C++でスレッド生成!初心者もマスターできる5つの方法

C++におけるスレッド生成の基本から応用までを分かりやすく解説するイメージC++
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

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はじめに

この記事は、C++でのスレッド生成についての包括的なガイドをします。

20代から30代のプログラミング初心者や中級者、IT関連の学生や若手エンジニア、趣味でプログラミングを学ぶ人々にとって、この記事はスレッド処理の基本から応用までを理解する上で非常に有用です。

私たちは、具体的なサンプルコードを通じて、実践的な技術を身につけることを目指します。

C++のスレッド処理に関する基本的な知識から、遭遇する可能性のある問題やエラーへの対処法まで、詳細に解説していきます。

また、読者の皆様が将来的に高度なプログラミング技術を身につけるための基礎として、この知識が役立つことを願っています。

●C++におけるスレッドとは

C++でのスレッド処理は、コンカレントプログラミング、すなわち複数の処理を並行して行う技術の中心的な要素です。

スレッドはプログラムの実行単位であり、同じプロセス内のスレッド同士でメモリやリソースを共有することができます。

これにより、データの処理や複雑な計算をより効率的に行うことが可能となります。

特に、マルチコアプロセッサの普及により、マルチスレッドプログラミングの重要性はますます高まっています。

スレッドの使用は、プログラムのパフォーマンス向上に寄与するだけでなく、ユーザーインターフェースの応答性の向上や、リアルタイム処理のためのタスクの分割など、多様なシナリオで有効です。

しかし、スレッドの管理や同期などの複雑さも伴うため、正確な理解と適切な技術の適用が求められます。

○スレッドの基本概念

C++におけるスレッドの基本概念を理解するためには、まず「プロセス」と「スレッド」の違いを把握することが重要です。

プロセスとは、実行中のプログラムのインスタンスであり、独自のメモリ空間を持ちます。

一方、スレッドはそのプロセス内で生成される実行の流れであり、プロセスのリソース(メモリなど)を共有します。

このため、スレッド間のデータの共有は容易ですが、同時アクセスによるデータの破損や競合を避けるための注意が必要です。

C++11以降では、スレッドのサポートが標準ライブラリに組み込まれています。

std::threadクラスを使用してスレッドを生成し、管理することができるようになりました。

これにより、以前よりも簡単にマルチスレッドプログラミングを行うことが可能です。

○C++でのスレッドの重要性

C++においてスレッドを利用することの重要性は、主にパフォーマンスの向上とアプリケーションの応答性の向上にあります。

マルチスレッドを活用することで、複数のタスクを同時に実行し、全体の処理時間を短縮することができます。

例えば、データ処理やファイルの読み書きなどを別スレッドで実行することで、メインスレッドはユーザーインターフェースの更新などの他のタスクに集中できます。

しかし、スレッドの管理は複雑であり、特に共有リソースへのアクセス制御やスレッド間の同期などは慎重な設計が求められます。

不適切なスレッドの使用は、データの破損や予期しないバグの原因となる可能性があります。

したがって、C++でスレッドを効果的に利用するためには、基本的な概念の理解に加え、スレッドのライフサイクル、同期メカニズム、ロックの使用方法などの高度なトピックについて学ぶことが重要です。

●C++でスレッドを生成する方法

C++においてスレッドを生成する方法は多岐にわたります。

ここでは、初心者から上級者まで幅広く活用できる代表的な5つの方法を紹介します。

○方法1:std::threadを使用する基本的なスレッド生成

C++11以降で導入されたstd::threadは、スレッドを手軽に生成するための基本的なツールです。

下記のサンプルコードは、単純なスレッドの生成と実行を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>

void threadFunction() {
    std::cout << "Thread function is running." << std::endl;
}

int main() {
    std::thread t(threadFunction);
    t.join(); // メインスレッドがtスレッドの終了を待つ
    return 0;
}

このコードでは、threadFunctionという関数を新しいスレッドで実行します。

std::threadのインスタンスtを作成し、joinメソッドを使用してメインスレッドがスレッドtの終了を待ちます。

この方法は基本中の基本であり、スレッドの使用を始める上で最も重要です。

○方法2:ラムダ式を利用したスレッド生成

ラムダ式を使用することで、スレッド生成時に直接関数の処理を書き込むことができます。

下記のサンプルでは、ラムダ式を使用してスレッドを生成しています。

#include <iostream>
#include <thread>

int main() {
    std::thread t([](){
        std::cout << "Lambda expression thread." << std::endl;
    });
    t.join();
    return 0;
}

この方法では、関数を定義せずに直接スレッドの処理内容を記述することが可能です。

小規模な処理を並行実行したい場合に特に有用です。

○方法3:メンバ関数をスレッド関数として利用

C++では、クラスのメンバ関数をスレッド関数として使用することもできます。

下記のコードは、メンバ関数をスレッドで実行する方法を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>

class MyClass {
public:
    void operator()() const {
        std::cout << "Thread from member function." << std::endl;
    }
};

int main() {
    MyClass myObject;
    std::thread t(myObject);
    t.join();
    return 0;
}

この例では、MyClassのインスタンスmyObjectstd::threadのコンストラクタに渡すことで、そのメンバ関数operator()をスレッドで実行します。

オブジェクト指向プログラミングに慣れている方にとっては、この方法が直感的で便利です。

○方法4:ムーブセマンティクスを用いたスレッドの効率的な管理

C++11ではムーブセマンティクスが導入され、スレッドオブジェクトの管理がより効率的になりました。

下記のサンプルでは、ムーブセマンティクスを使用してスレッドを管理しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

void threadFunction(int n) {
    std::cout << "Thread number " << n << std::endl;
}

int main() {
    std::vector<std::thread> threads;
    for(int i = 0; i < 5; ++i) {
        threads.push_back(std::thread(threadFunction, i));
    }
    for(auto& t : threads) {
        t.join();
    }
    return 0;
}

この例では、std::vectorを使用して複数のスレッドを効率的に管理しています。

スレッドのベクターに新しいスレッドをpush_backメソッドで追加し、それぞれを終了まで待機します。

○方法5:条件変数とミューテックスを使ったスレッドの同期

スレッド間の適切な同期はマルチスレッドプログラミングにおいて非常に重要です。

下記のコードは、条件変数とミューテックスを使用してスレッドを同期する一例です。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>
#include <condition_variable>

std::mutex mutex;
std::condition_variable condVar;
bool dataReady = false;

void doTheWork(){
    std::cout << "Processing shared data." << std::endl;
}

void waitingForWork(){
    std::unique_lock<std::mutex> lock(mutex);
    condVar.wait(lock, []{ return dataReady; });
    doTheWork();
    std::cout << "Work done." << std::endl;
}

void setDataReady(){
    {
        std::lock_guard<std::mutex> lock(mutex);
        dataReady = true;
    }
    condVar.notify_one();
}

int main() {
    std::thread worker(waitingForWork);
    std::thread setter(setDataReady);
    worker.join();
    setter.join();
    return 0;
}

この例では、std::condition_variableを使用して、一つのスレッドがデータの準備が整うのを別のスレッドが待機します。

データが準備されると、条件変数が通知され、待機していたスレッドが処理を開始します。

この方法は、リソースの利用やスレッドの実行タイミングをコントロールするのに有効です。

●よくあるエラーと対処法

マルチスレッドプログラミングでは、さまざまなエラーが発生する可能性があります。

これらのエラーを理解し、適切に対処することは、効率的で安全なプログラムを作成する上で不可欠です。

○スレッドの同時アクセスエラーと排除法

スレッドの同時アクセスエラーは、複数のスレッドが同じデータやリソースに同時にアクセスすることで発生します。

これにより、データの破損や予期しない動作が発生する可能性があります。

このようなエラーを排除するためには、ミューテックス(mutex)やセマフォ(semaphore)などの同期機構を使用して、リソースへのアクセスを制御する必要があります。

下記のサンプルコードは、ミューテックスを使用してスレッド間のデータアクセスを同期する方法を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <mutex>

int sharedData = 0;
std::mutex mutex;

void increment() {
    mutex.lock();
    ++sharedData;
    mutex.unlock();
}

void decrement() {
    mutex.lock();
    --sharedData;
    mutex.unlock();
}

int main() {
    std::thread t1(increment);
    std::thread t2(decrement);

    t1.join();
    t2.join();

    std::cout << "Final value: " << sharedData << std::endl;
    return 0;
}

このコードでは、incrementdecrement関数が共有データsharedDataにアクセスする際、ミューテックスを使用してアクセスを制御しています。

これにより、データの一貫性が保たれ、同時アクセスによるエラーを防ぐことができます。

○リソースリークの問題と解決策

リソースリークは、プログラムが使用したリソース(メモリ、ファイルハンドルなど)を適切に解放しないことで発生します。

長時間実行されるアプリケーションでは特に深刻な問題となる可能性があります。

リソースリークを防ぐためには、使用したリソースを適切に解放することが重要です。

下記のサンプルコードでは、スマートポインタを使用してメモリリークを防ぐ方法を表しています。

#include <iostream>
#include <memory>

class Resource {
public:
    Resource() { std::cout << "Resource acquired." << std::endl; }
    ~Resource() { std::cout << "Resource released." << std::endl; }
};

void useResource() {
    std::unique_ptr<Resource> resource = std::make_unique<Resource>();
    // Resourceを使用する処理
}

int main() {
    useResource();
    return 0;
}

このコードでは、std::unique_ptrを使用してResourceオブジェクトを管理しています。

std::unique_ptrは、スコープを抜ける際に自動的に管理しているオブジェクトを破棄し、メモリリークを防ぎます。

このように、適切なリソース管理を行うことで、リソースリークの問題を解決することができます。

●スレッド生成の応用例

C++におけるスレッド生成の技術は、実務上多くの場面で応用されます。

効率的なデータ処理から、リアルタイムでのタスク実行まで、様々なシナリオに活用できます。

○サンプルコード1:データの並行処理

データ処理においてスレッドを利用することで、計算資源を最大限に活用し、処理時間を短縮することが可能です。

下記のサンプルコードでは、複数のデータ処理タスクを並列に実行する方法を表しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

void processData(int start, int end) {
    for (int i = start; i < end; ++i) {
        // データ処理のロジック
    }
}

int main() {
    int dataRange = 1000;
    int numThreads = 4;
    std::vector<std::thread> threads;

    for (int i = 0; i < numThreads; ++i) {
        int rangeStart = i * (dataRange / numThreads);
        int rangeEnd = (i + 1) * (dataRange / numThreads);
        threads.push_back(std::thread(processData, rangeStart, rangeEnd));
    }

    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }

    std::cout << "All threads completed." << std::endl;
    return 0;
}

このコードでは、データセットを分割して複数のスレッドで処理することで、全体の実行時間を短縮しています。

この方法は大規模なデータセットを扱う際に特に有効です。

○サンプルコード2:バックグラウンドでのタスク実行

スレッドは、ユーザーインターフェースの応答性を損なうことなく、バックグラウンドでの処理を可能にします。

下記のコードでは、バックグラウンドでのタスク実行を行っています。

#include <iostream>
#include <thread>

void backgroundTask() {
    // バックグラウンドで実行する長いタスク
    std::cout << "Background task is running." << std::endl;
}

int main() {
    std::thread backgroundThread(backgroundTask);
    // メインスレッドでは他のタスクを続ける
    std::cout << "Main thread continues to run." << std::endl;
    backgroundThread.join();
    return 0;
}

この例では、重い処理をバックグラウンドスレッドで実行し、メインスレッドの応答性を維持しています。

○サンプルコード3:複数スレッドによる高速化

複数のスレッドを使用することで、特定のタスクをより高速に処理することが可能です。

下記のサンプルでは、複数のスレッドを利用して計算処理を高速化しています。

#include <iostream>
#include <thread>
#include <vector>

void computeTask(int threadId) {
    // 重い計算処理
    std::cout << "Thread " << threadId << " is computing." << std::endl;
}

int main() {
    int numThreads = 4;
    std::vector<std::thread> threads;

    for (int i = 0; i < numThreads; ++i) {
        threads.push_back(std::thread(computeTask, i));
    }

    for (auto& t : threads) {
        t.join();
    }

    std::cout << "All compute tasks are completed." << std::endl;
    return 0;
}

このコードでは、それぞれのスレッドが異なる計算タスクを担当することで、全体の計算処理を効率的に行っています。

マルチコアプロセッサを活用することで、大規模な計算処理を高速化することができます。

●エンジニアなら知っておくべき豆知識

C++におけるマルチスレッディングは、プログラミングのパフォーマンスと効率を大きく向上させることができる強力なツールです。

ここでは、エンジニアが知っておくべき重要な豆知識をいくつか紹介します。

○マルチスレッディングのベストプラクティス

マルチスレッディングを成功させるためには、いくつかのベストプラクティスに従うことが重要です。ま

ず、スレッド間でデータを共有する際は、競合やデータの破壊を避けるために同期メカニズムを適切に使用する必要があります。

また、リソースのデッドロックを防ぐために、ロックの取得と解放を慎重に行うことが必要です。

さらに、スレッドの作成と破棄はコストがかかるため、不要にスレッドを作成しないこと、長時間実行されるアプリケーションではスレッドプールを利用することが望ましいです。

○C++11以降のスレッド関連機能の進化

C++11以降のバージョンでは、マルチスレッディングのサポートが大きく強化されました。

std::threadクラスによって、より簡単にスレッドを作成し管理できるようになりました。

また、std::mutexstd::unique_lockstd::condition_variableなどの同期プリミティブが導入され、スレッド間の安全なデータ共有と通信が可能になりました。

更に、std::futurestd::promiseを使うことで、スレッドの実行結果を効率的に受け取ったり、タスク間の通信を行ったりすることができます。

まとめ

この記事では、C++におけるスレッド処理の基本から応用までを詳細に解説しました。

std::threadの使用、ラムダ式、メンバ関数の活用、ミューテックスと条件変数によるスレッドの同期など、具体的なサンプルコードを交えながら、スレッド処理の多様な側面を紹介しました。

これらの知識は、C++を用いた効率的なプログラミングにおいて不可欠であり、初心者から上級者までが役立つ豆知識となります。

C++11以降の進化したスレッド関連機能を活用することで、より高度なマルチスレッドプログラムの開発が可能になります。