はじめに
Verilogを使ったデジタルデザインがますます人気を博している昨今、Verilogでストップウォッチを作りたいと考えている初心者の方へ、本記事ではその方法を詳細に解説していきます。
記事を通じて、Verilogの基本的な知識を学び、さらには具体的なコードを書くことで、ストップウォッチを作る手順を理解することができます。
●Verilogの基本
○Verilogとは何か
Verilogは、ハードウェア記述言語(HDL)の一種で、デジタル回路の設計とシミュレーションに広く利用されています。
Verilogを使えば、複雑なデジタルデバイスの動作を詳細に記述し、その振る舞いをシミュレートすることが可能です。
○基本的なVerilogの構文
Verilogのコードは、モジュールという単位で記述されます。
モジュールは、入力、出力、動作を記述する一連のコードをカプセル化したもので、再利用可能な設計の要素を作ることができます。
簡単なVerilogのモジュールを紹介します。
このコードではExampleModule
というモジュールを作成しています。
入力としてa
を受け取り、出力としてb
を出力します。assign
文は、b
にa
の否定(!a
)を代入しています。
●ストップウォッチの設計
○時間を数えるためのカウンター
ストップウォッチの基本的な機能は時間を数えることです。
これを実現するためには、一定の間隔で増加するカウンターが必要です。
Verilogでは、レジスタ(reg)を使ってカウンターを作ることができます。
○ストップウォッチの機能要件
ストップウォッチとして必要な機能は、開始(start)、停止(stop)、リセット(reset)の3つです。開始すると、カウンターが増加を始め、停止すると増加が止まります。
リセットを行うと、カウンターの値が0に戻ります。
これらの機能を実装するためには、それぞれの操作に対応する信号を設定し、その信号の状態によってカウンターの動作を制御する必要があります。
このような操作の実装方法については、次の章で詳しく説明します。
この例では時間を数えるカウンターを作り、それを制御する機能を追加することでストップウォッチを作成しています。
●サンプルコード1:Verilogでストップウォッチを作る
ストップウォッチを作成するためのVerilogのコードをここから詳しく見ていきましょう。
まずはストップウォッチの全体構成について説明します。
○ストップウォッチの全体構成
ストップウォッチは主に3つの部分で構成されています。
それは、時間を計測するためのカウンター、ストップウォッチのスタートやストップを制御するための制御信号、そしてカウンターの値を表示するためのディスプレイです。
これらを組み合わせて、ストップウォッチを作成します。
○サンプルコードとその説明
下記のサンプルコードでは、一秒間隔で時間をカウントし、その時間をディスプレイに表示する簡単なストップウォッチを作成します。
また、リセット信号とスタート/ストップ信号も用意し、それぞれカウンターのリセットと時間計測の開始・停止を制御します。
このコードでは、50MHzのクロック信号(clk)を入力とし、そのクロックの立ち上がりエッジで動作するカウンターを実装しています。
リセット信号(reset)が立ち上がったとき、もしくはスタート/ストップ信号(start_stop)が立っているとき、カウンター(count)は増加し続けます。
そして、カウンターの値が50,000,000(クロック周波数の50MHzを1秒に換算した値)に達したら、カウンターはリセットされ、秒数(sec_count)が増加します。
また、秒数はsecという出力ポートに割り当てられており、外部から確認することができます。
このコードをFPGAにダウンロードし実行すると、スタート/ストップ信号が立っている間、秒数が増え続けるストップウォッチを観察することができます。
そしてリセット信号を立てると、秒数は0に戻ります。
このサンプルコードは非常に簡単なもので、実際のストップウォッチではミリ秒単位での計測やラップタイムの記録など、さらに複雑な機能を持つことが一般的です。
しかし、これを基にVerilogを用いたデジタルロジックの設計の基本を理解し、さらに高度な機能を追加していくことができます。
●サンプルコード2:ストップウォッチの機能追加
基本的なストップウォッチの作成方法を学んだ後、さらに進化させるための要素を追加しましょう。
その一例として、「ラップタイム機能」を追加してみます。
ラップタイムとは、一定の区間ごとにタイミングを記録することで、特定の区間でどの程度の時間がかかったかを測る機能のことです。
○追加機能の概要
この機能を追加することで、ストップウォッチはより高度な用途に対応可能になります。
例えばスポーツの練習などでは、ラップタイムを使って各セクションのパフォーマンスを把握し、改善点を見つけ出すことができます。
○サンプルコードとその説明
それでは、ラップタイム機能を追加したVerilogのコードを見てみましょう。
このコードでは、ラップタイム機能を追加するために新たな入力信号「lap」を定義しています。
そして新たなレジスタ「lap_time」を定義し、その値は「lap」信号が立ち上がった瞬間の「cnt」の値を保持するようになっています。
以上のような追加機能の実装により、ストップウォッチはより高機能なものに進化します。
しかし、実装を進める上で注意すべき点や、よくあるエラーも存在します。それについては次の節で詳しく説明します。
●注意点と対処法
○デバッグのコツ
Verilogでのデバッグは、シミュレーションを活用することが一般的です。
シミュレーションを行うことで、クロックサイクルごとの信号の変化を確認したり、予想外の動作が発生した場合にその原因を特定することができます。
○よくあるエラーとその解決策
Verilogでコードを書いていると、様々なエラーに遭遇することがあります。
その中でも初心者が陥りやすいエラーの一つが、「未定義の信号を使用してしまう」エラーです。
これはコード中で使用している信号が、どこにも定義されていない場合に発生します。
エラーメッセージを見て、該当の信号が適切に定義されているかを確認しましょう。
それから、次によくあるエラーが「未初期化のレジスタ」です。
これはレジスタが定義されているにもかかわらず、初期化がなされていない場合に発生します。
Verilogでは、すべてのレジスタは初期化が必要です。
つまり、そのレジスタが持つべき初期値を設定する必要があります。
●カスタマイズ方法
さて、このストップウォッチはあなたの要望に応じて様々にカスタマイズできます。
その一例として、デザインの変更や新たな機能の追加などが考えられます。
○デザインの変更方法
デザインを変更するためには、基本的には出力を制御する部分のコードを変更します。
例えば、LEDの点灯パターンを変えることで、時間の表示方法を変えることができます。
○機能追加の方法
新たな機能を追加する場合には、まずその機能をどのように実現するかの設計を行い、それに基づいてコードを追加または変更します。
例えば、カウントダウン機能を追加する場合、特定の時間を設定し、その時間が0になるまでカウントを逆に行うようなコードを追加することになります。
まとめ
以上、Verilogを用いてストップウォッチを作成し、さらにはラップタイム機能を追加する方法を説明してきました。
また、デバッグのコツやよくあるエラーについても触れ、カスタマイズ方法についても紹介しました。
この記事を通じて、Verilogでのハードウェアデザインの基礎を理解し、実際にストップウォッチを作ることができたら、これ以上の喜びはありません。
どんな小さな成功も、次に繋がる大きなステップです。これからも学びを深めていきましょう。