C++の[[nodiscard]]属性でエラーを防ぐ7つの方法

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はじめに

この記事を読むことで、あなたはC++の重要な機能の一つである[[nodiscard]]属性について学ぶことができます。

この属性は、関数の戻り値が無視されることを防ぎ、プログラムの安全性を高めるために使われます。

初心者から上級者まで、[[nodiscard]]属性の基本から応用までを詳しく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

●C++の[[nodiscard]]属性とは

C++の[[nodiscard]]属性は、関数やメソッドの戻り値が重要であり、無視されるべきではない場合に使用されます。

この属性を関数やメソッドに適用すると、戻り値が無視された場合にコンパイラが警告を出します。

これにより、意図せず重要な戻り値を見逃すことを防ぐことができ、プログラムのバグを減らすことに役立ちます。

○[[nodiscard]]属性の基本

[[nodiscard]]属性は、C++17から導入された機能です。

この属性を関数に適用するには、関数宣言の前に[[nodiscard]]を記述します。

例えば、エラーを示す可能性のある関数にこの属性を適用すると、戻り値をチェックすることを強制することができます。

[[nodiscard]] int checkError() {
    // エラーチェックのロジック
    return 0; // エラーがなければ0を返す
}

この関数checkErrorはエラーの有無を表す整数を返します。

[[nodiscard]]属性があるため、この関数の戻り値を無視するとコンパイラは警告を発します。

これにより、エラーチェックを忘れるリスクを減らすことができます。

○[[nodiscard]]属性が導入された背景

[[nodiscard]]属性は、開発者が関数の戻り値を無視してしまうことによるバグを防ぐために導入されました。

特に、エラーコードや状態を返す関数では、戻り値をチェックしないことがバグの原因となることが多いです。

この属性を使用することで、重要な戻り値を確実に評価することを強制し、より堅牢なコードを書くことが可能になります。

●[[nodiscard]]属性の使い方

C++プログラミングにおいて、[[nodiscard]]属性は非常に重要な役割を果たします。

この属性を関数の戻り値に適用することで、その関数の使用時に戻り値を無視することができなくなります。

これは、特にエラーチェックや重要な計算結果を返す関数において、意図しないバグを防ぐのに役立ちます。

次に、[[nodiscard]]属性を使用した具体的なサンプルコードを見ていきましょう。

○サンプルコード1:関数の戻り値に[[nodiscard]]を使う

C++の[[nodiscard]]属性を関数の戻り値に適用すると、その関数が戻り値を返す際に、その戻り値を無視することがコンパイラによって警告されるようになります。

これにより、重要な戻り値が意図せずに無視されることを防ぐことができます。

特に、エラーの発生を表すかもしれない戻り値や、計算結果などの重要な情報を返す関数において、この属性を用いることが推奨されます。

ここでは、[[nodiscard]]属性を用いた関数の戻り値の使用例を紹介します。

#include <iostream>

[[nodiscard]] int add(int a, int b) {
    return a + b;
}

int main() {
    add(3, 4); // [[nodiscard]]属性があるため、この行はコンパイラによって警告される可能性があります。

    // 正しい使い方は、戻り値を変数に格納するか、直接使用することです。
    int sum = add(3, 4);
    std::cout << "Sum: " << sum << std::endl;

    return 0;
}

このコード例では、add関数は2つの整数を受け取り、その和を返す簡単な関数です。

[[nodiscard]]属性を適用しているため、add関数の戻り値を無視すると、コンパイラから警告が発せられます。

○サンプルコード2:クラスメソッドに[[nodiscard]]を使う

クラスのメソッドにも[[nodiscard]]属性を適用することができます。

これにより、メソッドの戻り値が重要である場合に、その戻り値を確実にチェックすることを促すことができます。

#include <iostream>
#include <vector>

class Data {
public:
    Data(std::initializer_list<int> init) : data(init) {}

    [[nodiscard]] bool isEmpty() const {
        return data.empty();
    }

private:
    std::vector<int> data;
};

int main() {
    Data d{1, 2, 3};
    if (d.isEmpty()) {
        std::cout << "Data is empty" << std::endl;
    } else {
        std::cout << "Data is not empty" << std::endl;
    }
    return 0;
}

このコードでは、DataクラスのisEmptyメソッドに[[nodiscard]]属性を適用しています。

このメソッドはコンテナが空かどうかを確認し、その結果をbool型で返します。

○サンプルコード3:条件付きで[[nodiscard]]を使う

条件付きで[[nodiscard]]属性を使うこともできます。

これは、特定の条件下でのみ戻り値の確認が必要な場合に有用です。

#include <iostream>
#include <optional>

std::optional<int> findValue(const std::vector<int>& data, int value) {
    for (int v : data) {
        if (v == value) {
            return v;
        }
    }
    return std::nullopt;
}

int main() {
    std::vector<int> data = {1, 2, 3, 4, 5};
    auto result = findValue(data, 3);
    if (result) {
        std::cout << "Found value: " << *result << std::endl;
    } else {
        std::cout << "Value not found" << std::endl;
    }
    return 0;
}

この例では、findValue関数は指定された値をベクタから探し、見つかった場合にはその値を、見つからない場合にはstd::nulloptを返します。

この関数では[[nodiscard]]属性は使用していませんが、戻り値の確認が重要である場合には、[[nodiscard]]属性を適用することが考えられます。

●[[nodiscard]]属性の応用例

[[nodiscard]]属性は、C++プログラミングにおいて、単に関数の戻り値をチェックするだけでなく、より複雑な応用例にも利用することができます。

特にエラーハンドリングや例外処理の文脈では、[[nodiscard]]属性は非常に有効です。

これにより、重要なエラー情報や例外を見逃すリスクを軽減し、プログラムの堅牢性を高めることができます。

○サンプルコード4:[[nodiscard]]を使ったエラーハンドリング

エラーハンドリングにおいて、[[nodiscard]]属性を使用することで、エラーの発生を示す戻り値を確実にチェックすることができます。

下記の例では、エラーを示すために使用される関数に[[nodiscard]]属性を適用しています。

#include <iostream>
#include <tuple>

[[nodiscard]] std::tuple<bool, std::string> performTask(int param) {
    if (param > 0) {
        return {true, "Task completed successfully"};
    } else {
        return {false, "Error: Invalid parameter"};
    }
}

int main() {
    auto [success, message] = performTask(-1);
    if (!success) {
        std::cout << message << std::endl; // エラーメッセージが表示される
    }
    return 0;
}

このコードでは、performTask関数がタスクの成功可否とメッセージをタプルで返します。

この関数に[[nodiscard]]属性を適用することで、戻り値が確実にチェックされるようになります。

これにより、エラーが発生した場合にそれを検出し、適切な対処をすることが可能になります。

○サンプルコード5:[[nodiscard]]と例外処理の組み合わせ

例外処理では、例外がスローされたかどうかを確認することが重要です。

[[nodiscard]]属性は、例外処理の文脈で使用することで、例外の発生を見逃さないようにすることができます。

下記の例では、例外をスローする可能性のある関数に[[nodiscard]]属性を適用しています。

#include <iostream>
#include <stdexcept>

[[nodiscard]] bool riskyOperation() {
    throw std::runtime_error("An error occurred");
    return true;
}

int main() {
    try {
        riskyOperation();
    } catch (const std::exception& e) {
        std::cout << "Caught exception: " << e.what() << std::endl;
    }
    return 0;
}

この例では、riskyOperation関数が例外をスローする可能性があります。

[[nodiscard]]属性を適用することで、この関数の呼び出しが例外を投げる可能性があることをプログラマに意識させます。

これにより、適切な例外処理を行い、プログラムの安定性を向上させることができます。

○サンプルコード6:[[nodiscard]]をカスタム型で使用する

C++では、カスタム型に対しても[[nodiscard]]属性を使用することが可能です。

これは、特定の型のオブジェクトが重要な情報を持っている場合に特に有用です。

例えば、リソース管理やエラー状態を表す型など、戻り値を無視するとプログラムの安全性が損なわれる可能性がある場合にこの属性を用います。

#include <iostream>
#include <string>

class Result {
public:
    Result(bool success, std::string message) : success(success), message(std::move(message)) {}

    [[nodiscard]] bool isSuccess() const { return success; }
    [[nodiscard]] const std::string& getMessage() const { return message; }

private:
    bool success;
    std::string message;
};

Result performOperation() {
    // 何らかの操作を実行
    return Result(false, "Operation failed");
}

int main() {
    auto result = performOperation();
    if (!result.isSuccess()) {
        std::cout << result.getMessage() << std::endl;
    }
    return 0;
}

この例では、Resultクラスが操作の結果を表すために用いられています。

isSuccessgetMessageメソッドには[[nodiscard]]属性が適用されており、これらのメソッドの戻り値を無視するとコンパイラが警告します。

○サンプルコード7:[[nodiscard]]を使ったライブラリ設計

ライブラリ設計においても、[[nodiscard]]属性は重要な役割を果たします。

ライブラリの関数やメソッドが重要な情報を返す場合、[[nodiscard]]属性を適用することで、ライブラリの使用者が戻り値を無視することを防ぎ、より安全なコードを書くことを促すことができます。

#include <iostream>
#include <vector>

namespace Library {
    class DataProcessor {
    public:
        DataProcessor() = default;

        [[nodiscard]] bool processData(const std::vector<int>& data) {
            // データ処理のロジック
            return true; // 処理が成功した場合はtrueを返す
        }
    };
}

int main() {
    Library::DataProcessor processor;
    std::vector<int> data = {1, 2, 3};
    if (!processor.processData(data)) {
        std::cout << "Data processing failed" << std::endl;
    }
    return 0;
}

この例では、DataProcessorクラスのprocessDataメソッドに[[nodiscard]]属性が適用されています。

このメソッドはデータ処理を行い、その成功可否をbool値で返します。

[[nodiscard]]属性により、このメソッドの戻り値をチェックすることが強制されます。

●注意点と対処法

C++の[[nodiscard]]属性を使用する際には、その適用に関して注意深く考慮する必要があります。

[[nodiscard]]属性は、関数の戻り値が重要で、無視されることでプログラムの挙動に重大な影響が及ぶ可能性がある場合にのみ使用することが望ましいです。

全ての関数にこの属性を無差別に適用するのは避けるべきです。

また、[[nodiscard]]属性を使用する関数は、その理由を文書化し、他の開発者がその意図を理解しやすくすることが重要です。

これは、APIのドキュメントやコード内のコメントを通じて行うことができます。

さらに、[[nodiscard]]属性が適用された関数の戻り値を無視しないようにし、戻り値が必要ない場合はその関数の設計を再考することが必要です。

○[[nodiscard]]の誤用を避けるためのヒント

[[nodiscard]]属性の誤用を避けるためには、関数の戻り値の重要性を正しく評価することが重要です。

戻り値がプログラムの安全性や正確性に直接関わる場合にのみ、この属性を適用するべきです。

属性の使用理由を明確に文書化し、開発者がその意図を容易に理解できるようにすることも大切です。

○コンパイラ警告との対応

[[nodiscard]]属性を使用すると、戻り値を無視した場合にコンパイラから警告が発せられることがあります。

これらの警告には重要な意味があり、適切に対応することが重要です。

コンパイラの警告を確認し、なぜその警告が発せられたのかを理解することが重要です。

警告の原因が[[nodiscard]]属性によるものである場合、戻り値を適切に利用するか、関数の設計を見直すことが必要になります。

また、頻繁に警告が発生する場合は、コードのリファクタリングを検討する価値があります。

関数の使用方法を見直し、より明確で理解しやすいコードを目指すことが重要です。

まとめ

この記事では、C++の[[nodiscard]]属性の効果的な使用法を、具体的なサンプルコードを交えて詳細に解説しました。

[[nodiscard]]属性を適用することで、プログラムのエラーを防ぎ、コードの信頼性を高めることができます。

初心者から上級者まで、各サンプルコードを通じて、[[nodiscard]]属性の活用方法を理解し、自身のプログラミングに応用することが可能です。

この知識を活用して、より安全で効率的なC++プログラミングを実現しましょう。