C++のthread_localキーワードを徹底解説!8種のサンプルコードで学ぶ驚きの使い方

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はじめに

C++のプログラミングにおいて、スレッドごとに異なる値を持つ変数の扱いは常に重要なテーマです。

この記事では、そんなC++におけるthread_localキーワードに焦点を当て、その基本から応用までを分かりやすく解説していきます。

この記事を読めば、thread_localキーワードの使い方が理解でき、自分のプログラミングスキルをさらに高めることができるようになります。

●thread_localキーワードの基本

C++におけるthread_localキーワードは、マルチスレッドプログラミングにおいて重要な役割を果たします。

これは、特定の変数が各スレッドに固有であることを表すために使用されます。

thread_localを使用すると、各スレッドはその変数の独自のインスタンスを持ち、他のスレッドとは独立しています。

これにより、スレッド間でのデータの競合や不整合を防ぐことが可能になります。

○thread_localキーワードの定義

thread_localキーワードは、変数がスレッドローカルストレージ(TLS)に格納されることを指定するために使用されます。

これは、その変数がプログラムの実行中、各スレッドに対してユニークなインスタンスを持つことを意味します。

例えば、ある関数内でthread_localを使用して変数を宣言すると、その関数が異なるスレッドから呼び出されるたびに、各スレッドはその変数の別のコピーを使用します。

thread_local変数の一般的な宣言方法は下記の通りです。

thread_local int thread_specific_variable = 0;

このコードは、thread_specific_variableという名前の整数型の変数をthread_localとして宣言しています。

これにより、この変数は各スレッドに固有のものとなり、他のスレッドとは独立して値を保持します。

○スレッドローカルストレージとは

スレッドローカルストレージ(TLS)は、各スレッドがアクセスできる専用のストレージ領域です。

通常、変数はプログラムの全スレッド間で共有されますが、TLSに格納された変数は、各スレッドに固有です。

これにより、複数のスレッドが同時に同じデータにアクセスしても、データの競合や不整合が発生しないようになります。

thread_localキーワードを使って宣言された変数は、プログラムがそのスレッドを生成する時に初期化され、スレッドが終了するときに破棄されます。

これにより、スレッドのライフサイクルに沿った安全なデータ管理が可能になります。

●thread_localキーワードの使い方

C++でのthread_localキーワードの使い方は多岐にわたります。

基本的な使い方から、より複雑なシナリオまで、thread_localはマルチスレッド環境での変数の扱いを効率化します。

○サンプルコード1:基本的な使い方

thread_localキーワードの最も基本的な使い方は、関数内やグローバルスコープでのスレッド固有の変数の宣言です。

下記のコードは、スレッドごとに異なる値を持つカウンターを表しています。

#include <iostream>
#include <thread>

void threadFunction() {
    thread_local int counter = 0;
    counter++;
    std::cout << "Counter in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << counter << std::endl;
}

int main() {
    std::thread t1(threadFunction);
    std::thread t2(threadFunction);
    t1.join();
    t2.join();
    return 0;
}

このコードでは、各スレッドは独自のcounter変数を持ち、他のスレッドとは独立しています。

このため、各スレッドからの出力は、そのスレッド内のcounterの値を反映します。

○サンプルコード2:複数スレッドでの利用

複数のスレッドでthread_localを使用する場合、各スレッドは変数の個別のインスタンスを持ちます。

下記の例では、複数のスレッドがそれぞれ独立した変数にアクセスします。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

thread_local int thread_specific_data = 0;

void incrementAndPrint() {
    thread_specific_data++;
    std::cout << "Data in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << thread_specific_data << std::endl;
}

int main() {
    std::vector<std::thread> threads;
    for (int i = 0; i < 5; ++i) {
        threads.push_back(std::thread(incrementAndPrint));
    }
    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }
    return 0;
}

このプログラムでは、各スレッドはthread_specific_dataの独自のインスタンスにアクセスし、その値をインクリメントします。

○サンプルコード3:スレッド間のデータ独立性

thread_localキーワードを使用すると、スレッド間で変数の値が独立します。

下記のコードは、各スレッドが独立した状態を保持することを表しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

thread_local int thread_unique_state = 100;

void modifyState() {
    thread_unique_state += 5;
    std::cout << "State in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << thread_unique_state << std::endl;
}

int main() {
    std::vector<std::thread> threads;
    for (int i = 0; i < 3; ++i) {
        threads.push_back(std::thread(modifyState));
    }
    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }
    return 0;
}

このプログラムでは、各スレッドがthread_unique_stateを独立して変更し、他のスレッドに影響を与えません。

○サンプルコード4:クラスとthread_local

クラス内でもthread_localキーワードを使用することができます。

下記のコードでは、クラス内のスレッド固有の変数を扱っています。

#include <iostream>
#include <thread>

class MyClass {
public:
    thread_local static int thread_specific_value;

    void modifyValue() {
        thread_specific_value += 10;
        std::cout << "Value in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << thread_specific_value << std::endl;
    }
};

thread_local int MyClass::thread_specific_value = 0;

int main() {
    MyClass obj;
    std::thread t1(&MyClass::modifyValue, &obj);
    std::thread t2(&MyClass::modifyValue, &obj);
    t1.join();
    t2.join();
    return 0;
}

この例では、MyClassの各インスタンスがthread_specific_valueを独立して管理し、スレッド間で値が共有されません。

○サンプルコード5:thread_localと静的メンバ

静的メンバ変数としてのthread_localの利用例を紹介します。

#include <iostream>
#include <thread>

class Example {
public:
    thread_local static int thread_specific_counter;

    static void incrementCounter() {
        thread_specific_counter++;
        std::cout << "Counter in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << thread_specific_counter << std::endl;
    }
};

thread_local int Example::thread_specific_counter = 0;

int main() {
    std::thread t1(Example::incrementCounter);
    std::thread t2(Example::incrementCounter);
    t1.join();
    t2.join();
    return 0;
}

このプログラムでは、Exampleクラスの静的メンバ変数thread_specific_counterがthread_localキーワードで宣言されており、各スレッドはこの変数の独立したコピーを持ちます。

これにより、異なるスレッドから同時にアクセスされても、互いに影響しません。

●thread_localの応用例

C++のthread_localキーワードは、その基本的な使い方だけでなく、多様な応用例においても非常に有効です。

パフォーマンス最適化、スレッドセーフなデザインパターンの実装、スレッド固有のログ管理など、様々なシナリオでthread_localが活用されます。

○サンプルコード6:パフォーマンス最適化

thread_localは、パフォーマンスを最適化するためのツールとしても使用できます。

例えば、下記のコードでは、複数のスレッドがそれぞれ独立して重い計算を行い、結果をスレッドローカル変数に格納しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

thread_local double thread_specific_result = 0.0;

void heavyComputation() {
    // 重い計算を行う想定
    thread_specific_result = ...; // 計算結果を格納
    std::cout << "Result in thread " << std::this_thread::get_id() << ": " << thread_specific_result << std::endl;
}

int main() {
    std::vector<std::thread> threads;
    for (int i = 0; i < 4; ++i) {
        threads.push_back(std::thread(heavyComputation));
    }
    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }
    return 0;
}

このコードでは、各スレッドが独立した計算結果を持ち、他のスレッドの計算結果に影響されません。

○サンプルコード7:スレッドセーフなシングルトン実装

thread_localは、スレッドセーフなシングルトンパターンの実装にも役立ちます。

下記のコードでは、各スレッドが独自のシングルトンインスタンスにアクセスする例を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>

class ThreadSafeSingleton {
public:
    static ThreadSafeSingleton& getInstance() {
        thread_local static ThreadSafeSingleton instance;
        return instance;
    }

    void doSomething() {
        // 何らかの操作
    }
};

void threadFunction() {
    ThreadSafeSingleton& singleton = ThreadSafeSingleton::getInstance();
    singleton.doSomething();
}

int main() {
    std::thread t1(threadFunction);
    std::thread t2(threadFunction);
    t1.join();
    t2.join();
    return 0;
}

このコードでは、ThreadSafeSingletonクラスのインスタンスは各スレッドに対して一意であり、スレッドセーフな操作が保証されます。

○サンプルコード8:スレッド固有のログ管理

thread_localは、スレッド固有のログ管理システムの構築にも使用できます。

下記のコードでは、各スレッドが独自のログファイルに書き込む例を表しています。

#include <iostream>
#include <fstream>
#include <thread>
#include <string>

void logMessage(const std::string& message) {
    thread_local std::ofstream logFile("log_" + std::to_string(std::this_thread::get_id()) + ".txt");
    logFile << message << std::endl;
}

void threadFunction() {
    logMessage("Thread started");
    // 何らかの操作
    logMessage("Thread ended");
}

int main() {
    std::thread t1(threadFunction);
    std::thread t2(threadFunction);
    t1.join();
    t2.join();
    return 0;
}

このコードにより、各スレッドは自身の活動を独自のログファイルに記録でき、スレッド間でのログの混在を防ぎます。

これにより、デバッグやシステムの監視が容易になります。

●よくあるエラーと対処法

C++のthread_localキーワードを使用する際には、いくつかの一般的なエラーや問題が発生する可能性があります。

これらのエラーを理解し、適切に対処することで、より安全かつ効率的なコードを書くことができます。

○thread_localの誤用

thread_localキーワードの一般的な誤用として、非スレッド環境での使用が挙げられます。

thread_local変数は、マルチスレッド環境でのみ意味を持ちます。

シングルスレッド環境では、通常の変数と同じように振る舞いますが、不必要なオーバーヘッドを引き起こす可能性があります。

また、thread_local変数の初期化に関する誤解もよく見られます。

thread_local変数は、それが属するスレッドが開始されたときに初期化され、スレッドが終了するときに破棄されます。

この挙動を理解しないと、意図しないバグやリソースのリークを引き起こす可能性があります。

対処法としては、thread_local変数は、マルチスレッド環境でのみ使用し、そのライフサイクルを正確に理解することが重要です。

○スレッド間のデータ共有問題

thread_local変数は、異なるスレッド間でデータを共有するために使用されることはありません。

スレッド間でデータを共有する必要がある場合は、mutexやatomicなどの同期メカニズムを使用する必要があります。

対処法としては、スレッド間のデータ共有が必要な場合は、thread_localキーワードを使用せず、適切な同期メカニズムを利用して、データの整合性と安全性を確保します。

○メモリリークの対処

thread_local変数は、スレッドが終了すると自動的に破棄されますが、それらが指し示す動的に確保されたリソース(例えば、ヒープ上のオブジェクト)は自動的に解放されません。

これにより、メモリリークが発生する可能性があります。

対処法としては、thread_local変数が動的リソースを指している場合は、スレッド終了時に明示的にリソースを解放する必要があります。

スマートポインター(例えば、std::unique_ptrやstd::shared_ptr)を使用することで、リソースの自動的な管理を実現できます。

●エンジニアなら知っておくべき豆知識

C++のthread_localキーワードを使用する上で、エンジニアとして知っておくべきいくつかの重要な豆知識があります。

これらの知識は、thread_localキーワードのより効果的な使用と、プログラムのパフォーマンスや安全性の向上に役立ちます。

○豆知識1:thread_localの内部動作

thread_local変数の内部動作について理解することは、効果的なプログラミングのために不可欠です。

thread_local変数は、それぞれのスレッドに固有のストレージを持ちます。

これは、プログラムの各スレッドが独自の変数インスタンスを持つことを意味し、他のスレッドとのデータ共有は行われません。

この特性は、スレッド間でデータの競合を避けるのに役立ちますが、変数が各スレッドによって個別に管理されることを意識する必要があります。

○豆知識2:thread_localとメモリ管理

thread_local変数は、スレッドのライフサイクルと密接に連携しています。

スレッドが開始されると、thread_local変数は初期化され、スレッドが終了すると破棄されます。

これは、thread_local変数が動的に割り当てられたリソース(例えば、ヒープ上のオブジェクト)を指している場合、特に重要です。

スレッドが終了する際にこれらのリソースが適切に解放されなければ、メモリリークを引き起こす可能性があります。

したがって、thread_local変数を使用する際には、メモリ管理に特に注意を払う必要があります。

例えば、スマートポインタなどを使用してリソースのライフサイクルを管理することが推奨されます。

まとめ

この記事では、C++におけるthread_localキーワードの重要性と多様な使い方を掘り下げてきました。

基本的な使い方から応用例、さらにはよくあるエラーや豆知識まで、幅広い知識を提供することで、初心者から上級者までがthread_localキーワードの深い理解を得ることができたかと思います。

スレッドセーフなプログラミングを実現するための重要なツールであるthread_localの効果的な使用方法を学び、より効率的で安全なコードを書くことが可能になります。