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VHDLを用いたシリアルデータ変換の手法と活用13選

シリアルデータ変換 徹底解説 VHDL
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この記事では、プログラム(回路記述)の基礎知識を前提に話を進めています。

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本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

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●VHDLを用いたシリアルデータ変換とは?

デジタル回路設計の分野で、VHDLとシリアルデータ変換は欠かせない要素です。

VHDLは、Very High Speed Integrated Circuit Hardware Description Languageの略称で、ハードウェア記述言語の一種です。

一方、シリアルデータ変換は、並列データを直列に、または直列データを並列に変換するプロセスを指します。

VHDLとシリアルデータ変換の組み合わせは、現代のデジタルシステム設計において重要な役割を果たしています。

例えば、高速通信システムやデータストレージデバイスなど、多くの分野でこの技術が活用されています。

○VHDLとシリアルデータ変換の基本概念

VHDLは、デジタル回路の動作を記述するためのプログラミング言語です。

C言語やJavaなどのソフトウェア言語とは異なり、VHDLはハードウェアの振る舞いを直接記述できます。

シリアルデータ変換は、データの送受信方法の一つです。

並列データを1ビットずつ順番に送信する、または受信したビット列を並列データに再構成する過程を指します。

VHDLを使用してシリアルデータ変換を実装する際、主に次の要素が重要となります。

  1. シフトレジスタ -> データのビット単位の移動を制御します。
  2. クロック制御 -> データの送受信タイミングを管理します。
  3. 状態機械 -> 変換プロセス全体の制御を行います。

○シリアル通信の仕組みと重要性

シリアル通信は、データを1ビットずつ順番に送受信する方法です。

パラレル通信と比較して、配線が少なくて済むという利点があります。

シリアル通信の基本的な仕組みは次の通りです。

  1. 送信側 -> 並列データをシリアルデータに変換し、1ビットずつ送信します。
  2. 通信経路 -> 1本の信号線でデータを伝送します。
  3. 受信側 -> 受信したシリアルデータを並列データに再構成します。

シリアル通信の重要性は、次の点にあります。

  • 配線の簡素化 -> 信号線が少ないため、回路基板の設計が容易になります。
  • 長距離通信 -> ノイズの影響を受けにくく、長距離伝送に適しています。
  • 高速通信 -> 最新の技術では、非常に高速なデータ転送が可能です。

○VHDLでのシリアルデータ変換の利点

VHDLを用いてシリアルデータ変換を実装することには、多くの利点があります。

  1. 柔軟性 -> VHDLの高い抽象度により、複雑な変換ロジックも簡潔に記述できます。
  2. 再利用性 -> 一度作成したコードは、他のプロジェクトでも容易に再利用できます。
  3. シミュレーション -> VHDLには強力なシミュレーション機能があり、実際のハードウェア実装前に動作を検証できます。
  4. 移植性 -> VHDLは標準化された言語であり、異なるFPGAプラットフォーム間での移植が容易です。
  5. 並行処理 -> VHDLは並行処理を自然に表現できるため、複数のデータストリームを同時に処理する設計に適しています。

VHDLでシリアルデータ変換を実装することで、効率的かつ信頼性の高いデジタルシステムを構築できます。

●VHDLによるシフトレジスタの実装

シフトレジスタは、シリアルデータ変換の核心部分です。

ビットを順次シフトさせる機能を持ち、並列データとシリアルデータの橋渡しをします。

VHDLを使用して、様々なタイプのシフトレジスタを実装できます。

○サンプルコード1:基本的な4ビットシフトレジスタ

まずは、最も基本的な4ビットシフトレジスタのVHDLコードを見てみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity ShiftRegister4Bit is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        sin : in STD_LOGIC;
        sout : out STD_LOGIC;
        parallel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0)
    );
end ShiftRegister4Bit;

architecture Behavioral of ShiftRegister4Bit is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            shift_reg <= sin & shift_reg(3 downto 1);
        end if;
    end process;

    sout <= shift_reg(0);
    parallel_out <= shift_reg;
end Behavioral;

このコードは、クロック信号の立ち上がりエッジでデータをシフトします。

sinから入力されたビットは、レジスタの最上位ビットに格納され、他のビットは右にシフトします。

最下位ビットはsoutとして出力されます。

○サンプルコード2:双方向シフトレジスタの設計

次に、左右両方向にシフト可能な双方向シフトレジスタを実装してみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity BidirectionalShiftRegister is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        shift_direction : in STD_LOGIC; -- '0' for right, '1' for left
        sin : in STD_LOGIC;
        sout : out STD_LOGIC;
        parallel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0)
    );
end BidirectionalShiftRegister;

architecture Behavioral of BidirectionalShiftRegister is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            if shift_direction = '0' then
                -- 右シフト
                shift_reg <= sin & shift_reg(3 downto 1);
            else
                -- 左シフト
                shift_reg <= shift_reg(2 downto 0) & sin;
            end if;
        end if;
    end process;

    sout <= shift_reg(0) when shift_direction = '0' else shift_reg(3);
    parallel_out <= shift_reg;
end Behavioral;

このコードでは、shift_direction信号によってシフトの方向を制御しています。

‘0’の場合は右シフト、’1’の場合は左シフトを行います。

○サンプルコード3:パラレルロード機能付きシフトレジスタ

最後に、並列データを直接ロードできる機能を追加したシフトレジスタを実装します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity ParallelLoadShiftRegister is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        load : in STD_LOGIC;
        sin : in STD_LOGIC;
        parallel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0);
        sout : out STD_LOGIC;
        parallel_out : out STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0)
    );
end ParallelLoadShiftRegister;

architecture Behavioral of ParallelLoadShiftRegister is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(3 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => '0');
        elsif rising_edge(clk) then
            if load = '1' then
                shift_reg <= parallel_in;
            else
                shift_reg <= sin & shift_reg(3 downto 1);
            end if;
        end if;
    end process;

    sout <= shift_reg(0);
    parallel_out <= shift_reg;
end Behavioral;

このコードでは、load信号が’1’の時にparallel_inから4ビットのデータを直接ロードします。

それ以外の場合は通常のシフト操作を行います。

○シフトレジスタの応用と最適化テクニック

シフトレジスタは、様々な方法で最適化や拡張が可能です。

ここでは、いくつかテクニックを紹介します。

  1. パイプライン化 -> 複数のシフトレジスタを直列に接続し、データ処理を並列化します。
  2. ビット幅の可変化 -> ジェネリックを使用して、ビット幅を動的に変更可能なシフトレジスタを設計します。
  3. クロックイネーブル -> 不要なシフト操作を省略し、消費電力を削減します。
  4. エラー検出機能 -> パリティビットや巡回冗長検査(CRC)を組み込み、データの整合性を確保します。
  5. バッファリング -> FIFOバッファを組み合わせ、データの一時保存や速度の異なる系統間のデータ転送を実現します。

このテクニックを適切に組み合わせることで、高性能かつ信頼性の高いシリアルデータ変換システムを構築できます。

●パラレル-シリアル変換のVHDL実装

デジタル回路設計において、パラレル-シリアル変換は重要な役割を果たします。

並列データを直列に変換することで、少ない信号線でデータを送信できるようになります。

VHDLを使用すれば、この変換プロセスを効率的に実装できます。

○サンプルコード4:8ビットパラレル入力のシリアル変換器

8ビットのパラレルデータをシリアルに変換する回路を考えてみましょう。

この回路は、データ入力、クロック、リセット信号を受け取り、シリアル出力を生成します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;

entity ParallelToSerial is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        parallel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        load : in STD_LOGIC;
        serial_out : out STD_LOGIC
    );
end ParallelToSerial;

architecture Behavioral of ParallelToSerial is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
    signal bit_counter : integer range 0 to 7;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => '0');
            bit_counter <= 0;
        elsif rising_edge(clk) then
            if load = '1' then
                shift_reg <= parallel_in;
                bit_counter <= 0;
            elsif bit_counter < 7 then
                shift_reg <= shift_reg(6 downto 0) & '0';
                bit_counter <= bit_counter + 1;
            end if;
        end if;
    end process;

    serial_out <= shift_reg(7);
end Behavioral;

この回路は、load信号が’1’になると8ビットのパラレルデータを取り込みます。

その後、クロックの立ち上がりごとにデータを1ビットずつシフトし、最上位ビットをserial_outとして出力します。

○サンプルコード5:可変長パラレル-シリアル変換器

次に、データ長が可変のパラレル-シリアル変換器を実装してみましょう。

この回路は、最大32ビットまでのデータを扱えるようにします。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity VariableLengthParallelToSerial is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        parallel_in : in STD_LOGIC_VECTOR(31 downto 0);
        data_length : in INTEGER range 1 to 32;
        load : in STD_LOGIC;
        serial_out : out STD_LOGIC;
        busy : out STD_LOGIC
    );
end VariableLengthParallelToSerial;

architecture Behavioral of VariableLengthParallelToSerial is
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(31 downto 0);
    signal bit_counter : INTEGER range 0 to 31;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            shift_reg <= (others => '0');
            bit_counter <= 0;
            busy <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            if load = '1' then
                shift_reg <= parallel_in;
                bit_counter <= 0;
                busy <= '1';
            elsif bit_counter < data_length - 1 then
                shift_reg <= shift_reg(30 downto 0) & '0';
                bit_counter <= bit_counter + 1;
            else
                busy <= '0';
            end if;
        end if;
    end process;

    serial_out <= shift_reg(31);
end Behavioral;

この回路では、data_length信号によってデータ長を指定できます。

また、busy信号を追加し、変換処理中であることを表すようにしました。

○サンプルコード6:UART送信機の実装

UARTはシリアル通信の代表的なプロトコルです。

ここでは、UART送信機をVHDLで実装してみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity UARTTransmitter is
    Generic (
        CLK_FREQ : integer := 50000000;  -- クロック周波数 (Hz)
        BAUD_RATE : integer := 115200    -- ボーレート
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        tx_data : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        tx_start : in STD_LOGIC;
        tx_busy : out STD_LOGIC;
        tx : out STD_LOGIC
    );
end UARTTransmitter;

architecture Behavioral of UARTTransmitter is
    constant BIT_PERIOD : integer := CLK_FREQ / BAUD_RATE;
    type state_type is (IDLE, START_BIT, DATA_BITS, STOP_BIT);
    signal state : state_type := IDLE;
    signal bit_timer : integer range 0 to BIT_PERIOD - 1 := 0;
    signal bit_counter : integer range 0 to 7 := 0;
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            state <= IDLE;
            tx <= '1';
            tx_busy <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            case state is
                when IDLE =>
                    if tx_start = '1' then
                        state <= START_BIT;
                        shift_reg <= tx_data;
                        bit_timer <= 0;
                        tx_busy <= '1';
                    end if;
                when START_BIT =>
                    tx <= '0';
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        state <= DATA_BITS;
                        bit_timer <= 0;
                        bit_counter <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when DATA_BITS =>
                    tx <= shift_reg(0);
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        shift_reg <= '0' & shift_reg(7 downto 1);
                        if bit_counter = 7 then
                            state <= STOP_BIT;
                        else
                            bit_counter <= bit_counter + 1;
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when STOP_BIT =>
                    tx <= '1';
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        state <= IDLE;
                        tx_busy <= '0';
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
            end case;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この UART 送信機は、スタートビット、8 データビット、1 ストップビットの標準的な UART フレームを生成します。

クロック周波数とボーレートはジェネリックパラメータとして設定可能です。

○効率的なデータ変換アルゴリズムの設計

効率的なデータ変換アルゴリズムを設計する際は、次の点に注意しましょう。

  1. クロックサイクルの最小化 -> 必要最小限のクロックサイクルでデータを変換します。
  2. リソース使用の最適化 -> 使用するフリップフロップやLUTの数を最小限に抑えます。
  3. パイプライン化 -> 可能な場合、処理をパイプライン化して、スループットを向上させます。
  4. バッファリング -> 入力データのバッファリングにより、連続的なデータ処理を可能にします。
  5. エラー検出と訂正 -> パリティビットやCRCを使用して、データの整合性を確保します。

上述した技術を組み合わせることで、高性能かつ信頼性の高いデータ変換システムを構築できます。

●シリアルI/O設計の実践

シリアルI/O設計は、高速データ通信の基盤となる重要な技術です。

VHDLを使用することで、柔軟性の高いシリアルI/Oインターフェースを実装できます。

○サンプルコード7:シリアル受信機の実装

まず、シリアルデータを受信し、パラレルデータに変換する回路を実装しましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity SerialReceiver is
    Generic (
        CLK_FREQ : integer := 50000000;  -- クロック周波数 (Hz)
        BAUD_RATE : integer := 115200    -- ボーレート
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        rx : in STD_LOGIC;
        rx_data : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        rx_done : out STD_LOGIC
    );
end SerialReceiver;

architecture Behavioral of SerialReceiver is
    constant BIT_PERIOD : integer := CLK_FREQ / BAUD_RATE;
    type state_type is (IDLE, START_BIT, DATA_BITS, STOP_BIT);
    signal state : state_type := IDLE;
    signal bit_timer : integer range 0 to BIT_PERIOD - 1 := 0;
    signal bit_counter : integer range 0 to 7 := 0;
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            state <= IDLE;
            rx_done <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            case state is
                when IDLE =>
                    if rx = '0' then
                        state <= START_BIT;
                        bit_timer <= 0;
                    end if;
                    rx_done <= '0';
                when START_BIT =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD / 2 - 1 then
                        state <= DATA_BITS;
                        bit_timer <= 0;
                        bit_counter <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when DATA_BITS =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        shift_reg <= rx & shift_reg(7 downto 1);
                        if bit_counter = 7 then
                            state <= STOP_BIT;
                        else
                            bit_counter <= bit_counter + 1;
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when STOP_BIT =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        if rx = '1' then
                            rx_data <= shift_reg;
                            rx_done <= '1';
                        end if;
                        state <= IDLE;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
            end case;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この回路は、シリアル入力を監視し、スタートビットを検出したらデータビットを順次サンプリングします。

全ビットを受信後、ストップビットを確認してデータを出力します。

○サンプルコード8:クロック回復回路の設計

高速シリアル通信では、送信側のクロックを受信側で再現する必要があります。

クロック回復回路は、この機能を担います。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity ClockRecovery is
    Generic (
        OVERSAMPLING : integer := 16
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        data_in : in STD_LOGIC;
        recovered_clk : out STD_LOGIC;
        recovered_data : out STD_LOGIC
    );
end ClockRecovery;

architecture Behavioral of ClockRecovery is
    signal sample_counter : integer range 0 to OVERSAMPLING - 1 := 0;
    signal edge_detector : STD_LOGIC_VECTOR(2 downto 0) := "000";
    signal adjust : STD_LOGIC := '0';
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            sample_counter <= 0;
            edge_detector <= "000";
            adjust <= '0';
            recovered_clk <= '0';
            recovered_data <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            edge_detector <= edge_detector(1 downto 0) & data_in;

            if edge_detector = "100" or edge_detector = "011" then
                adjust <= '1';
            else
                adjust <= '0';
            end if;

            if sample_counter = OVERSAMPLING - 1 or adjust = '1' then
                sample_counter <= 0;
                recovered_clk <= '1';
                recovered_data <= data_in;
            else
                sample_counter <= sample_counter + 1;
                recovered_clk <= '0';
            end if;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この回路は、入力データを過剰サンプリングし、エッジを検出してクロックを調整します。

これで、送信側のクロックに同期したデータサンプリングが可能になります。

○サンプルコード9:エラー検出機能付きシリアル通信

データの整合性を確保するため、エラー検出機能を実装しましょう。

ここでは、単純なパリティチェックを使用します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity SerialWithParityCheck is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        tx_data : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        tx_start : in STD_LOGIC;
        rx : in STD_LOGIC;
        rx_data : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        rx_valid : out STD_LOGIC;
        rx_error : out STD_LOGIC;
        tx : out STD_LOGIC
    );
end SerialWithParityCheck;

architecture Behavioral of SerialWithParityCheck is
    type tx_state_type is (IDLE, START_BIT, DATA_BITS, PARITY_BIT, STOP_BIT);
    type rx_state_type is (IDLE, START_BIT, DATA_BITS, PARITY_BIT, STOP_BIT);

    signal tx_state : tx_state_type := IDLE;
    signal rx_state : rx_state_type := IDLE;

    signal tx_shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(8 downto 0);
    signal rx_shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(8 downto 0);

    signal tx_bit_count : integer range 0 to 8 := 0;
    signal rx_bit_count : integer range 0 to 8 := 0;

    signal tx_parity : STD_LOGIC;
    signal rx_parity : STD_LOGIC;

    constant BIT_PERIOD : integer := 434; -- 115200 baud @ 50MHz clock
    signal bit_timer : integer range 0 to BIT_PERIOD - 1 := 0;
begin
    -- 送信プロセス
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            tx_state <= IDLE;
            tx <= '1';
        elsif rising_edge(clk) then
            case tx_state is
                when IDLE =>
                    if tx_start = '1' then
                        tx_shift_reg <= tx_data & '0';
                        tx_parity <= '0';
                        tx_state <= START_BIT;
                        bit_timer <= 0;
                    end if;
                    tx <= '1';
                when START_BIT =>
                    tx <= '0';
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        tx_state <= DATA_BITS;
                        bit_timer <= 0;
                        tx_bit_count <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when DATA_BITS =>
                    tx <= tx_shift_reg(0);
                    tx_parity <= tx_parity xor tx_shift_reg(0);
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        tx_shift_reg <= '0' & tx_shift_reg(8 downto 1);
                        if tx_bit_count = 7 then
                            tx_state <= PARITY_BIT;
                        else
                            tx_bit_count <= tx_bit_count + 1;
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when PARITY_BIT =>
                    tx <= tx_parity;
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        tx_state <= STOP_BIT;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when STOP_BIT =>
                    tx <= '1';
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        tx_state <= IDLE;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
            end case;
        end if;
    end process;

    -- 受信プロセス
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            rx_state <= IDLE;
            rx_valid <= '0';
            rx_error <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            case rx_state is
                when IDLE =>
                    if rx = '0' then
                        rx_state <= START_BIT;
                        bit_timer <= 0;
                    end if;
                    rx_valid <= '0';
                    rx_error <= '0';
                when START_BIT =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD / 2 - 1 then
                        if rx = '0' then
                            rx_state <= DATA_BITS;
                            rx_bit_count <= 0;
                            rx_parity <= '0';
                        else
                            rx_state <= IDLE;
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when DATA_BITS =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        rx_shift_reg <= rx & rx_shift_reg(8 downto 1);
                        rx_parity <= rx_parity xor rx;
                        if rx_bit_count = 7 then
                            rx_state <= PARITY_BIT;
                        else
                            rx_bit_count <= rx_bit_count + 1;
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when PARITY_BIT =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        if rx_parity = rx then
                            rx_state <= STOP_BIT;
                        else
                            rx_state <= IDLE;
                            rx_error <= '1';
                        end if;
                        bit_timer <= 0;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
                when STOP_BIT =>
                    if bit_timer = BIT_PERIOD - 1 then
                        if rx = '1' then
                            rx_data <= rx_shift_reg(7 downto 0);
                            rx_valid <= '1';
                        else
                            rx_error <= '1';
                        end if;
                        rx_state <= IDLE;
                    else
                        bit_timer <= bit_timer + 1;
                    end if;
            end case;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この回路は、送信時にパリティビットを計算して付加し、受信時にパリティチェックを行います。

エラーが検出された場合、rx_error信号がアサートされます。

○高速シリアルインターフェースの設計テクニック

高速シリアルインターフェースを設計する際は、次の点に注意が必要です。

  1. クロック同期 -> 送信側と受信側のクロックを正確に同期させます。位相同期ループ(PLL)や遅延同期ループ(DLL)を使用することがあります。
  2. ジッター対策 -> クロックや信号のジッターを最小限に抑えるため、適切なフィルタリングやイコライゼーションを行います。
  3. 差動信号 -> 高速伝送では、ノイズに強い差動信号を使用することが一般的です。
  4. プリエンファシス/イコライゼーション -> 信号の劣化を補償するため、送信側でプリエンファシス、受信側でイコライゼーションを行います。
  5. エラー訂正 -> 前方誤り訂正(FEC)などの技術を使用して、ビットエラーを検出・訂正します。
  6. スクランブリング -> 長い連続したゼロやワンを避けるため、データをスクランブルします。
  7. 8b/10bエンコーディング -> DCバランスを保ち、クロック回復を容易にするエンコーディング方式を使用します。

この技術を適切に組み合わせることで、信頼性の高い高速シリアルインターフェースを実現できます。

VHDLを使用することで、これらの複雑な機能も柔軟に実装できます。

●よくあるエラーと対処法

VHDLを用いたシリアルデータ変換の実装において、様々なエラーに遭遇することがあります。

エラーを適切に処理することで、信頼性の高いシステムを構築できます。

ここでは、頻繁に発生するエラーとその対処法について詳しく解説します。

○タイミング違反の検出と解決

タイミング違反は、デジタル回路設計において最も厄介な問題の一つです。

信号が期待された時間内に目的地に到達しない場合に発生します。

タイミング違反を検出するには、静的タイミング解析(STA)ツールを使用します。

STAツールは、回路内のすべての信号経路を分析し、タイミング要件を満たしているかチェックします。

タイミング違反を解決するための方法をいくつか紹介します。

  1. パイプライン化 -> 長い組み合わせ論理回路を複数のステージに分割し、各ステージ間にレジスタを挿入します。
-- パイプライン化前
process(clk)
begin
    if rising_edge(clk) then
        result <= (a + b) * c / d;
    end if;
end process;

-- パイプライン化後
process(clk)
begin
    if rising_edge(clk) then
        stage1 <= a + b;
        stage2 <= stage1 * c;
        result <= stage2 / d;
    end if;
end process;
  1. リタイミング -> クリティカルパス上の論理をレジスタ間で再配置します。
  2. クロックドメインクロッシング(CDC)技術の使用 -> 異なるクロックドメイン間でデータを安全に転送するための専用の回路を実装します。

○メタステーブル状態の回避策

メタステーブル状態は、フリップフロップがセットアップ時間やホールド時間の要件を満たさない場合に発生する不安定な状態です。

同期化されていない信号や、異なるクロックドメイン間のデータ転送時によく見られます。

メタステーブル状態を回避するための主な戦略を説明します。

  1. 同期化フリップフロップチェーンの使用 -> 非同期信号を同期化するために、複数のフリップフロップを直列に接続します。
entity Synchronizer is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        async_in : in STD_LOGIC;
        sync_out : out STD_LOGIC
    );
end Synchronizer;

architecture Behavioral of Synchronizer is
    signal sync_reg1 : STD_LOGIC := '0';
    signal sync_reg2 : STD_LOGIC := '0';
begin
    process(clk)
    begin
        if rising_edge(clk) then
            sync_reg1 <= async_in;
            sync_reg2 <= sync_reg1;
        end if;
    end process;

    sync_out <= sync_reg2;
end Behavioral;
  1. グレイコードの使用 -> カウンタやステートマシンで、隣接する状態間で1ビットだけ変化するグレイコードを使用します。
  2. ハンドシェイキングプロトコルの実装 -> 異なるクロックドメイン間でデータを安全に転送するためのプロトコルを設計します。

○シミュレーションとハードウェアの動作差異への対応

シミュレーション環境と実際のハードウェアでの動作に差異が生じることがあります。

主な原因と対策を紹介します。

  1. タイミングの違い -> シミュレーションではディレイを考慮していないことがあります。タイミングシミュレーションを実行し、実際のハードウェアに近い条件でテストします。
  2. 初期化の問題 -> シミュレーションでは信号が自動的に初期化されますが、実際のハードウェアではそうではありません。明示的に初期化コードを記述します。
process(clk, reset)
begin
    if reset = '1' then
        -- 明示的な初期化
        counter <= (others => '0');
        state <= IDLE;
    elsif rising_edge(clk) then
        -- 通常の動作
    end if;
end process;
  1. トライステート信号の扱い -> シミュレーションではトライステート信号が正しく動作しても、実際のハードウェアでは問題が発生することがあります。できるだけトライステート信号の使用を避け、必要な場合は慎重に設計します。
  2. クロックドメイン間の問題 -> 複数のクロックドメインがある場合、シミュレーションでは問題が顕在化しないことがあります。クロックドメインクロッシング(CDC)解析ツールを使用して潜在的な問題を特定します。

●VHDLシリアルデータ変換の応用例

VHDLを使用したシリアルデータ変換の知識を活かし、実際の通信プロトコルやカスタムインターフェースを実装できます。

ここでは、いくつか具体的な応用例を紹介します。

○サンプルコード10:SPI通信インターフェースの実装

SPI(Serial Peripheral Interface)は、マイクロコントローラと周辺デバイス間で使用される同期式シリアル通信プロトコルです。

VHDLでSPIマスターを実装する例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity SPI_Master is
    Generic (
        CLK_FREQ : integer := 50_000_000;  -- システムクロック周波数
        SPI_FREQ : integer := 1_000_000    -- SPIクロック周波数
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        start : in STD_LOGIC;
        data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        data_out : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        busy : out STD_LOGIC;
        sclk : out STD_LOGIC;
        mosi : out STD_LOGIC;
        miso : in STD_LOGIC;
        cs : out STD_LOGIC
    );
end SPI_Master;

architecture Behavioral of SPI_Master is
    constant DIVIDE_RATIO : integer := (CLK_FREQ / (2 * SPI_FREQ)) - 1;
    signal sclk_count : integer range 0 to DIVIDE_RATIO := 0;
    signal sclk_int : STD_LOGIC := '0';
    signal bit_count : integer range 0 to 7 := 0;
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0) := (others => '0');
    signal state : integer range 0 to 2 := 0;
begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            sclk_count <= 0;
            sclk_int <= '0';
            bit_count <= 0;
            shift_reg <= (others => '0');
            state <= 0;
            busy <= '0';
            cs <= '1';
        elsif rising_edge(clk) then
            case state is
                when 0 =>  -- アイドル状態
                    if start = '1' then
                        state <= 1;
                        shift_reg <= data_in;
                        busy <= '1';
                        cs <= '0';
                    end if;
                when 1 =>  -- データ転送状態
                    if sclk_count = DIVIDE_RATIO then
                        sclk_count <= 0;
                        sclk_int <= not sclk_int;
                        if sclk_int = '1' then  -- SCLKの立ち下がりエッジ
                            if bit_count = 7 then
                                state <= 2;
                            else
                                bit_count <= bit_count + 1;
                            end if;
                            shift_reg <= shift_reg(6 downto 0) & miso;
                        end if;
                    else
                        sclk_count <= sclk_count + 1;
                    end if;
                when 2 =>  -- 転送完了状態
                    cs <= '1';
                    busy <= '0';
                    data_out <= shift_reg;
                    state <= 0;
            end case;
        end if;
    end process;

    sclk <= sclk_int when state = 1 else '0';
    mosi <= shift_reg(7);
end Behavioral;

このSPIマスターは、8ビットのデータ転送を行います。

start信号がアサートされると、data_inからデータを取り込み、ビットごとにシリアル転送します。

同時に、miso線から受信したデータをdata_outに格納します。

○サンプルコード11:I2Cマスターコントローラの設計

I2C(Inter-Integrated Circuit)は、低速の周辺機器との通信によく使用されるシリアルバスプロトコルです。

VHDLでI2Cマスターを実装する例をみてみましょう。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity I2C_Master is
    Generic (
        CLK_FREQ : integer := 50_000_000;  -- システムクロック周波数
        I2C_FREQ : integer := 100_000      -- I2Cクロック周波数
    );
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        start : in STD_LOGIC;
        address : in STD_LOGIC_VECTOR(6 downto 0);
        data_wr : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        data_rd : out STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        busy : out STD_LOGIC;
        ack_error : out STD_LOGIC;
        sda : inout STD_LOGIC;
        scl : inout STD_LOGIC
    );
end I2C_Master;

architecture Behavioral of I2C_Master is
    constant DIVIDE_RATIO : integer := (CLK_FREQ / (4 * I2C_FREQ)) - 1;
    type state_t is (IDLE, START, COMMAND, ACK1, WRITE, ACK2, READ, ACK3, STOP);
    signal state : state_t := IDLE;
    signal sda_int : STD_LOGIC := '1';
    signal scl_int : STD_LOGIC := '1';
    signal sda_in : STD_LOGIC;
    signal bit_cnt : integer range 0 to 7 := 7;
    signal data_tx : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
    signal data_rx : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
    signal clk_count : integer range 0 to DIVIDE_RATIO := 0;
    signal stretch : STD_LOGIC := '0';
begin
    -- クロックストレッチ検出
    stretch <= '1' when (scl_int = '1' and scl = '0') else '0';

    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            state <= IDLE;
            busy <= '0';
            scl_int <= '1';
            sda_int <= '1';
            ack_error <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            if clk_count < DIVIDE_RATIO then
                clk_count <= clk_count + 1;
            else
                clk_count <= 0;

                case state is
                    when IDLE =>
                        if start = '1' then
                            busy <= '1';
                            data_tx <= address & '0';  -- Write operation
                            state <= START;
                        else
                            busy <= '0';
                            state <= IDLE;
                        end if

                    when START =>
                        sda_int <= '0';
                        state <= COMMAND;
                        bit_cnt <= 7;

                    when COMMAND =>
                        scl_int <= '0';
                        sda_int <= data_tx(bit_cnt);
                        if bit_cnt = 0 then
                            state <= ACK1;
                        else
                            bit_cnt <= bit_cnt - 1;
                        end if

                    when ACK1 =>
                        if sda_in = '0' then  -- ACK received
                            state <= WRITE;
                            bit_cnt <= 7;
                            data_tx <= data_wr;
                        else
                            state <= STOP;
                            ack_error <= '1';
                        end if

                    when WRITE =>
                        scl_int <= '0';
                        sda_int <= data_tx(bit_cnt);
                        if bit_cnt = 0 then
                            state <= ACK2;
                        else
                            bit_cnt <= bit_cnt - 1;
                        end if

                    when ACK2 =>
                        if sda_in = '0' then  -- ACK received
                            state <= STOP;
                        else
                            state <= STOP;
                            ack_error <= '1';
                        end if

                    when STOP =>
                        scl_int <= '1';
                        sda_int <= '0';
                        state <= IDLE;

                    when others =>
                        state <= IDLE;
                end case;
            end if;
        end if;
    end process;

    sda_in <= sda;
    sda <= '0' when sda_int = '0' else 'Z';
    scl <= '0' when scl_int = '0' else 'Z';
end Behavioral;

このI2Cマスターは、7ビットアドレスデバイスとの通信をサポートしています。

start信号がアサートされると、指定されたアドレスにデータを書き込みます。

クロックストレッチにも対応しており、スレーブデバイスがSCLラインを低く保持している間は動作を一時停止します。

○サンプルコード12:高速シリアルリンクの実現

高速シリアルリンクは、大容量のデータを効率的に転送するために使用されます。

ここでは、8b/10bエンコーディングを使用した高速シリアルリンクの送信側を実装します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity HighSpeedSerialLink is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        data_in : in STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0);
        data_valid : in STD_LOGIC;
        ready : out STD_LOGIC;
        serial_out : out STD_LOGIC
    );
end HighSpeedSerialLink;

architecture Behavioral of HighSpeedSerialLink is
    type state_t is (IDLE, ENCODE, TRANSMIT);
    signal state : state_t := IDLE;
    signal encoded_data : STD_LOGIC_VECTOR(9 downto 0);
    signal shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(9 downto 0);
    signal bit_count : integer range 0 to 9 := 0;

    -- 8b/10bエンコーディングテーブル(簡略化)
    function encode_8b10b(data : STD_LOGIC_VECTOR(7 downto 0)) return STD_LOGIC_VECTOR is
    begin
        -- 実際のエンコーディングテーブルはもっと複雑です
        return data & "00";
    end function;

begin
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            state <= IDLE;
            ready <= '1';
            serial_out <= '0';
            bit_count <= 0;
        elsif rising_edge(clk) then
            case state is
                when IDLE =>
                    if data_valid = '1' then
                        encoded_data <= encode_8b10b(data_in);
                        state <= ENCODE;
                        ready <= '0';
                    else
                        ready <= '1';
                    end if

                when ENCODE =>
                    shift_reg <= encoded_data;
                    bit_count <= 9;
                    state <= TRANSMIT;

                when TRANSMIT =>
                    serial_out <= shift_reg(0);
                    shift_reg <= '0' & shift_reg(9 downto 1);
                    if bit_count = 0 then
                        state <= IDLE;
                    else
                        bit_count <= bit_count - 1;
                    end if

            end case;
        end if;
    end process;
end Behavioral;

この高速シリアルリンク送信機は、8ビットのデータを受け取り、8b/10bエンコーディングを適用した後、シリアルデータとして送信します。

8b/10bエンコーディングは、DCバランスを保ち、クロック回復を容易にするために使用されます。

○サンプルコード13:カスタムプロトコルの開発

特定の応用に合わせて、カスタムシリアル通信プロトコルを開発することもあります。

ここでは、簡単なカスタムプロトコルの例を紹介します。

library IEEE;
use IEEE.STD_LOGIC_1164.ALL;
use IEEE.NUMERIC_STD.ALL;

entity CustomProtocol is
    Port ( 
        clk : in STD_LOGIC;
        reset : in STD_LOGIC;
        tx_data : in STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
        tx_valid : in STD_LOGIC;
        tx_ready : out STD_LOGIC;
        rx : in STD_LOGIC;
        rx_data : out STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0);
        rx_valid : out STD_LOGIC;
        tx : out STD_LOGIC
    );
end CustomProtocol;

architecture Behavioral of CustomProtocol is
    type tx_state_t is (TX_IDLE, TX_START, TX_DATA, TX_CRC, TX_STOP);
    type rx_state_t is (RX_IDLE, RX_START, RX_DATA, RX_CRC, RX_STOP);

    signal tx_state : tx_state_t := TX_IDLE;
    signal rx_state : rx_state_t := RX_IDLE;

    signal tx_shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(17 downto 0);
    signal rx_shift_reg : STD_LOGIC_VECTOR(17 downto 0);

    signal tx_bit_count : integer range 0 to 17 := 0;
    signal rx_bit_count : integer range 0 to 17 := 0;

    signal crc : STD_LOGIC_VECTOR(1 downto 0);

    function calculate_crc(data : STD_LOGIC_VECTOR(15 downto 0)) return STD_LOGIC_VECTOR is
    begin
        -- 簡単なCRC計算(実際はもっと複雑なアルゴリズムを使用)
        return data(1 downto 0) xor data(3 downto 2) xor data(5 downto 4) xor 
               data(7 downto 6) xor data(9 downto 8) xor data(11 downto 10) xor 
               data(13 downto 12) xor data(15 downto 14);
    end function;

begin
    -- 送信プロセス
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            tx_state <= TX_IDLE;
            tx_ready <= '1';
            tx <= '1';
        elsif rising_edge(clk) then
            case tx_state is
                when TX_IDLE =>
                    if tx_valid = '1' then
                        crc <= calculate_crc(tx_data);
                        tx_shift_reg <= tx_data & calculate_crc(tx_data);
                        tx_state <= TX_START;
                        tx_ready <= '0';
                        tx <= '0';  -- スタートビット
                    else
                        tx_ready <= '1';
                        tx <= '1';
                    end if
                when TX_START =>
                    tx_state <= TX_DATA;
                    tx_bit_count <= 17;
                when TX_DATA =>
                    tx <= tx_shift_reg(0);
                    tx_shift_reg <= '0' & tx_shift_reg(17 downto 1);
                    if tx_bit_count = 0 then
                        tx_state <= TX_STOP;
                    else
                        tx_bit_count <= tx_bit_count - 1;
                    end if
                when TX_STOP =>
                    tx <= '1';  -- ストップビット
                    tx_state <= TX_IDLE;
            end case;
        end if;
    end process;

    -- 受信プロセス
    process(clk, reset)
    begin
        if reset = '1' then
            rx_state <= RX_IDLE;
            rx_valid <= '0';
        elsif rising_edge(clk) then
            case rx_state is
                when RX_IDLE =>
                    if rx = '0' then  -- スタートビット検出
                        rx_state <= RX_DATA;
                        rx_bit_count <= 17;
                    end if
                    rx_valid <= '0';
                when RX_DATA =>
                    rx_shift_reg <= rx & rx_shift_reg(17 downto 1);
                    if rx_bit_count = 0 then
                        rx_state <= RX_STOP;
                    else
                        rx_bit_count <= rx_bit_count - 1;
                    end if
                when RX_STOP =>
                    if rx = '1' then  -- 有効なストップビット
                        if rx_shift_reg(1 downto 0) = calculate_crc(rx_shift_reg(17 downto 2)) then
                            rx_data <= rx_shift_reg(17 downto 2);
                            rx_valid <= '1';
                        end if
                    end if
                    rx_state <= RX_IDLE;
            end case;
        end if;
    end process;

end Behavioral;

このカスタムプロトコルは、16ビットのデータに2ビットのCRCを付加して送信します。

スタートビットとストップビットも使用し、簡単なフレーム構造を持っています。

送信側と受信側の両方が実装されており、エラー検出機能も含まれています。

まとめ

VHDLを用いたシリアルデータ変換は、デジタル回路設計において非常に重要な技術です。

本記事では、基本的なシフトレジスタの実装から、高度な通信プロトコルの実装まで、幅広いトピックをカバーしました。

VHDLを使用したシリアルデータ変換の実装スキルを磨くことで、FPGAやASICの設計において、より複雑で高性能なシステムを開発できるようになります。

継続的な学習と実践を通じて、デジタル回路設計のエキスパートとしてのキャリアを築いていくことができるでしょう。