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Verilogとテストベンチをマスターするための15ステップ

Verilogとテストベンチを学ぶためのガイドブックの表紙 Verilog
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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はじめに

Verilogとテストベンチ、これらのテクノロジーを効果的に理解して使用することは、デジタルシステムの設計や検証を行う際に必要不可欠です。

この記事では、プログラミング初心者であってもこれらのテクノロジーを習得するための具体的な15のステップを提供します。

●Verilogとは何か

Verilogはハードウェア記述言語(HDL)の一つで、デジタルシステムや集積回路の設計を行うために使用されます。

CPUやメモリなど、コンピュータのハードウェアを設計する際に利用され、設計した回路の動作をシミュレートすることも可能です。

○Verilogの基本的な概念

Verilogでは、モジュールという概念が中心的な役割を果たします。

モジュールは、回路の一部分を表現したもので、入力と出力を持つことができます。

また、これらのモジュールを組み合わせることにより、複雑なデジタルシステムを構築することができます。

たとえば、次のコードは2つの入力AとBと1つの出力Yを持つANDゲートを表現しています。

この例では、入力の値によって出力の値がどのように変わるかを説明しています。

module AND_GATE (input A, input B, output Y);
  assign Y = A & B;
endmodule

このコードを実行すると、入力Aと入力Bが両方とも1(つまり真)の場合にのみ、出力Yが1となります。

それ以外の場合、出力Yは0になります。

○Verilogの歴史

Verilogは、1980年代にGateway Design Automationによって開発されました。

当初は社内の設計ツールとして使用されていたものの、その表現力の高さから次第に外部にも広まり、現在では世界中のエンジニアによって利用されています。

●テストベンチとは何か

テストベンチは、設計したハードウェアの動作を検証するためのツールです。

Verilogで書かれたテストベンチを使用すると、設計したハードウェアに様々な入力を与えて、出力が期待通りであるかどうかを確認することができます。

○テストベンチの目的と利点

テストベンチの主な目的は、設計したハードウェアが正しく動作することを確認することです。

さらに、テストベンチを使用することで、設計の早い段階で問題を発見することができ、設計の修正や改善を行うことが可能になります。

テストベンチは、実際のハードウェアを用いることなく、PC上でシミュレーションを行うことができます。

これにより、ハードウェアの物理的な制約を気にすることなく、多様な条件下でのハードウェアの動作を試すことができます。

●Verilogの基本的な構文

Verilogの基本的な構文について見ていきましょう。

○データ型と変数

Verilogには、データ型としてwireやregなどがあります。

これらは、それぞれハードウェアのワイヤー(信号線)やレジスタを表現します。

また、これらのデータ型にはビット幅を指定することができ、例えば8ビットのレジスタを表現する場合は、「reg [7:0]」といった形で表現します。

次のコードは、8ビットの入力Aと入力B、出力Yを持つ加算器を表現しています。

この例では、入力の値を足し合わせて出力の値を生成しています。

module ADDER (input [7:0] A, input [7:0] B, output [7:0] Y);
  assign Y = A + B;
endmodule

このコードを実行すると、入力Aと入力Bの値が足し合わせられ、その結果が出力Yに反映されます。

○制御構造

Verilogでは、if文やfor文などの制御構造を使用することができます。

これにより、特定の条件下で特定の操作を行ったり、一連の操作を繰り返したりすることが可能になります。

次のコードは、入力の値に応じて出力の値を変えるマルチプレクサを表現しています。

この例では、セレクト信号の値によってどの入力信号が出力に接続されるかを制御しています。

module MUX (input [7:0] A, input [7:0] B, input SEL, output [7:0] Y);
  always @(A, B, SEL)
    if (SEL)
      Y = A;
    else
      Y = B;
endmodule

このコードを実行すると、セレクト信号SELが1のときは入力Aが出力Yに接続され、SELが0のときは入力Bが出力Yに接続されます。

●Verilogでのテストベンチの作成

Verilogでは、テストベンチを作成して、設計したハードウェアの動作を検証することができます。

○テストベンチの基本構造

テストベンチは通常、モジュールの形で記述されます。

テストベンチのモジュールでは、通常入力や出力を持たず、内部で検証対象のモジュールをインスタンス化し、その動作を検証します。

次のコードは、前述のANDゲートのテストベンチを表現しています。

この例では、全ての入力組み合わせに対する出力を検証しています。

module AND_GATE_TB;
  reg A, B;
  wire Y;

  // 検証対象のANDゲートをインスタンス化
  AND_GATE uut (.A(A), .B(B), .Y(Y));

  initial begin
    $monitor("A=%b, B=%b, Y=%b", A, B, Y);

    // 全ての入力組み合わせに対する出力を検証
    A=0; B=0; #10;
    A=0; B=1; #10;
    A=1; B=0; #10;
    A=1; B=1; #10;

    $finish;
  end
endmodule

このコードを実行すると、入力AとBの全ての組み合わせに対する出力Yが表示され、ANDゲートが正しく動作しているかを確認することができます。

○テストベンチでのデータの生成

テストベンチでは、様々なパターンのデータを生成して、それを検証対象のモジュールに入力することが一般的です。

データの生成には、Verilogの制御構造を活用することができます。

次のコードは、ランダムな8ビットデータを生成して加算器に入力し、その出力を検証するテストベンチを表現しています。

この例では、Verilogの$random関数を用いてランダムなデータを生成しています。

module ADDER_TB;
  reg [7:0] A, B;
  wire [7:0] Y;

  // 検証対象のADDERをインスタンス化
  ADDER uut (.A(A), .B(B), .Y(Y));

  initial begin
    $monitor("A=%b, B=%b, Y=%b", A, B, Y);

    // ランダムなデータを生成して入力
    for (int i=0; i<10; i++) begin
      A = $random;
      B = $random;
      #10;
    end

    $finish;
  end
endmodule

このコードを実行すると、ランダムな入力データに対する加算器の出力が表示されます。

これにより、加算器が正しく動作しているか、さまざまな入力に対して確認することができます。

●Verilogでのテストベンチの使用例

それでは、実際のテストベンチの使用例を見ていきましょう。

○サンプルコード1:基本的なテストベンチ

下記のサンプルコードは、2つの入力を持つORゲートのテストベンチを表しています。

このテストベンチでは、2つの入力のいずれかが1であれば出力が1となることを確認しています。

module OR_GATE (input A, input B, output Y);
  assign Y = A | B;
endmodule

module OR_GATE_TB;
  reg A, B;
  wire Y;

  OR_GATE uut (.A(A), .B(B), .Y(Y));

  initial begin
    $monitor("A=%b, B=%b, Y=%b", A, B, Y);

    A=0; B=0; #10;
    A=0; B=1; #10;
    A=1; B=0; #10;
    A=1; B=1; #10;

    $finish;
  end
endmodule

このコードを実行すると、全ての入力組み合わせに対する出力が表示され、ORゲートが正しく動作しているかを確認することができます。

○サンプルコード2:高度なテストベンチ

次のサンプルコードは、4ビット全加算器のテストベンチを表しています。

このテストベンチでは、2つの4ビット数の全ての組み合わせについて、加算結果と桁上り出力が正しいことを確認しています。

module FULL_ADDER (input [3:0] A, input [3:0] B, input CI, output [4:0] S);
  assign {S[4], S[3:0]} = A + B + CI;
endmodule

module FULL_ADDER_TB;
  reg [3:0] A, B;
  reg CI;
  wire [4:0] S;

  FULL_ADDER uut (.A(A), .B(B), .CI(CI), .S(S));

  initial begin
    $monitor("A=%b, B=%b, CI=%b, S=%b", A, B, CI, S);

    for (A=0; A<16; A=A+1)
      for (B=0; B<16; B=B+1)
        for (CI=0; CI<2; CI=CI+1)
          #10;

    $finish;
  end
endmodule

このコードを実行すると、全ての入力組み合わせに対する加算結果と桁上り出力が表示され、4ビット全加算器が正しく動作しているかを確認することができます。

●Verilogとテストベンチの注意点

Verilogとテストベンチを使用する際には、いくつかの注意点があります。

これらの注意点を理解しておくことで、より効率的にハードウェア設計を行うことができます。

  1. Verilogはハードウェア記述言語であるため、一般的なソフトウェアプログラミング言語とは異なる概念があります。
    例えば、時間進行や並行処理などは、ソフトウェアプログラミングとは異なる考え方を必要とします。
  2. テストベンチでは、モジュールの動作を完全に検証するために、可能な限り多くの入力パターンを試すことが重要です。
  3. Verilogで記述されたハードウェアは、その設計が複雑になると、その動作を完全に理解するのが難しくなることがあります。
    そのため、小さな部分を個別にテストするユニットテストの重要性が高まります。

●テストベンチのカスタマイズ方法

テストベンチは、検証対象のハードウェアに応じて、その設計や機能をカスタマイズすることが可能です。

①時間遅延の設定

Verilogでは、#記号を使用して時間遅延を設定することができます。

これを用いて、特定の条件下でのハードウェアの動作を検証することができます。

②条件分岐の使用

Verilogでは、if文やcase文を用いて条件分岐を表現することができます。

これを用いて、特定の条件を満たす時のみテストを実行する、といったカスタマイズが可能です。

③シミュレーション結果の出力

$displayや$monitorなどのシステムタスクを用いて、シミュレーションの結果を出力することができます。

これを用いて、テスト結果の確認を容易にすることができます。

まとめ

Verilogとテストベンチは、ハードウェア設計と検証のための強力なツールです。

この記事では、Verilogとテストベンチの基本的な概念から、具体的な使用例、注意点、カスタマイズ方法まで、詳細に解説しました。

Verilogとテストベンチをマスターすることで、より効率的かつ正確なハードウェア設計が可能となります。

これらの知識とツールを活用して、自身のハードウェア設計のスキルを向上させていきましょう。