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C++におけるwait関数の使い方5選

C++のwait関数を徹底解説するイメージ C++
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

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はじめに

本記事では、特にプログラミング初心者から中級者、そして上級者まで、C++のwait関数について徹底的に解説します。

wait関数は、マルチスレッドプログラミングにおいて重要な役割を果たしますが、その使い方や概念が初学者には難しく感じられるかもしれません。

そこで、この記事では、wait関数の基本的な概念から始めて、段階的にその使い方を詳しく説明し、最終的にはより高度な応用例までをカバーします。

この記事を読むことで、C++のwait関数を理解し、実際のプログラミングに活用することができるようになるでしょう。

●C++とは

C++は、広く使用されているプログラミング言語の一つです。

その特徴として、高性能ながらも柔軟性があり、システムプログラミングからデスクトップアプリケーション、さらにはゲーム開発に至るまで幅広い分野で利用されています。

C++はC言語を基に開発され、オブジェクト指向プログラミングをサポートしていることから、より構造化されたコードの作成が可能になります。

また、メモリ管理やポインタの使用など、低レベルの操作にも対応しているため、パフォーマンスを重視する場面で特に重宝されています。

○C++の基本概念

C++を学ぶ上で最初に理解すべきは、その基本的な概念です。

C++には、変数、関数、データ型、演算子、制御構造など、基本的なプログラミングの概念が含まれています。

変数はデータを格納するためのもので、関数は特定のタスクを実行するためのコードのまとまりです。

データ型には、整数型、浮動小数点型、文字型などがあり、これらは変数が取りうるデータの種類を定義します。

演算子には、算術演算子、比較演算子、論理演算子などがあり、これらはデータに対する操作を定義します。

制御構造には、if文、forループ、whileループなどがあり、プログラムの流れを制御します。

これらの基本的な要素を理解することが、C++プログラミングの基礎となります。

●wait関数の基礎

C++におけるwait関数は、プログラミングにおける重要な概念の一つです。

この関数は、プログラムの実行を一時停止し、特定の条件が満たされるまで待機するために使用されます。wait関数は、特にマルチスレッド環境において有効であり、複数のスレッドが同時に実行される際のデータの整合性や同期を保つのに役立ちます。

C++の標準ライブラリでは、<condition_variable> ヘッダにwait関数が定義されています。

wait関数を使用する際の基本的な流れは次の通りです。

まず、条件変数とミューテックス(相互排他)を定義します。ミューテックスは、複数のスレッドが同じデータに同時にアクセスすることを防ぐために使用されます。

次に、条件変数の wait 関数を呼び出し、特定の条件が満たされるまでスレッドの実行を停止します。

条件が満たされた時(例えば、別のスレッドがデータを更新した時)、notify_onenotify_all 関数によってwait中のスレッドが再開されます。

このプロセスを理解するためには、実際のコード例を見ることが非常に有益です。

○wait関数の定義と動作

C++におけるwait関数の基本的な動作は、条件変数とミューテックスを用いて、特定の条件が満たされるまでスレッドを待機させることです。

条件変数は、特定の条件が変化したことを通知するための手段を提供し、ミューテックスは、共有されるデータへのアクセスを制御するために使用されます。

wait関数を用いる一般的なシナリオは、マルチスレッドアプリケーションにおいて、一つのスレッドがデータの更新を待機する場合です。

たとえば、一つのスレッドがデータベースへの書き込みを行い、別のスレッドがその書き込みを待機している場合に、wait関数は非常に有効です。

wait関数を使用することで、プログラムの効率と信頼性が向上します。

不要なリソースの消費を避けることができ、スレッドが必要な時にのみ動作するようになります。

○サンプルコード1:シンプルなwait関数の使用法

下記のコードは、C++におけるwait関数の基本的な使用を表したものです。

この例では、条件変数とミューテックスを用いて、特定のフラグの状態を待機します。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>

std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
bool ready = false;

void print_id(int id) {
    std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx);
    while (!ready) {
        cv.wait(lck);
    }
    std::cout << "thread " << id << '\n';
}

void go() {
    std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx);
    ready = true;
    cv.notify_all();
}

int main() {
    std::thread threads[10];
    // 10スレッドを起動し、print_id関数を実行する
    for (int i = 0; i < 10; ++i)
        threads[i] = std::thread(print_id, i);
    
    std::cout << "10スレッドが待機中...\n";
    go(); // 全てのスレッドを起動
    for (auto& th : threads) th.join(); // 全スレッドの終了を待つ
    return 0;
}

このコードでは、print_id 関数内でスレッドが ready 変数が true になるまで待機します。

go 関数が呼ばれると、readytrue に設定され、条件変数によって通知されるため、全ての待機中のスレッドが起動します。

これにより、スレッド間の同期が実現されます。

●wait関数の詳細な使い方

C++でのwait関数の詳細な使い方を理解するためには、まずマルチスレッドプログラミングの基本を把握することが重要です。

マルチスレッドプログラミングでは、複数のスレッドが同時に異なるタスクを実行することで、アプリケーションの効率を高めることができます。

しかし、これにはデータ競合やデッドロックなどの問題が伴います。

C++のwait関数は、これらの問題を解決するために、スレッド間での同期を実現します。

wait関数を使用する際の主なステップは下記の通りです。

  1. ミューテックスオブジェクトを作成し、スレッド間での排他制御を確立します
  2. 条件変数オブジェクトを作成し、特定の条件が満たされるのを待機します
  3. 条件が満たされるまで、wait関数を使ってスレッドをブロックします
  4. 条件が満たされたら、条件変数を使用して他のスレッドに通知し、ブロックを解除します

このプロセスは、複数のスレッドがデータの読み書きで互いに待ち合わせる際に特に有効です。

例えば、あるスレッドがデータを処理している間、他のスレッドはwait関数を使用して待機し、処理が完了したら通知を受けて待機を解除します。

○サンプルコード2:マルチスレッド環境でのwait関数の活用

マルチスレッド環境でwait関数を使用する例を紹介します。

この例では、複数のスレッドが共有データにアクセスする際に、wait関数を使ってスレッド間の同期を取ります。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>

std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
bool data_ready = false;

void prepare_data() {
    std::this_thread::sleep_for(std::chrono::seconds(1)); // データ準備に時間を要するシミュレーション
    {
        std::lock_guard<std::mutex> lock(mtx);
        data_ready = true;
    }
    cv.notify_one();
}

void process_data() {
    std::unique_lock<std::mutex> lock(mtx);
    cv.wait(lock, []{ return data_ready; });
    std::cout << "データ処理完了\n";
}

int main() {
    std::thread t1(prepare_data);
    std::thread t2(process_data);

    t1.join();
    t2.join();

    return 0;
}

このコードでは、prepare_data 関数がデータの準備を行い、process_data 関数がそのデータを処理します。

データの準備が完了するまで、process_data 関数は cv.wait を使用して待機し、準備が完了したら通知を受けて処理を開始します。

○サンプルコード3:条件変数とwait関数の組み合わせ

次に、条件変数とwait関数を組み合わせた応用例を見てみましょう。

この例では、特定の条件下でのみスレッドを起動する方法を紹介します。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>

std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
int count = 0;

void check_for_condition() {
    std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx);
    cv.wait(lck, []{ return count >= 3; });
    std::cout << "条件を満たしました: count = " << count << '\n';
}

void increment_count() {
    std::this_thread::sleep_for(std::chrono::seconds(1));
    {
        std::lock_guard<std::mutex> lck(mtx);
        ++count;
    }
    cv.notify_all();
}

int main() {
    std::thread threads[5];
    for(int i = 0; i < 4; ++i) {
        threads[i] = std::thread(increment_count);
    }
    threads[4] = std::thread(check_for_condition);

    for(auto& t: threads) {
        t.join();
    }

    return 0;
}

このコードでは、increment_count 関数がカウントを増加させ、check_for_condition 関数がカウントが3以上になるのをwait関数で待機します。

カウントが3以上になると、条件変数によって通知され、待機していたスレッドが起動します。

●wait関数の応用例

C++におけるwait関数の応用は、その基本的な使用法を超えて、より複雑なシナリオや高度なプログラミング技術においてもその力を発揮します。

例えば、データの同期処理や例外処理の組み合わせなど、多様な状況でwait関数は有用です。

これらの応用例を理解することは、C++プログラマーにとって重要なスキルの一つと言えます。

データ同期処理においてwait関数を使用する場合、複数のスレッドが同一のデータにアクセスする状況を効率的かつ安全に管理することが可能になります。

一方、例外処理との組み合わせによって、wait関数はプログラムの安定性と信頼性を高めるために役立ちます。

例外が発生した場合に適切にリソースを解放し、プログラムを安全に終了させることが重要です。

wait関数の応用においては、条件変数とミューテックスの適切な使用が不可欠です。

これにより、スレッド間でのデータ競合を防ぎ、リソースの無駄遣いを避けることができます。

○サンプルコード4:wait関数を使ったデータの同期処理

下記のサンプルコードでは、wait関数を使用してデータの同期処理を行う方法を紹介します。

この例では、複数のスレッドが共有データにアクセスし、wait関数を利用してデータの整合性を保ちながら処理を行っています。

#include <iostream>
#include <vector>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>

std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
bool data_processed = false;

void data_processor(int data) {
    std::unique_lock<std::mutex> lock(mtx);
    cv.wait(lock, []{ return data_processed; });
    std::cout << "データ処理: " << data << std::endl;
}

void data_preparer() {
    std::this_thread::sleep_for(std::chrono::seconds(1));
    {
        std::lock_guard<std::mutex> lock(mtx);
        data_processed = true;
    }
    cv.notify_all();
}

int main() {
    std::vector<std::thread> threads;
    for (int i = 0; i < 5; ++i) {
        threads.emplace_back(data_processor, i);
    }
    std::thread preparer(data_preparer);

    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }
    preparer.join();

    return 0;
}

このコードでは、data_processor 関数がデータを処理し、data_preparer 関数がデータの準備を行います。

データが準備されるまで、各スレッドは cv.wait を使用して待機し、準備が完了したら処理を開始します。

○サンプルコード5:wait関数と例外処理の組み合わせ

wait関数と例外処理を組み合わせることで、プログラムの安全性を高めることができます。

下記のサンプルコードは、例外が発生した際にスレッドが安全に終了するようにwait関数を使用する方法を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>
#include <stdexcept>

std::mutex mtx;
std::condition_variable cv;
bool ready = false;

void thread_function() {
    std::unique_lock<std::mutex> lck(mtx);
    try {
        // 何らかの処理...
        throw std::runtime_error("例外発生");
        cv.wait(lck, []{ return ready; });
        // 待機後の処理...
    } catch (...) {
        std::cout << "例外をキャッチしました。スレッドを安全に終了します。" << std::endl;
    }
}

int main() {
    std::thread t(thread_function);
    t.join();
    return 0;
}

このコードでは、thread_function 関数内で例外が発生すると、キャッチブロックに入り、スレッドは安全に終了します。

このように、wait関数と例外処理を組み合わせることで、予期せぬエラーが発生した場合にもリソースのリークを防ぐことが可能になります。

●注意点と対処法

C++でwait関数を使う際には、いくつかの注意点があります。

これらのポイントを理解し、適切に対処することで、プログラムの効率性と安定性を高めることができます。

wait関数は強力なツールですが、誤った使い方をするとパフォーマンスの問題やデッドロックなど、予期せぬ問題が発生する可能性があります。

まず、wait関数を使用する際には、適切なミューテックスと条件変数を用いることが重要です。

ミューテックスは、複数のスレッドが共有リソースに同時にアクセスすることを防ぎます。

また、条件変数は、特定の条件が満たされるまでスレッドをブロックするのに使われます。

wait関数を使う際には、条件の確認を怠らないようにしてください。

条件が満たされていない場合にwait関数を呼び出すと、スレッドは永遠にブロックされる可能性があります。

したがって、wait関数を呼び出す前に、条件が満たされているかを確認することが不可欠です。

デッドロックの回避も重要なポイントです。

デッドロックは、複数のスレッドが互いに待ち合わせてしまい、進行できなくなる状況を指します。

これを避けるためには、ミューテックスのロックとアンロックを適切に管理し、wait関数の使用を慎重に行う必要があります。

○wait関数の使用時の注意点

wait関数を使用する際の主な注意点は下記の通りです。

  • ミューテックスの適切なロックとアンロックを行う
  • 条件変数を使って特定の条件が満たされるのを待機する
  • デッドロックを避けるために、スレッド間でリソースの利用を適切に管理する

これらのポイントを意識することで、wait関数を安全かつ効率的に使用することができます。

○間違いやすいポイントとその対処法

C++のwait関数を使う際に間違いやすいポイントとしては、条件の誤ったチェックやミューテックスの誤った使用が挙げられます。

これらの間違いは、プログラムのパフォーマンスの低下やデッドロックを引き起こす原因となります。

条件の誤ったチェックは、不要な待機を引き起こす可能性があります。

これを避けるためには、wait関数を呼び出す前に常に条件を確認することが重要です。

また、ミューテックスの誤った使用は、リソースの競合やデッドロックに繋がります。

ミューテックスは、常に必要な場所でのみロックし、使用後は速やかにアンロックすることが必要です。

●注意点と対処法

C++におけるwait関数を使用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

これらを適切に理解し、対処することで、プログラムの効率と信頼性を高めることが可能です。

○wait関数の使用時の注意点

wait関数を使用する際に特に注意すべき点には、下記のようなものがあります。

デッドロックのリスクを常に意識すること、ミューテックスのロックとアンロックを適切に管理すること、条件変数を使用する際には、条件を正確に設定し、適切にチェックすることが含まれます。

これらの注意点を考慮することで、プログラムの安定性と効率性を保つことができます。

○間違いやすいポイントとその対処法

C++のwait関数を使用する際によくある間違いとして、デッドロックの誤解や条件の誤った使用があります。

デッドロックを避けるためには、ミューテックスの使用を慎重に行い、必要ない場合はロックを避けることが重要です。

また、条件変数を使用する際には、条件が正しく設定されていることを確認し、適切にチェックすることが必要です。

これらの間違いを避けるためには、プログラムの各部分を丁寧にレビューし、デッドロックの可能性や条件の正確性を常にチェックすることが重要です。

また、複雑なマルチスレッドプログラムの場合は、適切なテストとデバッグが不可欠です。

まとめ

この記事では、C++のwait関数の基本的な使い方から応用までを詳細に解説しました。

wait関数はマルチスレッドプログラミングにおける重要な要素であり、その正しい理解と使用がプログラムの効率と安定性を大きく向上させます。

デッドロックの回避、リソース管理の適切な方法、条件の正確な設定などの注意点に留意することで、wait関数を効果的に利用することができます。

また、wait関数のカスタマイズ方法と効率的なプログラム設計への応用例も紹介しました。

これらの知識を活用して、より高度で安全なマルチスレッドプログラムを開発しましょう。