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Javaで学ぶ並列処理の10の手法

Javaプログラムのサンプルコードと並列処理のイラスト Java
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
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はじめに

Javaの並列処理技術を学ぶ際の第一歩として、基本的な知識とその活用方法について総覧し、Javaを使って効果的な並列処理プログラムを開発するスキルを身につけることが目標となります。

並列処理は、複数の処理を同時に行い、プログラムの実行時間を短縮する技術として知られております。

この記事では、Javaの並列処理の基本から応用技術、さらには注意点とカスタマイズ方法まで、幅広く解説いたします。

●Javaと並列処理の基礎知識

○Javaとは?

Javaは、1990年代にサン・マイクロシステムズによって開発されたプログラミング言語であります。

オブジェクト指向の概念を基盤とし、プラットフォームに依存しない特徴を持つ言語として知られ、ウェブアプリケーションやエンタープライズシステムの開発など多岐にわたる分野で利用されています。

また、Javaは、その安全性や堅牢性、ポータビリティから、多くの企業や開発者から高い評価を受けています。

○並列処理のメリットとは?

並列処理は、複数の処理を同時に進行させることで、プログラムの処理時間を短縮し、リソースを効率的に活用できる技術として注目されています。

特に、マルチコアプロセッサが一般的になった現代では、並列処理を効果的に活用することで、アプリケーションのパフォーマンス向上が期待できます。

さらには、並列処理を適切に実装することで、処理の速度向上だけでなく、システムのスケーラビリティの向上も実現することが可能となります。

ただし、並列処理を行う際には、デッドロックやレースコンディションといった問題に注意を払う必要があり、それに関連する知識も身につけることが求められます。

このように、並列処理のメリットは大きい一方で、それに関連する知識も同時に理解し、活用することが重要となります。

●Javaでの並列処理の基本

Javaプログラミング言語での並列処理は、複数のタスクを同時に実行する技術であり、大規模なプログラムやリアルタイムアプリケーションを効果的に処理することができます。

ここでは、Javaでの並列処理の基本について、詳しく解説します。

○Threadクラスの利用方法

Javaでの並列処理を行う基本的な方法の一つは、Threadクラスを利用することです。

Threadクラスは、新しいスレッドを作成し、startメソッドを呼び出すことでスレッドが実行を開始します。

下記のサンプルコードは、Threadクラスを利用して新しいスレッドを作成し、実行する基本的な方法を表しています。

public class MyThread extends Thread {
    public void run() {
        System.out.println("スレッドが実行されました");
    }

    public static void main(String[] args) {
        MyThread thread = new MyThread();
        thread.start();
    }
}

このコードは、MyThreadクラスがThreadクラスを拡張しており、runメソッド内に並列で実行したいタスクを定義しています。

mainメソッド内でMyThreadクラスのインスタンスを生成し、startメソッドを呼び出すことで、新しいスレッドがスタートします。

このコードを実行すると、”スレッドが実行されました”というメッセージがコンソールに表示されます。

○Runnableインターフェースの活用

Runnableインターフェースは、スレッドが実行するタスクを表します。

Runnableインターフェースはrunメソッドのみを持つ関数型インターフェースであり、次のように新しいスレッドで実行するタスクを定義できます。

public class MyRunnable implements Runnable {
    public void run() {
        System.out.println("Runnableが実行されました");
    }

    public static void main(String[] args) {
        Thread thread = new Thread(new MyRunnable());
        thread.start();
    }
}

このコードは、MyRunnableクラスがRunnableインターフェースを実装しており、runメソッド内で並列で実行したいタスクを定義しています。

Threadクラスの新しいインスタンスを生成する際にMyRunnableインスタンスをパラメータとして渡し、startメソッドを呼び出すことで新しいスレッドがスタートします。

このコードを実行すると、”Runnableが実行されました”というメッセージがコンソールに表示されます。

○サンプルコード1:基本的なThreadの作成

続いて、基本的なThreadの作成に関するサンプルコードとその詳細な説明を紹介します。

ここでは、Threadクラスを直接拡張する代わりに、Runnableインターフェースを利用してタスクを定義します。

public class SimpleThreadExample {
    public static void main(String[] args) {
        Runnable task = () -> {
            for(int i = 0; i < 5; i++) {
                System.out.println("新しいスレッド:" + i);
            }
        };

        Thread thread = new Thread(task);
        thread.start();

        for(int i = 0; i < 5; i++) {
            System.out.println("メインスレッド:" + i);
        }
    }
}

このコードは、ラムダ式を使用してRunnableインターフェースの実装を提供しています。

新しいスレッドで実行されるタスクは、0から4までの数字を印刷します。

また、メインスレッドも同時に0から4までの数字を印刷します。

このコードを実行すると、新しいスレッドとメインスレッドの両方が交互に数字を印刷します。

このように、並列処理を利用することで、複数のタスクを同時に実行することができます。

□サンプルコード2:ExecutorServiceの利用

最後に、ExecutorServiceの利用に関するサンプルコードとその説明を紹介します。

ExecutorServiceは、スレッドのプールを作成し、管理するためのフレームワークです。

ExecutorServiceを利用することで、スレッドの作成と管理が簡単になります。

import java.util.concurrent.Executors;
import java.util.concurrent.ExecutorService;

public class ExecutorServiceExample {
    public static void main(String[] args) {
        ExecutorService executorService = Executors.newFixedThreadPool(2);

        Runnable task1 = () -> {
            for(int i = 0; i < 5; i++) {
                System.out.println("タスク1:" + i);
            }
        };

        Runnable task2 = () -> {
            for(int i = 0; i < 5; i++) {
                System.out.println("タスク2:" + i);
            }
        };

        executorService.execute(task1);
        executorService.execute(task2);

        executorService.shutdown();
    }
}

このコードは、ExecutorServiceを使用して、2つのタスクを並列に実行する方法を表しています。

ExecutorsクラスのnewFixedThreadPoolメソッドを使用して、2つのスレッドを持つスレッドプールを作成します。

次に、2つのRunnableタスクを定義し、ExecutorServiceのexecuteメソッドを使用してそれらのタスクをスレッドプールに送信します。

最後に、ExecutorServiceのshutdownメソッドを呼び出して、スレッドプールを終了します。

このコードを実行すると、2つのタスクが並列に実行され、交互に数字を印刷します。

このように、ExecutorServiceを利用することで、スレッドの管理が簡単かつ効率的に行えます。

●Executorフレームワークと並列処理

並列処理はコンピュータプログラムの実行速度を向上させる重要な技術です。

特にJavaでは、Executorフレームワークを使用して効果的に並列処理を実施することができます。

ここでは、Executorフレームワークとその基本的な使用方法、そして並列処理の実装に関して詳しく説明します。

○Executorの基本

Executorフレームワークは、Javaのconcurrentパッケージに含まれており、スレッドの作成と管理を簡単に行うことができるツールです。

これにより、プログラマーは低レベルのスレッド管理から解放され、並列処理タスクに集中できます。

Executorフレームワークは主にExecutorインターフェースとそのサブインターフェースであるExecutorServiceから構成されます。

これらのインターフェースを利用することで、ユーザーは並列処理タスクを効率的に管理し、高度な並列処理タスクも簡単に実装できます。

Executorインターフェースにはexecute(Runnable)メソッドがあり、このメソッドを使ってRunnableオブジェクトをスレッドプールに送信します。

また、ExecutorServiceはExecutorインターフェースを拡張し、タスクの生命周期を制御できるメソッドを提供します。

○サンプルコード3:ExecutorServiceを使った並列処理の実装

ここでは、ExecutorServiceインターフェースを使って簡単な並列処理を実装するサンプルコードをご紹介します。

このサンプルコードは次のような流れで並列処理を行います。

まず、ExecutorsクラスのnewFixedThreadPoolメソッドを使用して固定サイズのスレッドプールを作成します。

次に、Runnableオブジェクトを作成し、ExecutorServiceのsubmitメソッドを使用してスレッドプールにタスクを送信します。

ここでは、Executors.newFixedThreadPoolメソッドを使ってスレッドプールを作成し、それをExecutorService型の変数に格納します。

そして、Runnableインターフェイスを実装したクラスのインスタンスを作成し、ExecutorServiceのsubmitメソッドを用いてそれをスレッドプールに送信します。

import java.util.concurrent.ExecutorService;
import java.util.concurrent.Executors;

public class ExecutorExample {
    public static void main(String[] args) {
        ExecutorService executorService = Executors.newFixedThreadPool(4);

        executorService.submit(new Runnable() {
            @Override
            public void run() {
                System.out.println("タスク1が実行されました");
            }
        });

        executorService.submit(new Runnable() {
            @Override
            public void run() {
                System.out.println("タスク2が実行されました");
            }
        });

        executorService.shutdown();
    }
}

このコードを実行すると、コンソールには「タスク1が実行されました」と「タスク2が実行されました」というメッセージが表示されます。

そして最後に、executorServiceのshutdownメソッドを呼び出してスレッドプールを閉じます。

このshutdownメソッドはスレッドプールがもはや新しいタスクを受け付けないことを意味しますが、現在のタスクは完了まで実行されます。

●Javaの並列処理の応用技術

Javaの並列処理は高度な技術が多く、技術者が更なる知識を深めるための重要なステップとなります。

それでは、Javaの並列処理の応用技術を解説します。

実行結果も取り入れながら、Javaでの並列処理の実装について説明しましょう。

○Fork/Joinフレームワークの紹介

Fork/JoinフレームワークはJava7から導入されたもので、並列処理を効率的に行うことができるフレームワークとして知られています。

このフレームワークは、大きなタスクを小さなタスクに分割して分散処理し、後で結果を合成するという処理フローを基本にしています。

レシュリブ方式としても知られ、並行性の高いプログラムを効率よく実装できる利点があります。

○サンプルコード4:Fork/Joinを用いた再帰的タスク処理

さて、この項ではFork/Joinフレームワークを使った再帰的タスク処理のサンプルコードとその詳細な説明を行います。

下記のサンプルコードは、0から1000000までの数字を加算するシンプルなタスクをFork/Joinフレームワークを使って並列処理します。

import java.util.concurrent.RecursiveTask;

public class SumTask extends RecursiveTask<Long> {
    private static final long serialVersionUID = 1L;
    private static final long THRESHOLD = 1000;
    private final long[] numbers;
    private final int start;
    private final int end;

    public SumTask(long[] numbers, int start, int end) {
        this.numbers = numbers;
        this.start = start;
        this.end = end;
    }

    @Override
    protected Long compute() {
        if (end - start <= THRESHOLD) {
            long sum = 0;
            for (int i = start; i < end; i++) {
                sum += numbers[i];
            }
            return sum;
        } else {
            int middle = start + (end - start) / 2;
            SumTask leftTask = new SumTask(numbers, start, middle);
            SumTask rightTask = new SumTask(numbers, middle, end);
            leftTask.fork();
            rightTask.fork();
            return leftTask.join() + rightTask.join();
        }
    }

    public static void main(String[] args) {
        long[] numbers = new long[1000000];
        for (int i = 0; i < numbers.length; i++) {
            numbers[i] = i;
        }
        SumTask sumTask = new SumTask(numbers, 0, numbers.length);
        System.out.println(new ForkJoinPool().invoke(sumTask));
    }
}

このコードではRecursiveTaskクラスを継承しています。

そしてcomputeメソッドをオーバーライドして、閾値(この場合は1000)以下の場合は単純な加算を行い、それを超える場合はさらにタスクを分割しています。

そして、forkメソッドで新しいタスクを非同期に実行し、joinメソッドで結果を合成しています。

○Stream APIと並列処理

JavaのStream APIはデータコレクションを効率的かつ並列で処理する強力なツールです。

並列処理を利用すると、マルチコアプロセッサの能力をフルに活用し、プログラムのパフォーマンスを向上させることができます。

しかし、Stream APIを使用して並列処理を実行する際には注意が必要です。

適切な使用方法やパフォーマンスのチューニングについて詳しく説明していきます。

JavaのStream APIは、コレクションや配列などのデータソースからデータを効率的に処理するためのAPIです。

このAPIを使用すると、データソースからデータを読み取り、データを変換、フィルタリング、集計などの操作を行い、最終的な結果を得ることができます。

そして、Stream APIの一部としてparallelStreamメソッドが提供されており、これを使うことで並列処理を行うことができます。

○サンプルコード5:parallelStreamの使用例

では、まず基本的な使用方法から説明します。

ここではArrayListを用いた並列処理の基本的な使い方をサンプルコードとともに説明します。

import java.util.ArrayList;
import java.util.List;

public class ParallelStreamExample {
    public static void main(String[] args) {
        List<String> list = new ArrayList<>();
        for(int i = 0; i < 1000; i++) {
            list.add("Item " + i);
        }

        // parallelStreamを使用して並列処理を行う
        list.parallelStream().forEach(item -> {
            System.out.println(Thread.currentThread().getName() + ": " + item);
        });
    }
}

このコードは、1000個の要素を持つArrayListを作成し、parallelStreamメソッドを使用して各要素を並列に処理しています。

lambda式を使用して各要素に対して処理を行っており、この場合は各要素を表示しています。

そして、Thread.currentThread().getName()メソッドを使用して現在のスレッドの名前を表示することで、並列処理が行われていることを確認できます。

このコードを実行すると、次のような出力が得られます(出力の順序は実行の度に異なる可能性があります)。

ForkJoinPool.commonPool-worker-3: Item 2
ForkJoinPool.commonPool-worker-1: Item 0
ForkJoinPool.commonPool-worker-2: Item 1
ForkJoinPool.commonPool-worker-3: Item 3
(略)

このように、parallelStreamを使用することで簡単に並列処理を行うことができますが、並列処理は常に最適な解決策とは限りません。

データ量が少ない場合や、処理が単純な場合は、並列処理を行わない方がパフォーマンスが良い場合があります。

また、並列処理を行う際にはスレッドセーフな操作を行うことが重要です。

スレッドセーフとは、複数のスレッドが同時にアクセスしてもデータの破損や不整合が発生しないことを指します。

したがって、parallelStreamを使用する際には、スレッドセーフなコードを書くことが重要です。

●並列処理の際の注意点

並列処理を行う際には、いくつかの重要な注意点があります。

次の見出しを参照して、Javaにおける並列処理の注意点を学びましょう。

○スレッドセーフとは?

スレッドセーフとは、複数のスレッドが同時にアクセスしてもプログラムが正常に動作する状態を指します。

Javaでのスレッドセーフを保つためには、いくつかの要点を把握しておく必要があります。

まず、共有リソースへのアクセスをコントロールすることが重要です。

synchronizedキーワードやReentrantLockクラスなどを使用して、リソースへの同時アクセスを制限することができます。

また、Atomicクラスなどの原子操作を行うクラスを利用することも一つの方法となります。

さらに、スレッドセーフなコレクションを利用することで、並列処理の安全性を高めることが可能です。

ConcurrentHashMapやCopyOnWriteArrayListなどのクラスがこれに該当します。

次に進む前に、ここで一つのサンプルコードを見てみましょう。

import java.util.concurrent.atomic.AtomicInteger;

public class ThreadSafeExample {

    private final AtomicInteger counter = new AtomicInteger(0);

    public void incrementCounter() {
        counter.incrementAndGet();
    }

    public int getCounter() {
        return counter.get();
    }

    public static void main(String[] args) {
        ThreadSafeExample example = new ThreadSafeExample();

        Thread thread1 = new Thread(() -> {
            for (int i = 0; i < 1000; i++) {
                example.incrementCounter();
            }
        });

        Thread thread2 = new Thread(() -> {
            for (int i = 0; i < 1000; i++) {
                example.incrementCounter();
            }
        });

        thread1.start();
        thread2.start();

        try {
            thread1.join();
            thread2.join();
        } catch (InterruptedException e) {
            e.printStackTrace();
        }

        System.out.println("最終的なカウンターの値: " + example.getCounter());
    }
}

このコードは、AtomicIntegerクラスを利用してカウンターをスレッドセーフにインクリメントするシンプルなプログラムです。

複数のスレッドが同時にカウンターをインクリメントしても、AtomicIntegerクラスがスレッドセーフな操作を保証します。

プログラムを実行すると、「最終的なカウンターの値: 2000」と表示されます。

○デッドロックの原因と回避方法

デッドロックは、複数のスレッドが相互にリソースを待ち合ってしまい、永遠にプログラムが進まなくなる状態を指します。

デッドロックを避けるためには、ロックの取得順序を一定に保つ、タイムアウトを設定するなどの方法があります。

ここではデッドロックの一般的な原因とその回避方法について詳しく見ていきましょう。

まず、デッドロックの原因としてよく知られているのは、複数のスレッドが複数のリソースを異なる順序でロックしようとする場合です。

下記のサンプルコードでは、デッドロックの状態を表しています。

public class DeadlockExample {

    private final Object lock1 = new Object();
    private final Object lock2 = new Object();

    public void method1() {
        synchronized (lock1) {
            System.out.println("Thread 1: Holding lock 1...");

            try { Thread.sleep(10); } catch (InterruptedException e) {}

            System.out.println("Thread 1: Waiting for lock 2...");
            synchronized (lock2) {
                System.out.println("Thread 1: Acquired lock 2!");
            }
        }
    }

    public void method2() {
        synchronized (lock2) {
            System.out.println("Thread 2: Holding lock 2...");

            try { Thread.sleep(10); } catch (InterruptedException e) {}

            System.out.println("Thread 2: Waiting for lock 1...");
            synchronized (lock1) {
                System.out.println("Thread 2: Acquired lock 1!");
            }
        }
    }

    public static void main(String[] args) {
        DeadlockExample example = new DeadlockExample();

        Thread thread1 = new Thread(() -> {
            example.method1();
        });

        Thread thread2 = new Thread(() -> {
            example.method2();
        });

        thread1.start();
        thread2.start();
    }
}

このコードでは、2つのスレッドが2つの異なるロックを異なる順序で取得しようとしているため、デッドロックが発生します。

デッドロックを避ける一つの方法は、すべてのスレッドがリソースを同じ順序でロックすることです。

○サンプルコード6:デッドロックの再現と解決方法

デッドロックはプログラム中で特に危険な問題の一つとして知られています。

デッドロックは、複数のスレッドが永遠にお互いのリソースを待ち続ける状態を言います。

ここでは、Javaを使用してデッドロックを再現し、その後、それを解決する方法を示すサンプルコードを紹介します。

まず、デッドロックの状況を再現する基本的なJavaプログラムを見てみましょう。

下記のサンプルコードは、デッドロックの典型的なケースを示しています。

public class DeadlockExample {
    private final Object lock1 = new Object();
    private final Object lock2 = new Object();

    public static void main(String[] args) {
        DeadlockExample example = new DeadlockExample();
        example.runTest();
    }

    public void runTest() {
        Thread thread1 = new Thread(new Task(lock1, lock2)); // lock1を先に取得
        Thread thread2 = new Thread(new Task(lock2, lock1)); // lock2を先に取得

        thread1.start();
        thread2.start();
    }

    static class Task implements Runnable {
        private final Object lock1;
        private final Object lock2;

        public Task(Object lock1, Object lock2) {
            this.lock1 = lock1;
            this.lock2 = lock2;
        }

        @Override
        public void run() {
            synchronized (lock1) {
                System.out.println("Lock1 acquired by " + Thread.currentThread().getName());
                synchronized (lock2) {
                    System.out.println("Lock2 acquired by " + Thread.currentThread().getName());
                }
            }
        }
    }
}

上記のコードでは、Taskクラスが2つのロックオブジェクトを必要とし、それぞれ異なる順序でロックを取得します。

これにより、デッドロック状態が発生します。

次に、このデッドロックを解決する方法を探りましょう。

一般的な解決策は、すべてのスレッドがリソースを取得する順序を一定にすることです。

下記のサンプルコードは、ロックの取得順序を一致させることでデッドロックを解消しています。

public class DeadlockSolution {
    private final Object lock1 = new Object();
    private final Object lock2 = new Object();

    public static void main(String[] args) {
        DeadlockSolution solution = new DeadlockSolution();
        solution.runTest();
    }

    public void runTest() {
        Thread thread1 = new Thread(new Task(lock1, lock2)); 
        Thread thread2 = new Thread(new Task(lock1, lock2)); 

        thread1.start();
        thread2.start();
    }

    static class Task implements Runnable {
        private final Object lock1;
        private final Object lock2;

        public Task(Object lock1, Object lock2) {
            this.lock1 = lock1;
            this.lock2 = lock2;
        }

        @Override
        public void run() {
            synchronized (lock1) {
                System.out.println("Lock1 acquired by " + Thread.currentThread().getName());
                synchronized (lock2) {
                    System.out.println("Lock2 acquired by " + Thread.currentThread().getName());
                }
            }
        }
    }
}

上記の修正コードでは、両方のスレッドがリソースを取得する順序が同一であるため、デッドロックの可能性がなくなります。

このようにしてデッドロック問題は解決します。

●並列処理のカスタマイズ方法

並列処理のカスタマイズはJavaの強力な機能の1つであり、効率的なプログラムの開発を実現します。

カスタムスレッドプールの作成からThreadPoolExecutorの利用まで、細かく見ていきましょう。

○カスタムスレッドプールの作成

Javaの並列処理における重要な要素の1つはスレッドプールのカスタマイズです。

このカスタマイズを通じて、リソースの管理やスレッドの再利用が可能となり、プログラムのパフォーマンスを向上させることができます。

ここでは、カスタムスレッドプールの作成方法について詳しく見ていきましょう。

Javaでカスタムスレッドプールを作成する際、ThreadPoolExecutorクラスを利用します。

このクラスはスレッドプールを管理するための多くの機能を提供しており、並列処理をより効果的に行えるように支援します。

○サンプルコード7:ThreadPoolExecutorを使ったカスタムスレッドプールの実装

下記のサンプルコードでは、ThreadPoolExecutorを使ったカスタムスレッドプールの作成方法を説明しています。

コードのコメント部分で日本語を使用して、コードの詳細について説明します。

このコードの実行結果とその詳細な説明も併せて解説します。

import java.util.concurrent.ArrayBlockingQueue;
import java.util.concurrent.ThreadPoolExecutor;
import java.util.concurrent.TimeUnit;

public class CustomThreadPool {
    public static void main(String[] args) {
        // スレッドプールのパラメータを設定
        int corePoolSize = 2; // コアスレッド数
        int maximumPoolSize = 4; // 最大スレッド数
        long keepAliveTime = 10; // スレッドのキープアライブ時間(秒)

        // カスタムスレッドプールを作成
        ThreadPoolExecutor executor = new ThreadPoolExecutor(corePoolSize, maximumPoolSize, keepAliveTime, TimeUnit.SECONDS, new ArrayBlockingQueue<>(2));

        // タスクを追加
        for(int i = 0; i < 5; i++) {
            int finalI = i;
            executor.execute(() -> {
                System.out.println("タスク" + finalI + "を実行 - " + Thread.currentThread().getName());
            });
        }

        // スレッドプールをシャットダウン
        executor.shutdown();
    }
}

このコードでは、まずThreadPoolExecutorクラスをインスタンス化し、スレッドプールのコアスレッド数、最大スレッド数、キープアライブ時間を設定しています。

その後、ArrayBlockingQueueを用いてタスクのキューを作成し、executeメソッドを用いてタスクを追加します。

最後に、shutdownメソッドを呼び出してスレッドプールをシャットダウンします。

このコードを実行すると、5つのタスクがそれぞれ異なるスレッドで実行されることを確認できます。

出力されるメッセージは、「タスク0を実行 – pool-1-thread-1」といった形式になります。

●高度な並列処理のテクニック

高度な並列処理はJavaプログラミングにおいて、効率的なプログラムを開発するために非常に重要なテーマとなっております。

ここでは、Javaでの高度な並列処理のテクニックについて詳しくご紹介いたします。

特にCompletableFutureの活用方法や、非同期タスクの処理方法など、具体的なテクニックとサンプルコードを交えて解説いたします。

○CompletableFutureの活用

CompletableFutureはJavaの非同期プログラミングを実現するためのクラスであります。

非同期プログラミングは、主となるタスクが他のタスクの完了を待たないで進めることができるため、プログラムの効率を大幅に向上させることができます。

下記のサンプルコードはCompletableFutureを利用した非同期プログラミングの基本的な例を表しております。

import java.util.concurrent.CompletableFuture;

public class CompletableFutureExample {
    public static void main(String[] args) {
        CompletableFuture<Void> future = CompletableFuture.runAsync(() -> {
            // 非同期で実行するタスク
            System.out.println("非同期タスクを実行中です");
        });

        future.thenRun(() -> {
            // タスクが完了した後の処理
            System.out.println("非同期タスクが完了しました");
        });
    }
}

このサンプルコードでは、CompletableFuture.runAsyncメソッドを利用して非同期タスクを実行しております。

そして、thenRunメソッドを用いてタスクが完了した後の処理を記述しております。

このコードを実行すると、まず”非同期タスクを実行中です”というメッセージが出力され、その後”非同期タスクが完了しました”というメッセージが出力されます。

○サンプルコード8:非同期タスクの結果を待つ方法

次に、非同期タスクの結果を待つ方法について解説いたします。

非同期タスクの結果を待つためには、CompletableFutureのjoinメソッドやgetメソッドを利用します。

下記のサンプルコードは、非同期タスクの結果を待つ方法を表しております。

import java.util.concurrent.CompletableFuture;

public class CompletableFutureExample2 {
    public static void main(String[] args) {
        CompletableFuture<Integer> future = CompletableFuture.supplyAsync(() -> {
            // 非同期で実行するタスク(何かの計算を行う)
            return 100;
        });

        future.thenAccept(result -> {
            // タスクが完了した後の処理(結果を受け取る)
            System.out.println("計算結果は: " + result);
        });

        // タスクが終了するのを待つ
        future.join();
    }
}

このサンプルコードでは、CompletableFuture.supplyAsyncメソッドを利用して非同期タスクを実行しております。

このタスクは、100という結果を返します。

そして、thenAcceptメソッドを用いてタスクが完了した後の処理を記述しております。

この処理では、タスクの結果を受け取り、その結果を出力しております。

そして、joinメソッドを利用してタスクが終了するのを待っております。

○サンプルコード9:複数の非同期タスクの結果を合成

Javaプログラミングにおいて非同期処理は非常に重要であり、複数の非同期タスクを効果的に合成して利用する方法はプログラマーにとって大変役立つテクニックです。

ここでは、JavaのCompletableFutureクラスを利用した非同期タスクの合成方法を詳細に解説いたします。

特に、thenCombineメソッドとthenComposeメソッドを活用した非同期タスクの合成方法を中心に説明します。

ここではJavaのコードを使用し、実際に実行可能なコードの解説とサンプルコードを解説いたします。

まず、CompletableFutureクラスとはJavaの非同期プログラミングを支援するクラスであり、非同期処理の結果を表現するためのクラスです。

このクラスは非同期タスクの実行や、その結果の取得、非同期タスクの組合せなどの操作を提供します。

複数の非同期タスクを合成するサンプルコードを紹介します。

このコードは、2つの非同期タスクを作成し、それぞれのタスクが終了した後にその結果を合成するという処理を行います。

import java.util.concurrent.CompletableFuture;

public class SampleCode9 {
    public static void main(String[] args) {
        CompletableFuture<Integer> future1 = CompletableFuture.supplyAsync(() -> {
            try {
                Thread.sleep(2000);
            } catch (InterruptedException e) {
                e.printStackTrace();
            }
            return 100;
        });

        CompletableFuture<Integer> future2 = CompletableFuture.supplyAsync(() -> {
            try {
                Thread.sleep(3000);
            } catch (InterruptedException e) {
                e.printStackTrace();
            }
            return 200;
        });

        CompletableFuture<Void> resultFuture = future1.thenCombine(future2, (result1, result2) -> {
            int combinedResult = result1 + result2;
            System.out.println("Combined result: " + combinedResult);
            return combinedResult;
        }).thenAccept(combinedResult -> System.out.println("Final combined result: " + combinedResult));

        resultFuture.join();
    }
}

このコードの説明を行いましょう。

まず、CompletableFuture.supplyAsyncメソッドを使用して2つの非同期タスクを作成します。

それぞれのタスクは、異なる時間でスリープした後、整数値を返します。

次に、thenCombineメソッドを使用して、これら2つのタスクの結果を合成します。

そして、合成された結果をコンソールに出力します。

さらに、thenAcceptメソッドを使用して合成された結果を最終的に処理します。

このコードを実行すると、次のような出力が得られます。

Combined result: 300
Final combined result: 300

このように、CompletableFutureクラスを利用すると、複数の非同期タスクの結果を簡単かつ効率的に合成できます。

さらに、thenComposeメソッドを使用することで、非同期タスクの結果を更に洗練された方法で合成することも可能です。

●Javaでの並列処理の最適化手法

Javaの並列処理はプログラムのパフォーマンス向上に大いに寄与しますが、最適な方法で設計と実装を行うことが不可欠です。

ここでは、Javaでの並列処理の最適化手法に関する多岐にわたるテクニックや知識を、入門者から上級者までの読者が利用できる形で提供します。

○パフォーマンスチューニングの基本

並列処理の最適化とは、複数のプロセスやスレッドが同時に効率よく動作できるよう設計するプロセスです。

基本的なパフォーマンスチューニングの技術としては、スレッドプールの最適化、キャッシュの効果的な使用、非同期処理の適用などがあります。

これらの技術を効果的に利用することで、プログラムの実行時間を短縮し、システムリソースの利用を最適化できます。

○サンプルコード10:ベンチマークを取る方法

ベンチマークテストは、プログラムのパフォーマンスを測定し、最適化の効果を評価するための重要なツールです。

ここでは、Javaでベンチマークテストを行う基本的な方法を示すサンプルコードとその詳細な説明をします。

// Javaでのベンチマークテストの簡単な例
public class BenchmarkTest {

    public static void main(String[] args) {
        long startTime = System.nanoTime();

        // ベンチマークテスト対象のコード
        for(int i = 0; i < 1000000; i++) {
            String str = "Test" + i;
        }

        long endTime = System.nanoTime();
        long timeElapsed = endTime - startTime;

        System.out.println("実行時間: " + timeElapsed + " ナノ秒");
    }
}

このコードは非常に単純なベンチマークテストを表しています。

最初に現在の時間をナノ秒単位で取得し、次に1,000,000回のループを実行する単純な処理を行い、その後、再度現在の時間を取得します。

最後に、開始時間から終了時間までの経過時間を計算し、それをナノ秒単位で表示します。

このようなベンチマークは、特定のコードスニペットの実行時間を測定するための基本的な方法を提供しますが、更に高度なベンチマークテストには、専用のベンチマークツールの利用を検討することが推奨されます。

まとめ

この記事では、Javaを用いた並列処理の10の手法を一通りご紹介しました。

初めに基本的な知識からスタートし、その後に基本技術、応用技術、注意点、カスタマイズ方法までを一通り網羅しました。

Javaを用いた並列処理の学習は、一筋縄ではいかない部分も多々ありますが、本記事が皆さんの学習の一助となれば幸いです。

さらなる学習と実践を通じて、スキルアップを目指してください。