VHDLで学ぶpositive関数の活用10選

VHDLのpositive関数を用いた回路設計のサンプルイメージVHDL
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説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

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はじめに

デジタル回路の設計で用いられるハードウェア記述言語VHDL。VHDLを使用する際に、数値データ型を効果的に扱うための関数として、positive関数があります。この記事では、初心者にもわかりやすい形で、VHDLのpositive関数の基本的な使い方から応用例まで、10のサンプルコードを通して詳しく解説していきます。VHDLを学ぶ際の参考として、また、既にVHDLを使用している方がさらにスキルアップを図るための情報源として、ぜひご活用ください。

●VHDLとpositive関数の基本

○VHDLの特徴

VHDLは、VHSIC Hardware Description Languageの略であり、高度集積回路のハードウェア記述言語として開発されました。

特に、複雑なデジタル回路の設計において、その表現力と柔軟性が高く評価されています。

○positive関数とは

positive関数は、VHDLにおける基本的な関数の一つです。

この関数は、整数を正の整数データ型、すなわちpositive型に変換する際に使用されます。

主に、範囲指定のある整数データを扱う際に利用されることが多いです。

例として、simpleなコードを紹介します。

signal my_signal: integer range 0 to 255;
begin
  my_signal <= positive(100);
end;

このコードでは、範囲が0から255までのinteger型の信号my_signalに、正の整数100をpositive関数を使って割り当てています。

この例では、整数100をpositive型としてmy_signalに割り当てています。

このコードが実行された場合、my_signalには正の整数100が割り当てられることになります。

このように、positive関数はVHDLでの数値データ型の扱いをよりシンプルに、かつ効果的にするための重要な関数となっています。

●positive関数の使い方

VHDLプログラミングにおけるpositive関数の活用は、回路設計やシミュレーションの過程で重要な役割を果たします。

ここでは、初心者にも理解しやすいよう、基本から応用までpositive関数の使い方をサンプルコードと共に徹底解説します。

○サンプルコード1:基本的な使用法

VHDLのpositive関数は、整数値やビットベクトルを正の整数値に変換するための関数です。

下記のコードは、最も基本的な使用法を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity positive_example is
    Port ( input : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           output : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end positive_example;

architecture Behavioral of positive_example is
begin
    process(input)
    begin
        output <= STD_LOGIC_VECTOR(positive(signed(input)));
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、8ビットの入力値inputをsigned型に変換し、positive関数を使用して正の整数に変換した後、再びSTD_LOGIC_VECTOR型に戻しています。

この例では、負の入力値も正の整数値に変換されることに注意してください。

○サンプルコード2:数値の変換

positive関数を使用すると、ビットベクトルから正の整数への変換が簡単に行えます。

下記の例では、16ビットのビットベクトルを正の整数に変換する方法を表します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity conversion_example is
    Port ( input16 : in  STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
           output16 : out STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0));
end conversion_example;

architecture Behavioral of conversion_example is
begin
    process(input16)
    begin
        output16 <= STD_LOGIC_VECTOR(positive(signed(input16)));
    end process;
end Behavioral;

○サンプルコード3:計算処理の例

positive関数を活用して、計算処理を実行する方法も考えられます。

下記のコードでは、入力値を2倍にした値を出力する例を表します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity calculation_example is
    Port ( input_val : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           output_val : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end calculation_example;

architecture Behavioral of calculation_example is
begin
    process(input_val)
    begin
        output_val <= STD_LOGIC_VECTOR(positive(signed(input_val) * 2));
    end process;
end Behavioral;

この例では、入力値input_valをsigned型に変換し、その値を2倍にした後、positive関数を使用して正の整数に変換しています。

この方法により、正の整数に基づく計算が可能となります。

○サンプルコード4:条件分岐での利用

positive関数は、条件分岐の中で特定の値に基づいた処理を行いたい場合にも役立ちます。

下記の例では、入力値が正の場合と負の場合で異なる処理を行っています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity condition_example is
    Port ( input_num : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           output_result : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end condition_example;

architecture Behavioral of condition_example is
begin
    process(input_num)
    begin
        if positive(signed(input_num)) > 0 then
            output_result <= input_num;
        else
            output_result <= STD_LOGIC_VECTOR(positive(signed(input_num)));
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このコードでは、入力値input_numが正である場合、そのままの値を出力します。

一方、入力値が負である場合、positive関数を使用して正の整数に変換した値を出力しています。

●positive関数の応用例

VHDLのpositive関数は、基本的な使用方法だけでなく、さまざまな応用例も存在します。

ここでは、positive関数を応用したサンプルコード5選を紹介します。

それぞれのコードは、初心者から上級者までのVHDLユーザーがpositive関数をより効果的に活用するためのものです。

○サンプルコード5:複雑な計算処理

このコードでは、positive関数を使って複数の数値を組み合わせた複雑な計算を行う例を表しています。

具体的には、いくつかの数値の平均値を求め、その結果をpositive関数を使用して正の整数として出力します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;

entity ComplexCalc is
    Port ( A : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           B : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           C : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           Avg : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end ComplexCalc;

architecture Behavioral of ComplexCalc is
begin
    process(A, B, C)
    variable temp : integer;
    begin
        temp := (CONV_INTEGER(A) + CONV_INTEGER(B) + CONV_INTEGER(C)) / 3;
        Avg <= CONV_STD_LOGIC_VECTOR(positive(temp), 8);
    end process;
end Behavioral;

この例では、A、B、Cの3つの数値の平均値を計算し、その結果をAvgとして出力します。

positive関数を使用して、結果が負の場合でも正の整数として扱います。

○サンプルコード6:外部モジュールとの組み合わせ

positive関数は、他のVHDLモジュールと組み合わせても利用可能です。

下記の例は、外部のモジュールExternalModuleと組み合わせて、データ処理を行う例を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;

entity MainModule is
    Port ( InputData : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           OutputData : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end MainModule;

architecture Behavioral of MainModule is
    signal temp : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    ExternalModule(InputData, temp);
    process(temp)
    begin
        OutputData <= CONV_STD_LOGIC_VECTOR(positive(CONV_INTEGER(temp)), 8);
    end process;
end Behavioral;

この例では、外部モジュールExternalModuleでデータ処理を行った後、その結果をpositive関数を使って正の整数に変換しています。

○サンプルコード7:データのフィルタリング

positive関数を使って、特定の条件を満たすデータだけをフィルタリングすることもできます。

下記の例は、入力データが正の場合だけ出力するフィルタリングのコードを表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;

entity DataFilter is
    Port ( InputData : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           OutputData : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end DataFilter;

architecture Behavioral of DataFilter is
begin
    process(InputData)
    variable temp : integer;
    begin
        temp := CONV_INTEGER(InputData);
        if temp > 0 then
            OutputData <= InputData;
        else
            OutputData <= (others => '0');
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この例では、入力データが正の場合はそのまま出力し、それ以外の場合は0を出力します。

○サンプルコード8:エラーハンドリング

positive関数を使用する際に、入力値が不正な場合やエラーが発生した場合の処理も考慮することが重要です。

下記のコードは、エラーハンドリングの一例を表しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;

entity ErrorHandler is
    Port ( InputData : in  STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           OutputData : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           ErrorFlag : out STD_LOGIC);
end ErrorHandler;

architecture Behavioral of ErrorHandler is
begin
    process(InputData)
    variable temp : integer;
    begin
        temp := CONV_INTEGER(InputData);
        if temp = 0 then
            ErrorFlag <= '1';
            OutputData <= (others => '0');
        else
            ErrorFlag <= '0';
            OutputData <= CONV_STD_LOGIC_VECTOR(positive(temp), 8);
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この例では、入力データが0の場合はエラーフラグを立て、0を出力します。

それ以外の場合は、positive関数を使用して正の整数として出力します。

○サンプルコード9:パラメータの最適化

VHDL設計でのパラメータ最適化は、高性能なデザインを実現するための鍵となります。

positive関数を用いると、よりシンプルに、かつ効率的にこの最適化を実現することが可能となります。

このコードではpositive関数を使ってパラメータの最適化を行うコードを表しています。

この例では、データセット内の正の数のみを取り出し、それを基に最適なパラメータ値を算出しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity param_optimization is
    Port ( data_in : in  STD_LOGIC_VECTOR (7 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR (7 downto 0));
end param_optimization;

architecture Behavior of param_optimization is
    signal temp_data : STD_LOGIC_VECTOR (7 downto 0);
begin
    process(data_in)
    begin
        -- 正の数値のみを取り出す
        if positive(data_in) then
            temp_data <= data_in;
        else
            temp_data <= "00000000";
        end if;
    end process;

    -- 最適なパラメータ値を算出
    data_out <= temp_data + "00000001";
end Behavior;

このコードでは、入力データが正である場合、そのデータをtemp_dataという信号に保存しています。

そうでない場合、temp_dataは0にリセットされます。

その後、temp_dataに1を加えて、data_outにその結果を出力しています。

これは、positive関数を用いた簡単なパラメータの最適化例として考えることができます。

このコードを実際にFPGAなどのデバイス上で動作させた場合、入力データが正の数値であれば、その値に1を加えた値がdata_outとして出力されます。

しかし、入力が負の数値である場合、data_outは1となります。

○サンプルコード10:組み込みシステムへの応用

VHDLのpositive関数は、数字を正の値に変換するための関数であり、これを使用することで、組み込みシステムの回路設計時に非常に有用です。

特に、組み込みシステムでは信号処理やセンサーのデータ処理を行う際に、負の数値が生じることが考えられます。

そのような場合、positive関数を活用してデータを安全に処理する方法を考えます。

このコードでは、組み込みシステムでセンサーデータを受け取り、そのデータが負の場合にはpositive関数を使って正の数値に変換するコードを表しています。

この例では、センサーデータを受け取り、それを正の数値に変換してLEDに表示しています。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_ARITH.ALL;
use IEEE.STD_LOGIC_UNSIGNED.ALL;

entity SensorDataProcessor is
    Port ( sensor_data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           led_data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end SensorDataProcessor;

architecture Behavior of SensorDataProcessor is
begin
    process(sensor_data_in)
    variable data_value: integer;
    begin
        data_value := to_integer(sensor_data_in);
        -- もしセンサーデータが負の場合、positive関数で正の値に変換
        if data_value < 0 then
            data_value := positive(data_value);
        end if;
        led_data_out <= to_std_logic_vector(data_value);
    end process;
end Behavior;

センサーからのデータを受け取るsensor_data_inという入力ポートが定義されています。また、結果をLEDに表示するためのled_data_outという出力ポートも定義されています。

プロセス内では、センサーからのデータを整数型のdata_valueに変換し、もしdata_valueが負の場合はpositive関数を使って正の値に変換します。

最後に、変換後の値をLEDに表示するために、led_data_outに代入しています。

この組み込みシステムの回路設計では、負の値のセンサーデータが入力された場合でも、LED表示は正の値として点灯します。

例えば、センサーから”-5″というデータが入力された場合、LEDには”5″として表示されます。

●注意点と対処法

positive関数を使用する際の主な注意点は、入力データがすでに正の場合には、結果は入力データと同じ値を返すことです。

また、0の場合も変化はありません。しかし、組み込みシステムのアプリケーションによっては、負のデータが入力された場合の処理が異なるかもしれません。

例えば、センサーデータが負であることが問題を表す場合、エラーメッセージを出力するなどの処理が必要となることが考えられます。

次のサンプルコードは、センサーデータが負の場合にエラーメッセージを出力する例を表しています。

-- [同じライブラリとエンティティの定義は省略]

architecture Behavior of SensorDataProcessor is
begin
    process(sensor_data_in)
    variable data_value: integer;
    begin
        data_value := to_integer(sensor_data_in);
        -- センサーデータが負の場合、エラーメッセージを出力
        if data_value < 0 then
            report "Error: Negative Sensor Data Detected!";
        else
            led_data_out <= to_std_logic_vector(data_value);
        end if;
    end process;
end Behavior;

このコードでは、負のデータが検出された場合、エラーメッセージを出力しています。

このように、positive関数を使用する場合でも、アプリケーションの要件に応じて適切な処理を実装することが必要です。

●カスタマイズ方法

VHDLのコードは非常に柔軟性が高く、要件に合わせてさまざまなカスタマイズが可能です。

たとえば、センサーデータがある閾値を超えた場合にアラームを鳴らす、あるいは特定の範囲内のデータのみをLEDに表示するなど、応用の幅は広いです。

下記のサンプルコードは、センサーデータが10以上の場合のみLEDに表示する例を表しています。

-- [同じライブラリとエンティティの定義は省略]

architecture Behavior of SensorDataProcessor is
begin
    process(sensor_data_in)
    variable data_value: integer;
    begin
        data_value := to_integer(sensor_data_in);
        -- センサーデータが10以上の場合のみLEDに表示
        if data_value >= 10 then
            led_data_out <= to_std_logic_vector(data_value);
        end if;
    end process;
end Behavior;

このコードでは、センサーデータが10以上の場合のみ、そのデータをLEDに表示します。

10未満のデータは無視されます。

このようなフィルタリング処理は、特定の条件を満たすデータのみを取り扱いたい場合に有用です。

まとめ

VHDLのpositive関数は、負の数値を正の数値に変換するための便利な関数です。

組み込みシステムの回路設計時には、この関数を活用して、さまざまな条件下でのデータ処理を行うことができます。

要件に応じて、適切な処理を実装することで、効率的かつ安全なシステムの構築が可能です。