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VHDLを使用した2次元メディアンフィルタの実装方法と活用9選

2次元メディアンフィルタ 徹底解説 VHDL
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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●VHDLで2次元メディアンフィルタを極める!7つの秘訣

画像処理の分野で革命を起こす技術、それが2次元メディアンフィルタです。

VHDLを駆使して、この強力なフィルタを実装する方法を探求しましょう。

初心者からベテランまで、全てのエンジニアが新たな知見を得られる、そんな冒険の旅に出かけましょう。

まずは基礎から。2次元メディアンフィルタとは一体何でしょうか?

単純に言えば、画像のノイズを除去するための手法です。

画素値を並べ替え、中央値を選ぶことで、周囲の極端な値の影響を受けにくくなります。

結果として、エッジを保持しながらノイズを効果的に取り除くことができるのです。

VHDLでの実装には多くの利点があります。

ハードウェア記述言語であるVHDLは、FPGAでの並列処理に適しています。

高速な処理が可能となり、リアルタイムの画像処理にも対応できるのです。

○2次元メディアンフィルタの基礎知識

2次元メディアンフィルタの動作原理は、意外にもシンプルです。

画像の各ピクセルに対して、周囲の一定領域(通常3×3や5×5のウィンドウ)内のピクセル値を取得します。

取得した値を大小順に並べ、中央の値(メディアン)を選択します。

選択した値を、処理中のピクセルの新しい値として設定するのです。

この手法が効果的な理由は、外れ値に対する耐性にあります。

例えば、カメラのセンサーノイズによる白点や黒点が画像に現れたとしましょう。

メディアンフィルタを適用すると、周囲のピクセル値の中央値が選ばれるため、このような孤立した外れ値は自然に除去されるのです。

一方で、エッジ(画像内の物体の輪郭線)は保持されやすい特性があります。

エッジ付近では、ウィンドウ内のピクセル値が二つのグループに分かれる傾向があります。

メディアンを選ぶことで、どちらかのグループの値が選択され、結果としてエッジがぼやけにくくなるのです。

○VHDLでの実装手順と注意点

VHDLで2次元メディアンフィルタを実装する際、いくつかステップを踏む必要があります。

まず、入力画像データを読み込むための回路を設計します。

次に、ウィンドウ内のピクセル値を取得するためのバッファを実装します。

さらに、取得した値をソートし、中央値を選択する回路を設計します。

最後に、処理結果を出力する回路を実装します。

実装時の注意点として、タイミング制御が挙げられます。画像データの読み込み、処理、出力のタイミングを正確に制御しないと、データの欠落や不正な処理結果につながる可能性があります。

また、リソース使用量にも注意が必要です。

FPGAの限られたリソースを効率的に使用するため、並列処理の度合いとリソース使用量のバランスを取ることが重要です。

例えば、ソーティング回路の設計において、完全な並列ソートを実装すると高速だが多くのリソースを消費します。

一方、逐次的なソートは遅いがリソース消費が少ないです。適切な手法を選択することが求められます。

○サンプルコード1:基本的な2次元メディアンフィルタの実装

では、実際にVHDLで基本的な2次元メディアンフィルタを実装してみましょう。

ここでは、3×3ウィンドウを使用した2次元メディアンフィルタの基本的な実装例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity median_filter_2d is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end median_filter_2d;

architecture Behavioral of median_filter_2d is
    type window_type is array (0 to 8) of unsigned(7 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            sorted <= (others => (others => '0'));
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 8 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);

            -- バブルソート
            sorted <= window;
            for i in 0 to 7 loop
                for j in 0 to 7-i loop
                    if sorted(j) > sorted(j+1) then
                        sorted(j+1) <= sorted(j);
                        sorted(j) <= sorted(j+1);
                    end if;
                end loop;
            end loop;

            -- メディアン値の出力
            pixel_out <= std_logic_vector(sorted(4));
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、3×3ウィンドウ内の9ピクセルをシフトレジスタで保持し、各クロックサイクルでウィンドウを更新します。

その後、バブルソートでピクセル値をソートし、中央値(5番目の要素)を出力します。

実行結果として、入力画像のノイズが軽減され、エッジが保持された出力画像が得られます。

例えば、入力画像に散在する孤立した白点や黒点が除去され、物体の輪郭線がクリアに保たれた結果が得られるでしょう。

ただし、この基本的な実装には改善の余地があります。

バブルソートは計算量が多く、大きな画像を処理する場合には処理速度が課題となる可能性があります。

また、3×3ウィンドウは小さなノイズの除去には効果的ですが、より大きなノイズには対応できません。

●画像処理への応用と最適化テクニック

2次元メディアンフィルタの実力は、実際の画像処理タスクで発揮されます。

ノイズ除去は言うまでもなく、エッジ検出にも活用できる柔軟性を持っています。

最適化テクニックを駆使すれば、処理速度と画質のバランスを取ることも可能です。

○ノイズ除去とエッジ検出への活用法

ノイズ除去は2次元メディアンフィルタの最も一般的な用途です。

特に、「ソルト&ペッパーノイズ」と呼ばれる白黒の点ノイズの除去に効果を発揮します。

医療画像や天体写真など、高品質な画像が要求される分野で重宝されています。

エッジ検出への活用も興味深い応用例です。

メディアンフィルタを適用した画像と元の画像の差分を取ることで、エッジを強調することができます。

この手法は、物体認識や輪郭抽出などの前処理として有用です。

最適化テクニックとしては、適応型メディアンフィルタが挙げられます。

画像の局所的な特徴に応じてウィンドウサイズを動的に変更することで、ノイズ除去の効果を高めつつ、細部の保持も実現します。

○サンプルコード2:エッジ検出機能を追加した実装

エッジ検出機能を追加した2次元メディアンフィルタの実装例を見てみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity median_filter_edge_detection is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           edge_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end median_filter_edge_detection;

architecture Behavioral of median_filter_edge_detection is
    type window_type is array (0 to 8) of unsigned(7 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;
    signal median_value : unsigned(7 downto 0);
    signal original_value : unsigned(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            sorted <= (others => (others => '0'));
            median_value <= (others => '0');
            original_value <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 8 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);
            original_value <= window(4);  -- 中央の値を保存

            -- バブルソート
            sorted <= window;
            for i in 0 to 7 loop
                for j in 0 to 7-i loop
                    if sorted(j) > sorted(j+1) then
                        sorted(j+1) <= sorted(j);
                        sorted(j) <= sorted(j+1);
                    end if;
                end loop;
            end loop;

            -- メディアン値の計算と出力
            median_value <= sorted(4);
            pixel_out <= std_logic_vector(median_value);

            -- エッジ検出(原画像とメディアンフィルタ後の差分)
            if original_value > median_value then
                edge_out <= std_logic_vector(original_value - median_value);
            else
                edge_out <= std_logic_vector(median_value - original_value);
            end if;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この実装では、メディアンフィルタ処理に加えて、原画像とフィルタ処理後の画像の差分を計算しています。

差分の大きな部分がエッジとして検出されます。

実行結果として、pixel_outからはノイズが除去された画像が、edge_outからはエッジが強調された画像が出力されます。

例えば、入力画像に建物の輪郭が含まれている場合、edge_outではその輪郭線が明確に浮かび上がるでしょう。

○サンプルコード3:並列処理による高速化

処理速度の向上は常に重要な課題です。

並列処理を導入することで、2次元メディアンフィルタの性能を大幅に改善できます。

ここでは、並列処理を用いた最適化の一例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity parallel_median_filter_2d is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end parallel_median_filter_2d;

architecture Behavioral of parallel_median_filter_2d is
    type window_type is array (0 to 8) of unsigned(7 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;

    -- 並列比較用の信号
    type compare_result is array (0 to 35) of STD_LOGIC;
    signal comp_results : compare_result;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            sorted <= (others => (others => '0'));
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 8 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);

            -- 並列比較
            for i in 0 to 7 loop
                for j in i+1 to 8 loop
                    comp_results(i*8 + j - 1) <= '1' when window(i) < window(j) else '0';
                end loop;
            end loop;

            -- 並列比較結果に基づくソート
            for i in 0 to 8 loop
                sorted(i) <= window(i);
                for j in 0 to 8 loop
                    if i /= j then
                        if i < j then
                            if comp_results(i*8 + j - 1) = '0' then
                                sorted(i) <= sorted(i) + 1;
                            end if;
                        else
                            if comp_results(j*8 + i - 1) = '1' then
                                sorted(i) <= sorted(i) + 1;
                            end if;
                        end if;
                    end if;
                end loop;
            end loop;

            -- メディアン値の出力
            pixel_out <= std_logic_vector(window(to_integer(sorted(4))));
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この実装では、全ての要素間の比較を並列に行い、その結果に基づいてソートを行っています。

バブルソートと比較して、処理サイクル数が大幅に削減されています。

実行結果として、前述の実装と同様のノイズ除去効果が得られますが、処理速度が大幅に向上します。

例えば、1080p解像度の画像を処理する場合、従来のバブルソート方式と比較して、数倍から10倍程度の高速化が期待できます。

並列処理による高速化の効果は、特に大規模な画像や高フレームレートの動画処理で顕著に現れます。

医療画像のリアルタイム処理や、高解像度の監視カメラ映像の解析など、即時性が求められる場面で大きな威力を発揮するでしょう。

●MATLABとの連携で効率アップ

VHDLとMATLABを組み合わせると、2次元メディアンフィルタの開発効率が飛躍的に向上します。

MATLABは数値計算や信号処理、画像処理に強みを持つソフトウェアで、アルゴリズムの検証やシミュレーション、結果の可視化に威力を発揮します。

VHDLで実装する前に、MATLABでプロトタイプを作成し、動作を確認することで、開発時間を大幅に短縮できます。

MATLABを活用すると、複雑なアルゴリズムを短時間で実装し、テストすることが可能になります。

画像処理の結果を視覚的に確認できるため、フィルタの効果を即座に評価できます。

また、MATLABの豊富な関数ライブラリを利用することで、高度な数学的操作も簡単に行えます。

○サンプルコード4:MATLABシミュレーションの実装

MATLABで2次元メディアンフィルタをシミュレーションする例を見てみましょう。

% 2次元メディアンフィルタのMATLAB実装

% 入力画像の読み込み
input_image = imread('noisy_image.png');

% グレースケールに変換
if size(input_image, 3) == 3
    gray_image = rgb2gray(input_image);
else
    gray_image = input_image;
end

% パディングを追加
padded_image = padarray(gray_image, [1 1], 'replicate');

% 出力画像の初期化
[rows, cols] = size(gray_image);
filtered_image = zeros(rows, cols, 'uint8');

% 3x3ウィンドウでメディアンフィルタを適用
for i = 1:rows
    for j = 1:cols
        window = padded_image(i:i+2, j:j+2);
        filtered_image(i, j) = median(window(:));
    end
end

% 結果の表示
figure;
subplot(1,2,1); imshow(gray_image); title('元の画像');
subplot(1,2,2); imshow(filtered_image); title('フィルタ適用後');

MATLABコードは、画像を読み込み、グレースケールに変換し、3×3のウィンドウで2次元メディアンフィルタを適用します。

最後に、元の画像とフィルタ適用後の画像を並べて表示します。

実行結果として、ノイズが軽減された画像が得られます。

例えば、元の画像に散在していた白黒のノイズ点が除去され、輪郭線がはっきりとした画像が表示されるでしょう。

MATLABの豊富な画像処理ツールを使用すれば、フィルタの効果を様々な角度から分析できます。

○サンプルコード5:結果の可視化と性能評価

MATLABを使用して、フィルタの性能を評価し、結果を可視化する例を見てみましょう。

% 2次元メディアンフィルタの性能評価と可視化

% ノイズ付き画像の生成
original_image = imread('clean_image.png');
noisy_image = imnoise(original_image, 'salt & pepper', 0.05);

% メディアンフィルタの適用
filtered_image = medfilt2(noisy_image);

% SNR(信号対雑音比)の計算
snr_noisy = snr(double(original_image), double(noisy_image - original_image));
snr_filtered = snr(double(original_image), double(filtered_image - original_image));

% 結果の可視化
figure;
subplot(2,2,1); imshow(original_image); title('元の画像');
subplot(2,2,2); imshow(noisy_image); title('ノイズ付き画像');
subplot(2,2,3); imshow(filtered_image); title('フィルタ適用後');
subplot(2,2,4); 
bar([snr_noisy, snr_filtered]);
set(gca, 'XTickLabel', {'ノイズ付き', 'フィルタ後'});
ylabel('SNR (dB)');
title('SNRの比較');

% MSE(平均二乗誤差)の計算と表示
mse_noisy = immse(original_image, noisy_image);
mse_filtered = immse(original_image, filtered_image);
fprintf('ノイズ付き画像のMSE: %.2f\n', mse_noisy);
fprintf('フィルタ適用後のMSE: %.2f\n', mse_filtered);

MATLABコードは、元の画像にノイズを追加し、メディアンフィルタを適用した後、SNR(信号対雑音比)とMSE(平均二乗誤差)を計算します。

結果は、グラフと数値で表示されます。

実行結果として、4つのグラフが表示されます。

元の画像、ノイズ付き画像、フィルタ適用後の画像、そしてSNRの比較グラフです。

コンソールにはMSEの値が表示されます。

一般的に、フィルタ適用後はSNRが向上し、MSEが減少します。

例えば、SNRが10dBから15dBに上昇し、MSEが100から50に減少するような結果が得られるかもしれません。

MATLABとVHDLの連携により、アルゴリズムの迅速な検証と最適化が可能になります。

MATLABで得られた知見をVHDL実装に反映させることで、高性能な2次元メディアンフィルタを効率的に開発できます。

●FPGAデザインにおける5つの重要ポイント

FPGAを用いて2次元メディアンフィルタを実装する際、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。

クロック信号の最適化、リソース使用効率の向上、そして効果的なテストとデバッグ手法は、高性能なフィルタを設計する上で欠かせない要素です。

○クロック信号の最適化テクニック

クロック信号の最適化は、FPGAデザインの心臓部です。

適切なクロック設計により、回路の動作速度と安定性が大幅に向上します。

ここでは、クロック最適化のテクニックをいくつか紹介します。

第一に、グローバルクロックリソースの活用が挙げられます。

FPGAには専用のグローバルクロック配線があり、スキューを最小限に抑えつつ、広範囲にクロックを配布できます。

2次元メディアンフィルタのような大規模な回路では、グローバルクロックの使用が不可欠です。

次に、クロックドメインの分離があります。

フィルタの異なる部分(例:入力バッファ、処理ユニット、出力バッファ)を別々のクロックドメインで動作させることで、各部分を最適な周波数で動作させることができます。

ただし、クロックドメイン間の同期には十分な注意が必要です。

さらに、位相同期ループ(PLL)の活用も重要です。

PLLを使用することで、入力クロックから異なる周波数や位相のクロックを生成できます。

例えば、外部からの低速クロックを内部で高速化し、フィルタの処理速度を上げることが可能です。

○リソース使用効率を上げる方法

FPGAのリソースを効率的に使用することは、高性能な2次元メディアンフィルタを実現する鍵となります。

ここでは、リソース効率を上げるためのテクニックをいくつか紹介します。

まず、並列処理の適切な利用が重要です。

2次元メディアンフィルタは並列性が高いアルゴリズムですが、過度な並列化はリソースの無駄遣いにつながります。

画像サイズとFPGAのリソース量を考慮し、最適な並列度を選択しましょう。

次に、DSPブロックの活用があります。

多くのFPGAにはDSP(デジタル信号処理)ブロックが搭載されており、高速な演算に適しています。

比較や加算などの演算をDSPブロックで実装することで、一般的なロジックセルを節約できます。

メモリの効率的な使用も重要です。

2次元メディアンフィルタでは、画像データの一時保存にメモリを使用します。

ブロックRAMを適切に利用し、必要最小限のメモリ容量で実装することが求められます。

例えば、ラインバッファを使用して画像の一部のみをメモリに保持する方法があります。

最後に、リソースシェアリングの検討があります。

同じ機能を持つ回路ブロックが複数ある場合、それらを時分割で共有することでリソース使用量を削減できます。

ただし、処理速度とのトレードオフに注意が必要です。

○効果的なテストとデバッグ手法

FPGAでの2次元メディアンフィルタの実装において、効果的なテストとデバッグは非常に重要です。

ここでは、テストとデバッグのための手法をいくつか紹介します。

シミュレーションの活用が第一のステップです。

VHDLのテストベンチを作成し、様々な入力パターンでの動作を確認します。

小さな画像サイズから始め、徐々に大きな画像でテストすることで、バグの早期発見が可能になります。

次に、インサーキットデバッガーの使用があります。

多くのFPGAツールチェーンには、実機上で動作中の回路の内部状態を観察できる機能が備わっています。

クリティカルな信号をデバッグポートに接続し、リアルタイムで動作を確認しましょう。

ハードウェア・ソフトウェア協調検証も効果的です。

FPGAボード上で動作するプロセッサと連携し、ソフトウェアから2次元メディアンフィルタの動作を制御・モニタリングすることで、より柔軟なデバッグが可能になります。

最後に、段階的な実装とテストが挙げられます。

フィルタの全機能を一度に実装せず、基本機能から始めて徐々に機能を追加していくアプローチです。

各段階でテストを行うことで、バグの特定と修正が容易になります。

効果的なテストとデバッグにより、安定して動作する高品質な2次元メディアンフィルタを実現できます。

時間をかけてでも、綿密なテストを行うことが、最終的な成功への近道となります。

●よくあるエラーと対処法

VHDLで2次元メディアンフィルタを実装する際、様々なエラーに遭遇する可能性があります。

ここでは、頻繁に発生する問題とその解決策について詳しく解説します。

エラーを理解し、適切に対処することで、より効率的な開発が可能になります。

○タイミング違反の解決策

タイミング違反は、FPGAデザインにおいて最も一般的な問題の一つです。

信号が指定された時間内に目的地に到達しない場合に発生します。

2次元メディアンフィルタのような複雑な回路では、特に注意が必要です。

解決策として、まずクリティカルパスの特定が重要です。

タイミング解析ツールを使用して、最も遅延の大きな経路を見つけ出します。

例えば、ソート回路が原因でタイミング違反が発生している場合、並列化やパイプライン化を検討します。

また、レジスタの挿入も効果的です。

長い組み合わせ論理パスを複数のステージに分割し、各ステージ間にレジスタを挿入することで、クロック周波数を上げることができます。

ただし、レイテンシが増加するトレードオフに注意が必要です。

最後に、クロック領域の最適化も重要です。

クロックスキューを最小限に抑えるために、適切なクロックツリー合成設定を行います。

必要に応じて、マルチクロックドメイン設計を検討し、異なる部分を異なる周波数で動作させることも有効です。

○メモリ使用量の最適化

2次元メディアンフィルタでは、画像データの一時保存にメモリを使用します。

FPGAのリソースを効率的に利用するため、メモリ使用量の最適化が重要です。

まず、必要最小限のメモリ容量で実装することが求められます。

例えば、全画像データをメモリに保持する代わりに、ラインバッファを使用して画像の一部のみを保持する方法があります。

3×3のウィンドウサイズの場合、画像の3行分だけをメモリに保持すれば十分です。

また、メモリアクセスパターンの最適化も効果的です。

連続したメモリアクセスは、ランダムアクセスよりも効率的です。

可能な限り、メモリアクセスを連続化するようにアルゴリズムを設計します。

さらに、データ圧縮技術の使用も検討できます。

画像データを圧縮して保存し、処理時に展開する方法です。

ただし、圧縮・展開のオーバーヘッドとのバランスを取る必要があります。

○シミュレーションと実機の動作の不一致

シミュレーションで正常に動作していたにもかかわらず、実機で期待通りの結果が得られないことがあります。

原因としては、タイミングの問題、メモリの初期化、非同期信号の扱いなどが考えられます。

解決策として、まず詳細なシミュレーションが重要です。

可能な限り実機に近い条件でシミュレーションを行います。

タイミングシミュレーションを実施し、実際のタイミング情報を考慮したシミュレーションを行うことで、多くの問題を事前に発見できます。

また、インサーキットデバッガーの活用も効果的です。

FPGAの内部信号をリアルタイムで観察することで、問題の原因を特定しやすくなります。

重要な信号にプローブを設定し、動作を詳細に分析します。

最後に、段階的な実装とテストが重要です。

全機能を一度に実装するのではなく、基本機能から始めて徐々に機能を追加していくアププローチを取ります。

各段階でシミュレーションと実機テストを繰り返すことで、問題の早期発見と修正が容易になります。

●2次元メディアンフィルタの高度な応用例

2次元メディアンフィルタの基本的な実装を理解した後は、より高度な応用例にチャレンジしてみましょう。

ここでは、適応型フィルタ、大型フィルタ、複合フィルタ、そしてリアルタイム処理のための最適化技法を紹介します。

○サンプルコード6:適応型メディアンフィルタの実装

適応型メディアンフィルタは、ノイズの特性に応じてフィルタの振る舞いを動的に変更します。

局所的なノイズレベルに基づいてウィンドウサイズを調整することで、ノイズ除去性能と細部保持のバランスを取ります。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity adaptive_median_filter is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end adaptive_median_filter;

architecture Behavioral of adaptive_median_filter is
    type window_type is array (0 to 24) of unsigned(7 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;
    signal window_size : integer range 3 to 5 := 3;

    function median(w : window_type; size : integer) return unsigned is
        variable temp : window_type;
    begin
        temp := w;
        for i in 0 to size*size-2 loop
            for j in 0 to size*size-2-i loop
                if temp(j) > temp(j+1) then
                    temp(j+1) := temp(j);
                    temp(j) := temp(j+1);
                end if;
            end loop;
        end loop;
        return temp((size*size-1)/2);
    end function;

begin
    process(clk, reset)
        variable center, med, min, max : unsigned(7 downto 0);
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            window_size <= 3;
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 24 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);

            -- 適応型フィルタリング
            center := window(12);
            med := median(window, window_size);
            min := window(0);
            max := window(0);
            for i in 1 to 24 loop
                if window(i) < min then min := window(i); end if;
                if window(i) > max then max := window(i); end if;
            end loop;

            if (med > min and med < max) then
                if (center > min and center < max) then
                    pixel_out <= std_logic_vector(center);
                else
                    pixel_out <= std_logic_vector(med);
                end if;
            else
                if window_size < 5 then
                    window_size <= window_size + 2;
                else
                    pixel_out <= std_logic_vector(med);
                end if;
            end if;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、ウィンドウサイズを3×3から5×5まで動的に変更します。

ノイズレベルが高い場合、ウィンドウサイズを大きくしてより強力なフィルタリングを行います。

一方、ノイズが少ない領域では小さなウィンドウサイズを維持し、画像の細部を保持します。

実行結果として、ノイズの多い領域ではより強力なノイズ除去効果が得られ、一方で画像の細部が重要な領域では元の画像の特徴がよく保たれます。

例えば、空の領域ではノイズが大幅に減少し、建物の輪郭線などの細部は鮮明に保たれるでしょう。

○サンプルコード7:3×3から5×5フィルタへの拡張

フィルタサイズを大きくすると、より強力なノイズ除去効果が得られますが、同時に計算量も増加します。

ここでは、3×3フィルタを5×5に拡張する例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity median_filter_5x5 is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end median_filter_5x5;

architecture Behavioral of median_filter_5x5 is
    type window_type is array (0 to 24) of unsigned(7 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            sorted <= (others => (others => '0'));
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 24 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);

            -- バブルソート
            sorted <= window;
            for i in 0 to 23 loop
                for j in 0 to 23-i loop
                    if sorted(j) > sorted(j+1) then
                        sorted(j+1) <= sorted(j);
                        sorted(j) <= sorted(j+1);
                    end if;
                end loop;
            end loop;

            -- メディアン値の出力
            pixel_out <= std_logic_vector(sorted(12));
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この5×5フィルタは、より広い範囲のピクセルを考慮するため、3×3フィルタよりも強力なノイズ除去効果を発揮します。

特に、大きなノイズや広範囲に広がるノイズの除去に効果的です。

実行結果として、3×3フィルタと比較してより滑らかな画像が得られます。

例えば、粒状のノイズが多く含まれる画像では、5×5フィルタを使用することでノイズがより効果的に除去され、なめらかな画質が得られるでしょう。

ただし、細かいテクスチャも失われる可能性があるため、用途に応じて適切なフィルタサイズを選択することが重要です。

○サンプルコード8:複数のフィルタを組み合わせた高度な画像処理

複数のフィルタを組み合わせることで、より高度な画像処理が可能になります。

ここでは、メディアンフィルタとエッジ検出フィルタを組み合わせた例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity advanced_image_processing is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           edge_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end advanced_image_processing;

architecture Behavioral of advanced_image_processing is
    type window_type is array (0 to 8) of signed(8 downto 0);
    signal window : window_type;
    signal sorted : window_type;

    -- Sobel オペレータ
    type sobel_operator is array (0 to 8) of integer;
    constant sobel_x : sobel_operator := (-1, 0, 1, -2, 0, 2, -1, 0, 1);
    constant sobel_y : sobel_operator := (-1, -2, -1, 0, 0, 0, 1, 2, 1);

begin
    process(clk, reset)
        variable gx, gy : integer;
        variable edge_strength : unsigned(7 downto 0);
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            sorted <= (others => (others => '0'));
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 8 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= signed('0' & unsigned(pixel_in));

            -- メディアンフィルタ
            sorted <= window;
            for i in 0 to 7 loop
                for j in 0 to 7-i loop
                    if sorted(j) > sorted(j+1) then
                        sorted(j+1) <= sorted(j);
                        sorted(j) <= sorted(j+1);
                    end if;
                end loop;
            end loop;
            pixel_out <= std_logic_vector(sorted(4)(7 downto 0));

            -- エッジ検出 (Sobel フィルタ)
            gx := 0;
            gy := 0;
            for i in 0 to 8 loop
                gx := gx + to_integer(window(i)) * sobel_x(i);
                gy := gy + to_integer(window(i)) * sobel_y(i);
            end loop;

            edge_strength := to_unsigned(abs(gx) + abs(gy), 8);
            edge_out <= std_logic_vector(edge_strength);
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、メディアンフィルタでノイズを除去しつつ、Sobelフィルタを用いてエッジ検出を行っています。

メディアンフィルタがノイズを除去し、Sobelフィルタが画像の輪郭を強調する役割を果たします。

実行結果として、ノイズが軽減された滑らかな画像と、同時に画像内の輪郭線が強調された出力が得られます。

例えば、建物や物体の輪郭がくっきりと浮かび上がり、かつノイズの少ないクリアな画像が生成されるでしょう。

この組み合わせは、物体認識や画像セグメンテーションなどの前処理として非常に有効です。

○サンプルコード9:リアルタイム処理のための最適化技法

リアルタイム処理を実現するには、処理速度の最適化が不可欠です。

ここでは、パイプライン処理を導入した高速な2次元メディアンフィルタの実装例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity pipelined_median_filter is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           pixel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           pixel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end pipelined_median_filter;

architecture Behavioral of pipelined_median_filter is
    type window_type is array (0 to 8) of unsigned(7 downto 0);
    type pipeline_stage is array (0 to 3) of window_type;

    signal window : window_type;
    signal pipeline : pipeline_stage;

begin
    process(clk, reset)
        variable temp : unsigned(7 downto 0);
    begin
        if reset = '1' then
            window <= (others => (others => '0'));
            pipeline <= (others => (others => (others => '0')));
        elsif rising_edge(clk) then
            -- シフトレジスタの更新
            for i in 8 downto 1 loop
                window(i) <= window(i-1);
            end loop;
            window(0) <= unsigned(pixel_in);

            -- パイプラインステージ1: 3つずつ比較
            for i in 0 to 2 loop
                if window(3*i) > window(3*i+1) then
                    pipeline(0)(3*i) <= window(3*i+1);
                    pipeline(0)(3*i+1) <= window(3*i);
                else
                    pipeline(0)(3*i) <= window(3*i);
                    pipeline(0)(3*i+1) <= window(3*i+1);
                end if;
                if window(3*i+1) > window(3*i+2) then
                    temp := pipeline(0)(3*i+1);
                    pipeline(0)(3*i+1) <= window(3*i+2);
                    pipeline(0)(3*i+2) <= temp;
                else
                    pipeline(0)(3*i+2) <= window(3*i+2);
                end if;
                if pipeline(0)(3*i) > pipeline(0)(3*i+1) then
                    temp := pipeline(0)(3*i);
                    pipeline(0)(3*i) <= pipeline(0)(3*i+1);
                    pipeline(0)(3*i+1) <= temp;
                end if;
            end loop;

            -- パイプラインステージ2-4: さらに比較を重ねる
            for stage in 1 to 3 loop
                for i in 0 to 7 loop
                    if pipeline(stage-1)(i) > pipeline(stage-1)(i+1) then
                        pipeline(stage)(i) <= pipeline(stage-1)(i+1);
                        pipeline(stage)(i+1) <= pipeline(stage-1)(i);
                    else
                        pipeline(stage)(i) <= pipeline(stage-1)(i);
                        pipeline(stage)(i+1) <= pipeline(stage-1)(i+1);
                    end if;
                end loop;
                pipeline(stage)(8) <= pipeline(stage-1)(8);
            end loop;

            -- 中央値を出力
            pixel_out <= std_logic_vector(pipeline(3)(4));
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このパイプライン実装では、ソート処理を複数のステージに分割しています。

各ステージで並列に比較を行うことで、処理速度を大幅に向上させています。

実行結果として、非パイプライン版と比較して、同じクロック周波数でより高速な処理が可能になります。

例えば、1080p解像度の動画をリアルタイムで処理する場合、従来の実装では困難だった60fpsの処理が可能になるかもしれません。

パイプライン処理の導入により、レイテンシ(入力から出力までの遅延)は増加しますが、スループット(単位時間あたりの処理量)が大幅に向上します。

動画処理や連続した画像処理など、高速な処理が求められる場面で特に効果を発揮します。

まとめ

VHDLを使用した2次元メディアンフィルタの実装について、基礎から応用まで幅広く解説しました。

初歩的な実装から始まり、エッジ検出との組み合わせ、適応型フィルタ、大型フィルタへの拡張、そしてリアルタイム処理のための最適化まで、段階的に理解を深めていくことができたかと思います。

2次元メディアンフィルタは、画像処理の基礎技術として非常に重要です。

本記事で学んだ知識とテクニックを活用し、さらに研究や実験を重ねることで、より高度な画像処理システムの開発に挑戦してみてください。