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VerilogコードをDoxygenで生成する方法と活用10選

Doxygen 徹底解説 Verilog
この記事は約26分で読めます。

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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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●VerilogとDoxygenの基本

ハードウェア設計の分野では、コードの可読性と保守性が非常に重要です。

Verilogを使用する開発者にとって、コードのドキュメント化は避けて通れない課題となっています。

そんな中、Doxygenというツールが注目を集めています。

○Doxygenとは?

Doxygenは、ソースコードから自動的にドキュメントを生成するツールです。

元々はC++用に開発されましたが、現在ではVerilogを含む多くのプログラミング言語に対応しています。

コード内のコメントを解析し、HTML、LaTeX、RTF、XML、マンページなど様々な形式のドキュメントを生成できます。

Verilog開発者にとって、Doxygenは非常に有用なツールとなります。

コードとドキュメントを一元管理できるため、常に最新の情報を維持しやすくなります。

また、自動生成されるドキュメントは見やすく構造化されているため、チーム内でのコード理解が促進されます。

○Verilog開発におけるDoxygen活用のメリット

Doxygenを活用することで、Verilog開発に多くの利点がもたらされます。

まず、コードの可読性が大幅に向上します。

適切にコメントを記述することで、他の開発者や将来の自分が容易にコードを理解できるようになります。

次に、ドキュメント作成の効率が飛躍的に上がります。

手動でドキュメントを作成・更新する必要がなくなるため、開発者はコーディングに集中できます。

また、コードとドキュメントの整合性が自動的に保たれるため、情報の不一致によるミスも減少します。

さらに、チーム開発においても大きな威力を発揮します。

統一されたフォーマットのドキュメントが自動生成されるため、チーム内でのコード共有や理解促進がスムーズになります。

新しいメンバーの参加時にも、既存のコードベースを素早く理解してもらうことができます。

○サンプルコード1:Hello, Doxygen for Verilog!

それでは、実際にDoxygenを使ってVerilogコードをドキュメント化してみましょう。

まずは簡単な例から始めます。

/**
 * @file hello_doxygen.v
 * @brief 簡単なHello Worldモジュール
 * @author Your Name
 * @date 2024-08-12
 */

/**
 * @module hello_world
 * @brief "Hello, Doxygen for Verilog!"を出力するモジュール
 */
module hello_world();
  initial begin
    $display("Hello, Doxygen for Verilog!");
  end
endmodule

このコードでは、Doxygenのコメント記法を使用しています。

@file@brief@author@dateなどのタグを使うことで、ファイルやモジュールに関する情報を明確に記述できます。

Doxygenを実行すると、このコードから整形されたHTMLドキュメントが生成されます。

ドキュメントには、ファイルの概要、作者情報、モジュールの説明などが含まれます。

●Doxygenを使ったVerilogコードの解説方法

Doxygenを効果的に使用するには、適切なコメントの書き方を身につけることが重要です。

Verilogコードに対して、どのようにコメントを記述すればよいのでしょうか。

○効果的なコメントの書き方

Verilogコードに対するDoxygenコメントは、主に2種類あります。

ブロックコメント(/** */)と行コメント(///)です。

ブロックコメントは主にモジュールや関数の説明に使用し、行コメントは個々の信号や変数の説明に適しています。

コメントを書く際は、次の点に注意しましょう。

  1. 簡潔かつ明確に記述する
  2. 必要な情報を漏れなく含める
  3. コードの動作や意図を説明する
  4. 特殊な処理や注意点を明記する

○サンプルコード2:モジュール説明の基本

モジュールの説明には、ブロックコメントを使用します。

ここでは、簡単な加算器モジュールの例を紹介します。

/**
 * @module adder
 * @brief 2ビットの加算器モジュール
 *
 * このモジュールは2つの2ビット入力を受け取り、その和を出力します。
 * キャリーアウトも出力されます。
 *
 * @param[in] a 2ビットの入力A
 * @param[in] b 2ビットの入力B
 * @param[out] sum 加算結果(2ビット)
 * @param[out] carry_out キャリーアウト
 */
module adder(
  input [1:0] a,
  input [1:0] b,
  output [1:0] sum,
  output carry_out
);
  assign {carry_out, sum} = a + b;
endmodule

このコメントでは、モジュールの機能、入出力の説明、動作の概要を記述しています。

@paramタグを使用して、各ポートの役割を明確にしています。

○サンプルコード3:信号と変数のドキュメント化

次に、モジュール内の信号や変数のドキュメント化について見てみましょう。

カウンタモジュールを例に説明します。

module counter(
  input clk,
  input reset,
  output reg [3:0] count
);

  /// @brief クロック信号
  wire clk;

  /// @brief リセット信号(アクティブHigh)
  wire reset;

  /**
   * @brief 4ビットカウンタ出力
   * 
   * このレジスタは0から15までカウントアップし、
   * その後0に戻ります。
   */
  reg [3:0] count;

  always @(posedge clk or posedge reset) begin
    if (reset)
      count <= 4'b0000;
    else
      count <= count + 1;
  end
endmodule

この例では、各信号と変数に対して行コメントまたはブロックコメントを使用しています。

特に重要な変数には、より詳細な説明を加えています。

○サンプルコード4:Doxygenコマンドの活用例

Doxygenには、様々な特殊コマンドがあります。

これを使うことで、より豊富な情報をドキュメントに含めることができます。

ここでは、それらのコマンドを活用した例を紹介します。

/**
 * @module complex_module
 * @brief 複雑な処理を行うモジュール
 *
 * このモジュールは、入力信号に対して複雑な処理を行います。
 *
 * @note 高速動作時は注意が必要です
 *
 * @todo 省電力モードの実装
 *
 * @deprecated 次のバージョンで廃止予定
 *
 * @see simple_module 簡易版モジュール
 *
 * @par 使用例:
 * @code
 * complex_module cm (
 *   .clk(system_clk),
 *   .data_in(sensor_data),
 *   .data_out(processed_data)
 * );
 * @endcode
 */
module complex_module(
  input clk,
  input [7:0] data_in,
  output reg [7:0] data_out
);
  // モジュールの実装
endmodule

この例では、@note@todo@deprecated@see@par@codeなどのコマンドを使用しています。

このコマンドを適切に使用することで、ドキュメントの読者に対してより多くの情報や注意点を伝えることができます。

●Doxygen設定ファイルのカスタマイズ

Doxygenを使いこなすには、設定ファイルの理解が欠かせません。

設定ファイルをカスタマイズすることで、Verilogプロジェクトに最適なドキュメントを生成できるようになります。

まずは基本的な設定から始めましょう。

○Doxyfileの基本設定

Doxygenの設定ファイルは「Doxyfile」と呼ばれます。

初めてDoxygenを使う場合、「doxygen -g」コマンドでデフォルトのDoxyfileを生成できます。

生成されたファイルには多くのオプションが含まれていますが、Verilogプロジェクトでは特に重要な設定項目があります。

PROJECT_NAME: プロジェクト名を設定します。

ドキュメントのタイトルにも使用されます。

OUTPUT_DIRECTORY: 生成されるドキュメントの出力先ディレクトリを指定します。

INPUT: ドキュメント化したいソースコードのディレクトリやファイルを指定します。

FILE_PATTERNS: 処理対象とするファイルの拡張子を指定します。

Verilogの場合、通常「.v」や「.sv」を指定します。

EXTRACT_ALL: 「YES」に設定すると、ドキュメント化されていない要素も出力に含めます。

GENERATE_HTML: HTMLドキュメントを生成するかどうかを指定します。

通常は「YES」に設定します。

○サンプルコード5:Verilog用Doxyfile設定例

ここでは、Verilogプロジェクト用のDoxyfile設定例を紹介します。

PROJECT_NAME           = "My Verilog Project"
OUTPUT_DIRECTORY       = doc
INPUT                  = src
FILE_PATTERNS          = *.v *.sv
EXTRACT_ALL            = YES
GENERATE_HTML          = YES
OPTIMIZE_OUTPUT_VERILOG = YES
EXTENSION_MAPPING      = v=C sv=C++

OPTIMIZE_OUTPUT_VERILOGオプションを「YES」に設定することで、Verilog特有の構文を適切に処理します。

また、EXTENSION_MAPPINGを使用して、VerilogファイルをC言語として、SystemVerilogファイルをC++として処理するよう指定しています。

カスタマイズしたDoxyfileを使用する場合、「doxygen Doxyfile」コマンドでドキュメントを生成できます。

設定を変更するたびに、生成されるドキュメントがどのように変化するか確認しましょう。

微調整を重ねることで、プロジェクトに最適なドキュメントが作成できるはずです。

●生成されたドキュメントの活用と改善

Doxygenで生成されたドキュメントは、そのままでも十分に有用です。

しかし、さらに活用の幅を広げるためのテクニックがあります。

ドキュメントをカスタマイズし、チーム全体で効果的に活用する方法を見ていきましょう。

○HTML出力のカスタマイズテクニック

Doxygenが生成するHTMLドキュメントは、デフォルトでもきれいにフォーマットされています。

ただ、プロジェクトやチームの要件に合わせてカスタマイズしたい場合もあるでしょう。

HTMLのカスタマイズには主に2つの方法があります。

  1. CSSの編集 -> HTML_EXTRA_STYLESHEETオプションを使用して、独自のCSSファイルを指定できます。色やフォント、レイアウトなどを自由にカスタマイズできます。
  2. ヘッダーとフッターの追加 -> HTML_HEADER、HTML_FOOTERオプションを使用して、カスタムのヘッダーやフッターを追加できます。会社のロゴや著作権情報などを入れるのに便利です。

例えば、次のようにDoxyfileに設定を追加します。

HTML_EXTRA_STYLESHEET  = my_custom_style.css
HTML_HEADER            = my_header.html
HTML_FOOTER            = my_footer.html

カスタマイズにはHTML、CSS、JavaScriptの知識が必要ですが、少しずつ試しながら理想的なドキュメントデザインを目指しましょう。

○サンプルコード6:GitHubとの連携方法

Doxygenで生成したドキュメントをGitHubで公開すると、チーム内での共有が容易になります。

GitHub Pagesを利用すれば、自動的にウェブサイトとして公開できます。

ここでは、GitHubリポジトリでDoxygenドキュメントを管理・公開する手順を見てみましょう。

  1. GitHubリポジトリにdocsディレクトリを作成します。
  2. Doxyfileの出力先をdocsディレクトリに設定します。
OUTPUT_DIRECTORY       = docs
  1. ドキュメントを生成し、変更をコミットしてプッシュします。
  2. GitHubリポジトリの設定ページで、GitHub Pagesのソースをdocsフォルダに設定します。
  3. .github/workflows/doxygen.ymlファイルを作成し、次のような内容を記述します。
name: Doxygen Action

on:
  push:
    branches: [ main ]

jobs:
  build:
    runs-on: ubuntu-latest

    steps:
    - uses: actions/checkout@v2
    - name: Doxygen Action
      uses: mattnotmitt/doxygen-action@v1.1.0
      with:
        doxyfile-path: ./Doxyfile
        working-directory: .

    - name: Deploy
      uses: peaceiris/actions-gh-pages@v3
      with:
        github_token: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }}
        publish_dir: ./docs

このワークフローにより、mainブランチにプッシュするたびにドキュメントが自動生成され、GitHub Pagesに公開されます。

チームメンバーは常に最新のドキュメントにアクセスできるようになります。

GitHubとの連携により、コードとドキュメントの一元管理が可能になります。

また、プルリクエストの際にドキュメントの変更も確認できるため、コードレビューの質も向上するでしょう。

●Doxygenのフィルター機能

大規模なVerilogプロジェクトでは、膨大な量のコードを扱うことになります。

全てのコードを一度にドキュメント化すると、結果が煩雑になってしまう可能性があります。

Doxygenのフィルター機能を使えば、必要な部分だけを抽出してドキュメント化できます。

○特定コードの抽出

フィルター機能を使用すると、特定のモジュールやファイルだけをドキュメント化対象とすることができます。

例えば、プロジェクト内の重要なモジュールだけをドキュメント化したい場合、FILTER_PATTERNオプションを使用します。

Doxyfileに次のような設定を追加します。

FILTER_PATTERN        = "*.v=./my_filter.sh"
FILTER_SOURCE_FILES   = YES

my_filter.shというスクリプトを作成し、特定のモジュールだけを抽出するロジックを実装します。

○サンプルコード7:モジュール別フィルタリング例

ここでは、特定のモジュールだけを抽出するフィルタースクリプトの例を見てみましょう。

#!/bin/bash

# 入力ファイルを読み込む
input_file=$1
output_file=$2

# 抽出したいモジュール名のリスト
modules_to_extract=("important_module1" "critical_module2" "key_component")

# 一時ファイルを作成
temp_file=$(mktemp)

# ファイルを1行ずつ読み込む
while IFS= read -r line
do
    # モジュール定義行を検出
    if [[ $line =~ ^[[:space:]]*module[[:space:]]+([a-zA-Z0-9_]+) ]]; then
        current_module=${BASH_REMATCH[1]}

        # 抽出対象のモジュールかチェック
        if [[ " ${modules_to_extract[@]} " =~ " ${current_module} " ]]; then
            echo "$line" >> "$temp_file"
            # モジュールの中身を抽出
            while IFS= read -r module_line
            do
                echo "$module_line" >> "$temp_file"
                [[ $module_line =~ ^[[:space:]]*endmodule ]] && break
            done
        fi
    fi
done < "$input_file"

# 結果を出力ファイルに書き込む
cat "$temp_file" > "$output_file"

# 一時ファイルを削除
rm "$temp_file"

このスクリプトは、指定されたモジュール名のリストに基づいて、入力ファイルから特定のモジュールだけを抽出します。

抽出されたモジュールは出力ファイルに書き込まれ、Doxygenによってドキュメント化されます。

フィルター機能を使用することで、プロジェクトの規模に関わらず、必要な部分だけを効率的にドキュメント化できます。

大規模プロジェクトでは特に有用な機能といえるでしょう。

●SystemVerilogとの連携

Verilogの拡張言語であるSystemVerilogも、Doxygenでドキュメント化することができます。

SystemVerilogには独自の機能が多くありますが、適切な設定を行えば、それらの機能もきちんとドキュメント化できます。

○SystemVerilog特有の機能に対応した設定

SystemVerilogをドキュメント化する際は、Doxyfileに次のような設定を追加します。

OPTIMIZE_OUTPUT_VERILOG = YES
EXTENSION_MAPPING      = sv=C++

OPTIMIZE_OUTPUT_VERILOGオプションをYESに設定することで、VerilogとSystemVerilog両方の構文を適切に処理します。

また、EXTENSION_MAPPINGオプションで、.svファイルをC++として処理するよう指定しています。

SystemVerilogの高度な機能、例えばクラスやインターフェース、パッケージなどもドキュメント化できます。

ただし、コメントの書き方に若干の工夫が必要になる場合があります。

○サンプルコード8:SystemVerilogクラスのドキュメント化

ここでは、SystemVerilogのクラスをドキュメント化する例を紹介します。

/**
 * @class MyClass
 * @brief サンプルSystemVerilogクラス
 *
 * このクラスは、SystemVerilogの機能をデモンストレーションするためのものです。
 */
class MyClass;
  /** @brief 内部カウンター */
  int counter;

  /**
   * @brief コンストラクタ
   * @param initial_value カウンターの初期値
   */
  function new(int initial_value = 0);
    counter = initial_value;
  endfunction

  /**
   * @brief カウンターをインクリメントする
   * @return インクリメント後のカウンター値
   */
  function int increment();
    counter++;
    return counter;
  endfunction

  /**
   * @brief 現在のカウンター値を取得する
   * @return カウンター値
   */
  function int get_count();
    return counter;
  endfunction
endclass

このコードでは、SystemVerilogのクラス、メンバ変数、メソッドをドキュメント化しています。

@classタグを使ってクラス全体の説明を記述し、各メンバやメソッドに対しても適切なタグを使用しています。

Doxygenでこのコードを処理すると、クラス構造や各メソッドの詳細情報を含むドキュメントが生成されます。

SystemVerilogの高度な機能を使用している場合でも、適切にコメントを記述することで、分かりやすいドキュメントを作成できます。

●CI/CDパイプラインとの統合

VerilogプロジェクトにDoxygenを導入する際、自動化は大きな課題となります。

手動でドキュメントを生成していては、コードの変更に追いつかず、ドキュメントが古くなってしまう恐れがあります。

CI/CDパイプラインと統合することで、コードの変更に合わせて自動的にドキュメントを更新できます。

○Jenkinsとの連携

Jenkinsは人気の高いCI/CDツールで、Doxygenと連携させやすい特徴があります。

JenkinsジョブにDoxygenの実行を組み込むことで、コードがリポジトリにプッシュされるたびに自動的にドキュメントを生成できます。

Jenkinsでの設定手順は次の通りです。

  1. Jenkinsサーバーに Doxygen をインストールします。
  2. 新しいJenkinsジョブを作成します。
  3. ソースコード管理セクションで、VerilogプロジェクトのリポジトリをJenkinsに接続します。
  4. ビルドステップでDoxygenを実行するシェルスクリプトを追加します。
  5. 生成されたドキュメントを保存または公開するための設定を行います。

○サンプルコード9:自動化スクリプトの例

JenkinsでDoxygenを実行するためのシェルスクリプトの例をみてみましょう。

#!/bin/bash

# Doxygenのパスを設定
DOXYGEN_PATH="/usr/local/bin/doxygen"

# プロジェクトのルートディレクトリに移動
cd ${WORKSPACE}

# Doxyfileが存在するか確認
if [ ! -f "Doxyfile" ]; then
    echo "Doxyfileが見つかりません。Doxygenの設定ファイルを作成してください。"
    exit 1
fi

# Doxygenを実行
${DOXYGEN_PATH} Doxyfile

# 生成されたドキュメントを確認
if [ -d "docs" ]; then
    echo "ドキュメントが正常に生成されました。"
else
    echo "ドキュメントの生成に失敗しました。"
    exit 1
fi

# 生成されたドキュメントを別の場所にコピー(オプション)
# cp -R docs /path/to/documentation/server/

echo "Doxygenドキュメントの生成が完了しました。"

このスクリプトをJenkinsジョブのビルドステップに追加することで、ジョブが実行されるたびにDoxygenドキュメントが自動生成されます。

自動化により、開発者はコードに集中でき、常に最新のドキュメントを参照できるようになります。

ただし、自動生成されたドキュメントの品質チェックも忘れずに行いましょう。

●よくあるエラーと対処法

Doxygenを使用する際、いくつかの一般的なエラーに遭遇することがあります。

ここでは、よくあるエラーとその解決方法について説明します。

○構文エラーの解決方法

Doxygenコメントの構文エラーは、ドキュメント生成時に問題を引き起こす可能性があります。

  1. コメントブロックの開始と終了を確認します。「/*」で始まり「/」で終わることを確認しましょう。
  2. @briefや@paramなどのコマンドの綴りを確認します。
  3. コマンドの後には必ずスペースを入れます。

例えば、次のようなコメントは構文エラーを引き起こします。

/**@brief この関数は...*/  // エラー:@briefの後にスペースがない

正しくは次のようになります。

/** @brief この関数は... */

○出力ファイルの問題と解決策

出力ファイルに関する問題も頻繁に発生します。

  1. 出力ディレクトリの権限を確認します。書き込み権限がない場合、ドキュメントが生成されません。
  2. 出力ディレクトリが存在することを確認します。存在しない場合は、Doxyfileで「CREATE_SUBDIRS = YES」を設定するか、手動でディレクトリを作成します。
  3. ディスク容量が不足していないか確認します。大規模プロジェクトでは、予想以上に多くの空き容量が必要になる場合があります。

○設定ミスの発見と修正

Doxyfileの設定ミスも、ドキュメント生成の失敗や不完全なドキュメントの原因となります。

  1. INPUT設定を確認します。ソースファイルのパスが正しく指定されているか確認しましょう。
  2. FILE_PATTERNSが正しく設定されているか確認します。Verilogファイルの場合、「*.v *.sv」のように設定します。
  3. EXTRACT_ALLが「YES」に設定されているか確認します。「NO」の場合、ドキュメント化されていない要素が出力から除外されます。

設定ミスを見つけるには、Doxygenを「-d」オプション付きで実行すると詳細なデバッグ情報が表示されます。

doxygen -d Doxyfile

この出力を注意深く読むことで、多くの問題を特定し解決できます。

エラーが発生した場合は、慌てずにエラーメッセージを丁寧に読み解くことが大切です。

多くの場合、エラーメッセージには問題の原因や修正のヒントが含まれています。

また、Doxygenのオフィシャルドキュメントも参照すると、より詳細な情報を得られます。

●Doxygenの高度な応用例

Doxygenの基本的な使い方を習得したら、より高度な機能を活用してプロジェクトの価値を高めることができます。

動的ダイアグラムの生成、多言語プロジェクトでの活用、企業ブランディングを考慮したカスタマイズなど、Doxygenの可能性は無限大です。

○サンプルコード10:動的ダイアグラム生成

Doxygenは、コードの構造を視覚化するためのダイアグラムを自動生成できます。

特に、VerilogやSystemVerilogのような複雑な構造を持つ言語では、ダイアグラムが非常に有用です。

次のサンプルコードでは、簡単な状態機械を実装し、Doxygenのダイアグラム生成機能を活用しています。

/**
 * @file state_machine.v
 * @brief 簡単な3状態の状態機械
 */

module state_machine (
    input wire clk,
    input wire reset,
    input wire [1:0] input_signal,
    output reg [1:0] current_state
);

/** @name 状態定義
 * 状態機械の各状態を定義します。
 * @{
 */
localparam STATE_IDLE = 2'b00;
localparam STATE_ACTIVE = 2'b01;
localparam STATE_DONE = 2'b10;
/** @} */

reg [1:0] next_state;

always @(posedge clk or posedge reset) begin
    if (reset)
        current_state <= STATE_IDLE;
    else
        current_state <= next_state;
end

always @(*) begin
    case (current_state)
        STATE_IDLE: begin
            if (input_signal == 2'b01)
                next_state = STATE_ACTIVE;
            else
                next_state = STATE_IDLE;
        end
        STATE_ACTIVE: begin
            if (input_signal == 2'b10)
                next_state = STATE_DONE;
            else
                next_state = STATE_ACTIVE;
        end
        STATE_DONE: begin
            if (input_signal == 2'b00)
                next_state = STATE_IDLE;
            else
                next_state = STATE_DONE;
        end
        default: next_state = STATE_IDLE;
    endcase
end

endmodule

Doxygenは、このコードから自動的に状態遷移図を生成します。生成されたダイアグラムは、状態機械の動作を視覚的に理解するのに役立ちます。ダイアグラムを生成するには、Doxyfileに以下の設定を追加します。

HAVE_DOT               = YES
DOT_IMAGE_FORMAT       = svg

○多言語プロジェクトでの活用法

大規模なハードウェア開発プロジェクトでは、VerilogやSystemVerilog以外の言語も使用されることがあります。

例えば、テストベンチにC++を使用したり、ソフトウェアとのインターフェースにPythonを使用したりすることがあります。

Doxygenは、複数の言語を同時にドキュメント化できる強力なツールです。

多言語プロジェクトでDoxygenを活用するには、Doxyfileで各言語のファイル拡張子を指定します。

FILE_PATTERNS          = *.v *.sv *.cpp *.h *.py

また、言語ごとに最適化された設定を使用することも重要です。

OPTIMIZE_OUTPUT_FOR_C  = YES
OPTIMIZE_OUTPUT_JAVA   = YES
OPTIMIZE_FOR_FORTRAN   = YES
OPTIMIZE_OUTPUT_VHDL   = YES

○企業ブランディングを考慮したカスタマイズ

Doxygenで生成されたドキュメントは、企業のブランディングに合わせてカスタマイズすることができます。

カスタムCSSやヘッダー、フッターを使用することで、ドキュメントを企業のウェブサイトやスタイルガイドに合わせることができます。

例えば、カスタムCSSファイルを使用するには、Doxyfileに次の設定を追加します。

HTML_EXTRA_STYLESHEET  = custom_doxygen.css

カスタムCSSファイルの例

body {
    font-family: Arial, sans-serif;
    color: #333;
    background-color: #f5f5f5;
}

.header {
    background-color: #0066cc;
    color: white;
    padding: 20px;
}

.footer {
    background-color: #333;
    color: white;
    padding: 10px;
    text-align: center;
}

このようなカスタマイズにより、生成されたドキュメントは企業のアイデンティティを反映し、プロフェッショナルな印象を与えることができます。

まとめ

Verilogコードの開発において、Doxygenは非常に有用なツールです。

基本的な使用方法から高度な応用例まで、様々な活用方法を紹介しました。

Doxygenを使いこなすことで、コードの可読性が向上し、チーム内のコミュニケーションが円滑になります。

この記事で紹介した方法を参考に、自分たちのプロジェクトに最適なDoxygen活用法を見つけてください。

Verilogコードの品質向上と、効率的なプロジェクト管理を目指しましょう。