Verilogとオーバーフロー!理解を深める7つのステップ

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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

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はじめに

デジタル設計の分野では、ハードウェア記述言語の一つであるVerilogがよく使われています。

しかし、Verilogを使った設計において頻繁に遭遇する問題の一つが、「オーバーフロー」です。

オーバーフローは計算結果がデータ型に許される範囲を超えることで発生し、これが無視されると予期しない結果を引き起こします。

この記事では、Verilogとオーバーフローについて、その対処法や注意点などを初心者向けに解説します。

●Verilogとは?

○基本的な概念

Verilogは、ハードウェア記述言語(HDL)の一つで、デジタルシステムやアナログシステムの設計を行うためのものです。

ソフトウェアプログラミング言語とは異なり、Verilogではハードウェアの動作を直接記述します。

つまり、具体的な電子回路の構成や振る舞いをコードで表現することができます。

○Verilogの特徴

Verilogには多くの特徴がありますが、その中でも次の3つは特に重要です。

❶並列性

Verilogでは、複数のモジュールが同時に動作します。

これはハードウェアの特性を反映しており、これにより現実の電子回路の動作を正確にシミュレートすることができます。

❷ハードウェア指向

Verilogはハードウェアの設計に特化しており、ゲートレベル、データフローレベル、および振る舞いレベルの記述が可能です。

❸ポータビリティ

VerilogはIEEE規格であり、様々なツールで対応可能です。

これにより、異なるシミュレーションツールや合成ツール間でコードを移行することが容易になります。

●オーバーフローとは?

○オーバーフローの原因と例

オーバーフローは、数値がその表現範囲を超えてしまう現象を指します。

例えば、8ビットの符号なし整数の場合、その範囲は0から255までとなります。

この場合、255に1を加えると結果は256となりますが、これは8ビットで表現できる範囲を超えてしまいます。

このように、計算結果が数値の表現範囲を超えたとき、それがオーバーフローとなります。

オーバーフローが発生すると、計算結果が正しくない値となり、それがそのままプログラムの挙動に影響を及ぼすことがあります。

それゆえ、オーバーフローを適切に検出し、対処することが重要となります。

●Verilogでのオーバーフローの対処法

○サンプルコード1:オーバーフローを避ける基本的な方法

Verilogでオーバーフローを避ける基本的な方法としては、結果を格納する変数のビット幅を計算可能な最大値に合わせて設定することがあります。

ここでは、8ビットの変数aとbの加算結果を、9ビットの変数cに格納する例を紹介します。

この例では、8ビットの変数の最大値255同士の加算結果でも510となり、これは9ビットで表現可能な範囲内です。

module overflow_prevention;
  reg [7:0] a, b;
  reg [8:0] c;

  initial begin
    a = 8'b11111111; // 255
    b = 8'b11111111; // 255
    c = a + b; // 510
  end
endmodule

このコードでは、8ビット変数aとbに最大値255を代入し、その加算結果を9ビット変数cに格納しています。

この方法により、オーバーフローを避けることができます。

○サンプルコード2:オーバーフロー検出の手法

一方、オーバーフローを検出する方法もあります。

下記の例では、2つの8ビット変数aとbの加算結果を8ビット変数cに格納し、加算結果が256以上となる場合にはオーバーフローフラグを立てるようにしています。

module overflow_detection;
  reg [7:0] a, b, c;
  reg overflow_flag;

  initial begin
    a = 8'b11111111; // 255
    b = 8'b11111111; // 255
    {overflow_flag, c} = a + b; // overflow_flag will be 1 if overflow occurs
  end
endmodule

このコードでは、8ビット変数aとbに最大値255を代入し、その加算結果を9ビットの一時変数に格納します。

その後、その一時変数の最上位ビットをオーバーフローフラグとし、残りの8ビットを変数cに格納します。

この方法により、オーバーフローを検出できます。

●注意点

○Verilogでオーバーフローが発生する可能性のあるシチュエーション

Verilogにおけるオーバーフローは、加算だけでなく、減算、乗算、除算などの算術演算でも発生します。

また、シフト演算によってもオーバーフローが発生する可能性があります。

これらの演算を行う際には、オーバーフローが発生しないように注意が必要です。

○オーバーフローを避けるための設計の考え方

オーバーフローを避けるためには、次のような設計の考え方が重要です。

  1. 変数のビット幅設定: 加算の結果を格納する変数のビット幅は、加算する変数のビット幅よりも一つ大きく設定します。
  2. オーバーフローチェックの導入: オーバーフローが発生した場合には適切な処置を行うためのチェックを導入します。
  3. 事前の範囲チェック: 計算を行う前に、その計算結果が変数のビット幅を超えるかどうかをチェックします。

これらの考え方を設計に取り入れることで、オーバーフローを避けることができます。

●オーバーフロー対策のカスタマイズ方法

○サンプルコード3:カスタマイズ可能なオーバーフロー対策の例

オーバーフロー対策は、具体的な設計や要件によってカスタマイズすることが可能です。

可変ビット幅でオーバーフローを検出するVerilogコードの例を紹介します。

module overflow_detection #(parameter WIDTH = 8);
  reg [WIDTH-1:0] a, b, c;
  reg overflow_flag;

  initial begin
    a = WIDTH'b1; // set all bits to 1
    b = WIDTH'b1; // set all bits to 1
    {overflow_flag, c} = a + b; // overflow_flag will be 1 if overflow occurs
  end
endmodule

このコードでは、モジュールパラメータとしてビット幅WIDTHを定義し、そのビット幅を持つ変数aとbを宣言しています。

aとbには全ビットが1の値を代入し、その加算結果を一時変数に格納します。

その後、一時変数の最上位ビットをオーバーフローフラグとし、残りのビットを変数cに格納します。

この方法により、ビット幅を変更するだけでオーバーフロー検出の対策をカスタマイズできます。

○サンプルコード4:複雑な設計でのオーバーフロー対策

複雑な設計においても、オーバーフロー対策をカスタマイズすることが可能です。

乗算結果のオーバーフローを検出するVerilogコードの例を紹介します。

module overflow_detection_multiplication #(parameter WIDTH = 8);
  reg [WIDTH-1:0] a, b;
  reg [2*WIDTH-1:0] c;
  reg overflow_flag;

  initial begin
    a = WIDTH'b1; // set all bits to 1
    b = WIDTH'b1; // set all bits to 1
    c = a * b;
    overflow_flag = c[2*WIDTH-1:WIDTH] != 0; // if upper WIDTH bits are not 0, overflow occurs
  end
endmodule

このコードでは、乗算結果を格納する変数cのビット幅を2倍に設定しています。

乗算結果が2倍のビット幅に収まらない場合、つまりcの上位ビットが0でない場合はオーバーフローフラグを立てます。

これにより、乗算におけるオーバーフローを検出できます。

●応用例

○サンプルコード5:データ処理でのオーバーフロー対策

データ処理においてもオーバーフロー対策は重要です。

配列の要素を加算する際のオーバーフロー対策のVerilogコードの例を紹介します。

module overflow_detection_array #(parameter WIDTH = 8, SIZE = 10);
  reg [WIDTH-1:0] a[SIZE-1:0];
  reg [WIDTH:0] sum;
  reg overflow_flag;

  initial begin
    integer i;
    for(i=0; i<SIZE; i=i+1) a[i] = WIDTH'b1; // set all bits of all elements to 1
    sum = 0;
    for(i=0; i<SIZE; i=i+1) sum = sum + a[i];
    overflow_flag = sum[WIDTH]; // if the MSB of sum is 1, overflow occurs
  end
endmodule

このコードでは、配列aの各要素を加算し、その結果を変数sumに格納します。

その後、sumの最上位ビットが1であればオーバーフローフラグを立てます。

この方法により、配列の要素を加算する際のオーバーフローを検出できます。

○サンプルコード6:オーバーフローを防ぐアルゴリズムの設計

オーバーフローを防ぐためのアルゴリズムの設計も一つの解決策です。

オーバーフローを防ぐための算術平均の計算のVerilogコードの例を紹介します。

module average_without_overflow #(parameter WIDTH = 8, SIZE = 10);
  reg [WIDTH-1:0] a[SIZE-1:0];
  reg [WIDTH-1:0] avg;

  initial begin
    integer i;
    for(i=0; i<SIZE; i=i+1) a[i] = WIDTH'b1; // set all bits of all elements to 1
    avg = 0;
    for(i=0; i<SIZE; i=i+1) avg = avg + a[i]/SIZE;
  end
endmodule

このコードでは、各要素を配列のサイズで割った値を加算して平均値を計算しています。

この方法により、加算時にオーバーフローが発生することを防ぐことができます。

まとめ

この記事では、Verilogとオーバーフローについて初心者向けに詳しく解説しました。

具体的なVerilogのサンプルコードを通じて、オーバーフローの原因と対策、さらにはカスタマイズ方法を紹介しました。

オーバーフローは、プログラミングや電子設計における重要な問題の一つであり、その理解と対策は必要不可欠です。

この記事が、Verilogを用いた設計におけるオーバーフローの理解と対策の一助となることを期待します。