクラスのオブジェクトが持つことができるデータメンバー(変数)とメンバーファンクション(メソッド)を定義します。

これらのメンバーはpublicprivateprotectedというアクセス修飾子を用いて、そのアクセス範囲を制御できます。

例えば、車を表す単純なクラスを考える場合、車の速度を表す変数と、その速度を変更するためのメソッドを定義できます。

○クラスの基本的な機能

クラスは、データのカプセル化と情報の隠蔽を行うことができます。

これにより、クラス外部からデータに直接アクセスすることが制限され、クラスの内部メソッドを通じてのみデータの操作が可能となります。

また、クラスにはコンストラクタとデストラクタという特殊なメソッドがあり、これらはオブジェクトの生成と破棄時に自動的に呼び出されます。

さらに、クラスでは関数のオーバーロードやオーバーライドをサポートし、同名の関数でも異なるパラメータを取ることができたり、継承したクラスで親クラスの関数を再定義できたりします。

これらの機能により、C++のクラスは柔軟かつ強力なプログラミングを可能にします。

●派生クラスの基礎

C++における派生クラスは、既存のクラス(基底クラス)から新しいクラスを作成する機能です。

この概念は、オブジェクト指向プログラミングの重要な特徴の一つであり、コードの再利用性を高めるために使われます。

派生クラスにより、基底クラスの属性や振る舞いを継承し、新たな機能を追加することが可能になります。

このプロセスを通じて、より複雑で機能的なオブジェクトを効率的に構築できます。

○派生クラスとは何か?

派生クラスとは、既存のクラスから拡張された新しいクラスのことです。

基底クラスのプロパティやメソッドを引き継ぎつつ、新しい特性や機能を加えることができます。

例えば、動物のクラスがあり、その特性(例:呼吸する、移動する)を持っているとします。

派生クラスとして「鳥」を作成する場合、飛ぶという新しいメソッドを追加できる一方で、基底クラスの特性は継承されます。

○派生クラスの作成方法

派生クラスを作成するためには、基底クラスから派生させたいクラスを定義します。

C++では、これは継承の構文を使って行われます。

例えば、AnimalクラスからBirdクラスを派生させる場合、下記のように記述します。

class Animal {
public:
    void breathe();
    void move();
};

class Bird : public Animal {
public:
    void fly();
};

このコードにおいて、BirdクラスはAnimalクラスから派生しています。

publicキーワードはアクセス指定子で、基底クラスのメンバーへのアクセスレベルを指定します。

ここでは、BirdクラスがAnimalクラスの公開メンバーにアクセスできることを意味します。

flyメソッドはBirdクラス固有の機能を示しており、breathemoveメソッドはAnimalクラスから継承されています。

●派生クラスの詳細な使い方

C++における派生クラスの使い方は、基底クラスの機能を拡張し、プログラムの柔軟性を高める重要な手法です。

派生クラスを使用することで、コードの重複を避け、より効率的で読みやすいプログラムを作成できます。

派生クラスでは、基底クラスのメソッドをそのまま使用したり、必要に応じて新しいメソッドを追加したり、既存のメソッドをオーバーライド(再定義)したりすることができます。

○サンプルコード1:基本的な派生クラスの作成

基本的な派生クラスの作成方法を表す簡単な例として、VehicleクラスからCarクラスを派生させるコードを紹介します。

Vehicleクラスにはdriveメソッドが定義されていると仮定し、Carクラスではこのメソッドを継承します。

class Vehicle {
public:
    void drive() {
        // 基本的な運転機能
    }
};

class Car : public Vehicle {
    // Car クラス特有の機能を追加
};

この例では、CarクラスはVehicleクラスからdriveメソッドを継承しており、Carのオブジェクトはdriveメソッドを使用できます。

○サンプルコード2:メソッドのオーバーライド

派生クラスでは、基底クラスのメソッドをオーバーライドして、派生クラス固有の振る舞いを実装することができます。

下記の例では、Carクラスでdriveメソッドをオーバーライドし、特定の機能を追加しています。

class Car : public Vehicle {
public:
    void drive() override {
        // Car 特有の運転機能
    }
};

このコードにより、CarクラスのdriveメソッドはVehicleクラスのものとは異なる動作をするようになります。

○サンプルコード3:コンストラクタとデストラクタの継承

派生クラスでは、基底クラスのコンストラクタやデストラクタも継承されます。

ただし、派生クラスで新しいメンバー変数を追加する場合、それらの初期化には派生クラス自身のコンストラクタを定義する必要があります。

下記のコードは、Carクラスにコンストラクタを追加し、新しいメンバー変数を初期化する方法を表しています。

class Car : public Vehicle {
public:
    Car() {
        // Car クラスの初期化処理
    }
};

このコンストラクタでは、Carクラス独自の初期化処理を行い、基底クラスのコンストラクタも自動的に呼び出されます。

これにより、派生クラスと基底クラスの両方が適切に初期化されることが保証されます。

●派生クラスの応用例

派生クラスを応用する方法として、多重継承や抽象クラスを使用したポリモーフィズムがあります。

これらはC++における高度な概念であり、プログラムの柔軟性と再利用性を大きく向上させることができます。

○サンプルコード4:多重継承の使用

多重継承とは、一つの派生クラスが複数の基底クラスから属性やメソッドを継承することを指します。

このテクニックは、異なる機能を組み合わせた新しいクラスを作成する際に特に有効です。

ここでは、FlyingCarクラスがCarクラスとAircraftクラスの両方から継承する例を紹介します。

class Car {
public:
    void drive() {
        // 運転に関する機能
    }
};

class Aircraft {
public:
    void fly() {
        // 飛行に関する機能
    }
};

class FlyingCar : public Car, public Aircraft {
    // FlyingCar は drive と fly の両方の機能を持つ
};

この例では、FlyingCarクラスはCardriveメソッドとAircraftflyメソッドの両方を使用できます。

○サンプルコード5:抽象クラスとポリモーフィズム

抽象クラスとは、インスタンス化することができないクラスで、一つ以上の純粋仮想関数(実装が定義されていない関数)を含みます。

ポリモーフィズムとは、派生クラスが基底クラスと同じインターフェイスを持ちながら、異なる振る舞いを実現する概念です。

ここでは、抽象クラスShapeとその派生クラスCircleSquareを使用する例を紹介します。

class Shape {
public:
    virtual void draw() = 0; // 純粋仮想関数
};

class Circle : public Shape {
public:
    void draw() override {
        // 円を描画する処理
    }
};

class Square : public Shape {
public:
    void draw() override {
        // 正方形を描画する処理
    }
};

このコードでは、Shapeクラスはdrawメソッドを純粋仮想関数として持っており、その具体的な実装は派生クラスであるCircleSquareに任されています。

これにより、異なる形状を描画するための一貫したインターフェイスが提供されます。

●派生クラスの注意点と対処法

派生クラスを使用する際には、いくつかの注意点があり、それらを理解し対処することが重要です。

特にアクセス権限の問題と多重継承の複雑性は、C++プログラミングにおいてよく検討すべきポイントです。

○アクセス権限の問題

派生クラスは基底クラスのメンバーにアクセスする際、そのアクセス権限に制約を受けます。

C++では、publicprotectedprivateの三種類のアクセス指定子があり、それぞれが異なるアクセスレベルを定義します。

派生クラスでは、基底クラスのprivateメンバーにはアクセスできませんが、protectedおよびpublicメンバーにはアクセス可能です。

これにより、派生クラスで使用できるメンバーが限定されるため、基底クラスを設計する際は、どのメンバーをどのアクセスレベルで公開するかを慎重に検討する必要があります。

○多重継承の複雑性とその管理

多重継承は、一つの派生クラスが複数の基底クラスから継承することを可能にしますが、これによって発生する複雑性も理解しておく必要があります。

多重継承を使用すると、名前の衝突やダイヤモンド問題(同一基底クラスが複数回継承される状況)など、さまざまな問題が生じる可能性があります。

これらの問題を管理するためには、適切なアクセス指定子の使用、仮想継承の活用、明確なインターフェース定義などの対策が効果的です。

たとえば、ダイヤモンド問題を避けるためには、共通の基底クラスを仮想的に継承することで、基底クラスのインスタンスが派生クラス内で重複するのを防ぐことができます。

●派生クラスのカスタマイズ方法

C++における派生クラスのカスタマイズ方法には、主に仮想関数の使用や柔軟な設計があります。

これらは派生クラスの機能を拡張し、より動的かつ再利用可能なコードを作成するために不可欠です。

○仮想関数の使用

仮想関数を使用することは、派生クラスのカスタマイズにおいて最も一般的な方法の一つです。

仮想関数は、基底クラスで宣言され、派生クラスでオーバーライドされることが想定されているメンバー関数です。

これにより、基底クラスのポインタまたは参照を使用して派生クラスのメンバー関数を呼び出す際に、実行時に適切な関数が呼び出されるようになります。

class Base {
public:
    virtual void doSomething() {
        // 基本的な実装
    }
};

class Derived : public Base {
public:
    void doSomething() override {
        // 派生クラス固有の実装
    }
};

この例では、Baseクラスに仮想関数doSomethingが定義されており、Derivedクラスでこの関数がオーバーライドされています。

○派生クラスの柔軟な設計

派生クラスを柔軟に設計することは、再利用性と拡張性を高めるために重要です。

具体的には、クラスの階層を適切に設計し、派生クラスが基底クラスの機能を効率的に活用できるようにすることが求められます。

また、疎結合を意識した設計を行い、各クラスが独立しているようにすることも大切です。

これにより、将来的にクラスの修正や拡張が必要になった場合に、変更が他の部分に影響を与えにくくなります。

柔軟な設計のためには、クラスの責務を明確にし、過度な依存関係を避けることが重要です。

まとめ

この記事では、C++における派生クラスの概念とその使用方法について詳細に解説しました。

基本的な派生クラスの作成から、メソッドのオーバーライド、コンストラクタとデストラクタの継承、多重継承の使用、そして抽象クラスとポリモーフィズムまで、具体的なサンプルコードを用いて幅広くカバーしました。

また、派生クラスの注意点と対処法、カスタマイズ方法についても触れ、読者がC++の派生クラスを効果的に使用するための理解を深めることができる内容となっています。

この記事が、C++プログラミングにおける派生クラスの理解と応用に役立つことを願っています。