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VHDLにおけるレジスタ宣言の基本と活用16選

レジスタ宣言 徹底解説 VHDL
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

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●VHDLのレジスタ宣言とは?

デジタル回路設計の分野で、VHDLは非常に重要な役割を果たします。

VHDLはVery High Speed Integrated Circuit Hardware Description Languageの略称で、ハードウェア記述言語の一種です。

この言語を使用することで、複雑なデジタル回路を効率的に設計できます。

VHDLでレジスタを宣言することは、回路設計において基本的かつ重要な操作です。

レジスタは、デジタル回路内で一時的にデータを保持する記憶素子です。

データの保持や転送、演算結果の一時保存など、様々な目的で使用されます。

○レジスタの基本概念と重要性

レジスタは、デジタル回路設計において中心的な役割を担います。

回路内でデータを一時的に保存し、必要に応じて取り出すことができます。

例えば、計算の途中結果を保持したり、入力信号をサンプリングしたりする際に利用されます。

レジスタの重要性は、次の点にあります。

  1. データの一時保存 -> 演算結果や入力信号を一時的に保存できます。
  2. タイミング制御 -> クロック信号に同期してデータを更新できます。
  3. パイプライン処理 -> 複数のレジスタを使用して、処理を段階的に行えます。
  4. ステートマシンの実装 -> 回路の状態を保持し、制御に利用できます。

○VHDLにおけるレジスタ宣言の役割

VHDLでレジスタを宣言することで、回路設計者は回路の動作を明確に定義できます。

レジスタ宣言により、次のような利点があります。

  1. データ型の指定 -> ビット幅や符号の有無を明確に定義できます。
  2. 初期値の設定 -> レジスタの初期状態を指定できます。
  3. 同期・非同期の制御 -> クロックやリセット信号との関係を定義できます。
  4. 可読性の向上 -> 回路の構造や機能を明確に表現できます。

○サンプルコード1:基本的なレジスタ宣言

VHDLでの基本的なレジスタ宣言を見てみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity basic_register is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end basic_register;

architecture Behavioral of basic_register is
    signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            reg <= data_in;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg;
end Behavioral;

このコードでは、8ビットのレジスタを宣言しています。

クロック信号の立ち上がりエッジでデータを取り込み、出力に転送します。

signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);という行でレジスタを宣言しています。

この宣言により、8ビットの情報を保持できるレジスタが定義されます。

プロセス文の中で、クロックの立ち上がりエッジでdata_inの値をregに代入しています。

これにより、クロックに同期してレジスタの値が更新されます。

最後に、data_out <= reg;という文で、レジスタの値を出力ポートに接続しています。

●レジスタ宣言の正しい書き方

VHDLでレジスタを正しく宣言することは、効率的で信頼性の高いデジタル回路を設計する上で非常に重要です。

初心者からプロまで、押さえておくべき重要なポイントがいくつかあります。

○サンプルコード2:libraryとentityの使用法

まず、libraryとentityの適切な使用法について見てみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity advanced_register is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           enable : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0));
end advanced_register;

architecture Behavioral of advanced_register is
    signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            if enable = '1' then
                reg <= data_in;
            end if;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg;
end Behavioral;

このコードでは、IEEE libraryを使用しています。STD_LOGIC_1164パッケージは標準的な論理型を提供し、NUMERIC_STDパッケージは数値演算の機能を提供します。

entityでは、クロック、リセット、イネーブル信号、そして16ビットの入出力ポートを定義しています。

これにより、レジスタの外部インターフェースが明確になります。

architectureの中で、実際のレジスタの動作を記述しています。

リセット信号が有効な場合はレジスタをクリアし、そうでない場合はクロックの立ち上がりエッジでデータを取り込みます。

また、イネーブル信号を使用して、レジスタの更新を制御しています。

○サンプルコード3:signalとvariableの違いと使い分け

次に、signalとvariableの違いと使い分けについて説明します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity signal_variable_example is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end signal_variable_example;

architecture Behavioral of signal_variable_example is
    signal sig_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
        variable var_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
    begin
        if rising_edge(clk) then
            var_reg := data_in;
            sig_reg <= var_reg;
        end if;
    end process;

    data_out <= sig_reg;
end Behavioral;

この例では、signalとvariableの両方を使用しています。

signalは<=演算子で代入し、variableは:=演算子で代入することに注意してください。

signalはプロセス間で通信するのに使用され、その値は次のデルタサイクルまで更新されません。

一方、variableはプロセス内でのみ使用され、即座に値が更新されます。

この例では、入力データをまずvariableに代入し、その後signalに代入しています。

variableを使用することで、プロセス内で複雑な演算を行う際に便利です。

●VHDLレジスタ操作の基本と応用

VHDLでレジスタを操作する技術は、デジタル回路設計の要となります。

基本的な操作から応用的な技術まで、段階的に学んでいくことで、効率的かつ柔軟な回路設計が可能になります。

○サンプルコード5:レジスタへの値の代入と読み出し

レジスタへの値の代入と読み出しは、最も基本的な操作です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity register_rw is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           write_enable : in STD_LOGIC;
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end register_rw;

architecture Behavioral of register_rw is
    signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            if write_enable = '1' then
                reg <= data_in;
            end if;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg;
end Behavioral;

この回路では、write_enable信号が’1’の時にクロックの立ち上がりエッジでデータを書き込みます。

レジスタの値は常にdata_outに出力されます。

○サンプルコード6:クロック同期レジスタの実装

クロック同期レジスタは、デジタル回路設計において非常に重要です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity sync_register is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0));
end sync_register;

architecture Behavioral of sync_register is
    signal reg1, reg2 : STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            reg1 <= data_in;
            reg2 <= reg1;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg2;
end Behavioral;

この回路では、入力データを2段のレジスタで同期化しています。

メタステーブル状態を避け、安定した動作を保証します。

○サンプルコード7:非同期リセット機能の追加

非同期リセットは、回路を初期状態に戻すために使用されます。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity async_reset_register is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end async_reset_register;

architecture Behavioral of async_reset_register is
    signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            reg <= data_in;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg;
end Behavioral;

この回路では、reset信号が’1’になると即座にレジスタがクリアされます。

クロックとは非同期に動作する点に注意が必要です。

○サンプルコード8:条件付きレジスタ更新の方法

条件付きでレジスタを更新する技術は、複雑な制御ロジックを実装する際に重要です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity conditional_update is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           update_condition : in STD_LOGIC;
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end conditional_update;

architecture Behavioral of conditional_update is
    signal reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            if update_condition = '1' and unsigned(data_in) > unsigned(reg) then
                reg <= data_in;
            end if;
        end if;
    end process;

    data_out <= reg;
end Behavioral;

この回路では、update_conditionが’1’で、かつ入力データが現在のレジスタ値より大きい場合のみ更新が行われます。

●高度なレジスタ設計テクニック

高度なレジスタ設計テクニックを習得することで、複雑な機能を持つデジタル回路を効率的に実装できます。

○サンプルコード9:シフトレジスタの実装

シフトレジスタは、データを順次シフトする機能を持つ重要な回路要素です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity shift_register is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC;
           shift_enable : in STD_LOGIC;
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end shift_register;

architecture Behavioral of shift_register is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            if shift_enable = '1' then
                shift_reg <= shift_reg(6 downto 0) & data_in;
            end if;
        end if;
    end process;

    data_out <= shift_reg;
end Behavioral;

この回路は8ビットのシフトレジスタを実装しています。

shift_enableが’1’の時、新しいデータが右からシフトインされます。

○サンプルコード10:カウンタの設計と実装

カウンタは、デジタル回路設計において頻繁に使用される要素です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity counter is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           enable : in STD_LOGIC;
           count : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end counter;

architecture Behavioral of counter is
    signal count_reg : unsigned(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            count_reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            if enable = '1' then
                count_reg <= count_reg + 1;
            end if;
        end if;
    end process;

    count <= std_logic_vector(count_reg);
end Behavioral;

この回路は8ビットのカウンタを実装しています。

resetでカウンタをクリアし、enableが’1’の時にカウントアップします。

○サンプルコード11:ステートマシンにおけるレジスタの活用

ステートマシンは、複雑な制御ロジックを実装する際に非常に有用です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity state_machine is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           reset : in STD_LOGIC;
           input : in STD_LOGIC;
           output : out STD_LOGIC);
end state_machine;

architecture Behavioral of state_machine is
    type state_type is (IDLE, STATE1, STATE2);
    signal current_state, next_state : state_type;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            current_state <= IDLE;
        elsif rising_edge(clk) then
            current_state <= next_state;
        end if;
    end process;

    process(current_state, input)
    begin
        case current_state is
            when IDLE =>
                if input = '1' then
                    next_state <= STATE1;
                else
                    next_state <= IDLE;
                end if;
                output <= '0';
            when STATE1 =>
                next_state <= STATE2;
                output <= '1';
            when STATE2 =>
                next_state <= IDLE;
                output <= '0';
        end case;
    end process;
end Behavioral;

この回路は、3つの状態を持つステートマシンを実装しています。

current_stateレジスタが現在の状態を保持し、next_state信号が次の状態を決定します。

○サンプルコード12:パイプライン処理のためのレジスタ設計

パイプライン処理は、高速な回路設計に欠かせないテクニックです。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity pipeline is
    Port ( clk : in STD_LOGIC;
           data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
           data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0));
end pipeline;

architecture Behavioral of pipeline is
    signal stage1, stage2, stage3 : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            stage1 <= std_logic_vector(unsigned(data_in) + 1);
            stage2 <= std_logic_vector(unsigned(stage1) * 2);
            stage3 <= std_logic_vector(unsigned(stage2) - 3);
        end if;
    end process;

    data_out <= stage3;
end Behavioral;

この回路は、3段のパイプラインを実装しています。

各段階で異なる演算を行い、結果を次の段階に渡しています。

●よくあるエラーと対処法

VHDLを用いたデジタル回路設計において、エラーに遭遇することは珍しくありません。

エラーを適切に理解し、効果的に対処することで、設計プロセスを円滑に進めることができます。

ここでは、頻繁に発生するエラーとその対処法について詳しく解説します。

○タイミング違反とその解決策

タイミング違反は、デジタル回路設計において最も一般的なエラーの一つです。

信号が期待される時間内に目的地に到達しない場合に発生します。

タイミング違反を解決するためには、次の方法が効果的です。

  1. クリティカルパスの最適化 -> 最も時間がかかる信号経路を特定し、改善します。
  2. パイプライン化 -> 長い組み合わせロジックを複数のステージに分割します。
  3. レジスタの挿入 -> クリティカルパスにレジスタを追加し、信号伝播を分割します。
  4. クロック周波数の調整 -> システムのクロック周波数を下げて、タイミング要件を緩和します。

例えば、次のコードはタイミング違反を引き起こす可能性がある長い組み合わせロジックです。

architecture Behavioral of long_logic is
    signal result : STD_LOGIC_VECTOR(31 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            result <= input1 + input2 + input3 + input4 + input5 + input6 + input7 + input8;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

パイプライン化を適用して改善すると、以下のようになります。

architecture Behavioral of pipelined_logic is
    signal stage1, stage2, stage3 : STD_LOGIC_VECTOR(31 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            stage1 <= input1 + input2 + input3;
            stage2 <= stage1 + input4 + input5;
            stage3 <= stage2 + input6 + input7 + input8;
            result <= stage3;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

○合成エラーの原因と修正方法

合成エラーは、HDLコードをハードウェアに変換する過程で発生します。

主な原因と修正方法は次の通りです。

  1. 未定義の信号や変数 -> 全ての信号と変数が適切に宣言されていることを確認します。
  2. 非合成可能な構造 -> シミュレーションでは動作するが、実際のハードウェアでは実現できない構造を避けます。
  3. ラッチの意図しない生成 -> 不完全な条件文により意図しないラッチが生成される場合があります。全ての条件を網羅するようにします。

例えば、次のコードは意図しないラッチを生成する可能性があります。

process(sel, a, b)
begin
    if sel = '1' then
        output <= a;
    end if;
end process;

修正後のコードは次のようになります。

process(sel, a, b)
begin
    if sel = '1' then
        output <= a;
    else
        output <= b;
    end if;
end process;

○シミュレーションと実機の動作の不一致対策

シミュレーションと実機での動作の不一致は、デバッグを困難にする要因となります。

対策として次の方法が有効です。

  1. タイミングシミュレーションの実施 -> 合成後のネットリストを用いてタイミングシミュレーションを行い、実機に近い動作を確認します。
  2. 非同期リセットの適切な処理 -> 非同期リセット信号の扱いに注意し、メタステーブルを防ぐために同期化を行います。
  3. 初期化の徹底 -> 全ての信号やレジスタに適切な初期値を設定します。
  4. テストベンチの充実 -> 様々な入力パターンや境界条件を考慮したテストベンチを作成します。

例えば、次のコードは非同期リセットを適切に処理していません。

process(clk, reset)
begin
    if reset = '1' then
        counter <= (others => '0');
    elsif rising_edge(clk) then
        counter <= counter + 1;
    end if;
end process;

リセット信号を同期化した改善版は次の通りです。

signal reset_sync1, reset_sync2 : STD_LOGIC;

process(clk)
begin
    if rising_edge(clk) then
        reset_sync1 <= reset;
        reset_sync2 <= reset_sync1;

        if reset_sync2 = '1' then
            counter <= (others => '0');
        else
            counter <= counter + 1;
        end if;
    end if;
end process;

●レジスタ宣言の応用例

レジスタ宣言の知識を活かし、実践的なデジタル回路設計に取り組むことで、VHDLのスキルを大きく向上させることができます。

ここでは、実際のプロジェクトで役立つ応用例を紹介します。

○サンプルコード13:FIFOバッファの実装

FIFOバッファは、データの一時保存や異なるクロックドメイン間のデータ転送に使用される重要な要素です。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity fifo_buffer is
    Generic (
        DATA_WIDTH : integer := 8;
        FIFO_DEPTH : integer := 16
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        write_en : in STD_LOGIC;
        read_en : in STD_LOGIC;
        data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(DATA_WIDTH-1 downto 0);
        data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(DATA_WIDTH-1 downto 0);
        full : out STD_LOGIC;
        empty : out STD_LOGIC
    );
end fifo_buffer;

architecture Behavioral of fifo_buffer is
    type fifo_array is array (0 to FIFO_DEPTH-1) of STD_LOGIC_VECTOR(DATA_WIDTH-1 downto 0);
    signal fifo_mem : fifo_array;
    signal read_ptr, write_ptr : integer range 0 to FIFO_DEPTH-1;
    signal count : integer range 0 to FIFO_DEPTH;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            read_ptr <= 0;
            write_ptr <= 0;
            count <= 0;
        elsif rising_edge(clk) then
            if write_en = '1' and count < FIFO_DEPTH then
                fifo_mem(write_ptr) <= data_in;
                write_ptr <= (write_ptr + 1) mod FIFO_DEPTH;
                count <= count + 1;
            end if;

            if read_en = '1' and count > 0 then
                data_out <= fifo_mem(read_ptr);
                read_ptr <= (read_ptr + 1) mod FIFO_DEPTH;
                count <= count - 1;
            end if;
        end if;
    end process;

    full <= '1' when count = FIFO_DEPTH else '0';
    empty <= '1' when count = 0 else '0';
end Behavioral;

このFIFOバッファは、データの書き込みと読み出しを同時に行うことができ、フルやエンプティ状態を表す信号も出力します。

○サンプルコード14:デジタルフィルタのレジスタ構造

デジタルフィルタは、信号処理において重要な役割を果たします。

ここでは、簡単な移動平均フィルタを実装します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity moving_average_filter is
    Generic (
        DATA_WIDTH : integer := 16;
        FILTER_LENGTH : integer := 4
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(DATA_WIDTH-1 downto 0);
        data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(DATA_WIDTH-1 downto 0)
    );
end moving_average_filter;

architecture Behavioral of moving_average_filter is
    type shift_reg_type is array (0 to FILTER_LENGTH-1) of UNSIGNED(DATA_WIDTH-1 downto 0);
    signal shift_reg : shift_reg_type;
    signal sum : UNSIGNED(DATA_WIDTH+1 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => (others => '0'));
            sum <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            shift_reg <= UNSIGNED(data_in) & shift_reg(0 to FILTER_LENGTH-2);
            sum <= sum - shift_reg(FILTER_LENGTH-1) + UNSIGNED(data_in);
        end if;
    end process;

    data_out <= STD_LOGIC_VECTOR(sum(DATA_WIDTH+1 downto 2));
end Behavioral;

このデジタルフィルタは、入力データを順次シフトレジスタに格納し、その合計値の平均を出力します。

○サンプルコード15:シリアル通信インターフェースの設計

シリアル通信は、デバイス間のデータ転送に広く使用されます。

ここでは、簡単なUART送信機を実装します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity uart_transmitter is
    Generic (
        CLK_FREQ : integer := 50000000;  -- システムクロック周波数
        BAUD_RATE : integer := 9600      -- ボーレート
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        tx_start : in STD_LOGIC;
        tx_data : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        tx_busy : out STD_LOGIC;
        tx : out STD_LOGIC
    );
end uart_transmitter;

architecture Behavioral of uart_transmitter is
    constant BIT_PERIOD : integer := CLK_FREQ / BAUD_RATE;
    type state_type is (IDLE, START, DATA, STOP);
    signal state : state_type;
    signal bit_counter : integer range 0 to 7;
    signal bit_timer : integer range 0 to BIT_PERIOD-1;
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            state <= IDLE;
            tx <= '1';
            tx_busy <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            case state is
                when IDLE =>
                    if tx_start = '1' then
                        state <= START;
                        shift_reg <= tx_data;
                        bit_timer <= 0;
                        tx_busy <= '1';
                    end if;
                when START =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD-1 then
                        state <= DATA;
                        bit_counter <= 0;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                    tx <= '0';
                when DATA =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD-1 then
                        if bit_counter = 7 then
                            state <= STOP;
                        else
                            bit_counter <= bit_counter + 1;
                        end if;
                        shift_reg <= '0' & shift_reg(7 downto 1);
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                    tx <= shift_reg(0);
                when STOP =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD-1 then
                        state <= IDLE;
                        tx_busy <= '0';
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                    tx <= '1';
            end case;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

このUART送信機は、8ビットのデータをシリアル形式で送信します。

スタートビット、データビット、ストップビットの順に送信を行います。

○サンプルコード16:高速データパスのレジスタ最適化

高速データパスの設計では、レジスタの配置が重要になります。

ここでは、パイプライン化された乗算器を実装します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity pipelined_multiplier is
    Generic (
        WIDTH : integer := 16
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        a : in STD_LOGIC_VECTOR(WIDTH-1 downto 0);
        b : in STD_LOGIC_VECTOR(WIDTH-1 downto 0);
        product : out STD_LOGIC_VECTOR(2*WIDTH-1 downto 0)
    );
end pipelined_multiplier;

architecture Behavioral of pipelined_multiplier is
    signal a_reg, b_reg : STD_LOGIC_VECTOR(WIDTH-1 downto 0);
    signal partial_product : STD_LOGIC_VECTOR(2*WIDTH-1 downto 0);
    signal product_reg : STD_LOGIC_VECTOR(2*WIDTH-1 downto 0);
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            -- Stage 1: 入力レジスタ
            a_reg <= a;
            b_reg <= b;

            -- Stage 2: 乗算
            partial_product <= STD_LOGIC_VECTOR(UNSIGNED(a_reg) * UNSIGNED(b_reg));

            -- Stage 3: 出力レジスタ
            product_reg <= partial_product;
        end if;
    end process;

    product <= product_reg;
end Behavioral;

このパイプライン化された乗算器は、3つのステージで構成されています。

第1ステージで入力を取り込み、第2ステージで乗算を行い、第3ステージで結果を出力します。

各ステージ間にレジスタを挿入することで、クリティカルパスを短縮し、高速な動作を実現しています。

レジスタの最適化により、回路の動作周波数を向上させることができます。

同時に、各ステージの処理時間がバランスよく分散されるため、効率的なリソース利用が可能になります。

高速データパス設計では、次の点に注意を払うことが重要です。

  1. クリティカルパスの特定と分割 -> 最も時間がかかる処理を特定し、適切な位置にレジスタを挿入します。
  2. パイプラインステージのバランス -> 各ステージの処理時間が均等になるようにレジスタを配置します。
  3. リソース使用量とのトレードオフ -> 過度なパイプライン化はリソース使用量を増加させる可能性があるため、適切なバランスを取ります。
  4. タイミング解析の活用 -> 合成ツールのタイミング解析機能を使用して、クリティカルパスを特定し、最適化を行います。

レジスタ最適化は、高性能なデジタル回路設計において非常に重要な技術です。

適切なレジスタ配置により、回路の動作周波数を向上させ、処理能力を最大化することができます。

まとめ

VHDLにおけるレジスタ宣言と活用について、基礎から応用まで幅広く解説してきました。

レジスタは、デジタル回路設計の基本要素であり、適切に使用することで効率的で高性能な回路を実現できます。

VHDLとレジスタ宣言の基本を押さえ、応用力を身につけることで、より複雑で高度なデジタル回路設計にチャレンジすることができます。

本記事で学んだ知識を基礎として、さらなる技術向上を目指してみてください。