Verilog基本ステートメント!10の理解が必要なコードとその詳細な使い方

Verilogステートメントの初心者向けガイドVerilog
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

基本的な知識があればカスタムコードを使って機能追加、目的を達成できるように作ってあります。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を凌駕する現役のプログラマチームによって監修されています。

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はじめに

Verilogは、デジタルシステムとアナログシステム、そして混合システムの設計と検証を可能にするハードウェア記述言語(HDL)の一つです。

これからVerilogの基本ステートメントとその詳細な使い方を学んでいくとともに、あなたのプログラミングスキルを向上させる手助けとなることを目指します。

●Verilogとは

Verilogは、1984年にGateway Design Automationによって開発され、その設計目的は、集積回路(IC)の設計と検証を効率化することでした。

その高い表現力と柔軟性により、設計者がハードウェアを直感的に理解し、設計することができます。

○Verilogの基本的な特性

Verilogは、主に次のような特性を持っています。

①モジュール型

Verilogはモジュール型の言語で、一つのデザインは複数のモジュールで構成されます。

それぞれのモジュールは、デザインの一部分をカプセル化し、他のモジュールとの接続を定義します。

②並列性

Verilogはハードウェアの並列性を直接表現することができます。

同一モジュール内のすべてのステートメントは同時に実行されるとみなされます。

③イベント駆動

Verilogはイベント駆動シミュレーションをサポートしています。

ステートメントは特定のイベント(信号の変化など)によってトリガされます。

●Verilogの基本ステートメント

Verilogの基本ステートメントには、変数宣言、初期化、代入、制御構造、関数とタスクの呼び出し等が含まれます。

これらの基本ステートメントを理解することで、Verilogプログラミングの基本的な構造を理解し、複雑な設計を行うための基盤を築くことができます。

○初心者に覚えておいてほしい基本ステートメント

Verilogの基本ステートメントには次のようなものがあります。

  1. モジュール定義:moduleendmoduleで囲まれた部分がモジュール定義となります。
  2. 変数宣言:reg, wireなどのキーワードを使って変数を宣言します。
  3. 初期化:initialブロックを使って初期化を行います。
  4. 代入:assignステートメントやプロシージャル代入(=, <=)を使って代入を行います。
  5. 制御構造:if, case, forなどの制御構造があります。
  6. 関数とタスクの呼び出し:functiontaskを定義し、これを呼び出すことで一連の操作をまとめて実行することができます。

これらの基本ステートメントについて、詳しく見ていきましょう。

●詳細な使い方とサンプルコード

Verilogの基本ステートメントについて説明した後、次に進むべきはそれらのステートメントをどのように利用するかについての詳細な説明と、それを示す具体的なサンプルコードです。

このセクションでは、Verilogの初心者でも理解しやすいように、ステートメントの詳細な使い方をサンプルコードと共に解説します。

コードを書く上での重要な点や、実際の出力結果を混ぜて解説することで、初心者でもプログラミングのスキルを向上させることができます。

○サンプルコード1:基本的なモジュールの記述

Verilogプログラミングの基本単位はモジュールです。

モジュールは、デジタル回路の一部を表現し、入力ポート、出力ポート、そしてそれらを接続する内部のワイヤーやレジスタを持ちます。

サンプルコードとして、基本的なANDゲートをモジュールとして記述した例をご紹介します。

module AND_GATE(input wire a, input wire b, output wire y);
    assign y = a & b; // AND演算を行い、結果をyに割り当てる
endmodule

このコードでは、ANDゲートの動作を模倣したモジュールを作成しています。

ANDゲートは2つの入力信号が共に1の場合のみ出力信号が1となり、それ以外の場合は出力が0となります。

そのため、このコードは入力信号abのAND演算を行い、その結果を出力yに割り当てています。

○サンプルコード2:制御構造の利用例

Verilogには、他の一般的なプログラミング言語と同様に制御構造があります。if-else文やcase文などがそれにあたります。

ここでは、if-else文を使った例を示します。

module CONTROL_EXAMPLE(input wire a, input wire b, output reg y);
    always @(a or b) // aまたはbの値が変更されるたびに実行
    begin
        if (a & b) begin // aとbが共に1のとき
            y <= 1'b1; // yを1にセット
        end
        else begin
            y <= 1'b0; // それ以外の場合はyを0にセット
        end
    end
endmodule

このコードでは、abが共に1の場合にyを1にセットし、それ以外の場合にはyを0にセットするという制御構造を表しています。

always @ブロックは、その中に指定した信号が変更されるたびに実行されます。

この例では、aまたはbの値が変わるたびにif-else文が評価され、それに応じてyの値が変更されます。

○サンプルコード3:データ型とその利用例

Verilogでは、様々な種類のデータを扱うために多くのデータ型が提供されています。

ここでは、最も一般的に使用されるデータ型である「reg」、「wire」、「integer」、「real」などについて詳細に説明します。

まず、「reg」はバイナリ値を格納するために使用されます。

レジスタを表現するためのデータ型であり、1ビット以上のバイナリ値を保存できます。

module reg_example;
  reg [3:0] four_bit_register;
  initial begin
    four_bit_register = 4'b0000; // コメント: 初期値を設定
  end
endmodule

このコードでは、’four_bit_register’という名前の4ビットのレジスタを定義しています。

初期ブロック内で、レジスタの初期値を4ビットの0(’4’b0000)に設定しています。

次に、「wire」はデジタル信号を表すためのデータ型です。

module wire_example;
  wire a, b, c;
  assign a = b & c; // コメント: ワイヤ'a'は'b'と'c'の論理積
endmodule

この例では、’a’, ‘b’, ‘c’という名前のワイヤを定義しています。

そして、’assign’ステートメントを使用して、ワイヤ’a’に’b’と’c’の論理積を割り当てています。

また、「integer」は整数値を表すためのデータ型で、’real’は浮動小数点数を表すためのデータ型です。

module integer_example;
  integer a; // コメント: 整数'a'を宣言
  initial begin
    a = 10; // コメント: 初期値を設定
  end
endmodule

module real_example;
  real a; // コメント: 浮動小数点数'a'を宣言
  initial begin
    a = 3.14; // コメント: 初期値を設定
  end
endmodule

‘integer_example’モジュールでは、整数型の’a’を定義し、初期値を10に設定しています。

一方、’real_example’モジュールでは、浮動小数点型の’a’を定義し、初期値を3.14に設定しています。

○サンプルコード4:Verilogでの演算とその例

さて、次に進む前に、Verilogでの演算について理解しておきましょう。

これには算術演算、ビット演算、論理演算、比較演算などが含まれます。

Verilogでの演算の基本的な例を紹介します。

module arithmetic_operations;
  reg [7:0] a = 8'd23; // aを23に設定
  reg [7:0] b = 8'd45; // bを45に設定
  reg [7:0] add, sub, mul, div;

  initial begin
    add = a + b; // aとbの和
    sub = a - b; // aからbを引いた値
    mul = a * b; // aとbの積
    div = a / b; // aをbで割った値
  end
endmodule

このコードでは、Verilogでの基本的な算術演算を表しています。

この例では、定義した変数aとbに対して、加算、減算、乗算、除算を行い、結果をそれぞれadd、sub、mul、divに格納しています。

Verilogの算術演算は他のプログラミング言語と非常に似ており、直感的に理解することができます。

同様に、Verilogではビット演算もよく利用されます。

ビット演算では、変数の各ビットに対して操作を行います。

ビット演算には、ビットごとのAND(&)、OR(|)、XOR(^)、ビット否定(~)などがあります。

Verilogでのビット演算の基本的な例を紹介します。

module bit_operations;
  reg [7:0] a = 8'd23; // aを23に設定
  reg [7:0] b = 8'd45; // bを45に設定
  reg [7:0] and, or, xor, not;

  initial begin
    and = a & b; // aとbのビットごとのAND
    or  = a | b; // aとbのビットごとのOR
    xor = a ^ b; // aとbのビットごとのXOR
    not = ~a;    // aのビットごとの否定
  end
endmodule

このコードでは、ビットごとのAND、OR、XOR、否定を行っています。

Verilogでのビット演算は、デジタル回路設計において頻繁に利用されるため、理解しておくことが重要です。

これらのコードを実行すると、次のような結果が得られます。

算術演算の場合:

  • aとbの和は68になります。
  • aからbを引くと、結果は負の値になるため、結果は不定となります。
  • aとbの積は1035になります。
  • aをbで割った結果は0になります。

ビット演算の場合:

  • aとbのビットごとのANDは5になります。
  • aとbのビットごとのORは63になります。
  • aとbのビットごとのXORは58になります。
  • aのビット否定は232になります。

○サンプルコード5:関数とタスクの利用例

Verilogでは、関数とタスクという二つの異なるサブルーチンを利用することができます。

関数とタスクの主な違いは、関数は値を返すのに対して、タスクは値を返さないという点です。

また、関数はalwaysブロックやassignステートメント内で使用することができ、一方タスクは主にalwaysブロック内で使用します。

それでは関数とタスクを使ったサンプルコードを紹介し、詳しく解説します。

まず、関数の基本的な記述方法について説明します。

次のサンプルコードでは、2つの整数を引数として受け取り、それらの積を返す関数’mul’を定義しています。

module test;
  // 関数の定義
  function [31:0] mul;  // 返す値の型とサイズを定義
    input [15:0] a, b;  // 引数の型とサイズを定義

    begin
      mul = a * b;  // 積を計算
    end
  endfunction

  reg [15:0] i = 3, j = 4;  // 入力値
  reg [31:0] result;  // 結果を保存するレジスタ

  initial begin
    result = mul(i, j);  // 関数を呼び出し、結果を保存
    $display(result);  // 結果を表示
  end
endmodule

このコードでは、関数’mul’を使って3と4の積を計算し、その結果を表示しています。

‘mul’関数は、引数’a’と’b’の積を計算し、その結果を返す役割を果たしています。

関数はalwaysブロックやinitialブロック内で呼び出すことができ、値を返すためには、関数名を使って値を指定します。

次に、タスクの基本的な使用方法について説明します。

次のサンプルコードでは、2つの整数を引数として受け取り、それらの積を計算して表示するタスク’mul_display’を定義しています。

module test;
  // タスクの定義
  task mul_display;
    input [15:0] a, b;  // 引数の型とサイズを定義
    reg [31:0] result;  // 結果を保存するレジスタ

    begin
      result = a * b;  // 積を計算
      $display(result);  // 結果を表示
    end
  endtask

  reg [15:0] i = 3, j = 4;  // 入力値

  initial begin
    mul_display(i, j);  // タスクを呼び出し、結果を表示
  end
endmodule

このコードでは、タスク’mul_display’を使って3と4の積を計算し、その結果を表示しています。タスクは関数と違い、値を返すのではなく、特定の処理を実行します。

そのため、計算結果を直接表示することができます。

タスクは基本的にalwaysブロックやinitialブロック内で呼び出すことができます。

これらのサンプルコードを通じて、Verilogの関数とタスクの基本的な使用方法とその違いを理解することができました。

これらの概念を理解することで、より高度なプログラミングが可能となります。

それぞれの特性を活かして、効率的なコードを書くことができます。

○サンプルコード6:テストベンチの作成とその例

テストベンチは、作成した回路の動作確認を行うための重要なコードです。

テストベンチには、回路に入力信号を与え、出力信号を確認するためのコードが含まれます。

Verilogでは、テストベンチはモジュールとして記述します。では、具体的なテストベンチの作成例を見ていきましょう。

// テストベンチの例
module testbench;
  // モジュールのインスタンス化
  reg clk;
  wire q;
  my_design dut(clk, q);

  // クロック生成
  initial begin
    clk = 0;
    forever #10 clk = ~clk;
  end

  // テスト
  initial begin
    #10;
    $display("q = %b", q);
    #10;
    $display("q = %b", q);
    $finish;
  end
endmodule

このコードでは、テスト対象となるデザインmy_designをインスタンス化し、テストを行っています。

テストベンチ内では、独自のクロック信号を生成し、特定の時間経過後にデザインの出力qを表示しています。

$displayはVerilogのシステムタスクで、指定したフォーマットで情報を表示します。

$finishはシミュレーションを終了するためのシステムタスクです。

テストベンチを実行すると、qの値が特定の時間経過ごとに表示され、最終的にシミュレーションが終了します。

このようにテストベンチは、作成したデザインが期待通りに動作するかを確認するための重要なツールとなります。

○サンプルコード7:信号の遅延とその例

Verilogでは、信号の遅延を表現するために#を使います。

信号の遅延は、物理的な回路で信号が伝播するのに時間がかかる現象を模倣するために使用されます。

では、信号の遅延を使用したコード例を見ていきましょう。

// 信号の遅延の例
module delay_example;
  reg a;
  wire b;

  assign #5 b = ~a;  // 遅延を5とする

  initial begin
    a = 0;
    #10 a = 1;
    #10 a = 0;
    #10 $finish;
  end

  initial begin
    #1 $monitor("At time %t: a = %b, b = %b", $time, a, b);
  end
endmodule

このコードでは、信号aの反転をbに遅延5で割り当てています。

そのため、aが変化した後、5時間単位後にbの値が変化します。

$monitorは、指定した信号が変化するたびにメッセージを表示するシステムタスクです。

ここでは、時間とabの値を表示しています。

このコードを実行すると、aの値が変化した後、5時間単位後にbの値が変化することが確認できます。

このように信号の遅延は、現実の回路で見られる信号伝播の遅延を模擬するために重要な概念となります。

○サンプルコード8:メモリと配列の利用例

Verilogでは、メモリや配列を効果的に利用することで、データを格納し、操作することができます。

特に大量のデータを扱う場合や、データを順序立てて保存する必要がある場合には、これらの機能は非常に役立ちます。

下記のサンプルコードは、メモリと配列の基本的な使用例を表しています。

module memory_array_example;
  // 1ビットデータのメモリを16個作成
  reg [15:0] memory_array;

  initial begin
    // メモリに値を割り当てる
    memory_array[0] = 1'b0;
    memory_array[1] = 1'b1;
    // ...
    memory_array[15] = 1'b1;
  end
endmodule

このコードでは、1ビットのデータを16個保存するためのメモリ「memory_array」を作成しています。

この例では、各メモリの位置に対して値を割り当てています。

こうすることで、後でデータを取り出すときにその位置(アドレス)を指定するだけで値を取得することができます。

さらに、Verilogでは多次元配列を利用することも可能です。

次のサンプルコードは、2次元配列の使用例を示しています。

module multi_dimension_array_example;
  // 1ビットデータの2次元メモリを作成
  reg [1:0][1:0] multi_dimension_array;

  initial begin
    // メモリに値を割り当てる
    multi_dimension_array[0][0] = 1'b0;
    multi_dimension_array[0][1] = 1'b1;
    multi_dimension_array[1][0] = 1'b1;
    multi_dimension_array[1][1] = 1'b0;
  end
endmodule

このコードでは、1ビットのデータを格納できる2次元メモリ「multi_dimension_array」を作成しています。

2次元配列を使うことで、さらに複雑なデータ構造を表現することが可能になります。

初心者の方でもこのような基本的なコードの書き方を覚えることで、さまざまなデータ構造を扱えるようになり、より複雑なプログラムを作成することが可能になります。

なお、上記のコード例はシミュレーション環境での動作を前提としています。

FPGAなどの実ハードウェア上で動作させる場合には、そのハードウェアの特性により挙動が異なる場合があります。

実際のハードウェアで動作させる際には、それぞれのハードウェアのマニュアルやデータシートを確認し、適切なコーディングを行うようにしましょう。

○サンプルコード9:パラメータとその利用例

パラメータは、Verilogでは変数の一種ですが、その値は一度設定すると変更することができません。

これは、一部の設定値や定数を管理するのに便利です。

下記のサンプルコードはパラメータの基本的な使用例を表しています。

module parameter_example;
  // パラメータの定義
  parameter WIDTH = 8;

  // パラメータを利用した信号の宣言
  reg [WIDTH-1:0] data;

  initial begin
    data = 8'b00000001;
  end
endmodule

このコードでは、パラメータWIDTHを定義し、その値を8としています。

そして、そのパラメータを利用して8ビットのレジスタdataを定義しています。

このように、パラメータを使うことで、一度設定した値を一貫して使用することができます。

この例では、WIDTHを変更するだけで、それに応じた幅のレジスタを生成することができます。

パラメータを活用することで、より柔軟かつ読みやすいコードを記述することが可能となります。

○サンプルコード10:階層的設計の例

Verilogの特徴として、複数のモジュールを組み合わせて一つの大きなシステムを構築することができます。

これを「階層的設計」といいます。

階層的設計により、コードの再利用性を向上させ、設計プロセスを効率化することが可能になります。

下記のサンプルコードは、階層的設計の基本的な利用例を表しています。

このコードでは、2つの基本的なモジュール(sub_module1とsub_module2)を定義し、それらをmain_module内で呼び出しています。

// sub_module1の定義
module sub_module1(input a, input b, output c);
    assign c = a & b;
endmodule

// sub_module2の定義
module sub_module2(input a, input b, output c);
    assign c = a | b;
endmodule

// main_moduleの定義:sub_module1とsub_module2を使用
module main_module(input a, input b, input c, input d, output e, output f);
    wire w1, w2;
    sub_module1 U1(.a(a), .b(b), .c(w1));
    sub_module2 U2(.a(c), .b(d), .c(w2));
    assign e = w1;
    assign f = w2;
endmodule

この例では、sub_module1は2つの入力信号aとbの論理積を出力として提供し、sub_module2は2つの入力信号cとdの論理和を出力として提供しています。

そして、main_moduleはこれらのサブモジュールを用いて、入力信号a, b, c, dを取り、それぞれのサブモジュールの出力w1とw2を得るという処理を行っています。

Verilogにおける階層的設計の利点は、疑似的なモジュールの再利用が可能となり、設計がより整理され、見やすいコードになることです。

さらに、階層化により、各サブモジュールが独立して開発・テストが可能となり、全体の開発効率が大幅に向上します。

しかし、階層的設計にも注意が必要です。

階層が深くなるほど、全体の構造を把握するのが難しくなります。また、階層間での信号の伝播には時間がかかるため、タイミング設計が難しくなる場合もあります。

●Verilogの応用例とサンプルコード

Verilogの基本概念とその詳細な使い方を理解したら、次は実際の応用例を見ていきましょう。

ここでは、カウンタの設計と状態機械の設計を例に、Verilogの応用例を説明します。

○サンプルコード11:カウンタの設計

デジタルシステムの中で非常に一般的な要素であるカウンタの設計について解説します。

下記のコードは、4ビットのアップカウンタを表しています。

このコードでは、毎回クロック信号が立ち上がるときにカウンタの値が1ずつ増加します。

そして、カウンタの値が15(4ビットで表現できる最大値)に達すると、次のクロック信号の立ち上がりでカウンタは0にリセットされます。

module counter (
    input clk,
    input reset,
    output [3:0] q
);
    reg [3:0] q;
    always @(posedge clk or posedge reset) begin
        if (reset) begin
            q <= 4'b0000;
        end else begin
            q <= q + 4'b0001;
        end
    end
endmodule

ここで、”always @(posedge clk or posedge reset)”という文は、clk信号またはreset信号の立ち上がりエッジで以下の動作を行うという意味です。

そして、”if (reset)”という文は、reset信号が1のときにqを0にリセットし、それ以外のときにはqの値を1増加させるという動作を表しています。

このコードを実行すると、カウンタの値はクロック信号の立ち上がり毎に1ずつ増加し、reset信号が立ち上がったときには0にリセットされることが確認できます。

○サンプルコード12:状態機械の設計

状態機械は、デジタルシステム設計において非常に重要な要素です。

下記のサンプルコードは、Verilogで状態機械を設計する基本的な例を表しています。

この状態機械は、”State1″、”State2″、”State3″の3つの状態を持ち、クロック信号の立ち上がり毎に次の状態へと遷移します。

module state_machine (
    input clk,
    input reset,
    output reg [1:0] state
);
    parameter State1 = 2'b00, State2 = 2'b01, State3 = 2'b10;
    always @(posedge clk or posedge reset) begin
        if (reset) begin
            state <= State1;
        end else begin
            case(state)
                State1: state <= State2;
                State2: state <= State3;
                State3: state <= State1;
            endcase
        end
    end
endmodule

このコードでは、”parameter”を使用して各状態を定義しています。

そして、reset信号が立ち上がるときには状態を”State1″にリセットし、それ以外のときには”case”文を使用して現在の状態に応じて次の状態へと遷移させています。

●Verilogプログラミングの注意点と対処法

Verilogプログラミングには多くの注意点が存在しますが、ここでは特に重要ないくつかを紹介します。

まず、一つ目はシミュレーションと合成の違いです。

Verilogコードは、その記述方法によってシミュレーション時と合成時で異なる挙動を示す場合があります。

このため、実際のハードウェアとして動作させる際には、合成可能な記述方法を使用することが重要です。

二つ目の注意点は、レースコンディションの可能性です。

レースコンディションとは、複数の信号の変化が同時に起こることで、結果がその信号の変化の順序に依存する現象を指します。

Verilogでは、”@*”や”always”などの文を使用することで、レースコンディションを避けることができます。

三つ目の注意点は、信号の遅延です。

Verilogでは、信号の伝播には一定の時間がかかります。この遅延は、ハードウェアの物理的な制限によるものです。

この遅延を考慮しないと、設計したハードウェアが意図した通りに動作しない可能性があります。

これらの注意点を理解し、適切に対処することで、より安全で効率的なVerilogプログラムを作成することができます。

●Verilogプログラミングのカスタマイズ方法

Verilogは高度なカスタマイズが可能です。

例えば、パラメータを使用することで、一部の値を変更するだけで異なる動作をするモジュールを簡単に作成することができます。

また、defineマクロを使用すれば、頻繁に使用する複雑な式やステートメントを簡単な形で記述できます。

また、階層的設計を活用すれば、一度設計したモジュールを他のプロジェクトでも再利用できます。

これにより、コードの再利用性が向上し、開発時間を大幅に削減することができます。

しかし、カスタマイズには注意も必要です。

コードが複雑になりすぎると、バグの原因になりやすくなるため、必要な範囲で適切にカスタマイズすることが重要です。

まとめ

Verilogはハードウェア記述言語の一つで、複雑なデジタルシステムを効率的に設計するための強力なツールです。

この記事では、Verilogの基本ステートメントとその詳細な使い方を10のサンプルコードを通じて解説しました。

これらの知識を身につけることで、Verilogを使ったプログラミングの基礎を固めることができます。

また、これらの基本ステートメントを理解して活用することで、より高度な設計に挑戦する準備をすることができます。

最後に、Verilogプログラミングには注意が必要であり、その中でも特に重要なのはシミュレーションと合成の違い、レースコンディション、信号の遅延といった問題です。

これらの問題を理解し、適切に対処することで、より安全で効率的なVerilogプログラムを作成できるようになることでしょう。

Verilogプログラミングは簡単ではありませんが、その基本を理解し、適切な使い方を身につけることで、あなたも素晴らしいデジタルシステムを設計することができるようになるでしょう。

これからのあなたのVerilogプログラミングの旅が、楽しく有意義なものになることを願っています。