VHDLでNORゲートをマスター!初心者向けのステップバイステップ10選

VHDLのNORゲートを図解して学ぶイラストVHDL
この記事は約17分で読めます。

 

【サイト内のコードはご自由に個人利用・商用利用いただけます】

この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を凌駕する現役のプログラマチームによって監修されています。

サイト内のコードを共有する場合は、参照元として引用して下さいますと幸いです

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
(送信された情報は、プライバシーポリシーのもと、厳正に取扱い、処分させていただきます。)

はじめに

VHDLは、デジタル回路の設計やシミュレーションに使用されるプログラム言語です。

特に、FPGAやASICなどのカスタム回路の設計において重要な役割を果たしています。

この記事では、VHDLでのNORゲートの使い方と、その魅力を完全に理解するための10の詳細な例を初心者向けに解説します。

●VHDLとは

VHDLは、”VHSIC Hardware Description Language”の略で、デジタル回路の動作や構造を記述するための言語です。

複雑な回路設計を効率的に行うための強力なツールとして、世界中のエンジニアに広く採用されています。

○VHDLの基本的な概要

VHDLは、ハードウェア記述言語として、論理ゲートからマイクロプロセッサーまでのさまざまなデジタルデバイスの動作や構造を定義するのに適しています。

この言語を用いることで、ハードウェアの動作を高レベルで記述し、それを実際のチップ上で動作する形に変換することができます。

●NORゲートとは

NORゲートは、論理ゲートの一つで、すべての入力が0の場合にのみ1を出力する特性を持っています。

それ以外の場合、出力は0となります。

○論理的な性質

NORゲートは、ORゲートの否定であり、複数の入力のどれもが真でない場合に、真を出力します。

論理式で表すと、( Y = \overline{A + B} ) となります。

○実際の回路図

NORゲートの回路図は、ORゲートに続いて否定を表すバブルが付いています。

このバブルが、ORの出力を反転する役割を果たしています。

●VHDLでのNORゲートの表現方法

VHDLでNORゲートを記述するには、”nand”キーワードを使用します。

○基本的なコードの形式

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_GATE is
Port ( A : in STD_LOGIC;
B : in STD_LOGIC;
Y : out STD_LOGIC);
end NOR_GATE;

architecture Behavior of NOR_GATE is
begin
Y <= A nor B;
end Behavior;

このコードでは、VHDLを使って2入力NORゲートを定義しています。

この例では、AとBを入力として受け取り、そのNOR結果をYに出力しています。

実行すると、入力AとBがともに0の場合にのみ、出力Yが1になります。

それ以外の場合、Yは0となります。

●NORゲートの使い方

VHDL言語を使用して、NORゲートを効果的に実装する方法を学ぶことで、ディジタルロジックの設計において、さまざまな応用が可能になります。

NORゲートは、その名の通り、NOR論理を実現するためのゲートです。

ここでは、NORゲートの基本的な使い方や応用例について、初心者でも理解できるように詳細に解説します。

○サンプルコード1:基本的なNORゲートの実装

このコードではVHDLを使って最も基本的なNORゲートを実装するコードを表しています。

この例では2つの入力AとBを取り、そのNORの出力を得ることができます。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity Basic_NOR is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           Y : out STD_LOGIC);
end Basic_NOR;

architecture Behavioral of Basic_NOR is
begin
    Y <= A NOR B;  -- NOR演算
end Behavioral;

このコードの中で、A NOR Bの部分がNOR論理を実装している箇所です。

入力が2つの信号AとBで、出力Yに対してNOR論理の結果が出力される仕組みとなっています。

このコードを実行すると、AとBがともに’0’の場合、出力Yは’1’となり、それ以外の場合は’0’となります。

○サンプルコード2:2つの入力を持つNORゲート

こちらのコードでは、2つの入力を持つNORゲートの動作を詳しく観察するためのテストベンチを用意しています。

この例では、入力の組み合わせに応じてNORゲートの出力がどのように変化するかを確認しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_Testbench is
end NOR_Testbench;

architecture sim of NOR_Testbench is
    signal A, B : STD_LOGIC := '0';
    signal Y   : STD_LOGIC;
begin
    DUT: entity work.Basic_NOR port map (A, B, Y);

    process
    begin
        A <= '0'; B <= '0'; wait for 10 ns;  -- コメント:入力が0, 0の場合
        A <= '0'; B <= '1'; wait for 10 ns;  -- コメント:入力が0, 1の場合
        A <= '1'; B <= '0'; wait for 10 ns;  -- コメント:入力が1, 0の場合
        A <= '1'; B <= '1'; wait for 10 ns;  -- コメント:入力が1, 1の場合
        wait;
    end process;
end sim;

このテストベンチを使用すると、2つの入力AとBの異なる組み合わせごとに、NORゲートの出力がどのように変化するかを10nsごとに観察することができます。

出力Yの結果から、入力の組み合わせに応じて、期待通りのNOR論理が実現されていることが確認できます。

○サンプルコード3:複数の入力を持つNORゲート

VHDLでは、3つ以上の入力を持つNORゲートも簡単に実装することができます。

このコードでは、3つの入力A、B、Cを使ってNORゲートを実装しています。

この例では、3つの入力のいずれも’0’でなければ、出力は’0’となります。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity Three_Input_NOR is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           C : in  STD_LOGIC;
           Y : out STD_LOGIC);
end Three_Input_NOR;

architecture Behavioral of Three_Input_NOR is
begin
    Y <= A NOR B NOR C;  -- 3入力のNOR演算
end Behavioral;

このコードを実行すると、3つの入力A, B, Cがすべて’0’の場合、出力Yは’1’となります。

それ以外の場合は、出力Yは’0’となります。

●NORゲートの応用例

NORゲートはその単純さから、様々なディジタルロジックの基盤として利用される要素です。

VHDLでのNORゲートの応用例を学ぶことで、より高度なロジックの設計やカスタマイズが容易になります。

○サンプルコード4:NORゲートを使ったラッチ回路

このコードでは、NORゲートを使用してSRラッチ回路を実装する方法を表しています。

この例では、Set(S)とReset(R)の入力を使って、ラッチ回路の状態を制御しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_Latch is
    Port ( S : in STD_LOGIC;
           R : in STD_LOGIC;
           Q : out STD_LOGIC;
           Q_bar : out STD_LOGIC);
end NOR_Latch;

architecture Behavioral of NOR_Latch is
    signal internal_Q, internal_Q_bar : STD_LOGIC;
begin
    internal_Q <= R NOR internal_Q_bar;
    internal_Q_bar <= S NOR internal_Q;

    Q <= internal_Q;
    Q_bar <= internal_Q_bar;
end Behavioral;

SRラッチ回路は、2つのNORゲートを交差接続して構成されています。

SとRの入力が共に’0’の場合、出力QとQ_barは変化しない現状を保持します。

Sが’1’、Rが’0’の場合、Qは’1’になり、Q_barは’0’になります。

その逆の場合、Qは’0’、Q_barは’1’となります。

このラッチ回路を使ってデータの一時的な保持や状態の保存などの機能を実現することができます。

○サンプルコード5:NORゲートの組み合わせ

NORゲートの組み合わせにより、異なる論理機能を持つ複雑な回路を構築することができます。

このコードでは、NORゲートのみを使用して、AND論理を実現する方法を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_AND is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           Y : out STD_LOGIC);
end NOR_AND;

architecture Behavioral of NOR_AND is
begin
    Y <= (A NOR A) NOR (B NOR B);
end Behavioral;

ここで、入力AとBがともに’1’の場合、出力Yは’1’となり、それ以外の場合は’0’となります。

このようにNORゲートの組み合わせを工夫することで、他の論理ゲートの機能を模倣することが可能です。

○サンプルコード6:NORゲートを活用したセンサー応答

NORゲートはセンサーシステムのロジック部分としても利用できます。

このコードでは、2つのセンサー入力を取得し、それらが特定の状態を示す場合にアラームを鳴らすシステムを実装しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity Sensor_Alarm is
    Port ( Sensor1 : in STD_LOGIC;
           Sensor2 : in STD_LOGIC;
           Alarm : out STD_LOGIC);
end Sensor_Alarm;

architecture Behavioral of Sensor_Alarm is
begin
    Alarm <= Sensor1 NOR Sensor2;
end Behavioral;

このシステムでは、Sensor1とSensor2のどちらもアクティブでない場合(’0’の場合)にアラーム(Alarm)が鳴るように設計されています。

センサーが特定の状態を表すと、アラームが反応して注意を引き付けることができます。

○サンプルコード7:高度なNOR回路設計

VHDLでのNORゲートの応用として、高度な回路設計に取り組む際の実例を紹介します。

ここでは、NORゲートを使用して高度な論理機能を持つ回路を設計する方法に焦点を当てています。

このコードではVHDLを使って、NORゲートを使用した高度な回路設計の方法を表しています。

この例では、複数のNORゲートを組み合わせて、特定の論理関数を実現しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity AdvancedNORCircuit is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           C : out  STD_LOGIC);
end AdvancedNORCircuit;

architecture Behavioral of AdvancedNORCircuit is
begin
    -- NORゲートを使用した高度な論理関数の実現
    C <= (A NOR B) NOR B;
end Behavioral;

上記のコードは、二つの入力AとBを受け取り、それらの論理値を用いて特定の論理関数を実現するものです。

具体的には、出力Cは、入力AとBをNORゲートで処理した後、さらにその結果とBを再度NORゲートで処理することで得られます。

この回路をシミュレーションすると、例えばAが真でBが偽のとき、出力Cは真になります。

これは、最初のNORゲートでAとBが真と偽なので偽が出力され、その後のNORゲートで偽とB(偽)が入力されると、結果が真となるためです。

次に、注意点として、高度な回路設計を行う際には、使用するゲートの数や接続の仕方によっては、タイミングの問題やノイズの影響を受けやすくなることがあります。

特に、複雑な回路を設計する場合、シミュレーションで十分に動作を確認することが必要です。

さらに、実際のハードウェア上での動作も確認することで、設計の信頼性を高めることができます。

●注意点と対処法

VHDLでのNORゲート設計やシミュレーションを行う際には、いくつかの注意点とそれに対する対処法が必要です。

ここでは、特に初心者が陥りやすい問題や、頻繁に出くわすことがあるトラブルについて、詳しく解説していきます。

○電源電圧やグラウンドに関する注意

NORゲートを物理的な回路として実装する際、電源電圧やグラウンド接続の誤りは大きなトラブルの原因となります。

これは、VHDLでのシミュレーションでも同様で、特に初心者がよく見落とすポイントの一つです。

このコードでは、電源電圧やグラウンドの接続を正確に行う方法を紹介しています。こ

の例では、NORゲートの入力や出力に適切な電圧を供給して、正確な動作を確認する方法を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_GATE is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           Vout : out  STD_LOGIC);
end NOR_GATE;

architecture Behavioral of NOR_GATE is
begin
    Vout <= (A NOR B);
end Behavioral;

このサンプルコードを実行すると、AとBの入力値に基づいてVoutが正確に出力されることが期待されます。

ここで、電源電圧やグラウンドの接続が不適切だと、Voutの出力が不安定になることがあるので注意が必要です。

○NORゲートの特性によるトラブルとその解決策

NORゲートの特性を十分に理解していないと、思わぬ動作不良やエラーが生じることがあります。

例えば、NORゲートの入力が両方とも’1’の場合、出力は’0’となりますが、これを逆に認識していると、設計した回路が正常に動作しないことがあります。

このコードでは、NORゲートの特性によるトラブルを回避するためのサンプルを表しています。

この例では、NORゲートの入力値を明確に指定して、期待する出力値を得る方法を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity NOR_TEST is
end NOR_TEST;

architecture Behavioral of NOR_TEST is
    signal A : STD_LOGIC := '1';
    signal B : STD_LOGIC := '1';
    signal Vout : STD_LOGIC;
begin
    Vout <= (A NOR B);

    process
    begin
        wait for 10 ns;
        A <= '0'; B <= '0';
        wait for 10 ns;
        A <= '1'; B <= '0';
        wait for 10 ns;
        A <= '0'; B <= '1';
        wait for 10 ns;
        A <= '1'; B <= '1';
        wait;
    end process;
end Behavioral;

このサンプルコードを実行すると、NORゲートの入力値の組み合わせに応じて、Voutが適切に出力されることが確認できます。

特に、AとBが両方とも’1’の場合、Voutが’0’となることを確認することで、NORゲートの基本的な特性を理解することができます。

●カスタマイズの方法

VHDLのNORゲートの設計やシミュレーションは初心者にとっても十分に理解しやすいものですが、実際の利用シーンや要件に合わせてカスタマイズする際には、いくつかのテクニックや方法が必要になります。

ここでは、そのカスタマイズ方法を3つのサンプルコードを用いて詳しく解説していきます。

○サンプルコード8:カスタマイズ可能なNORゲートの設計

このコードでは、パラメータを用いてNORゲートの入力数を動的に変更できるカスタマイズ可能なNORゲートの設計を表しています。

この例では、ジェネリックを使用して入力数を指定し、その数に応じてNORゲートの動作を確認しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity CUSTOM_NOR is
    generic(N : integer := 2); -- 入力数のデフォルトは2
    port(inputs : in STD_LOGIC_VECTOR(N-1 downto 0);
         output : out STD_LOGIC);
end CUSTOM_NOR;

architecture Behavioral of CUSTOM_NOR is
begin
    output <= NOR inputs;
end Behavioral;

この設計により、NORゲートの入力数をジェネリックの値で簡単に変更することができます。

例えば、4つの入力を持つNORゲートを作成する場合、ジェネリックNを4に設定するだけで実現することができます。

○サンプルコード9:NORゲートの出力を調整する方法

このコードでは、NORゲートの出力に遅延を持たせる方法を表しています。

この例では、シグナルを使用して遅延時間を設定し、その時間だけNORゲートの出力を遅らせています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity DELAYED_NOR is
    port(A : in STD_LOGIC;
          B : in STD_LOGIC;
          output : out STD_LOGIC);
end DELAYED_NOR;

architecture Behavioral of DELAYED_NOR is
    signal delayed_output : STD_LOGIC;
begin
    delayed_output <= A NOR B after 10 ns; -- 10ナノ秒の遅延
    output <= delayed_output;
end Behavioral;

この方法を使用することで、特定のタイミングでのNORゲートの出力を制御することができます。

特に、複数のデバイスや回路と連携する場合など、出力のタイミングを揃える必要がある際に有効です。

○サンプルコード10:NORゲートの拡張機能

このコードでは、NORゲートにトグル機能を追加して、出力を反転させる機能を表しています。

この例では、追加の入力ポートを用いて、その値によってNORゲートの出力をトグルするかどうかを決定しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity TOGGLE_NOR is
    port(A : in STD_LOGIC;
          B : in STD_LOGIC;
          toggle : in STD_LOGIC; -- この入力で出力を反転するか決定
          output : out STD_LOGIC);
end TOGGLE_NOR;

architecture Behavioral of TOGGLE_NOR is
begin
    process(A, B, toggle)
    begin
        if toggle = '1' then
            output <= NOT(A NOR B);
        else
            output <= A NOR B;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

トグル入力が’1’のとき、NORゲートの出力は反転し、’0’のときは通常のNORゲートとして動作します。

このような拡張機能を利用することで、NORゲートをより柔軟に使用することができるようになります。

まとめ

VHDLでのNORゲートの実装とカスタマイズに関する解説を行いました。

初心者でも理解しやすいように、基本的なコンセプトから応用的な内容、さらにはカスタマイズ方法までを詳しく説明しました。

これらの知識を基に、実際の回路設計やシミュレーションにおいて、NORゲートを効果的に使用し、より高度なデジタルロジックの設計を行うことができるでしょう。

VHDLの学習を深めることで、デジタル回路の設計の幅も広がるとともに、より高度なシステムの開発も可能になります。