Kotlinで使うapplyの15選の使い方と詳細解説

Kotlinのapply関数を使ったコード例と詳細解説のイラストKotlin
この記事は約25分で読めます。

 

【サイト内のコードはご自由に個人利用・商用利用いただけます】

この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を凌駕する現役のプログラマチームによって監修されています。

サイト内のコードを共有する場合は、参照元として引用して下さいますと幸いです

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
(送信された情報は、プライバシーポリシーのもと、厳正に取扱い、処分させていただきます。)

はじめに

あなたはKotlinというプログラミング言語を学び始めたばかり、あるいは既に使っているけれど、より効率的にコードを書きたいと考えていますか?

この記事を読めば、Kotlinのapply関数の活用方法が身につきます。

初心者の方にもわかりやすく、apply関数の基本から応用までを手厚く解説していきます。

●Kotlinとは?

Kotlinは、現代のプログラマーが直面する課題を解決するために設計された、静的型付けのプログラミング言語です。

Javaの代わりにAndroidのアプリケーション開発でよく使用されている他、サーバーサイドやフロントエンドなど幅広い領域での開発にも適用されています。

○Kotlinの基本的な特徴

Kotlinは、次のような特徴を持っています。

  1. 互換性:KotlinはJavaと100%の互換性があります。つまり、Javaで書かれた既存のライブラリやフレームワークをそのまま利用することができます。
  2. 安全性:Kotlinは、Null参照の問題を防ぐための設計がされています。これにより、ランタイムエラーを大幅に減少させることができます。
  3. 簡潔性:Kotlinのコードは、Javaに比べてより簡潔に書くことができます。これにより、読みやすく、保守しやすいコードを実現します。
  4. 拡張関数:Kotlinでは、既存のクラスを拡張して新しい関数を追加することができます。これにより、ライブラリの修正無しに機能を追加することができます。
  5. スクリプト言語としての利用:Kotlinは、コンパイル言語としてだけでなく、スクリプト言語としても利用することができます。これにより、さまざまなスクリプティングタスクでKotlinを活用することができます。

●apply関数とは?

Kotlinでは、オブジェクト指向プログラミングを効果的にサポートするための様々な関数が提供されています。

その中でも、apply関数はオブジェクトのプロパティ設定や初期化をより簡潔に書くことができる便利な関数として知られています。

○applyの基本的な概念

apply関数は、呼び出し元のオブジェクト自体を返す関数であり、そのオブジェクトのスコープ内で任意の操作を行うことができます。

主にオブジェクトの初期化や設定を行う際に用いられます。

Kotlinの大きな特徴として「スコープ関数」がありますが、applyもその一つです。

具体的には、apply関数は次のように使用します。

val sampleObject = SampleClass().apply {
    property1 = "Value1"
    property2 = "Value2"
}

このコードでは、SampleClassというクラスのインスタンスを生成し、apply関数の中でそのインスタンスのproperty1とproperty2というプロパティに値を設定しています。

そして、そのインスタンス自体がsampleObjectに代入されます。

実際には、このような簡単な例だけではなく、もっと複雑な初期化や設定をapply関数の中で行うことが多いです。

その際の醍醐味は、applyのスコープ内ではオブジェクトのプロパティやメソッドに直接アクセスできる点にあります。

●applyの詳細な使い方

Kotlinのapply関数は非常に強力なツールであり、初心者から上級者まで多くの開発者が日常的に利用しています。

その理由は、オブジェクトの初期化や設定を簡潔に、そして読みやすく書けるからです。

ここでは、applyの具体的な使い方とその魅力をいくつかのサンプルコードを交えて解説します。

○サンプルコード1:初めてのapplyの使用例

Kotlinのapply関数の基本的な使用例から見ていきましょう。

// SampleClassの定義
class SampleClass {
    var property1: String = ""
    var property2: String = ""
}

// apply関数の使用例
val myObject = SampleClass().apply {
    property1 = "Hello"
    property2 = "World"
}

このコードでは、SampleClassというクラスのインスタンスを生成し、apply関数を使ってそのプロパティに値を設定しています。

myObjectにはプロパティが設定されたSampleClassのインスタンスが代入されます。

○サンプルコード2:オブジェクトのプロパティ設定にapplyを使用

applyは特にオブジェクトのプロパティの設定において力を発揮します。

data class Person(var name: String, var age: Int)

val person = Person("", 0).apply {
    name = "Taro"
    age = 25
}

このコードを実行すると、nameに”Taro”、ageに25という値が設定されたPersonオブジェクトがperson変数に代入されます。

○サンプルコード3:applyを使ってオブジェクトの初期化を簡潔に

apply関数を利用することで、複数のプロパティやメソッドの初期化・設定を一箇所にまとめることができます。

class Rectangle {
    var width: Double = 0.0
    var height: Double = 0.0
    fun area() = width * height
}

val rectangle = Rectangle().apply {
    width = 10.0
    height = 20.0
}

このコードを実行すると、幅10.0、高さ20.0のRectangleオブジェクトがrectangle変数に代入されます。

そして、rectangle.area()を実行することで、面積を計算することができます。

●applyの応用例

Kotlinのapply関数は基本的な使い方だけでなく、さまざまな場面での応用が可能です。

ここでは、apply関数を用いた具体的な応用例をいくつか紹介します。

○サンプルコード4:applyを活用したリストの操作

apply関数を使うことで、リストに対する操作も一貫して行うことができます。

val numbers = mutableListOf(1, 2, 3, 4, 5).apply {
    add(6)
    removeAt(0)
    reverse()
}

このコードでは、数字のリストを作成し、そのリストに6を追加、最初の要素を削除し、最後にリストの順序を逆にしています。

numbersには「5, 4, 3, 2, 6」という順序のリストが代入されます。

○サンプルコード5:applyを使った独自関数の定義

apply関数を活用することで、独自の関数の定義時にもプロパティや初期設定を行うことができます。

class CustomFunction {
    var parameter: String = ""
    fun execute() {
        println("Execute with parameter: $parameter")
    }
}

val function = CustomFunction().apply {
    parameter = "Test Parameter"
}
function.execute()

このコードではCustomFunctionクラスのインスタンスを作成し、そのインスタンスのparameterに値を設定しています。

function.execute()を呼び出すと、”Execute with parameter: Test Parameter”というメッセージが出力されます。

○サンプルコード6:ネストされたオブジェクトの初期化にapplyを活用

Kotlinでオブジェクト指向プログラミングを行う際、ネストされたオブジェクトの初期化が必要となる場面がしばしばあります。

このようなネストされたオブジェクトの初期化を効率的に行うのに、apply関数は非常に役立ちます。

例えば、会社とその所属する従業員の情報を持ったオブジェクトを考えてみましょう。

このオブジェクトの初期化をapply関数を使って行う方法をサンプルコードで紹介します。

class Company {
    var name: String = ""
    var employee: Employee? = null
}

class Employee {
    var firstName: String = ""
    var lastName: String = ""
}

val myCompany = Company().apply {
    name = "Tech Corp"
    employee = Employee().apply {
        firstName = "Taro"
        lastName = "Yamada"
    }
}

このコードでは、Companyクラスのインスタンスを生成し、その中のemployeeプロパティにEmployeeクラスのインスタンスを生成して設定しています。

apply関数をネストして使用することで、一連の初期化処理をスムーズに記述することができました。

myCompanyオブジェクトのnameプロパティには”Tech Corp”が、employeeプロパティのfirstNameとlastNameにはそれぞれ”Taro”と”Yamada”が設定されています。

○サンプルコード7:applyを活用して簡潔なデータマッピング

データのマッピングも、apply関数の活用でより簡潔に記述することができます。

例えば、APIから取得したデータをローカルのオブジェクトにマッピングする場面を考えてみましょう。

class ApiData {
    var id: Int = 0
    var content: String = ""
}

class LocalData {
    var localId: Int = 0
    var text: String = ""
}

fun convertToLocal(apiData: ApiData) = LocalData().apply {
    localId = apiData.id
    text = apiData.content
}

このコードでは、APIから取得したデータを表すApiDataクラスのインスタンスを、ローカルで使用するLocalDataクラスのインスタンスに変換しています。

convertToLocal関数内でapply関数を使用することで、簡潔にマッピングの処理を記述しています。

convertToLocal関数を使用してApiDataのインスタンスを変換すると、その結果としてLocalDataのインスタンスが得られます。

このインスタンスには、ApiDataのidとcontentの情報がそれぞれlocalIdとtextのプロパティとして設定されています。

○サンプルコード8:applyでエラーハンドリングを行う例

Kotlinのapply関数は、エラーハンドリングを行う際にも非常に有用です。

特に、オブジェクトの初期化や設定中に特定の条件を満たさない場合にエラーをスローするといったシチュエーションでの利用が考えられます。

ここでは、エラーハンドリングの際のapply関数の活用例を紹介します。

class User {
    var age: Int = 0
}

fun createUser(ageValue: Int): User {
    if (ageValue < 0) {
        throw IllegalArgumentException("年齢は0以上である必要があります。")
    }
    return User().apply { age = ageValue }
}

このコードでは、Userクラスのインスタンスを生成する際、年齢が0未満であればIllegalArgumentExceptionをスローします。

エラーハンドリングとオブジェクトの初期化が一連の流れで記述されているため、コードの可読性が向上しています。

createUser関数を実行し、年齢に負の値を指定した場合、即座に例外がスローされます。

一方、0以上の値を指定した場合、正しくUserオブジェクトが生成され、そのageプロパティに指定された年齢が設定されます。

○サンプルコード9:applyを使って効率的に条件分岐

条件分岐の際にもapply関数は有効に活用できます。

特に、複数の条件に基づいてオブジェクトのプロパティを設定する際などに便利です。

下記のサンプルコードは、注文情報を持つOrderクラスのインスタンスを初期化する際の例を表しています。

class Order {
    var status: String = ""
    var price: Double = 0.0
    var discount: Double = 0.0
}

fun processOrder(totalPrice: Double): Order {
    return Order().apply {
        price = totalPrice
        if (totalPrice > 10000) {
            discount = totalPrice * 0.1
            status = "特別割引適用"
        } else {
            discount = 0.0
            status = "通常価格"
        }
    }
}

このコードでは、注文の合計金額が10,000を超える場合、割引を適用するという処理を行っています。

apply関数内で条件分岐を行うことで、Orderオブジェクトの初期化を効率的に記述しています。

processOrder関数を10,000超える値で呼び出した場合、Orderオブジェクトのdiscountプロパティには10%の割引額が、statusプロパティには”特別割引適用”という文字列が設定されます。

逆に10,000以下の場合、discountは0となり、statusは”通常価格”となります。

○サンプルコード10:applyを用いた動的なオブジェクトの生成

Kotlinのapply関数はオブジェクトの生成時に、そのオブジェクトのプロパティの設定や、いくつかの処理を動的に行う際にも非常に役立ちます。

動的なオブジェクトの生成とは、実行時の条件やデータに応じてオブジェクトのプロパティや状態を変更することを指します。

下記のサンプルコードは、複数の条件に基づいてProductオブジェクトを動的に生成する例を表しています。

class Product {
    var name: String = ""
    var price: Double = 0.0
    var category: String = ""
}

fun createProduct(data: Map<String, Any>): Product {
    return Product().apply {
        name = data["name"] as String
        price = data["price"] as Double
        category = when (price) {
            in 0.0..100.0 -> "低価格帯"
            in 101.0..500.0 -> "中価格帯"
            else -> "高価格帯"
        }
    }
}

このコードでは、Map型のdataからProductオブジェクトのnameとpriceを設定しています。そして、priceの値に応じてcategoryを動的に設定しています。

apply関数内で条件分岐を使用することで、Productオブジェクトの初期化を柔軟に行っています。

例として、createProduct関数に次のようなMapデータを渡すと、適切なcategoryが設定されたProductオブジェクトが生成されます。

val data = mapOf("name" to "特製ティーカップ", "price" to 120.0)
val product = createProduct(data)
// productのnameは"特製ティーカップ", priceは120.0, categoryは"中価格帯"となります。

○サンプルコード11:applyでファイル操作を簡潔に

ファイル操作もapply関数を使用することで、簡潔に記述できる場面があります。

特に、ファイルを開き、その内容を読み取った後に何らかの操作を行いたい場合などに有効です。

ここでは、applyを用いてファイルからテキストを読み込み、その内容を加工して別のファイルに保存するサンプルコードを紹介します。

import java.io.File

fun copyAndModifyText(sourcePath: String, destinationPath: String) {
    val sourceFile = File(sourcePath)
    val destinationFile = File(destinationPath)

    destinationFile.apply {
        writeText(sourceFile.readText().replace("旧テキスト", "新テキスト"))
    }
}

このコードでは、指定されたsourcePathのファイルからテキストを読み取り、”旧テキスト”という文字列を”新テキスト”に置き換えて、destinationPathのファイルに保存しています。

apply関数を利用することで、destinationFileへの操作を一元化し、コードの可読性を向上させています。

この関数を実行することで、sourcePathのファイルに含まれる”旧テキスト”が”新テキスト”に変換され、その結果がdestinationPathのファイルに保存されます。

○サンプルコード12:applyを使ってビルダーパターンを実装

ビルダーパターンは、複雑なオブジェクトの生成を一連の手順で行うデザインパターンの一つです。

Kotlinではapply関数を使うことで、ビルダーパターンを簡潔に実装することができます。

具体的には、多数のパラメータを持つオブジェクトの生成や、オブジェクトの初期化を段階的に行いたい場合などにapplyを活用できます。

下記のコードは、Pizzaオブジェクトをビルダーパターンを用いて生成する例を表しています。

class Pizza {
    var size: String = ""
    var cheese: Boolean = false
    var pepperoni: Boolean = false
    var bacon: Boolean = false

    class Builder {
        private val pizza = Pizza()

        fun size(size: String): Builder = this.apply {
            pizza.size = size
        }

        fun cheese(cheese: Boolean): Builder = this.apply {
            pizza.cheese = cheese
        }

        fun pepperoni(pepperoni: Boolean): Builder = this.apply {
            pizza.pepperoni = pepperoni
        }

        fun bacon(bacon: Boolean): Builder = this.apply {
            pizza.bacon = bacon
        }

        fun build(): Pizza {
            return pizza
        }
    }
}

val myPizza = Pizza.Builder()
    .size("Large")
    .cheese(true)
    .pepperoni(true)
    .build()

このコードでは、Pizzaクラスの内部にBuilderという内部クラスを定義しています。

Builderクラス内の各関数は、特定のパラメータを設定するためのものとなっており、その関数内でapply関数を使用して、自身のインスタンスを返しています。

これにより、連鎖的なメソッドの呼び出しを実現しています。

上記のコードを実行すると、Largeサイズで、チーズとペッパロニがトッピングされたPizzaオブジェクトが生成されます。

○サンプルコード13:applyを使ったネットワーク通信の簡略化

ネットワーク通信に関する設定や、リクエスト・レスポンスの処理など、多くの手順を踏む必要があります。

apply関数を活用することで、このような一連の手順を簡潔に記述することができます。

下記のコードは、HttpURLConnectionを用いてGETリクエストを行い、そのレスポンスを取得するサンプルコードです。

import java.net.HttpURLConnection
import java.net.URL

fun fetchContentFromUrl(urlString: String): String {
    val url = URL(urlString)
    val connection = url.openConnection() as HttpURLConnection
    return connection.apply {
        requestMethod = "GET"
        connectTimeout = 5000
        readTimeout = 5000
    }.inputStream.bufferedReader().use { it.readText() }
}

このコードでは、URLオブジェクトを生成後、そのオブジェクトからHttpURLConnectionのインスタンスを取得しています。

そして、apply関数を用いてそのインスタンスの設定を行っています。

その後、リクエストを実行し、レスポンスの内容をStringとして取得しています。

この関数を使用し、特定のURLからコンテンツを取得する場合、次のように呼び出すことができます。

val content = fetchContentFromUrl("https://example.com")
// contentには、指定したURLのレスポンス内容が格納されます。

○サンプルコード14:applyを用いた非同期処理の最適化

非同期処理は多くのプログラムやアプリケーションで欠かせない要素の一つです。

特にUIを持つアプリケーションでは、ユーザーの操作をブロックしないためにバックグラウンドで処理を行いたい場合が多々あります。

Kotlinのapply関数を活用することで、非同期処理の設定や実行をより直感的で簡潔に書くことができます。

ここでは、KotlinのCoroutineを使った非同期処理のサンプルコードを紹介します。

import kotlinx.coroutines.*

fun main() {
    runBlocking {
        val deferred = async {
            fetchData()
        }

        val data = deferred.await()
        println("取得したデータ: $data")
    }
}

suspend fun fetchData(): String {
    return withContext(Dispatchers.IO) {
        // こちらは例として、実際のデータ取得処理を模擬的に行っています。
        delay(2000) // 2秒の待機
        "非同期で取得したデータ"
    }.apply {
        // 取得したデータに何らかの加工を行う場合、apply関数を活用して行います。
        // このコードの場合は特に加工は行っていませんが、必要に応じてこちらに加工の処理を追記できます。
    }
}

このコードでは、非同期にデータを取得するfetchData関数と、そのデータを取得して表示する処理をmain関数で行っています。

fetchData関数内のwithContextは、非同期処理を行うためのコルーチンスコープを切り替えるための関数です。

この関数の内部でデータ取得の模擬処理を行い、その結果を返しています。

また、取得したデータに何らかの加工を行いたい場合は、apply関数を活用して続けて記述することができます。

この例では加工は行っていませんが、データのフォーマット変更や追加の情報を付与する場合などに便利です。

上記のコードを実行すると、約2秒後に”非同期で取得したデータ”という文字列が表示されることが確認できます。

○サンプルコード15:applyで複雑な計算を見やすく

計算処理が複雑になると、コードが冗長になりがちです。

apply関数を使用することで、計算途中の一時的な結果を変数に格納せずに、直感的に計算の流れを追うことができます。

ここでは、複雑な計算の流れをapply関数を使って簡潔に書いたサンプルコードを紹介します。

data class CalculationResult(var value: Double = 0.0)

fun main() {
    val result = CalculationResult()

    result.apply {
        value += 10.0
        value *= 2
        value = Math.sqrt(value)
    }

    println("計算結果: ${result.value}")
}

このコードでは、CalculationResultクラスのインスタンスresultvalueプロパティに対して、連続して計算を行っています。

apply関数の中で、足し算、掛け算、平方根の計算を順に行い、その結果をvalueに代入しています。

このコードを実行すると、最終的な計算結果が表示されます。

具体的には、10.0を加え、2倍にして、その後平方根を取るという計算が行われているため、”計算結果: 4.47213595499958″という出力が得られます。

●注意点と対処法

Kotlinのapply関数は非常に便利であり、コードを簡潔に書く上で大きな助けとなりますが、使用する際にはいくつかの注意点が存在します。

apply関数の使用を最大限に活かすために、これらの注意点とその対処法を理解することが重要です。

○apply使用時のオブジェクト参照に関する注意

apply関数はレシーバオブジェクトの参照を変更しないため、applyブロック内で行われる変更は、オブジェクト自体に影響を及ぼします。

しかし、この特性が原因で意図しない動作を引き起こす場合もあります。

例えば、次のようなコードを考えてみましょう。

data class Person(var name: String, var age: Int)

fun main() {
    val person = Person("Taro", 20)
    val newPerson = person.apply {
        name = "Jiro"
    }

    println("personの名前: ${person.name}")
    println("newPersonの名前: ${newPerson.name}")
}

このコードでは、apply関数を使ってpersonオブジェクトのnameプロパティを変更しています。

そして、その結果を新しいオブジェクトnewPersonに代入しています。

しかし、apply関数はレシーバオブジェクト自体を変更するため、personオブジェクトも変更されることになります。

そのため、上記のコードを実行すると、両方のオブジェクトのnameプロパティが”Jiro”と表示されます。

このような場合、元のオブジェクトを変更したくないのであれば、copy関数を使用してオブジェクトのコピーを作成し、そのコピーに対してapply関数を適用すると良いでしょう。

○スコープ内での変数の扱いと注意点

apply関数のスコープ内では、レシーバオブジェクトのプロパティやメソッドに直接アクセスできます。

これによりコードが簡潔になりますが、同名の変数や関数が外部スコープに存在する場合、意図しない参照が発生する可能性があります。

例として次のようなコードを考えてみます。

data class Item(var price: Int)

fun main() {
    val price = 5000
    val item = Item(3000).apply {
        price += 1000
    }

    println("外部のprice: $price")
    println("itemのprice: ${item.price}")
}

このコードでは、外部スコープの変数とapplyスコープ内のプロパティ名が同じであるため、混乱を招きやすくなります。

上記のコードを実行すると、外部のpriceは変更されずに5000のままであり、itemのpriceは4000と表示されます。

●applyのカスタマイズ方法

Kotlinの標準ライブラリには、コードの可読性や効率を向上させるための多くのスコープ関数があります。

これらの関数の中でapplyは特に人気があります。

しかし、プロジェクトの特定のニーズに合わせて、apply関数をカスタマイズすることも考えられます。

ここでは、apply関数を拡張して独自の関数を作成する方法について詳しく説明します。

○applyを拡張して独自の関数を作成する方法

独自の関数を作成する際の基本的な考え方は、既存のapply関数をベースにして、特定の動作を追加または修正することです。

例として、apply関数をベースにして、オブジェクトの変更後に特定の処理を追加する関数を考えてみましょう。

下記のサンプルコードは、apply関数をベースにして新たな「applyAndPrint」関数を作成するものです。

この関数は、apply関数でオブジェクトを変更した後、そのオブジェクトの内容をプリントする機能を持っています。

inline fun <T> T.applyAndPrint(block: T.() -> Unit): T {
    this.block()
    println(this)
    return this
}

data class Product(var name: String, var price: Int)

fun main() {
    val product = Product("リンゴ", 200)
    product.applyAndPrint {
        price = 250
    }
}

このコードを実行すると、applyAndPrint関数を通じてpriceプロパティが250に変更された後、Productオブジェクトの内容がプリントされます。

その結果、「Product(name=リンゴ, price=250)」と表示されることが期待されます。

まとめ

Kotlinのapply関数は、その柔軟性と多機能性から多くの開発者に支持されています。

本記事を通じて、その基本的な使い方から高度な応用例、注意点、そしてカスタマイズ方法について詳しく解説しました。

apply関数を活用することで、コードの冗長性を減少させ、より簡潔で読みやすいコードを書くことができます。

特にオブジェクトの初期化や複数のプロパティを設定する際にその力を発揮します。

しかしながら、過度にapplyを使用することでコードの可読性が低下する可能性もあるため、適切なバランスでの使用が求められます。

また、カスタマイズの際には新しい関数の役割や振る舞いを明確にすることが重要であり、他の開発者とのコミュニケーションを円滑にするためのドキュメンテーションの整備も忘れてはなりません。

最後に、Kotlinの標準ライブラリにはapplyだけでなく、他にも多くの有用なスコープ関数が含まれています。

それらの関数も合わせて学ぶことで、より高度なプログラミングが可能となります。

Kotlinを学び、実践する際には、apply関数の持つポテンシャルを最大限に活用し、効率的で質の高いコードの開発を目指してください。