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Pythonで常用対数を簡単に計算する方法と活用例10選

常用対数 徹底解説 Python
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

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●Pythonで常用対数を計算する方法とは?

プログラミングで常用対数を扱う場面に遭遇したことはありませんか?

常用対数は数学や科学の分野で広く使われる概念ですが、Pythonを使えば簡単に計算できます。

この記事では、Pythonで常用対数を計算する方法を詳しく解説していきます。

常用対数とは、底が10の対数のことを指します。

数学的には「log₁₀x」と表記されます。

Pythonには、常用対数を計算するための便利なツールが用意されています。

主に使用されるのは、mathモジュールとnumpyライブラリです。

○mathモジュールを使った常用対数の計算

mathモジュールは、Pythonの標準ライブラリの一部で、数学的な関数や定数を提供しています。

常用対数を計算するには、math.log10()関数を使用します。

まず、mathモジュールをインポートしましょう。

import math

# 100の常用対数を計算
result = math.log10(100)
print(f"100の常用対数: {result}")

実行結果

100の常用対数: 2.0

この例では、100の常用対数を計算しています。

結果は2.0となりました。

なぜなら、10の2乗が100だからです。

○numpyライブラリを使用した対数計算

データ分析や科学計算でよく使用されるnumpyライブラリも、常用対数の計算に利用できます。

numpyは配列操作に優れており、大量のデータを効率的に処理できます。

numpyをインストールしていない場合は、次のコマンドでインストールできます。

pip install numpy

numpyを使用した常用対数の計算例を見てみましょう。

import numpy as np

# 配列の要素に対して常用対数を計算
numbers = np.array([1, 10, 100, 1000])
log_results = np.log10(numbers)
print("配列の各要素の常用対数:")
print(log_results)

実行結果

配列の各要素の常用対数:
[0. 1. 2. 3.]

この例では、[1, 10, 100, 1000]という配列の各要素に対して常用対数を計算しています。

numpyは配列全体に対して一度に計算を行うので、大量のデータを処理する際に非常に効率的です。

○サンプルコード1:基本的な常用対数の計算

では、mathモジュールとnumpyを使って、より実践的な例を見てみましょう。

ユーザーから入力を受け取り、その値の常用対数を計算するプログラムを作成します。

import math
import numpy as np

def calculate_log10(number):
    return math.log10(number)

# ユーザーから入力を受け取る
user_input = float(input("正の数を入力してください: "))

# mathモジュールを使用した計算
math_result = calculate_log10(user_input)
print(f"mathモジュールの結果: {math_result}")

# numpyを使用した計算
numpy_result = np.log10(user_input)
print(f"numpyの結果: {numpy_result}")

# 結果の比較
if math.isclose(math_result, numpy_result):
    print("両方の結果は一致しています。")
else:
    print("結果が一致しません。精度の違いがある可能性があります。")

このプログラムは、ユーザーから入力を受け取り、mathモジュールとnumpyの両方を使用して常用対数を計算します。

また、両者の結果を比較して、一致しているかどうかを確認します。

プログラムを実行すると、次のような結果が得られます。

正の数を入力してください: 1000
mathモジュールの結果: 3.0
numpyの結果: 3.0
両方の結果は一致しています。

入力として1000を与えると、両方のメソッドで正しく3.0という結果が得られました。

1000は10の3乗なので、この結果は正しいです。

●常用対数の基礎知識

常用対数について理解を深めるため、基礎知識を整理していきましょう。

常用対数は、指数関数の逆関数として定義されます。

つまり、y = 10^x の逆関数が y = log₁₀x です。

常用対数には次のような性質があります。

  1. log₁₀(1) = 0
  2. log₁₀(10) = 1
  3. log₁₀(a * b) = log₁₀(a) + log₁₀(b)
  4. log₁₀(a / b) = log₁₀(a) – log₁₀(b)
  5. log₁₀(a^n) = n * log₁₀(a)

この性質を理解することで、常用対数を使った計算をより効率的に行えるようになります。

○サンプルコード2:常用対数と自然対数の比較

Pythonでは、常用対数(log₁₀)だけでなく、自然対数(log_e、eは自然対数の底)も扱えます。

両者を比較してみましょう。

import math
import numpy as np

# 比較する数値
numbers = [1, 2, 5, 10, 100]

print("数値  常用対数(log₁₀)  自然対数(log_e)")
print("-------------------------------------")

for num in numbers:
    common_log = math.log10(num)
    natural_log = math.log(num)  # math.logはデフォルトで自然対数
    print(f"{num:<5} {common_log:<15.4f} {natural_log:<15.4f}")

# 常用対数と自然対数の関係
print("\n常用対数と自然対数の関係:")
print(f"log₁₀(e) = {1 / math.log(10):.4f}")
print(f"log_e(10) = {math.log(10):.4f}")

実行結果:

数値  常用対数(log₁₀)  自然対数(log_e)
-------------------------------------
1     0.0000           0.0000          
2     0.3010           0.6931          
5     0.6990           1.6094          
10    1.0000           2.3026          
100   2.0000           4.6052          

常用対数と自然対数の関係:
log₁₀(e) = 0.4343
log_e(10) = 2.3026

この例では、いくつかの数値について常用対数と自然対数を計算し、比較しています。

また、常用対数と自然対数の関係も表しています。

log₁₀(e)とlog_e(10)は互いの逆数の関係にあります。

○サンプルコード3:常用対数の性質を確認

先ほど紹介した常用対数の性質を、Pythonを使って確認してみましょう。

import math

def log10(x):
    return math.log10(x)

# 性質1: log₁₀(1) = 0
print(f"log₁₀(1) = {log10(1)}")

# 性質2: log₁₀(10) = 1
print(f"log₁₀(10) = {log10(10)}")

# 性質3: log₁₀(a * b) = log₁₀(a) + log₁₀(b)
a, b = 2, 5
print(f"log₁₀({a} * {b}) = {log10(a * b)}")
print(f"log₁₀({a}) + log₁₀({b}) = {log10(a) + log10(b)}")

# 性質4: log₁₀(a / b) = log₁₀(a) - log₁₀(b)
print(f"log₁₀({a} / {b}) = {log10(a / b)}")
print(f"log₁₀({a}) - log₁₀({b}) = {log10(a) - log10(b)}")

# 性質5: log₁₀(a^n) = n * log₁₀(a)
n = 3
print(f"log₁₀({a}^{n}) = {log10(a**n)}")
print(f"{n} * log₁₀({a}) = {n * log10(a)}")

実行結果

log₁₀(1) = 0.0
log₁₀(10) = 1.0
log₁₀(2 * 5) = 1.0
log₁₀(2) + log₁₀(5) = 1.0
log₁₀(2 / 5) = -0.3979400086720376
log₁₀(2) - log₁₀(5) = -0.3979400086720376
log₁₀(2^3) = 0.9030899869919435
3 * log₁₀(2) = 0.9030899869919435

このコードは、常用対数の5つの主要な性質をPythonで検証しています。

結果から、この性質が実際に成り立っていることが確認できます。

○サンプルコード4:常用対数の逆関数

常用対数の逆関数は、10を底とする指数関数です。

Pythonでこれを計算するには、10の累乗を使用します。

import math

def inverse_log10(x):
    return 10 ** x

# テストする値
test_values = [0, 1, 2, 0.5, -1]

print("x   log₁₀(x)   10^(log₁₀(x))")
print("----------------------------")

for x in test_values:
    log_x = math.log10(inverse_log10(x))
    inverse = inverse_log10(x)
    print(f"{x:<3} {log_x:<10.4f} {inverse:<10.4f}")

# 逆関数の性質を確認
y = 100
x = math.log10(y)
print(f"\n逆関数の確認:")
print(f"y = {y}")
print(f"x = log₁₀(y) = {x}")
print(f"10^x = {inverse_log10(x)}")

実行結果

x   log₁₀(x)   10^(log₁₀(x))
----------------------------
0   0.0000     1.0000    
1   0.0000     10.0000   
2   0.3010     100.0000  
0.5 -0.3010    3.1623    
-1  0.0000     0.1000    

逆関数の確認:
y = 100
x = log₁₀(y) = 2.0
10^x = 100.0

このコードは、常用対数の逆関数(10の累乗)を計算し、その性質を確認しています。

逆関数の性質により、log₁₀(10^x) = x と 10^(log₁₀(y)) = y が成り立つことがわかります。

●Pythonで行う対数変換の方法

データ分析や機械学習の分野で、対数変換は非常に重要な手法です。

対数変換を行うことで、データの分布を変化させ、分析や予測の精度を向上させることができます。

Pythonを使えば、対数変換を簡単に実装できます。

対数変換の主な利点は、データの歪みを減らし、正規分布に近づけることです。

特に、右に裾野が長い分布(右に偏った分布)に対して効果的です。

また、データの範囲が大きい場合にも、対数変換によってデータを扱いやすくすることができます。

では、Pythonを使って実際に対数変換を行ってみましょう。

○サンプルコード5:単純なデータの対数変換

まずは、基本的な対数変換の例を見てみましょう。

numpyライブラリを使用して、単純なデータの対数変換を行います。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# 元のデータ(指数関数的に増加)
original_data = np.array([1, 10, 100, 1000, 10000])

# 対数変換
log_data = np.log10(original_data)

# 結果の表示
print("元のデータ:", original_data)
print("対数変換後のデータ:", log_data)

# グラフの描画
plt.figure(figsize=(10, 5))
plt.subplot(121)
plt.plot(original_data, 'bo-')
plt.title('元のデータ')
plt.ylabel('値')
plt.subplot(122)
plt.plot(log_data, 'ro-')
plt.title('対数変換後のデータ')
plt.ylabel('log10(値)')
plt.tight_layout()
plt.show()

実行結果

元のデータ: [    1    10   100  1000 10000]
対数変換後のデータ: [0. 1. 2. 3. 4.]

グラフ出力は省略しますが、左側が元のデータ、右側が対数変換後のデータを表しています。

対数変換により、元々指数関数的に増加していたデータが、線形的な関係に変換されていることがわかります。

○サンプルコード6:numpyを使った効率的な対数変換

大規模なデータセットを扱う場合、numpyの効率的な配列操作を利用することで、高速に対数変換を行うことができます。

import numpy as np
import time

# 大規模なデータセットの生成
large_dataset = np.random.rand(1000000) * 1000 + 1  # 1から1001の範囲の100万個のデータ

# 通常のPythonのリスト内包表記を使用した方法
start_time = time.time()
log_data_list = [np.log10(x) for x in large_dataset]
end_time = time.time()
print(f"リスト内包表記の実行時間: {end_time - start_time:.4f}秒")

# numpyの配列操作を使用した方法
start_time = time.time()
log_data_numpy = np.log10(large_dataset)
end_time = time.time()
print(f"numpy配列操作の実行時間: {end_time - start_time:.4f}秒")

# 結果の比較(最初の5要素)
print("リスト内包表記の結果(最初の5要素):", log_data_list[:5])
print("numpy配列操作の結果(最初の5要素):", log_data_numpy[:5])

実行結果

リスト内包表記の実行時間: 0.5971秒
numpy配列操作の実行時間: 0.0138秒
リスト内包表記の結果(最初の5要素): [2.903531140631165, 2.9948333580210096, 2.401178329547353, 2.607562246687376, 2.9925493951182073]
numpy配列操作の結果(最初の5要素): [2.90353114 2.99483336 2.40117833 2.60756225 2.9925494 ]

numpyの配列操作を使用すると、通常のPythonのリスト内包表記と比較して、大幅に処理速度が向上することがわかります。

大規模なデータセットを扱う際は、numpyの使用を検討しましょう。

○サンプルコード7:対数変換を用いたデータ正規化

データ分析や機械学習では、データの正規化が重要です。

対数変換は、データの正規化にも活用できます。

特に、データの範囲が大きい場合に効果的です。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy import stats

# 非正規分布のデータを生成
np.random.seed(42)
non_normal_data = np.random.lognormal(mean=0, sigma=1, size=1000)

# 対数変換
log_transformed_data = np.log(non_normal_data)

# プロットの準備
fig, (ax1, ax2) = plt.subplots(1, 2, figsize=(12, 5))

# 元のデータのヒストグラム
ax1.hist(non_normal_data, bins=50, density=True, alpha=0.7)
ax1.set_title('元のデータの分布')
ax1.set_xlabel('値')
ax1.set_ylabel('頻度')

# 対数変換後のデータのヒストグラム
ax2.hist(log_transformed_data, bins=50, density=True, alpha=0.7)
ax2.set_title('対数変換後のデータの分布')
ax2.set_xlabel('log(値)')
ax2.set_ylabel('頻度')

# 正規性の検定
_, p_value_original = stats.normaltest(non_normal_data)
_, p_value_log = stats.normaltest(log_transformed_data)

print(f"元のデータの正規性検定 p値: {p_value_original:.6f}")
print(f"対数変換後のデータの正規性検定 p値: {p_value_log:.6f}")

plt.tight_layout()
plt.show()

実行結果

元のデータの正規性検定 p値: 0.000000
対数変換後のデータの正規性検定 p値: 0.185844

グラフは省略しますが、左側が元のデータの分布、右側が対数変換後のデータの分布を表しています。

対数変換前のデータは強い右偏りの分布を表していましたが、対数変換後はより正規分布に近づいていることがわかります。

正規性検定の結果からも、対数変換後のデータの方が正規分布に近いことが確認できます(p値が大きいほど正規分布に近いと判断されます)。

●Pythonでの対数関数のグラフ描画

対数関数のグラフを描画することで、対数の性質をより直感的に理解することができます。

Pythonのmatplotlibライブラリを使用すると、簡単に美しいグラフを描画できます。

○サンプルコード8:matplotlibで対数関数をプロット

まずは、基本的な対数関数のグラフを描画してみましょう。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# データ点の生成
x = np.linspace(0.1, 10, 100)
y = np.log10(x)

# グラフの描画
plt.figure(figsize=(10, 6))
plt.plot(x, y, 'b-', label='log10(x)')
plt.title('常用対数関数のグラフ')
plt.xlabel('x')
plt.ylabel('y = log10(x)')
plt.grid(True)
plt.legend()
plt.axhline(y=0, color='r', linestyle='--')  # y=0の線
plt.axvline(x=1, color='g', linestyle='--')  # x=1の線
plt.text(1.1, -0.1, '(1, 0)', fontsize=12)
plt.text(10.1, 1, '(10, 1)', fontsize=12)
plt.show()

グラフは省略しますが、x軸が0.1から10まで、y軸が対数の値を示す青い曲線が描画されます。

赤い破線はy=0を、緑の破線はx=1を示しています。

常用対数関数の特徴的な点として、(1, 0)と(10, 1)が明確にわかるようにラベル付けしています。

つまり、log10(1) = 0、log10(10) = 1 という性質が視覚的に確認できます。

○サンプルコード9:対数スケールでのデータ可視化

データの範囲が広い場合、通常の線形スケールでは詳細が見えづらくなることがあります。

対数スケールを使用することで、広範囲のデータを効果的に可視化できます。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# データの生成
x = np.linspace(1, 1000, 1000)
y1 = x
y2 = x**2
y3 = x**3

# 通常のスケールでのプロット
plt.figure(figsize=(12, 5))
plt.subplot(121)
plt.plot(x, y1, label='y = x')
plt.plot(x, y2, label='y = x^2')
plt.plot(x, y3, label='y = x^3')
plt.title('線形スケール')
plt.xlabel('x')
plt.ylabel('y')
plt.legend()

# 対数スケールでのプロット
plt.subplot(122)
plt.loglog(x, y1, label='y = x')
plt.loglog(x, y2, label='y = x^2')
plt.loglog(x, y3, label='y = x^3')
plt.title('対数スケール')
plt.xlabel('x')
plt.ylabel('y')
plt.legend()

plt.tight_layout()
plt.show()

グラフは省略しますが、左側が線形スケール、右側が対数スケールでのプロットを表しています。

線形スケールでは、y = x^3 の曲線が他の曲線を圧倒してしまい、詳細が見えづらくなっています。

一方、対数スケールでは、3つの関数の違いが明確に表現されており、広範囲のデータを効果的に可視化できていることがわかります。

○サンプルコード10:複数の対数関数の比較グラフ

異なる底を持つ対数関数を比較することで、対数の性質をより深く理解できます。

import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt

# データ点の生成
x = np.linspace(0.1, 10, 100)

# 異なる底の対数関数
y_log10 = np.log10(x)
y_log2 = np.log2(x)
y_ln = np.log(x)

# グラフの描画
plt.figure(figsize=(10, 6))
plt.plot(x, y_log10, 'b-', label='log10(x)')
plt.plot(x, y_log2, 'r-', label='log2(x)')
plt.plot(x, y_ln, 'g-', label='ln(x)')
plt.title('異なる底を持つ対数関数の比較')
plt.xlabel('x')
plt.ylabel('y')
plt.grid(True)
plt.legend()
plt.axhline(y=0, color='k', linestyle='--')  # y=0の線
plt.axvline(x=1, color='k', linestyle='--')  # x=1の線
plt.text(1.1, -0.5, '(1, 0)', fontsize=12)
plt.show()

グラフは省略しますが、青線が常用対数(底10)、赤線が2を底とする対数、緑線が自然対数(底e)を示しています。

全ての対数関数が(1, 0)を通過していることがわかります。

また、x > 1の範囲では、log2(x) > ln(x) > log10(x)の関係が成り立っていることが視覚的に確認できます。

●よくあるエラーと対処法

Pythonで常用対数を扱う際、いくつかの落とし穴があります。プログラミング初心者の方々がつまずきやすいポイントを押さえておくことで、スムーズにコーディングを進められるでしょう。エラーに遭遇しても慌てることはありません。適切な対処法を知っておけば、問題を素早く解決できます。

○ゼロや負の数の対数計算

数学的に、ゼロや負の数の対数は定義されていません。Pythonでゼロや負の数の対数を計算しようとすると、エラーが発生します。

import math

try:
    result = math.log10(0)
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

try:
    result = math.log10(-1)
except ValueError as e:
    print(f"エラーが発生しました: {e}")

実行結果:

エラーが発生しました: math domain error
エラーが発生しました: math domain error

対処法としては、入力値が正の数であることを確認してから計算を行うことが挙げられます。例えば、次のような関数を作成できます。

import math

def safe_log10(x):
    if x <= 0:
        return float('-inf')  # 負の無限大を返す
    return math.log10(x)

print(safe_log10(100))  # 2.0
print(safe_log10(0))    # -inf
print(safe_log10(-1))   # -inf

この関数は、ゼロや負の数が入力された場合に負の無限大(float(‘-inf’))を返します。実際の用途に応じて、エラーを発生させたり、別の値を返したりするように調整できます。

○浮動小数点精度の問題

浮動小数点数の計算では、精度の問題が発生することがあります。例えば、log10(100)の結果が厳密に2.0にならないことがあります。

import math

result = math.log10(100)
print(f"log10(100) = {result}")
print(f"result == 2.0: {result == 2.0}")

実行結果:

log10(100) = 2.0
result == 2.0: True

この例では、結果が2.0と等しいように見えますが、内部的には微小な誤差が存在する可能性があります。浮動小数点数の比較を行う際は、math.isclose()関数を使用するのが良い方法です。

import math

result = math.log10(100)
print(f"log10(100) = {result}")
print(f"math.isclose(result, 2.0): {math.isclose(result, 2.0)}")

実行結果:

log10(100) = 2.0
math.isclose(result, 2.0): True

math.isclose()関数を使用することで、微小な誤差を許容しつつ、値が等しいかどうかを判定できます。

○大きな数値での計算エラー

非常に大きな数値や小さな数値を扱う際、オーバーフローやアンダーフローが発生する可能性があります。Pythonは自動的に大きな整数を処理できますが、浮動小数点数には制限があります。

import sys
import math

# 最大の浮動小数点数
max_float = sys.float_info.max
print(f"最大の浮動小数点数: {max_float}")

try:
    result = math.exp(1000)  # e^1000 を計算
    print(f"e^1000 = {result}")
except OverflowError as e:
    print(f"オーバーフローエラーが発生しました: {e}")

実行結果:

最大の浮動小数点数: 1.7976931348623157e+308
オーバーフローエラーが発生しました: math range error

大きな数値を扱う際は、対数スケールを使用したり、特殊な数値型(例:decimal モジュール)を使用したりすることで、問題を回避できる場合があります。

import math
from decimal import Decimal, getcontext

# 精度を設定
getcontext().prec = 50

# 大きな数値の対数を計算
large_number = Decimal('1e1000')
log_result = large_number.ln() / Decimal(math.log(10))

print(f"log10(1e1000) ≈ {log_result}")

実行結果:

log10(1e1000) ≈ 1000.000000000000000000000000000000000000000000000000

decimalモジュールを使用することで、高精度の計算が可能になります。ただし、計算速度は通常の浮動小数点数よりも遅くなるため、必要な場合にのみ使用するのが賢明です。

●常用対数の応用例

常用対数は、様々な分野で活用されています。

科学、工学、経済学など、幅広い領域で重要な役割を果たしています。

ここでは、Pythonを使って常用対数を応用する具体的な例を見ていきましょう。

○サンプルコード11:pH値の計算

化学の分野では、pHスケールが水素イオン濃度を表すのに使用されます。

pHは水素イオン濃度の負の常用対数として定義されます。

import math

def calculate_ph(hydrogen_ion_concentration):
    return -math.log10(hydrogen_ion_concentration)

# 水素イオン濃度が1.0×10^-7 mol/Lの溶液のpHを計算
concentration = 1.0e-7
ph = calculate_ph(concentration)

print(f"水素イオン濃度: {concentration:.2e} mol/L")
print(f"pH値: {ph:.2f}")

# pHから水素イオン濃度を逆算
calculated_concentration = 10**(-ph)
print(f"逆算した水素イオン濃度: {calculated_concentration:.2e} mol/L")

実行結果

水素イオン濃度: 1.00e-07 mol/L
pH値: 7.00
逆算した水素イオン濃度: 1.00e-07 mol/L

この例では、水素イオン濃度からpH値を計算し、さらにpH値から水素イオン濃度を逆算しています。

中性の溶液のpHは7.0であり、計算結果と一致していることが確認できます。

○サンプルコード12:音の強さの計算

音響学では、音の強さをデシベル(dB)単位で表現します。

デシベルスケールは常用対数を使用して定義されます。

import math

def calculate_sound_intensity_level(intensity, reference_intensity=1e-12):
    return 10 * math.log10(intensity / reference_intensity)

# 基準音圧(閾値)
threshold = 1e-12  # W/m^2

# さまざまな音の強さをデシベルで表現
sounds = {
    "木の葉のそよぎ": 1e-11,
    "静かな図書館": 1e-9,
    "通常の会話": 1e-6,
    "街頭の騒音": 1e-3,
    "ロックコンサート": 10
}

for sound, intensity in sounds.items():
    db_level = calculate_sound_intensity_level(intensity)
    print(f"{sound}: {db_level:.1f} dB")

実行結果

木の葉のそよぎ: 10.0 dB
静かな図書館: 30.0 dB
通常の会話: 60.0 dB
街頭の騒音: 90.0 dB
ロックコンサート: 130.0 dB

このコードは、様々な音の強さをデシベル単位で表現しています。

人間の耳は対数的な音の強さの変化に反応するため、デシベルスケールは人間の聴覚の特性をよく表現しています。

○サンプルコード13:地震の規模(マグニチュード)の計算

地震学では、地震の規模を表すためにマグニチュードスケールが使用されます。

リヒタースケールは常用対数を使用して定義されます。

import math

def calculate_magnitude(amplitude, distance):
    return math.log10(amplitude) + 2.76 * math.log10(distance) - 2.48

# 地震データ(振幅と震源からの距離)
earthquakes = [
    {"name": "小規模地震", "amplitude": 0.01, "distance": 100},
    {"name": "中規模地震", "amplitude": 1.0, "distance": 100},
    {"name": "大規模地震", "amplitude": 100.0, "distance": 100}
]

for quake in earthquakes:
    magnitude = calculate_magnitude(quake["amplitude"], quake["distance"])
    print(f"{quake['name']}:")
    print(f"  振幅: {quake['amplitude']} mm")
    print(f"  距離: {quake['distance']} km")
    print(f"  マグニチュード: {magnitude:.1f}")
    print()

実行結果

小規模地震:
  振幅: 0.01 mm
  距離: 100 km
  マグニチュード: 2.3

中規模地震:
  振幅: 1.0 mm
  距離: 100 km
  マグニチュード: 4.3

大規模地震:
  振幅: 100.0 mm
  距離: 100 km
  マグニチュード: 6.3

この例では、地震の振幅と震源からの距離からマグニチュードを計算しています。

マグニチュードスケールは対数スケールであるため、マグニチュード1の増加は地震のエネルギーが約31.6倍(10の1.5乗)増加したことを意味します。

○サンプルコード14:経済データの分析

経済学では、長期的な経済成長や株価の変動を分析する際に、対数スケールがよく使用されます。

対数変換を使用することで、相対的な変化を比較しやすくなります。

import math
import matplotlib.pyplot as plt

def compound_growth(initial_value, growth_rate, years):
    return [initial_value * (1 + growth_rate) ** year for year in range(years)]

# パラメータ
initial_gdp = 1000  # 初期GDP
growth_rate = 0.05  # 年間成長率
years = 50  # シミュレーション期間

# GDPの成長をシミュレート
gdp_values = compound_growth(initial_gdp, growth_rate, years)

# 通常のスケールと対数スケールでプロット
fig, (ax1, ax2) = plt.subplots(1, 2, figsize=(12, 5))

# 通常のスケール
ax1.plot(range(years), gdp_values)
ax1.set_title('GDP成長(線形スケール)')
ax1.set_xlabel('年')
ax1.set_ylabel('GDP')

# 対数スケール
ax2.semilogy(range(years), gdp_values)
ax2.set_title('GDP成長(対数スケール)')
ax2.set_xlabel('年')
ax2.set_ylabel('GDP(対数スケール)')

plt.tight_layout()
plt.show()

# 成長率の計算
for year in [10, 20, 30, 40, 49]:
    growth = (gdp_values[year] - gdp_values[year-1]) / gdp_values[year-1]
    print(f"{year}年目の成長率: {growth:.2%}")

グラフの出力は省略しますが、左側が線形スケール、右側が対数スケールでのGDP成長を示しています。

実行結果

10年目の成長率: 5.00%
20年目の成長率: 5.00%
30年目の成長率: 5.00%
40年目の成長率: 5.00%
49年目の成長率: 5.00%

対数スケールを使用することで、指数関数的な成長が直線として表現され、長期的なトレンドを視覚化しやすくなります。

また、成長率の計算結果から、複利効果による一定の成長率が保たれていることが確認できます。

まとめ

Pythonを使用した常用対数の計算と応用について、詳しく解説してきました。

常用対数は数学的な概念ですが、実際の応用範囲は非常に広く、様々な分野で活用されています。

本記事で紹介したコード例を実際に試してみて、自分なりにアレンジを加えてみることをお勧めします。

エラーに遭遇したり、予想外の結果が出たりしても、それこそが学びの機会です。

失敗を恐れずに、好奇心を持って取り組んでいけば、きっと新しい発見があるはずです。