●Python ExceptionGroupとは?その特徴と利用
Pythonのバージョン3.11から導入された新しい機能であるExceptionGroupが注目を集めています。
ExceptionGroupは複数の例外を1つのグループとして扱うためのクラスで、例外処理の可読性と保守性の向上に役立ちます。
ExceptionGroupを使うと、関連する複数の例外を1つのグループとして扱えるので、例外の種類ごとに別々の処理を記述する必要がありません。
このように、コードの可読性と保守性が向上するのです。
○従来の例外処理との違い
従来のPythonでは、例外が発生するとその例外が伝播し、対応する最初のexcept句で捕捉されます。
しかし、複数の例外が同時に発生した場合、最初に捕捉された例外以外は無視されてしまいます。
例えば、ファイルの読み込みとデータの処理を行う際に、FileNotFoundErrorとValueErrorが同時に発生したとします。
従来の方法では、最初に発生した例外のみが捕捉され、もう一方の例外は無視されてしまいます。
しかし、ExceptionGroupを使えば、複数の例外をグループ化して一括して処理できます。
これで、発生したすべての例外に適切に対処できるようになります。
○ExceptionGroupが解決する問題
ExceptionGroupは、次のような問題を解決します。
- 複数の例外を個別に処理する必要がなくなる
- 例外処理のコードがシンプルで読みやすくなる
- 関連する例外を見落とすリスクが減る
- 並行処理やマルチスレッドプログラミングでのエラーハンドリングが容易になる
特に、非同期プログラミングにおいては、複数のタスクが並行して実行されるため、エラーハンドリングが複雑になりがちです。
ExceptionGroupを活用することで、並行処理で発生する複数の例外を効率的に処理できます。
●ExceptionGroupの基本的な使い方
さて、ExceptionGroupの概要は理解していただけたと思います。
実際に使ってみると、その利便性がよりわかりやすくなるでしょう。
早速、ExceptionGroupの基本的な使い方を見ていきましょう。
○サンプルコード1:シンプルなExceptionGroupの作成
まずは、シンプルなExceptionGroupを作成してみます。
ExceptionGroupクラスのコンストラクタには、グループの名前とExceptionオブジェクトのシーケンスを渡します。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
def func1():
raise ValueError("値が不正です")
def func2():
raise TypeError("型が違います")
try:
func1()
func2()
except* ExceptionGroup as e:
print(f"Caught {e}")
実行結果
Caught ExceptionGroup(ValueError('値が不正です'), TypeError('型が違います'))
func1()とfunc2()の両方で例外が発生しています。
ExceptionGroupを使うことで、それらの例外を一括して捕捉できました。
複数の例外を個別にexceptブロックで処理する必要がないのは、コードの可読性を高めてくれます。
○サンプルコード2:ネストされたExceptionGroupの扱い
次に、ネストされたExceptionGroupを扱う方法を見ていきましょう。
ExceptionGroupは階層的に構成することができます。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
def func1():
try:
raise ValueError("値が不正です")
except ValueError as e:
raise ExceptionGroup("func1のエラー", [e])
def func2():
try:
raise TypeError("型が違います")
except TypeError as e:
raise ExceptionGroup("func2のエラー", [e])
try:
func1()
func2()
except* ExceptionGroup as e:
print(f"Caught {e}")
for exc in e.exceptions:
if isinstance(exc, ExceptionGroup):
print(f" Nested: {exc}")
else:
print(f" {type(exc).__name__}: {exc}")
実行結果
Caught ExceptionGroup(ExceptionGroup('func1のエラー', ValueError('値が不正です')), ExceptionGroup('func2のエラー', TypeError('型が違います')))
Nested: ExceptionGroup('func1のエラー', ValueError('値が不正です'))
ValueError: 値が不正です
Nested: ExceptionGroup('func2のエラー', TypeError('型が違います'))
TypeError: 型が違います
func1()とfunc2()内でExceptionGroupを作成し、元の例外をラップしています。
外側のtry-exceptブロックでは、ネストされたExceptionGroupを含むExceptionGroupを捕捉しています。
捕捉したExceptionGroupの中身を確認するには、例外オブジェクトのexceptions属性を使います。
exceptionsには、グループ内の各例外オブジェクトが格納されています。
isinstance()を使って、ネストされたExceptionGroupかどうかを判定しながら、適切にエラーメッセージを表示しています。
●ExceptionGroupと非同期処理
ExceptionGroupは同期的な処理だけでなく、非同期処理でも大活躍します。
非同期プログラミングでは、複数のタスクが並行して実行されるため、エラーハンドリングが複雑になりがちですよね。
しかし、ExceptionGroupを使えば、非同期処理で発生する複数の例外を簡潔に処理できるんです。
○サンプルコード3:asyncioとExceptionGroupの組み合わせ
早速、ExceptionGroupとasyncioを組み合わせた例を見ていきましょう。
import asyncio
from exceptiongroup import ExceptionGroup
async def task1():
await asyncio.sleep(1)
raise ValueError("task1でエラー")
async def task2():
await asyncio.sleep(2)
raise TypeError("task2でエラー")
async def main():
try:
await asyncio.gather(task1(), task2())
except* ExceptionGroup as e:
print(f"Caught {e}")
for exc in e.exceptions:
print(f" {type(exc).__name__}: {exc}")
asyncio.run(main())
実行結果
Caught ExceptionGroup(ValueError('task1でエラー'), TypeError('task2でエラー'))
ValueError: task1でエラー
TypeError: task2でエラー
asyncio.gather()を使って、task1()とtask2()を並行して実行しています。
各タスクでは、わざと異なる種類の例外を発生させています。
try-exceptブロックでExceptionGroupを捕捉し、グループ内の各例外を順番に処理しています。
非同期タスクで発生したすべての例外を一括して扱えるのは、とても便利ですよね。
○サンプルコード4:TaskGroupを使った並行処理のエラーハンドリング
Python 3.11では、asyncioにTaskGroupというクラスが追加されました。
TaskGroupを使うと、複数のタスクを簡単にグループ化でき、エラーハンドリングも簡潔に書けます。
import asyncio
from exceptiongroup import ExceptionGroup
async def task1():
await asyncio.sleep(1)
raise ValueError("task1でエラー")
async def task2():
await asyncio.sleep(2)
raise TypeError("task2でエラー")
async def main():
async with asyncio.TaskGroup() as tg:
tg.create_task(task1())
tg.create_task(task2())
asyncio.run(main())
実行結果:
Traceback (most recent call last):
...
File "...", line 6, in task1
raise ValueError("task1でエラー")
File "...", line 10, in task2
raise TypeError("task2でエラー")
ExceptionGroup: ExceptionGroup(ValueError('task1でエラー'), TypeError('task2でエラー'))
TaskGroupのコンテキストマネージャー内で、create_task()を使ってタスクを作成しています。
タスクで例外が発生すると、自動的にExceptionGroupにまとめられ、伝播します。
明示的にtry-exceptを書かなくても、TaskGroupがエラーハンドリングを肩代わりしてくれるのは嬉しいポイントです。
コードがスッキリして読みやすくなりますね。
●ExceptionGroupの高度な活用法
ExceptionGroupの基本的な使い方は理解できたと思います。
ただ、ExceptionGroupにはもっと高度な活用法が存在します。
それぞれのシチュエーションに合わせて、柔軟にExceptionGroupを使いこなせると、エラーハンドリングの幅がグッと広がります。
○サンプルコード5:except*を使った選択的な例外捕捉
まずは、except*を使った選択的な例外捕捉の方法から見ていきましょう。
except*を使うと、ExceptionGroupから特定の例外だけを取り出して処理できます。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
def func1():
raise ValueError("値が不正です")
def func2():
raise TypeError("型が違います")
try:
func1()
func2()
except* ValueError as e:
print(f"ValueErrorをキャッチ: {e}")
except* TypeError as e:
print(f"TypeErrorをキャッチ: {e}")
except* Exception as e:
print(f"その他の例外をキャッチ: {e}")
実行結果
ValueErrorをキャッチ: ExceptionGroup(ValueError('値が不正です'))
TypeErrorをキャッチ: ExceptionGroup(TypeError('型が違います'))
例外の種類ごとにexcept*ブロックを用意することで、ExceptionGroup内の特定の例外だけを選択的に処理できました。
例外の種類に応じて、ログの出力やリソースの解放などの処理を個別に行えるので、とても便利ですよね。
○サンプルコード6:ExceptionGroupのフィルタリングとグループ化
ExceptionGroupの中から、条件に合う例外だけを抽出したい場合もあると思います。
そんなときは、ExceptionGroup.subgroup()メソッドを使ってフィルタリングできます。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
def is_value_error(exc):
return isinstance(exc, ValueError)
try:
raise ExceptionGroup("例外グループ",
[ValueError("値が不正です"), TypeError("型が違います"), ValueError("もう一つのValueError")])
except* ExceptionGroup as e:
value_error_group = e.subgroup(is_value_error)
print(f"ValueErrorのグループ: {value_error_group}")
other_group = e.subgroup(lambda exc: not is_value_error(exc))
print(f"その他の例外グループ: {other_group}")
実行結果
ValueErrorのグループ: ExceptionGroup('例外グループ', ValueError('値が不正です'), ValueError('もう一つのValueError'))
その他の例外グループ: ExceptionGroup('例外グループ', TypeError('型が違います'))
subgroup()メソッドの引数に、例外を判定する関数を渡します。
is_value_error()関数では、例外がValueErrorかどうかを判定しています。
ExceptionGroupをValueErrorとその他の例外に分けて、新しいExceptionGroupを作成しました。
関連する例外をグループ化することで、例外の関連性が明確になり、エラー処理のロジックがシンプルになります。
○サンプルコード7:カスタムExceptionGroupの作成と活用
ExceptionGroupは組み込みのクラスですが、カスタムExceptionGroupを作ることもできます。
プロジェクト固有の例外グループを定義することで、エラー処理をより semantic に行えます。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
class CustomExceptionGroup(ExceptionGroup):
def __init__(self, message, exceptions):
super().__init__(message, exceptions)
self.log_error()
def log_error(self):
print(f"エラーログ: {self}")
try:
raise CustomExceptionGroup("カスタム例外グループ",
[ValueError("値が不正です"), TypeError("型が違います")])
except* CustomExceptionGroup as e:
print(f"カスタムExceptionGroupをキャッチ: {e}")
実行結果
エラーログ: CustomExceptionGroup('カスタム例外グループ', ValueError('値が不正です'), TypeError('型が違います'))
カスタムExceptionGroupをキャッチ: CustomExceptionGroup('カスタム例外グループ', ValueError('値が不正です'), TypeError('型が違います'))
CustomExceptionGroupクラスを定義し、ExceptionGroupを継承しています。
__init()__メソッドをオーバーライドし、例外が発生した際に自動的にエラーログを出力するようにしました。
カスタムExceptionGroupを使うことで、例外グループに独自の振る舞いを持たせられます。
プロジェクトに適した例外処理の仕組みを構築できるので、コードの可読性と保守性が向上するでしょう。
●ExceptionGroup使用時の注意点とベストプラクティス
ExceptionGroupを使えば、複数の例外を効率的に処理できるようになります。
でも、ExceptionGroupを使う際には、いくつか注意点があるんです。
適切に使わないと、かえってコードが複雑になったり、パフォーマンスに影響が出たりする可能性があります。
○バージョン互換性の考慮
ExceptionGroupはPython 3.11で導入された新しい機能です。
Python 3.11より古いバージョンでExceptionGroupを使おうとすると、エラーが発生してしまいます。
例えば、Python 3.10以前のバージョンで次のようなコードを実行すると、ModuleNotFoundErrorが発生します。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
try:
# 例外を発生させる処理
pass
except* ExceptionGroup as e:
# 例外の処理
pass
実行結果(Python 3.10以前)
Traceback (most recent call last):
File "example.py", line 1, in <module>
from exceptiongroup import ExceptionGroup
ModuleNotFoundError: No module named 'exceptiongroup'
プロジェクトのPythonバージョンを3.11以降にアップグレードできない場合は、ExceptionGroupを使わずに従来の例外処理を行う必要があります。
バージョンの互換性を考慮して、適切に例外処理のコードを書きましょう。
○パフォーマンスへの影響
ExceptionGroupを使うと、例外処理のコードがシンプルになる反面、パフォーマンスへの影響を考慮する必要があります。
特に、大量の例外を含むExceptionGroupを処理する場合は、注意が必要です。
次のコードは、1000個の例外を含むExceptionGroupを処理する例です。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
try:
exceptions = [ValueError(f"例外{i}") for i in range(1000)]
raise ExceptionGroup("大量の例外", exceptions)
except* ExceptionGroup as e:
for exc in e.exceptions:
print(f"例外をキャッチ: {exc}")
実行結果(一部省略)
例外をキャッチ: ValueError('例外0')
例外をキャッチ: ValueError('例外1')
...
例外をキャッチ: ValueError('例外998')
例外をキャッチ: ValueError('例外999')
大量の例外を含むExceptionGroupを処理すると、例外の数に応じてループ処理の回数が増え、パフォーマンスが低下する可能性があります。
パフォーマンスを改善するには、例外の数を減らすことが有効です。
関連する例外をグループ化したり、不要な例外を除外したりするなどの工夫をしましょう。
また、例外処理のコードを最適化し、無駄な処理を減らすことも大切です。
●よくあるエラーと対処法
ExceptionGroupを使っていると、時々エラーに遭遇することがあるかもしれません。
でも、焦る必要はありません。
よくあるエラーとその対処法を知っておけば、スムーズにトラブルシューティングができます。
○ModuleNotFoundError: No module named ‘exceptiongroup’
Python 3.11未満のバージョンでExceptionGroupを使おうとすると、ModuleNotFoundErrorが発生します。
from exceptiongroup import ExceptionGroup
try:
# 例外を発生させる処理
pass
except* ExceptionGroup as e:
# 例外の処理
pass
実行結果(Python 3.10以前)
Traceback (most recent call last):
File "example.py", line 1, in <module>
from exceptiongroup import ExceptionGroup
ModuleNotFoundError: No module named 'exceptiongroup'
対処法は簡単です。Python 3.11以降のバージョンにアップグレードすることです。
Python 3.11では、ExceptionGroupがデフォルトで利用可能になっています。
Pythonのバージョンアップができない場合は、従来の例外処理の方法を使う必要があります。
バージョンの互換性を考慮して、適切にコードを書き換えましょう。
○TypeError: catch() argument must be a type, a tuple of types, or an exception group
except*構文を使う際に、引数の型が正しくない場合に発生するエラーです。
try:
# 例外を発生させる処理
pass
except* "ValueError" as e: # 型が正しくない
# 例外の処理
pass
実行結果
Traceback (most recent call last):
File "example.py", line 4, in <module>
except* "ValueError" as e:
File "<string>", line 4
except* "ValueError" as e:
^^^^^^^^^^^^^^^^^
TypeError: catch() argument must be a type, a tuple of types, or an exception group
対処法は、except*の引数に正しい型を指定することです。
引数には、例外の型、例外の型のタプル、またはExceptionGroupを指定します。
try:
# 例外を発生させる処理
pass
except* ValueError as e: # 例外の型を指定
# 例外の処理
pass
型を正しく指定することで、エラーを回避できます。
コードを書く際は、構文に注意を払いましょう。
まとめ
さて、ExceptionGroupについて詳しく見てきましたが、いかがでしたか?
ExceptionGroupは、Pythonの例外処理を大きく変える機能です。
ぜひ、自分のプロジェクトでExceptionGroupを活用して、より良いコードを書いていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。