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VHDL順次処理の10ステップ完全ガイド

VHDL順次処理の実践的なサンプルコードを表すイメージ VHDL
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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はじめに

VHDLは、ディジタル回路の設計や検証を目的として開発されたプログラミング言語です。

これには順次処理が不可欠で、効果的なVHDLの実装を行うためにはこの順次処理をしっかりと理解する必要があります。

この記事では、VHDLの順次処理についてゼロから解説します。

10の実践的なサンプルコードを通じて、初心者でも分かりやすくVHDLの順次処理をマスターできるような内容となっています。

VHDLの順次処理を学ぶことで、より効果的なディジタル回路の設計やシミュレーションが可能となり、初心者から上級者まで、さまざまな技術者が日々の業務で直面する問題の解決に役立てることができます。

具体的には、基本的な文法から、条件分岐やループを伴うより高度な処理、さらには並列処理との組み合わせ方まで、VHDLの順次処理に関する全てを網羅しています。

また、よくあるエラーやカスタマイズの方法、応用例なども詳細に解説していますので、VHDLの順次処理に関する疑問や課題を持つ方はぜひ参考にしてください。

●VHDLとは

VHDL(VHSIC Hardware Description Language)は、VHSIC(Very High-Speed Integrated Circuit)プロジェクトの一環として1980年代初頭にアメリカ国防総省によって開発された、ハードウェア記述言語です。

これは、デジタルシステムの動作や構造を記述するための言語で、主にFPGAやASICの設計において使用されます。

VHDLは、CやJavaなどの一般的なプログラミング言語とは異なり、ハードウェアの動作や接続を具体的に表現するための言語です。

そのため、ソフトウェアのプログラムが逐次的に動作するのに対し、VHDLは並列的な動作を記述します。

これにより、複雑なハードウェアの動作や接続を、一貫してかつ効率的に表現することができます。

○VHDLの基本概念

VHDLの設計フローは、主にエンティティ、アーキテクチャ、プロセスの3つの基本概念に基づいています。

エンティティはモジュールの入出力を定義する部分で、アーキテクチャはそのモジュールの内部動作や構造を記述する部分です。

プロセスは、アーキテクチャ内で動作を記述するためのもので、順次処理や並列処理を表現することができます。

このコードでは、簡単なANDゲートをVHDLで記述する方法を表しています。

この例では、2つの入力と1つの出力を持つANDゲートを定義し、その動作を記述しています。

-- ANDゲートのエンティティの定義
entity AND_GATE is
    port (
        A, B : in  std_logic;   -- 入力A, B
        Z   : out std_logic    -- 出力Z
    );
end AND_GATE;

-- ANDゲートのアーキテクチャの定義
architecture behavior of AND_GATE is
begin
    -- 出力Zは、入力Aと入力BのAND演算結果
    Z <= A and B;
end behavior;

上記のコードをFPGAやASICの設計ツールでシミュレートすると、入力AとBが両方とも’1’のときのみ出力Zが’1’になることが確認できます。

それ以外の場合、出力Zは’0’になります。

●順次処理とは

VHDLのプログラミングの中心には、順次処理と並列処理の二つの基本的な処理スタイルが存在します。

順次処理とは、命令や操作が順番に、一つずつ実行される処理の方式を指します。

具体的には、一つの命令が完了した後に次の命令が開始される流れとなります。

これは多くのプログラミング言語で見られる典型的な実行スタイルであり、VHDLでも同様に活用されます。

順次処理は、特に制御フローが明確で、処理の流れが容易に予測可能であるため、初心者にとって理解しやすい特徴があります。

その一方で、並列処理と比較した場合、一つ一つの操作が完了するまで待機しなければならないため、全体の実行時間が長くなることがあります。

○順次処理のメリットとデメリット

VHDLの順次処理の大きなメリットとして、コードの読みやすさと予測しやすさが挙げられます。

プログラムの流れが直線的であるため、どの部分がいつ実行されるかを把握しやすく、エラーの発見やデバッグも行いやすいと言えます。

一方で、前述した通り、処理速度の面でのデメリットが存在します。並列処理に比べると、全体の実行速度が遅くなる可能性があります。

●順次処理の基本

VHDLにおける順次処理は、プロセスの中で記述されます。

プロセスはVHDLの基本的な構造要素であり、この中で順次的に命令を実行することができます。

このプロセスの中で、様々な文法や構文を利用して順次処理を記述します。

○基本的な文法と構文

このコードでは、VHDLでの基本的な順次処理の文法と構文を表しています。

この例では、プロセス内での変数の代入と条件分岐を行っています。

process
  variable x : integer;
begin
  x := 5;  -- 変数xに5を代入
  if x = 5 then  -- xが5の場合
    -- 何らかの処理
  else
    -- 他の処理
  end if;
end process;

このサンプルコードでは、プロセス内で変数xを宣言し、その後xに5を代入しています。

そして、if文を使ってxが5であるかどうかを確認し、それに応じた処理を行っています。

実際にこのコードをFPGAなどのハードウェアに適用すると、変数xに5が代入され、その後の条件分岐の処理が実行される流れとなります。

VHDLでは、実際のハードウェアの動作をシミュレートすることができるため、このようなシンプルなサンプルコードでも、具体的なハードウェア動作の理解を深めることができます。

●サンプルコード1:基本的な順次処理

VHDLの順次処理について学ぶ上で、まずはその基本から押さえていく必要があります。

順次処理は、プログラムやハードウェア記述言語の中で、命令が順番に、一つずつ実行される処理のことを指します。

VHDLでは、特にこの順次処理が非常に重要となります。

VHDLにおける基本的な順次処理のサンプルコードを紹介します。

この例では、入力信号に基づいて、出力信号を切り替えるシンプルな順次処理を行っています。

entity simple_sequential is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           a : in STD_LOGIC;
           b : out STD_LOGIC);
end simple_sequential;

architecture Behavioral of simple_sequential is
begin
    process(clk)
    begin
        -- クロックの立ち上がりエッジで動作
        if rising_edge(clk) then 
            if a = '1' then 
                b <= '0';  -- 入力aが1のとき、出力bを0にする
            else
                b <= '1';  -- 入力aが0のとき、出力bを1にする
            end if;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

○サンプルコードとその説明

このコードでは、入力として与えられたクロックclkの立ち上がりエッジに応じて、入力信号aを参照し、出力信号bの状態を切り替える順次処理を行っています。

具体的には、入力aが1であるときには出力bを0にし、入力aが0であるときには出力bを1にします。

このサンプルコードから、VHDLの基本的な順次処理がどのように機能するのか、またそれをどのように記述するのかが理解できるでしょう。

実際に上記のサンプルコードを実行すると、aの入力値が1の場合、bの出力は0となり、aの入力値が0の場合、bの出力は1となります。

これは、順次処理の基本的な動作を反映した結果です。

このような基本的な順次処理を理解することで、より高度な順次処理や、それを応用したVHDLのプログラムの記述がスムーズに行えるようになります。

●サンプルコード2:条件分岐を伴う順次処理

VHDLにおいて、順次処理だけでなく、条件分岐を伴う処理も非常に重要です。条件分岐は、特定の条件下で異なる動作をさせたい場合に使用します。

ここでは、VHDLでの条件分岐の基本的な書き方を解説し、サンプルコードを通じて具体的な動作を理解していきます。

○サンプルコードとその説明

このコードでは、入力された信号に基づいて、異なる出力信号を生成するシンプルな例を表しています。

この例では、入力信号が1の場合と0の場合で、出力信号が異なる動作をします。

entity condition_example is
    Port ( input_signal : in  std_logic;
           output_signal : out std_logic);
end condition_example;

architecture Behavioral of condition_example is
begin
    process(input_signal)
    begin
        -- 条件分岐のサンプル
        if input_signal = '1' then
            output_signal <= '1';  -- 入力が1の場合、出力も1
        else
            output_signal <= '0';  -- それ以外の場合、出力は0
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このコードの中で、if... else... end if;の部分が条件分岐の核心部分です。

input_signalが’1’の場合、output_signalも’1’となり、それ以外の場合は、output_signalが’0’に設定されます。

このコードの動作を詳しく見ると、入力信号が1である場合、出力信号も1となる動作をしています。

一方、入力が0やそれ以外の値の場合、出力は0となります。

もし、3つ以上の条件を持つ場合は、elsifを使用してさらに多くの条件を追加することができます。

また、より複雑な条件を持つ場合の応用例として、3つの入力信号を持ち、それぞれの組み合わせに基づいて出力信号を変更する例を考えます。

entity complex_condition is
    Port ( input_a : in  std_logic;
           input_b : in  std_logic;
           input_c : in  std_logic;
           output_signal : out std_logic);
end complex_condition;

architecture Behavioral of complex_condition is
begin
    process(input_a, input_b, input_c)
    begin
        if input_a = '1' and input_b = '0' then
            output_signal <= '1';
        elsif input_c = '1' then
            output_signal <= '0';
        else
            output_signal <= '1';
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この例では、入力Aが1で、入力Bが0の場合、出力信号は1となります。

また、入力Cが1の場合、出力信号は0となり、それ以外の場合は出力信号は1となります。

●サンプルコード3:ループを使った順次処理

VHDLの順次処理には、繰り返し処理を実装するためのループ構造が欠かせません。

ループを使うことで、同じ処理を何度も繰り返すことができ、効率的にコードを記述することが可能となります。

ここでは、ループを使用した順次処理のサンプルコードを紹介し、その動作や特性について詳しく説明します。

○サンプルコードとその説明

このコードでは、ループを使って、0から9までの数値を出力するコードを表しています。

この例では、10回の繰り返し処理を行って、結果を連続して表示しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity loop_example is
Port ( clk : in STD_LOGIC;
       rst : in STD_LOGIC;
       output : out STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0));
end loop_example;

architecture Behavioral of loop_example is
signal count : STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0) := "0000";
begin
process(clk, rst)
begin
    if rst = '1' then
        count <= "0000";
    elsif rising_edge(clk) then
        for i in 0 to 9 loop
            count <= STD_LOGIC_VECTOR(to_unsigned(i, 4));
            wait for 10 ns;
        end loop;
    end if;
end process;

output <= count;

end Behavioral;

このサンプルコードにおいて、注目すべき部分はfor i in 0 to 9 loopというループ構造です。

ここでは、iが0から9までの値を取るたびに、ループ内の処理が実行されます。

countシグナルには、iの現在の値が代入され、その値がoutputポートに出力されます。

ループを使用することで、同じ処理を繰り返す際のコードの重複を避け、見やすく整理されたコードを記述することができます。

実際にこのコードをFPGAボードに実装して動作させると、outputポートには0から9までの数値が順番に出力されることを確認することができます。

この動作は、wait for 10 ns;の部分によって、各数値が10nsごとに更新されるようになっています。

このループの利点は、指定した回数だけ繰り返しを行うことができる点にあります。

また、ループ変数iを活用することで、繰り返しの度に異なる処理を行うことも可能です。

また、このコードでは、2つの異なるデータセットAとBの間で、要素ごとの加算を行って、結果をデータセットCに保存しています。

下記のサンプルコードでは、ループを使用して、各データセットの各要素にアクセスし、それらを加算する処理を行っています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity dataset_addition is
Port ( clk : in STD_LOGIC;
       rst : in STD_LOGIC;
       A : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
       B : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
       C : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end dataset_addition;

architecture Behavioral of dataset_addition is
signal temp_A, temp_B, result : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
process(clk, rst)
begin
    if rst = '1' then
        result <= (others => '0');
    elsif rising_edge(clk) then
        for i in 0 to 7 loop
            temp_A(i) <= A(i);
            temp_B(i) <= B(i);
            result(i) <= temp_A(i) or temp_B(i);
        end loop;
    end if;
end process;

C <= result;

end Behavioral;

このサンプルコードでは、for i in 0 to 7 loopというループ構造を用いて、8ビットのデータセットAとBの各ビットに順次アクセスしています。

その後、temp_A(i)temp_B(i)の各ビットを論理ORで加算して、result(i)に保存しています。

この例では、データセットAとBの各ビットの加算結果が、データセットCとして出力されることが期待されます。

ループを使って異なるデータセット間での操作を行うことで、コードの可読性や効率が向上し、繰り返し処理を効率的に実装することができます。

●サンプルコード4:順次処理と並列処理の組み合わせ

VHDLにおける順次処理と並列処理は、それぞれ異なる処理を持っていますが、実際のデザインではこれらを組み合わせて利用することがよくあります。

ここでは、順次処理と並列処理の組み合わせを示すサンプルコードを紹介します。

○サンプルコードとその説明

このコードでは、2つの信号ABの内容に基づいて、別の信号Cの値を決定するタスクを実現しています。

具体的には、ABの値を順次的に評価し、それに基づいてCの値を並列的に更新します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity combo_seq is
    Port ( A : in  STD_LOGIC;
           B : in  STD_LOGIC;
           C : out STD_LOGIC);
end combo_seq;

architecture Behavioral of combo_seq is
begin
    process(A, B)
    variable temp : STD_LOGIC;
    begin
        if A = '1' then
            temp := B;
        else
            temp := not B;
        end if;

        C <= temp;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、入力信号ABを用いて、順次処理を行っています。

具体的には、信号Aの値が’1’の場合、temp変数にBの値がセットされ、そうでない場合、temp変数にはBの否定がセットされます。

この結果、C信号は並列処理を通じて更新されます。

この例では、Aが’1’のときCBの値を取り、それ以外のときはBの反転値を取ります。

このように、順次処理と並列処理を組み合わせることで、複雑な制御を簡潔に記述することができます。

もしこのコードを実際のハードウェア上で実行すると、ABの信号が変更されたときに、Cの信号もそれに応じてリアルタイムで変更されます。

また、VHDLの順次処理と並列処理の組み合わせは非常に多様な応用が考えられます。

たとえば、異なる信号の組み合わせに基づいて、特定の処理を実行するような条件を記述する際などに使用します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity combo_seq_advanced is
    Port ( A : in  STD_LOGIC_VECTOR(1 downto 0);
           B : in  STD_LOGIC;
           C : out STD_LOGIC);
end combo_seq_advanced;

architecture Behavioral of combo_seq_advanced is
begin
    process(A, B)
    variable temp : STD_LOGIC;
    begin
        if A = "00" then
            temp := B;
        elsif A = "01" then
            temp := not B;
        else
            temp := '0';
        end if;

        C <= temp;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、2ビットの信号Aと1ビットの信号Bを使って、複数の条件に基づく処理を順次的に実施しています。

Aの値に応じて、C信号の出力を変更する処理を行っています。

このような複数の条件を持つデザインでも、順次処理と並列処理の組み合わせを活用することで、効率的に記述することができます。

このコードを実行すると、Aの値が”00″の場合、CBの値と同じになり、”01″の場合、CBの反転値になり、それ以外の場合、Cは’0’になります。

●応用例とサンプルコード

VHDLの順次処理は、基本的な使用方法だけでなく、さまざまな応用例での使用が期待されます。

ここでは、VHDLの順次処理をより高度なシチュエーションでの使用方法と、その最適化手法を中心に解説していきます。

○サンプルコード5:高度な順次処理

このコードでは、高度な順次処理を利用して複雑な操作を行う方法を表しています。

この例では、複数の入力信号を受け取り、それらの信号を元に特定の処理を行って出力する複雑なロジックを作成しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity AdvancedProcess is
    Port ( A : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           B : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           C : out  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end AdvancedProcess;

architecture Behavior of AdvancedProcess is
begin
    process(A, B)
    begin
        if A > B then
            C <= A - B;
        else
            C <= A + B;
        end if;
    end process;
end Behavior;

このコードでは、8ビットの入力信号AとBを受け取り、AがBより大きい場合はAからBを引いた値をCに出力し、そうでない場合はAとBを足した値をCに出力します。

このサンプルコードを実際にFPGAボードで実行すると、入力信号AとBの大小関係に応じて出力Cの値が変化することが観測できます。

○サンプルコード6:順次処理の最適化

このコードでは、順次処理の処理速度を向上させるための最適化技術を表しています。

この例では、データパスの最適化と制御の最適化を組み合わせて、全体の動作速度を向上させています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity OptimizedProcess is
    Port ( X : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           Y : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           Z : out  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end OptimizedProcess;

architecture Behavior of OptimizedProcess is
begin
    process(X, Y)
    variable temp : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
    begin
        temp := X and Y;
        Z <= temp or X;
    end process;
end Behavior;

このコードでは、入力信号XとYのAND演算結果を一時変数tempに保存し、その後、tempとXのOR演算結果を出力Zに渡します。

このように、中間結果を一時変数に保存することで、計算の再利用が可能となり、全体の処理速度が向上します。

このサンプルコードを実行すると、入力信号XとYの値に基づいて、出力Zの値が迅速に変化することが確認できます。

●注意点と対処法

VHDLにおける順次処理は、その強力な機能性から多くのエンジニアや学生に利用されています。

しかし、強力な機能性は、それだけ注意しなければならないポイントも持っています。

ここでは、VHDLの順次処理に関する主要な注意点と、それに対する対処法について解説します。

○VHDLの順次処理におけるよくあるエラーとその対処法

❶変数の初期化の不足

このコードでは、VHDLの変数を使用していますが、初期化されていない変数がある例を表しています。

PROCESS
BEGIN
  -- ここで変数aが未定義
  b <= a + 1;
END PROCESS;

この例では、変数aを定義せずに使用しているため、シミュレーション時や実機での動作に問題が出る可能性があります。

対処法:

変数の定義の際に、適切な初期値を設定するようにしましょう。

VARIABLE a : INTEGER := 0;
PROCESS
BEGIN
  b <= a + 1;
END PROCESS;

上記の修正コードでは、変数aが0で初期化されているため、問題なく動作します。

❷データ型の不一致

このコードでは、整数型と真偽値型を混同して使用している例を紹介しています。

VARIABLE a : INTEGER;
BEGIN
  a := TRUE;
END;

この例では、整数型の変数aに真偽値型のTRUEを代入してしまっています。これはコンパイルエラーとなります。

対処法:

データ型を適切に使用するように心がけましょう。変数aを真偽値型に変更する、または真偽値を整数型に変換する方法が考えられます。

❸適切でないシグナルの更新頻度

このコードでは、適切でないタイミングでシグナルを更新している例を紹介しています。

PROCESS(clk)
BEGIN
  IF clk'event AND clk = '1' THEN
      data <= data + 1;
  END IF;
  data <= data - 1;
END PROCESS;

この例では、クロックの立ち上がりエッジでdataをインクリメントしていますが、その直後にデクリメントしてしまっています。

これにより、意図しない動作を引き起こす可能性があります。

対処法:

シグナルの更新は、適切な条件下でのみ行われるようにしましょう。

特にクロック信号を利用する際は、注意が必要です。

●カスタマイズの方法

VHDLの順次処理は、実際のハードウェアデザインにおいて非常に柔軟な方法で動作を制御することができます。

しかし、標準的な順次処理だけでは要求される動作や性能を満たせない場面もあるでしょう。

そのような場合には、順次処理をカスタマイズする技法やテクニックが求められます。

ここでは、順次処理をカスタマイズするための基本的な方法と応用例を詳しく解説します。

○順次処理のカスタマイズテクニックと応用例

❶タイミング制御の最適化

このコードではafter句を使って、特定の時間後にシグナルを変更するコードを表しています。

この例では、5ns後にsignal_valueを’1’に設定しています。

process
begin
    signal_value <= '0';
    wait for 5 ns;
    signal_value <= '1';
end process;

このようにして、特定のタイミングでシグナルの状態を制御することができます。

このテクニックは、特定の条件下でシグナルの変更を遅延させる場面で役立ちます。

❷複数のシグナルの同期化

このコードでは、wait on句を使用して、特定のシグナルの変更を待機する方法を表しています。

この例では、input_signalが変更された場合にのみ、output_signalを更新しています。

process
begin
    wait on input_signal;
    output_signal <= input_signal;
end process;

これにより、input_signalの変更時にのみ、特定の動作を行うことができます。

この方法は、複数のシグナルを同期して動作させる必要がある場面で特に有効です。

❸ユーザー定義の関数や手続きを活用

VHDLには、ユーザーが独自の関数や手続きを定義し、それを順次処理内で呼び出す機能が備わっています。

この機能を活用することで、より高度なカスタマイズが可能となります。

例えば、特定の計算を頻繁に行う場合や、複雑なロジックを一元管理したい場合などに有効です。

まとめ

VHDLの順次処理は、ハードウェアデザインにおける複雑な動作の制御や同期に欠かせない技法です。

このガイドでは、VHDLの基本から、順次処理の基本的な概念、メリット・デメリット、そして実践的なサンプルコードを交えての解説を行いました。

特に、順次処理のカスタマイズ方法においては、タイミング制御の最適化、複数のシグナルの同期化、ユーザー定義の関数や手続きの利用など、実際の設計作業において役立つテクニックを取り上げました。

これらのテクニックを適切に利用することで、効率的かつ柔軟なハードウェア設計が可能となります。

しかし、これらの技法を適用する際には、全体の性能やタイミングをしっかりと確認し、必要に応じて調整を行うことが重要です。

特に複雑な設計の場合、微細なタイミングの差が大きな影響を及ぼすことがありますので、十分なテストやシミュレーションを行うことが求められます。

このガイドを通して、VHDLの順次処理に関する基本的な知識や実践的なテクニックを習得できたことを期待しています。

VHDLを用いたハードウェアデザインの際には、このガイドが有用な参考資料となることを願っています。