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Verilog動的配列の使い方・詳細ガイドとサンプルコード7選

Verilogプログラミング言語で使用する動的配列の詳細ガイドとサンプルコードを表す画像 Verilog
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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はじめに

Verilogの動的配列について学びたいと思っている初心者の皆様へ、この記事では詳細な使い方、注意点、そしてカスタマイズ方法を詳しく解説します。

具体的なサンプルコードを通じて理解を深めていきましょう。

●Verilogと動的配列とは

Verilogは、ハードウェア記述言語(HDL)の一つで、デジタルシステムの設計や検証に広く使われています。

一方、動的配列はその名の通り、実行時にサイズを変更できる配列のことを指します。Verilogでは動的配列を使うことで、柔軟にデータ構造を扱うことが可能となります。

●Verilogの動的配列の使い方

○基本的な使い方

Verilogにおける動的配列の基本的な使い方は非常にシンプルです。

まずは、新しい動的配列を宣言し、それから配列の要素に値を設定する方法を学びましょう。

□サンプルコード1:基本的な動的配列の宣言と操作

このコードでは、動的配列の宣言と基本的な操作を行っています。

宣言は、型名の後に”[]”をつけることで動的配列として認識されます。

具体的な操作としては、”new”キーワードを使って動的配列のサイズを指定し、インデックスを指定して値を設定します。

module tb;
  reg [7:0] d_array []; // 動的配列の宣言
  initial begin
    d_array = new[10]; // 動的配列のサイズを設定
    d_array[0] = 8'hA5; // 動的配列の要素に値を設定
  end
endmodule

上記のコードは動的配列を宣言し、配列のサイズを10に設定して、最初の要素に8ビットのヘキサデシマル値A5を設定します。

○動的配列のリサイズ

Verilogの動的配列はサイズが固定されていないため、実行時にサイズを変更することが可能です。

下記のサンプルコードでは、動的配列のサイズを変更する方法を示しています。

□サンプルコード2:動的配列のリサイズ

このコードでは、既存の動的配列のサイズを変更する方法を表しています。

この例では、元の配列のサイズを変更せずに新しい配列を作成し、その後で旧い配列を新しい配列にコピーしています。

module tb;
  reg [7:0] d_array [];
  reg [7:0] temp [];
  initial begin
    d_array = new[10];
    d_array[0] = 8'hA5;
    temp = new[20]; // 新しい配列のサイズを20に設定
    temp = d_array; // 旧い配列を新しい配列にコピー
    d_array = temp; // 新しい配列を旧い配列に割り当て
  end
endmodule

このコードは、旧い動的配列のサイズを変更するために新しい動的配列を作成し、その後で旧い配列を新しい配列にコピーして、最終的に新しい配列を旧い配列に割り当てています。

○動的配列の反転

Verilogの動的配列では、配列の要素を反転することも可能です。

下記のサンプルコードでは、動的配列の要素を反転する方法を表しています。

□サンプルコード3:動的配列の反転

このコードでは、動的配列の要素を反転する方法を紹介しています。

この例では、一時的な変数を使用して配列の先頭と末尾の要素を交換しています。

module tb;
  reg [7:0] d_array [];
  reg [7:0] temp;
  integer i;
  initial begin
    d_array = new[10];
    // 配列に値を設定
    for (i = 0; i < 10; i = i + 1) begin
      d_array[i] = i;
    end
    // 配列の反転
    for (i = 0; i < 10 / 2; i = i + 1) begin
      temp = d_array[i];
      d_array[i] = d_array[10 - i - 1];
      d_array[10 - i - 1] = temp;
    end
  end
endmodule

このコードは、動的配列に0から9までの値を設定し、その後で配列の要素を反転させています。

配列の反転は、配列の先頭と末尾の要素を交換することで実現しています。

●Verilogの動的配列の応用例

Verilogの動的配列は、その柔軟性から多種多様なシチュエーションでの利用が可能です。

ここでは、より実践的な応用例をいくつか紹介します。

サンプルコードを通じて、動的配列の操作を詳しく理解しましょう。

○サンプルコード4:データの挿入と削除

このコードでは、動的配列にデータを挿入したり削除したりする方法を表しています。

Verilogでは動的配列を操作する際、push_front, push_back, pop_front, pop_backといったメソッドが利用できます。

module top;
  // 動的配列を宣言
  int dynamic_array[];

  initial begin
    // 動的配列にデータを追加
    dynamic_array.push_back(1);
    dynamic_array.push_back(2);
    dynamic_array.push_back(3);

    // 配列の中身を表示
    $display("配列の中身:%p", dynamic_array);

    // 配列の先頭からデータを削除
    dynamic_array.pop_front();

    // 再度配列の中身を表示
    $display("配列の中身:%p", dynamic_array);
  end
endmodule

このコードを実行すると、配列の中身は最初「1, 2, 3」で、データを削除した後は「2, 3」と表示されます。

こうした操作を駆使することで、動的にデータを管理することが可能となります。

○サンプルコード5:動的配列を用いた信号処理

Verilogの動的配列は信号処理にも応用できます。

例えば、時間に依存する信号を格納したり、後からその信号を解析したりする場合に活用できます。

module top;
  // 動的配列を宣言
  real signal[];

  initial begin
    // サンプル信号データを配列に追加
    for(int i=0; i<1000; i=i+1) begin
      signal.push_back($sin(i*0.001*3.14159));
    end

    // 信号データの表示
    for(int i=0; i<1000; i=i+1) begin
      $display("サンプル%d:%0.4f", i, signal[i]);
    end
  end
endmodule

このコードは、サンプルとして1000個のサイン波形の信号データを動的配列に格納し、それを表示しています。

このように動的配列を使うと、時間依存の信号データを簡単に扱うことができます。

○サンプルコード6:動的配列を用いた行列の操作

次に、動的配列を用いて行列を扱う例を見てみましょう。

Verilogでは、動的配列の配列(2次元動的配列)を定義することで、行列操作が可能になります。

module top;
  // 2次元動的配列の宣言
  int matrix[][];

  initial begin
    // 行列のサイズを設定
    matrix = new[3];
    for(int i=0; i<3; i=i+1) begin
      matrix[i] = new[3];
    end

    // 行列に値を設定
    for(int i=0; i<3; i=i+1) begin
      for(int j=0; j<3; j=j+1) begin
        matrix[i][j] = i*3 + j + 1;
      end
    end

    // 行列の内容を表示
    for(int i=0; i<3; i=i+1) begin
      for(int j=0; j<3; j=j+1) begin
        $display("matrix[%0d][%0d] = %0d", i, j, matrix[i][j]);
      end
    end
  end
endmodule

このコードでは、3×3の行列を生成し、その要素を表示しています。

Verilogの動的配列を使用すると、このような多次元データを扱うことも可能です。

○サンプルコード7:動的配列を用いたランダムアクセスメモリ(RAM)のシミュレーション

最後に、動的配列を用いてRAMのシミュレーションを行う例を紹介します。

動的配列の特性を活かし、ランダムアクセス可能なメモリの模擬を作成することができます。

module top;
  // 動的配列を宣言
  byte ram[];

  initial begin
    // RAMのサイズを設定
    ram = new[256];

    // RAMに値を書き込み
    for(int i=0; i<256; i=i+1) begin
      ram[i] = i;
    end

    // RAMの内容を表示
    for(int i=0; i<256; i=i+1) begin
      $display("ram[%0d] = %0d", i, ram[i]);
    end
  end
endmodule

このコードは、256バイトのRAMをシミュレートし、各アドレスにそのアドレス値を書き込んで表示しています。

このような利用法は、Verilogでのハードウェア設計やシミュレーションにおいて非常に役立ちます。

●Verilogの動的配列の注意点と対処法

Verilogで動的配列を使用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

これらを理解し、対策を行うことで、よりスムーズにコーディングを進めることができます。

まず第一に、動的配列は実行時にサイズが変更可能であるため、そのメモリ管理に注意が必要です。

動的配列のサイズが適切に管理されていないと、必要以上のメモリを消費することでシステムに負荷をかけてしまいます。

第二に、動的配列は初期化されていない状態では、その要素の値は不定である点に注意が必要です。

これはランダムな値が入っている可能性があり、予期せぬバグを引き起こす可能性があります。

これらの問題に対処するために、次のような対策をおすすめします。

①動的配列のサイズ管理

動的配列のサイズはsize()関数を使って常に把握しておくことが重要です。

また、必要以上に大きなサイズを確保せず、必要な時に適切なサイズにリサイズすることが推奨されます。

②初期化の実施

動的配列を宣言した直後に初期化を行うことで、予期せぬバグを防ぐことができます。

初期化はinitialブロック内で行います。

●Verilogの動的配列のカスタマイズ方法

Verilogの動的配列はその柔軟性から、様々なカスタマイズが可能です。

ここではその一部を紹介します。

○多次元の動的配列

Verilogでは多次元の動的配列を作成することが可能です。

これは2次元以上のデータ構造を扱いたい場合に有用で、例えば、行列やテンソルのような高次元データを扱う際に使用します。

次に示すコードでは、2次元の動的配列を宣言し、その各要素に値を設定しています。

この例では、5×5の2次元配列を作成し、各要素に連番の値を設定しています。

  module top;
    // 2次元動的配列の宣言
    int array2D[][];

    initial begin
      // 配列のサイズを設定
      array2D = new[5];
      for (int i = 0; i < 5; i = i + 1) {
        array2D[i] = new[5];
        for (int j = 0; j < 5; j = j + 1) {
          // 値を設定
          array2D[i][j] = i * 5 + j;
        }
      }
      // 配列の値を出力
      for (int i = 0; i < 5; i = i + 1) {
        for (int j = 0; j < 5; j = j + 1) {
          $display("array2D[%0d][%0d] = %0d", i, j, array2D[i][j]);
        }
      }
    end
  endmodule

このコードは5×5の二次元配列を生成し、配列の各要素に連番の値を格納しています。

具体的には、i * 5 + jの計算結果を格納します。その後、配列の各要素を出力しています。

結果として次のような出力が得られます。

array2D[0][0] = 0
array2D[0][1] = 1
array2D[0][2] = 2
...
array2D[4][2] = 22
array2D[4][3] = 23
array2D[4][4] = 24

このようにVerilogの動的配列は多次元化することが可能で、様々な高次元データの処理に利用することができます。

次に進む前に、一つの重要な注意点を挙げておきます。

それは、多次元の動的配列では、各次元ごとにサイズを個別に指定する必要があるということです。

この例では、まず最初に一次元目のサイズをnew[5]で設定し、その後で二次元目のサイズをnew[5]で設定しています。

このように各次元ごとにnew[]を使用してサイズを設定することを忘れないようにしましょう。

まとめ

この記事では、Verilogの動的配列の詳細な使い方を解説しました。

基本的な使い方から、リサイズや反転、さらには多次元化といった高度な使い方までを解説しました。

また、動的配列を使用する際の注意点とそれに対する対策も説明しました。

動的配列はその柔軟性から様々な用途で使用することができます。

しかし、その柔軟性故に注意が必要な点も存在します。

動的配列のサイズ管理や初期化など、注意点を抑えて安全に使用することが重要です。

Verilogはそのパワフルさから幅広いアプリケーションで使用されています。

この記事がVerilogの動的配列をより効果的に使用するための一助となれば幸いです。