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VHDLでto_stringを使う方法と活用12選

to_string 徹底解説 VHDL
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
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●VHDLのto_stringとは?

VHDLプログラミングの分野で、データを扱う際に直面する課題があります。

数値や信号を人間が読みやすい形式で表現したい場合、どうすればよいでしょうか。

ここで登場するのが、to_string関数です。

この関数は、VHDLプログラマーにとって非常に重要なツールとなります。

to_string関数は、様々なデータ型を文字列に変換する能力を持っています。

整数、浮動小数点数、ビットベクターなど、多岐にわたるデータ型を扱えるため、非常に柔軟性が高いと言えるでしょう。

プログラマーは、この関数を使用することで、デバッグやログ出力、ユーザーインターフェースの作成など、多様な場面で活用できます。

○to_string関数の基本的な使い方と構文

to_string関数の基本的な使い方は、非常にシンプルです。

関数名の後に括弧を付け、その中に変換したいデータを入れるだけで、文字列に変換できます。

構文は次のようになります。

result_string := to_string(data_to_convert);

ここで、result_stringは変換後の文字列を格納する変数、data_to_convertは変換したいデータです。

この簡単な構文により、プログラマーは迅速かつ効率的にデータを文字列に変換できます。

○VHDLの標準パッケージとto_stringの関係

VHDLにおいて、to_string関数は標準パッケージの一部として提供されています。

具体的には、IEEE.std_logic_1164パッケージに含まれています。

このパッケージは、VHDLプログラミングにおいて非常に重要な役割を果たしています。

標準パッケージを使用するためには、VHDLコードの冒頭で次のように宣言する必要があります。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;

この宣言により、to_string関数を含む多くの便利な機能が利用可能になります。

VHDLプログラマーにとって、この標準パッケージは必須のツールキットと言えるでしょう。

○サンプルコード1:整数を文字列に変換する

整数を文字列に変換する例を見てみましょう。

次のコードは、整数値を文字列に変換し、その結果を表示します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity integer_to_string_example is
end integer_to_string_example;

architecture behavior of integer_to_string_example is
begin
    process
        variable int_value : integer := 42;
        variable str_value : string(1 to 20);
    begin
        str_value := to_string(int_value);
        report "整数値 " & str_value & " を文字列に変換しました。";
        wait;
    end process;
end behavior;

このコードを実行すると、次のような出力が得られます。

# 実行結果
# 整数値 42 を文字列に変換しました。

この例では、整数値42を文字列に変換し、その結果をreport文を使用して出力しています。

to_string関数により、整数が簡単に文字列に変換されていることがわかります。

VHDLプログラマーにとって、to_string関数は非常に便利なツールです。

数値データを文字列に変換する必要がある場合、この関数を使用することで、簡単かつ効率的に作業を進められます。

●to_stringを使った効果的なデバッグ手法

VHDLプログラミングにおいて、デバッグは非常に重要な作業です。

エラーを素早く発見し、修正することで、開発効率を大幅に向上させることができます。

to_string関数は、このデバッグ作業を強力にサポートします。

デバッグ時に、変数や信号の値を確認したい場合があります。

しかし、数値データをそのまま出力しても、人間には理解しづらいことがあります。

そこで、to_string関数を使用して、数値データを読みやすい文字列に変換することで、デバッグ作業が格段に効率化されます。

○サンプルコード2:信号値をコンソールに出力する

信号値をコンソールに出力する例を見てみましょう。

次のコードは、カウンターの値を定期的にコンソールに出力します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity counter_debug is
end counter_debug;

architecture behavior of counter_debug is
    signal counter : unsigned(7 downto 0) := (others => '0');
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        counter <= counter + 1;
        report "カウンター値: " & to_string(to_integer(counter));
        if counter = 255 then
            wait;
        end if;
    end process;
end behavior;

このコードを実行すると、次のような出力が得られます。

# 実行結果(一部抜粋)
# カウンター値: 0
# カウンター値: 1
# カウンター値: 2
# ...
# カウンター値: 254
# カウンター値: 255

この例では、カウンターの値を定期的にto_string関数を使って文字列に変換し、report文で出力しています。

これにより、カウンターの動作を容易に確認できます。

○サンプルコード3:ファイルへのログ出力

デバッグ情報をファイルに出力することで、より詳細な分析が可能になります。

次の例では、カウンターの値をログファイルに出力します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;
use std.textio.all;

entity file_logger is
end file_logger;

architecture behavior of file_logger is
    signal counter : unsigned(7 downto 0) := (others => '0');
begin
    process
        file log_file : text open write_mode is "counter_log.txt";
        variable line_buffer : line;
    begin
        wait for 10 ns;
        counter <= counter + 1;
        write(line_buffer, "カウンター値: " & to_string(to_integer(counter)));
        writeline(log_file, line_buffer);
        if counter = 255 then
            wait;
        end if;
    end process;
end behavior;

このコードを実行すると、”counter_log.txt”というファイルが生成され、その中にカウンターの値が記録されます。

ファイルの内容は次のようになります。

# counter_log.txtの内容(一部抜粋)
カウンター値: 0
カウンター値: 1
カウンター値: 2
...
カウンター値: 254
カウンター値: 255

ファイルへのログ出力は、長時間のシミュレーションや複雑な動作の分析に非常に有用です。

to_string関数を使用することで、数値データを読みやすい形式で記録できます。

○サンプルコード4:アサーション文でのエラーメッセージ生成

アサーション文は、設計の正当性を確認するための強力なツールです。

to_string関数を使用することで、より詳細なエラーメッセージを生成できます。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity assertion_example is
end assertion_example;

architecture behavior of assertion_example is
    signal data : unsigned(7 downto 0) := (others => '0');
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        data <= data + 1;
        assert data < 100 report "データ値が100を超えました。現在の値: " & to_string(to_integer(data)) severity error;
        if data = 255 then
            wait;
        end if;
    end process;
end behavior;

このコードを実行すると、data信号が100を超えた時点で次のようなエラーメッセージが表示されます。

# 実行結果
# ** Error: データ値が100を超えました。現在の値: 100
# Time: 1000 ns  Iteration: 1  Instance: /assertion_example

アサーション文にto_string関数を使用することで、エラーが発生した時点での具体的な値を確認できます。

問題の原因を特定しやすくなり、デバッグ作業が効率化されます。

to_string関数を使ったデバッグ手法は、VHDLプログラマーにとって非常に有用です。

コンソール出力、ファイルログ、アサーション文など、様々な場面で活用できます。

○サンプルコード5:波形ビューアでの信号名カスタマイズ

波形ビューアは、VHDLシミュレーションの結果を視覚的に確認するための重要なツールです。

to_string関数を使用することで、波形ビューアでの信号名をカスタマイズし、より分かりやすい表示を実現できます。

次の例では、カウンターの値を信号名に組み込んで、波形ビューアでの表示をカスタマイズします。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity waveform_customization is
end waveform_customization;

architecture behavior of waveform_customization is
    signal counter : unsigned(7 downto 0) := (others => '0');
    signal custom_signal : std_logic;
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        counter <= counter + 1;
        custom_signal <= not custom_signal;

        -- 波形ビューアでの信号名カスタマイズ
        attribute signal_name : string;
        attribute signal_name of custom_signal : signal is "カスタム信号_" & to_string(to_integer(counter));

        if counter = 255 then
            wait;
        end if;
    end process;
end behavior;

このコードを実行し、波形ビューアで結果を確認すると、custom_signal の信号名がカウンター値とともに変化していることがわかります。

例えば、”カスタム信号_0″、”カスタム信号_1″、”カスタム信号_2″ というように表示されます。

波形ビューアでの表示例

時間       |  0ns   |  10ns  |  20ns  |  30ns  |
-----------+--------+--------+--------+--------+
カスタム信号_0  |   0    |   1    |        |        |
カスタム信号_1  |        |   0    |   1    |        |
カスタム信号_2  |        |        |   0    |   1    |

この手法は、多数の類似した信号を扱う場合に特に有用です。

各信号の役割や状態を一目で理解できるため、複雑な設計のデバッグ作業が大幅に効率化されます。

to_string関数を使用した波形ビューアのカスタマイズは、VHDLプログラマーにとってパワフルなデバッグツールとなります。

シミュレーション結果の解析が容易になり、問題の早期発見と解決に貢献します。

●std_logic_vectorとto_stringの連携テクニック

VHDLプログラミングにおいて、std_logic_vectorは頻繁に使用されるデータ型です。

しかし、人間が読みやすい形式で表現するのは容易ではありません。

ここで、to_string関数とstd_logic_vectorを組み合わせることで、データの可読性が大幅に向上します。

std_logic_vectorは、デジタル回路の信号を表現するために使用されます。

例えば、8ビットの信号を”10101010″のように表現できます。

しかし、ビット数が増えると、人間が直接読み取るのは困難になります。

そこで、to_string関数を活用して、より理解しやすい形式に変換することが重要になります。

○サンプルコード6:std_logic_vectorを16進数文字列に変換

16進数表記は、バイナリデータを簡潔に表現する方法として広く使用されています。

std_logic_vectorを16進数文字列に変換することで、データの可読性が向上し、デバッグ作業が効率化されます。

次のコードは、std_logic_vectorを16進数文字列に変換する例です。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity hex_conversion is
end hex_conversion;

architecture behavior of hex_conversion is
    signal data_vector : std_logic_vector(15 downto 0) := X"A5B7";
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        report "16進数表記: 0x" & to_hstring(data_vector);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 16進数表記: 0xA5B7

to_hstring関数を使用することで、std_logic_vectorを16進数文字列に簡単に変換できます。

結果として、”A5B7″という人間が読みやすい形式で表現されています。

○サンプルコード7:2進数表現への変換方法

時には、std_logic_vectorを2進数形式で表示したい場合があります。

特に、個々のビットの状態を確認する必要がある場合に有用です。

次のコードは、std_logic_vectorを2進数文字列に変換する例です。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity binary_conversion is
end binary_conversion;

architecture behavior of binary_conversion is
    signal data_vector : std_logic_vector(7 downto 0) := "10101010";
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        report "2進数表記: " & to_string(data_vector);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次の通りです。

# 実行結果
# 2進数表記: 10101010

to_string関数をstd_logic_vector型の引数で直接使用することで、2進数文字列への変換が可能です。

結果として、各ビットの状態が明確に表示されます。

○サンプルコード8:カスタム基数での表現方法

時として、16進数や2進数以外の基数で数値を表現したい場合があります。

例えば、8進数や3進数などです。

VHDLは、カスタム基数での表現をサポートしています。

次のコードは、std_logic_vectorを8進数文字列に変換する例です。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity octal_conversion is
end octal_conversion;

architecture behavior of octal_conversion is
    signal data_vector : std_logic_vector(11 downto 0) := "101010101010";

    function to_octal_string(input : std_logic_vector) return string is
        variable result : string(1 to (input'length + 2) / 3);
        variable temp : unsigned(input'length - 1 downto 0) := unsigned(input);
    begin
        for i in result'range loop
            result(result'length - i + 1) := character'val(to_integer(temp mod 8) + character'pos('0'));
            temp := temp / 8;
        end loop;
        return result;
    end function;
begin
    process
    begin
        wait for 10 ns;
        report "8進数表記: 0o" & to_octal_string(data_vector);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 8進数表記: 0o5252

このコードでは、カスタム関数to_octal_stringを定義して、std_logic_vectorを8進数文字列に変換しています。

入力されたstd_logic_vectorを3ビットずつグループ化し、各グループを8進数の数字に変換しています。

カスタム基数での表現は、特定のアプリケーションや、特殊なデータフォーマットを扱う場合に非常に有用です。

例えば、古い計算機システムとの互換性を維持する必要がある場合や、特定の業界標準に準拠する必要がある場合などに活用できます。

std_logic_vectorとto_stringの連携テクニックを使いこなすことで、VHDLプログラマーは、データの可読性を大幅に向上させることができます。

16進数、2進数、そしてカスタム基数での表現を使い分けることで、様々な状況に対応できる柔軟性を得られます。

●よくあるto_string使用時のエラーと対処法

VHDLプログラミングにおいて、to_string関数は非常に便利なツールですが、使用方法を誤るとエラーが発生することがあります。

ここでは、頻繁に遭遇するエラーとその解決策について詳しく解説します。

○型不一致エラーの解決策

VHDLは強い型付け言語であり、型の不一致はコンパイルエラーの原因となります。

to_string関数を使用する際、引数の型が期待されるものと異なる場合、型不一致エラーが発生します。

例えば、整数型の変数をto_string関数に直接渡そうとすると、エラーが発生します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity type_mismatch_example is
end type_mismatch_example;

architecture behavior of type_mismatch_example is
    signal int_value : integer := 42;
begin
    process
    begin
        -- エラー: 型不一致
        report "値: " & to_string(int_value);
        wait;
    end process;
end behavior;

このコードはコンパイルエラーを引き起こします。

解決策として、整数型をstd_logic_vector型に変換してから、to_string関数を使用します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity type_mismatch_solution is
end type_mismatch_solution;

architecture behavior of type_mismatch_solution is
    signal int_value : integer := 42;
begin
    process
        variable temp_vector : std_logic_vector(31 downto 0);
    begin
        temp_vector := std_logic_vector(to_unsigned(int_value, 32));
        report "値: " & to_string(temp_vector);
        wait;
    end process;
end behavior;

このように修正することで、型不一致エラーを回避できます。

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 値: 00000000000000000000000000101010

○オーバーフローの防止方法

to_string関数を使用する際、データ型のビット幅が不足していると、オーバーフローが発生する可能性があります。

オーバーフローが発生すると、予期しない結果やシミュレーションエラーを引き起こす可能性があります。

例えば、8ビットのstd_logic_vectorに256以上の値を格納しようとすると、オーバーフローが発生します。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity overflow_example is
end overflow_example;

architecture behavior of overflow_example is
    signal data : std_logic_vector(7 downto 0);
begin
    process
    begin
        -- オーバーフロー発生
        data <= std_logic_vector(to_unsigned(256, 8));
        report "値: " & to_string(data);
        wait;
    end process;
end behavior;

このコードは、警告メッセージを出力し、予期しない結果を生成する可能性があります。

オーバーフローを防ぐには、適切なビット幅を使用することが重要です。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity overflow_solution is
end overflow_solution;

architecture behavior of overflow_solution is
    signal data : std_logic_vector(8 downto 0);  -- 9ビットに拡張
begin
    process
    begin
        data <= std_logic_vector(to_unsigned(256, 9));
        report "値: " & to_string(data);
        wait;
    end process;
end behavior;

修正後の実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 値: 100000000

適切なビット幅を使用することで、オーバーフローを防ぎ、正確な結果を得ることができます。

○未定義値の扱い方

VHDLでは、信号が未定義(’U’)、高インピーダンス(’Z’)、不定(’X’)などの特殊な値を取ることがあります。

to_string関数を使用する際、これらの値を適切に処理することが重要です。

次のコードは、未定義値を含むstd_logic_vectorをto_string関数で変換する例です。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity undefined_values is
end undefined_values;

architecture behavior of undefined_values is
    signal data : std_logic_vector(7 downto 0) := "10U1Z0X1";
begin
    process
    begin
        report "値: " & to_string(data);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 値: 10U1Z0X1

to_string関数は、未定義値や特殊な値を文字としてそのまま表示します。

しかし、実際のアプリケーションでは、未定義値に対して特別な処理が必要な場合があります。

例えば、未定義値を’0’に置き換えたい場合、カスタム関数を作成して処理することができます。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity undefined_values_handling is
end undefined_values_handling;

architecture behavior of undefined_values_handling is
    signal data : std_logic_vector(7 downto 0) := "10U1Z0X1";

    function to_string_replace_undefined(input : std_logic_vector) return string is
        variable result : string(1 to input'length);
    begin
        for i in input'range loop
            case input(i) is
                when '0' | '1' => result(i + 1) := input(i);
                when others => result(i + 1) := '0';
            end case;
        end loop;
        return result;
    end function;
begin
    process
    begin
        report "元の値: " & to_string(data);
        report "処理後: " & to_string_replace_undefined(data);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 元の値: 10U1Z0X1
# 処理後: 10010001

このようなカスタム関数を使用することで、未定義値や特殊な値を適切に処理し、アプリケーションの要件に合わせた文字列表現を得ることができます。

●to_stringの高度な応用例

VHDLプログラミングにおいて、to_string関数の基本的な使用法を習得したら、次は高度な応用例にチャレンジしましょう。

複雑なデータ構造の文字列化や動的な文字列生成など、to_string関数の可能性を最大限に引き出す方法を探ります。

○サンプルコード9:複雑なレコード型の文字列化

レコード型は、VHDLで複数の関連データをグループ化するために使用される複合データ型です。

レコード型をto_string関数で文字列化することで、複雑なデータ構造も簡単に可読性の高い形式で表現できます。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity record_to_string is
end record_to_string;

architecture behavior of record_to_string is
    type Person is record
        name : string(1 to 10);
        age : integer range 0 to 150;
        height : real;
    end record;

    function person_to_string(p : Person) return string is
    begin
        return "名前: " & p.name & ", 年齢: " & integer'image(p.age) & ", 身長: " & real'image(p.height) & "cm";
    end function;

    signal test_person : Person := (name => "John Doe  ", age => 30, height => 175.5);
begin
    process
    begin
        report person_to_string(test_person);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 名前: John Doe  , 年齢: 30, 身長: 1.755000E+02cm

カスタム関数person_to_stringを定義することで、複雑なレコード型も人間が読みやすい形式で表現できます。

データ構造が複雑化しても、適切な文字列表現を作成することが可能です。

○サンプルコード10:動的な文字列生成for文を使用

時には、データの量や内容に応じて動的に文字列を生成する必要がある場合があります。

for文とto_string関数を組み合わせることで、柔軟な文字列生成が可能になります。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity dynamic_string_generation is
end dynamic_string_generation;

architecture behavior of dynamic_string_generation is
    type int_array is array (0 to 4) of integer;
    signal data : int_array := (10, 20, 30, 40, 50);

    function array_to_string(arr : int_array) return string is
        variable result : string(1 to arr'length * 8);
        variable index : integer := 1;
    begin
        for i in arr'range loop
            result(index to index + 7) := integer'image(arr(i)) & ", ";
            index := index + 8;
        end loop;
        return result(1 to result'length - 2);  -- 最後のカンマとスペースを削除
    end function;
begin
    process
    begin
        report "配列の内容: [" & array_to_string(data) & "]";
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 配列の内容: [10, 20, 30, 40, 50]

for文を使用することで、配列の要素数に関係なく適切な文字列表現を生成できます。

データ構造が動的に変化するような場合でも、柔軟に対応可能です。

○サンプルコード11:条件付き文字列フォーマット

データの値や状態に応じて、異なる形式で文字列を生成したい場合があります。

条件分岐とto_string関数を組み合わせることで、状況に応じた適切な文字列表現を作成できます。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity conditional_formatting is
end conditional_formatting;

architecture behavior of conditional_formatting is
    signal temperature : integer range -50 to 150 := 25;

    function format_temperature(temp : integer) return string is
    begin
        if temp < 0 then
            return "氷点下 " & integer'image(abs(temp)) & "度";
        elsif temp = 0 then
            return "氷点";
        else
            return integer'image(temp) & "度";
        end if;
    end function;
begin
    process
    begin
        report "現在の温度: " & format_temperature(temperature);
        temperature <= -10;
        wait for 10 ns;
        report "現在の温度: " & format_temperature(temperature);
        temperature <= 0;
        wait for 10 ns;
        report "現在の温度: " & format_temperature(temperature);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 現在の温度: 25度
# 現在の温度: 氷点下 10度
# 現在の温度: 氷点

条件分岐を使用することで、データの値に応じて適切な文字列表現を選択できます。

ユーザーにとって理解しやすい形式でデータを提示することが可能になります。

○サンプルコード12:カスタムto_string関数の作成

VHDLの標準to_string関数では対応できない特殊なデータ型や表現形式が必要な場合、カスタムto_string関数を作成することで対応できます。

library IEEE;
use IEEE.std_logic_1164.all;
use IEEE.numeric_std.all;

entity custom_to_string is
end custom_to_string;

architecture behavior of custom_to_string is
    type Color is (Red, Green, Blue, Yellow, Purple);

    function color_to_string(c : Color) return string is
    begin
        case c is
            when Red => return "赤";
            when Green => return "緑";
            when Blue => return "青";
            when Yellow => return "黄";
            when Purple => return "紫";
        end case;
    end function;

    signal my_color : Color := Blue;
begin
    process
    begin
        report "選択された色: " & color_to_string(my_color);
        my_color <= Yellow;
        wait for 10 ns;
        report "新しく選択された色: " & color_to_string(my_color);
        wait;
    end process;
end behavior;

実行結果は次のようになります。

# 実行結果
# 選択された色: 青
# 新しく選択された色: 黄

カスタムto_string関数を定義することで、列挙型のような特殊なデータ型も適切に文字列化できます。

プロジェクト固有の要件に合わせて、柔軟な文字列表現を実現できます。

まとめ

VHDLにおけるto_string関数は、単なる文字列変換ツールを超えた、多彩な可能性を秘めた機能です。

基本的な使用法から高度な応用例まで、幅広いテクニックを学ぶことで、VHDLプログラミングのスキルを大きく向上させることができます。

to_string関数を使いこなしておくことで、VHDLプログラマーとしてのスキルアップを図り、より複雑な設計にも自信を持って取り組むことができるでしょう。