「基本情報技術者試験(FE)」という名前は聞いたことがあっても、何を測る資格で、自分が受ける価値があるのかまでは見えにくいものです。本記事では、IPAが実施するこの国家試験の位置づけと出題範囲、合格率や必要な勉強時間といった数字を一次情報で整理します。
あわせて、多くの解説が触れていない論点も扱います。それは「いくらで学ぶか」です。FEには教育訓練給付の対象講座があり、給付を踏まえると学習にかかる費用の感じ方は変わります。受験するかどうか、独学かスクールか、そしてその費用をどう抑えるかまで、判断に必要な材料を一通りお渡しします。
基本情報技術者試験(FE)とは——30秒でわかる要点
基本情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施する経済産業省所管の国家試験です。情報処理技術者試験という体系の中でスキルレベル2に位置づけられ、ITエンジニアの基礎を証明する「登竜門」として扱われます。
業務独占資格ではなく、持っていなければエンジニアになれない、という性質のものではありません。あくまで知識の幅と土台を客観的に示す資格です。ここを誤解すると「取らないと不利」と過度に身構えてしまいます。
位置づけを整理すると、入門のITパスポート(レベル1)があり、その上にFE(レベル2)、さらに上に応用情報技術者(レベル3)が続きます。FEは、IT業界への就職・転職を考え始めた人が最初に狙う実務寄りの資格、という理解で過不足ありません。
受験資格に学歴や実務経験の制限はなく、年齢を問わず申し込めます。文系・未経験から受ける人も多く、IT職を目指すうえで知識の抜けを点検する道具として機能します。
試験の全体像:科目A・科目Bと合格基準
現在のFEは、科目Aと科目Bの2部構成です。かつての「午前・午後」という呼び方は2023年以降使われていません。古い解説では旧称のままのものがあるため、最新の用語で押さえておくと混乱しません。
科目Aは90分・60問の四肢択一で、テクノロジ・マネジメント・ストラテジの3分野から広く出題されます。用語と基礎理論を問う、知識の幅広さが試される科目です。
科目Bは100分・20問で、アルゴリズムとプログラミングの考え方、および情報セキュリティが中心です。暗記よりも「読んで考える」力が問われるのが科目Bで、未経験者がつまずきやすいのもここです。
採点はそれぞれ1,000点満点で、科目A・科目Bともに600点以上が合格ラインです。片方だけ高得点でも、もう一方が基準を下回れば不合格になる点に注意が必要です。配点の詳細は受験前にIPAの公表資料で確認しておくと安心です。
| 項目 | 科目A | 科目B |
|---|---|---|
| 時間 | 90分 | 100分 |
| 問題数 | 60問(四肢択一) | 20問 |
| 主な範囲 | テクノロジ/マネジメント/ストラテジ | アルゴリズム・プログラミング/情報セキュリティ |
| 合格基準 | 1,000点満点中600点以上 | 1,000点満点中600点以上 |
2023年に何が変わった?通年CBT化と科目再編
FEを調べると情報が食い違って見えるのは、2023年4月に試験が大きく変わったためです。変更点を知らないまま古い記事を読むと、試験日や出題形式の理解がずれてしまいます。
最大の変更は通年でのCBT方式への移行です。CBTは会場のパソコンで受験する方式で、かつてのように年2回の決まった日に紙で受ける形ではなくなりました。自分の都合に合わせて受験日を選べるようになったのが、現行制度のいちばん大きな利点です。
あわせて、出題のボリュームも見直されました。長文の大問を解いていた旧午後試験に比べ、現行の科目Bは設問が整理され、アルゴリズムとセキュリティに焦点が絞られています。学習範囲の的が絞りやすくなった、と捉えるとよいでしょう。
注意点として、再受験には一定の受験間隔のルールが設けられています。落ちてもすぐ予約し直せるわけではないため、受験日と申込のタイミングはIPAの最新案内で確認してから計画を立ててください。
合格率・難易度の実際
合格率は、近年は40%前後で推移しています。ここは特に注意が必要で、いまだに「20〜30%」という古い数字を載せた記事が残っています。通年CBT化の前後で水準が変わっているため、古い合格率を基準に難しさを判断しないでください。
40%前後という数字は、国家試験としては極端に低くはありません。きちんと範囲を学び、過去問形式の演習を積めば、未経験からでも十分に手が届く水準です。
ただ、体感の難易度は経歴によって割れます。普段からコードに触れている人は科目Bを比較的楽に感じ、用語の暗記が中心の科目Aに時間を取られます。逆に未経験者は、科目Bのアルゴリズムを読み解く段階で壁を感じやすい傾向があります。
つまずく場所が人によって違う、というのがFEの実際です。自分がどちらでつまずきそうかを早めに見極め、弱い側に時間を寄せるのが、合格率の数字以上に効く対策になります。
必要な勉強時間の目安
必要な勉強時間は経験によって大きく変わります。一般的な目安として、IT実務やプログラミングの経験がある人で50〜100時間、まったくの未経験者で150〜200時間が一つのラインとされています。
未経験で150時間とすると、平日に1時間、休日に2〜3時間を積めばおおよそ3〜4か月の計算になります。働きながら受ける人は、この逆算で受験日から予定を引く組み方が現実的です。
ここで効いてくるのが学習の順序です。科目Aの用語を先に固めてから科目Bの演習に入ると、アルゴリズムの問題文に出てくる言葉でつまずかずに済みます。いきなり科目Bから始めて挫折する人が少なくありません。
時間はあくまで目安で、数字を埋めること自体が目的ではありません。過去問形式で「解けるか」を測りながら、足りない範囲に時間を寄せていく進め方が、総学習時間を最も短くします。独学で時間が読めず不安な場合は、学習設計を任せられる講座を併用する選択肢もあります。給付を使った場合の負担については、後半で扱います。
取得するメリットと「意味ない?」への本音
FEを取るメリットは、第一にIT基礎知識の客観的な証明です。独学で身につけた知識は範囲に穴ができがちですが、FEの学習はその穴を体系的に埋めてくれます。
就職・転職の場面では、未経験者の学習意欲と基礎理解の裏づけとして評価されます。実務経験がない段階で「ITの土台はある」と示せる材料は限られており、その一つがFEです。
勤務先によっては資格手当の対象になったり、社内の昇格・配属で考慮されたりするケースもあります。金額や扱いは会社ごとに違うため、在職中の方は自社の規定を一度確認してみてください。
では「意味ない」という声は何かというと、業務独占資格ではないため、資格があるだけで仕事が約束されるわけではない、という当たり前の事実を指していることが多いです。実務力やポートフォリオと組み合わせて初めて効く資格、と捉えるのが正確です。すでに実務で活躍している人にとって優先度が下がるのは確かですが、未経験から土台を固めたい人には有効、という線引きになります。
独学かスクールか——向く人・向かない人
FEはスクールが必須の資格ではありません。市販のテキストと過去問演習だけで合格する人は大勢います。費用も受験料程度で済むため、まず独学を検討するのは合理的です。
独学で受かりやすいのは、学習計画を自分で組んで継続できる人です。毎週の進捗を自分で管理でき、分からない点を検索や書籍で解決できるなら、独学が最も費用対効果に優れます。すでに少しでもコードに触れた経験がある人は、特に独学向きです。
一方でスクールや講座が効くのは、科目Bのアルゴリズムで手が止まり、独学では先に進めなくなった人です。「なぜそう動くか」を質問できる相手がいる環境は、未経験者がつまずく段階を越えるうえで大きな助けになります。
また、独学だと学習が長期化して結局受験しないまま終わる人もいます。受験日までの強制力や学習設計が欲しい、在職中で自力の時間管理に自信がない、という人は講座の併用を検討する価値があります。向き不向きの問題であって、優劣ではありません。
費用と教育訓練給付:給付後の実額で考える
FEにかかるお金は、まず受験手数料7,500円です。独学ならこれにテキスト代が数千円加わる程度で、総額は抑えられます。
講座やスクールを使う場合は受講費が加わりますが、ここで知っておきたいのが教育訓練給付です。これは厚生労働省が所管する制度で、一定の要件を満たす人が対象講座を受講・修了すると、支払った受講費の一部が支給されます。
給付には区分があり、給付率と上限が異なります。FE対策のような講座は一般教育訓練給付の対象になっているものがあり、この区分では受講費の20%(上限10万円)が支給されます。より手厚い区分もありますが、対象になる講座や要件は限られます。
| 区分 | 給付率 | 上限の目安 | 主な対象イメージ |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練給付 | 受講費の20% | 10万円 | 資格対策講座など |
| 特定一般教育訓練給付 | 受講費の40% | 20万円 | 速やかな再就職に資する講座など |
| 専門実践教育訓練給付 | 最大80%(区分・条件で変動) | 条件により段階適用 | 長期の専門課程など |
考え方はシンプルで、定価から給付率に応じた額が後で戻り、差し引いた分が実質の負担になる、という流れです。たとえば一般区分なら、戻る分だけ体感の費用が軽くなります。
ただし、いくら戻るかは給付区分・受講回数・離職期間といったあなた自身の条件で変わります。同じ講座でも人によって実額は異なるため、本記事で個別の金額を断定することはしません。受講を検討している講座があるなら、給付後の実額を試算したうえで比べるのが、損をしない選び方です。
制度面で押さえておきたい点が三つあります。第一に、講座が給付対象かどうかは厚生労働省の教育訓練給付制度 検索システムで指定講座番号を確認します。
第二に、給付には受講前の手続きや支給申請の期限(修了後の所定期間内)があり、これを逃すと支給されません。第三に、制度は改正されるため、対象可否・給付率・期限は受講前にハローワーク等で確認してください。
「対象だろう」という思い込みで進めるのが、いちばん多い失敗です。
給付対応スクールを実額で見比べるという視点
独学では不安が残る、あるいは受験までの設計を任せたい——そう考えたとき、次に気になるのは「どの講座を、給付を使って実質いくらで受けられるか」です。
講座の比較は、定価だけを並べても意味が薄いというのが正直なところです。同じ価格帯でも給付の区分が違えば、戻ってくる額が変わり、最終的な負担は逆転することがあります。だからこそ、定価ではなく給付後の実額で横並びにする視点が要ります。
その際は、受講料の総額、サポート範囲、給付の区分と対象講座番号、修了要件をセットで確認してください。価格の安さだけで選ぶと、自分が給付の要件を満たさず実額が想定より重くなることがあります。
編集部としての結論を、読者のタイプ別にお伝えします。初学者で独学の計画づくりに自信がないなら、質問できる環境のある講座が学習の停滞を防ぎます。
転職目的で受験日を確実に区切りたい在職者は、学習設計と給付対応がそろった講座が時間と費用の両取りになりやすいです。学生や、すでにコードに触れている人は、まず独学で過去問演習から始め、科目Bで詰まったら講座を足す、という段階的な進め方が無駄が出ません。
いずれの場合も、最後は給付後の実額で比べて決めるのが堅実です。
給付を使って学ぶなら、まず給付後の実額を確認
対象講座なら受講料の最大80%(給付区分・上限・要件あり)が後日支給され、実質負担を抑えられます。
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よくある質問
Q. ITパスポートとの違いは何ですか?
A. ITパスポートはスキルレベル1で、IT全般の基礎知識を社会人向けに問う入門資格です。FEはレベル2で、アルゴリズムやプログラミングの考え方まで踏み込むエンジニア寄りの内容になります。IT職を目指すならFE、ITを使う立場の素養を示すならITパスポート、という住み分けです。
Q. 独学で受かりますか?
A. 受かります。市販テキストと過去問演習で合格する人は多くいます。鍵は科目Aの用語を先に固め、科目Bの演習で「読んで考える」練習を積むことです。計画を自分で管理できる人ほど独学が向きます。
Q. 何か月くらいかかりますか?
A. 未経験者で150〜200時間が目安とされ、平日1時間・休日2〜3時間なら3〜4か月程度の計算になります。経験者は50〜100時間で、より短く済む傾向です。あくまで目安で、過去問の正答率を見ながら調整してください。
Q. 受験料はいくらですか?
A. 受験手数料は7,500円です(2026年6月時点)。独学ならこれにテキスト代が加わる程度で済みます。最新の金額はIPAの公式案内でご確認ください。
Q. 合格発表はいつですか?
A. 通年CBT方式では、受験後にスコアレポートが提示され、正式な合格発表は所定の日程で行われます。具体的な発表時期は受験月によって変わるため、IPAの最新案内で確認してください。
Q. 合格率はどのくらいですか?
A. 近年は40%前後で推移しています。古い記事に残る「20〜30%」は通年CBT化前の水準で、現行とは異なります。難易度を測るときは最新の合格率を基準にしてください。
Q. FEは教育訓練給付の対象になりますか?
A. FE対策講座の中には、一般教育訓練給付などの対象になっているものがあります。ただし対象かどうかは講座ごとに異なるため、厚生労働省の検索システムで指定講座番号を確認する必要があります(2026年6月時点・要確認)。
Q. 給付を使うと結局いくら戻りますか?
A. 戻る額は給付区分・受講回数・離職期間などあなたの条件で変わるため、一律には言えません。受講候補の講座をもとに、給付後の実額を試算ツールで確認するのが確実です。最終的な可否はハローワークでご確認ください。
Q. 落ちたらすぐ受け直せますか?
A. CBT方式でも再受験には一定の受験間隔のルールがあり、すぐには予約できない場合があります。受験計画を立てる前に、IPAの最新案内で間隔と申込時期を確認してください。
Q. 文系・未経験でも大丈夫ですか?
A. 受験資格に制限はなく、文系・未経験から合格する人も多くいます。科目Bのアルゴリズムで手が止まりやすいので、ここを早めに演習で慣らすのが攻略の要点です。
受講を検討中なら、対象講座の確認漏れや申請期限の見落としで損をしないためにも、まず給付後の実額を把握しておくことをおすすめします。
参考・出典
本記事の試験制度・数値はIPAの公表資料、給付制度は厚生労働省・ハローワークの一次情報に基づきます(いずれも2026年6月時点・最新は要確認)。
情報処理推進機構(IPA)「基本情報技術者試験」 — https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/fe.html
情報処理推進機構(IPA)「情報処理技術者試験 試験要綱」 — https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/index.html
情報処理推進機構(IPA)「統計情報(合格率・応募者数)」 — https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei/index.html
情報処理推進機構(IPA)「CBT方式試験の実施について」 — https://www.ipa.go.jp/shiken/cbt/index.html
厚生労働省「教育訓練給付制度」 — https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
厚生労働省「教育訓練給付制度 検索システム」 — https://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/
厚生労働省「専門実践教育訓練給付金のご案内」 — https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000824215.pdf
ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」 — https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
経済産業省「IT人材育成・情報処理技術者試験」 — https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/index.html
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