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TypeScriptのジェネリック型活用法10選

TypeScriptのジェネリック型のロゴと、サンプルコードをイメージした背景 TypeScript
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

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はじめに

TypeScriptのプログラミングの中で、ジェネリック型は非常に重要な役割を果たします。

これは、さまざまなデータ型に対応できるようにするための柔軟性を持つ特性です。

この記事では、TypeScriptのジェネリック型の基本から応用までを初心者向けに詳細に解説します。

具体的なサンプルコードを交えながら、ジェネリック型の使い方、注意点、カスタマイズ方法などを10のステップで紹介します。

初めてジェネリック型に取り組む方も、実際に手を動かして学ぶことで、この特性の真価を理解することができるでしょう。

さらに、この記事を読むことで、TypeScriptのジェネリック型を活用したプログラミングスキルが飛躍的に向上することを目指します。

それでは、まずジェネリック型とは何か、その基本的な理念から見ていきましょう。

●ジェネリック型とは?

ジェネリック型とは、型をパラメータとして持つことができる型のことを指します。

これにより、一度関数やクラスを定義するだけで、様々な型でその関数やクラスを利用することができます。

簡単に言えば、「型を柔軟に変更しながら、同じロジックを再利用する」ことが目的です。

例を見てみましょう。

下記のコードでは、ジェネリック型を使用しています。

function identity<T>(arg: T): T {
    // このコードでは、Tというジェネリック型を使っています。
    // この例では、関数identityが任意の型Tを受け取り、同じ型Tとして返すようにしています。
    return arg;
}

このidentity関数は、どんな型でも受け取り、同じ型でそのまま返します。

このように、ジェネリック型を使用すると、関数の内部ロジックを変更することなく、様々な型で同じ関数を利用することができます。

このidentity関数を使用すると、次のように様々な型で関数を利用することができます。

let outputString = identity<string>("myString"); // 戻り値の型はstringです。
let outputNumber = identity<number>(100);        // 戻り値の型はnumberです。

上記の例からもわかるように、ジェネリック型を活用することで、関数やクラスを多様なシチュエーションで再利用することができます。

○ジェネリック型の基本理念

ジェネリック型の背後にある主要な理念は、「型の再利用」と「型の安全性」を両立させることです。

TypeScriptのジェネリック型は、具体的な型(例: string, number)を指定せずにコードを書き、そのコードを使用する際に具体的な型を与えることができます。

この方法の大きな利点は、一つの関数やクラスの定義を様々な型で再利用できることです。

従って、ジェネリック型を使うと、コードの重複を大幅に減少させることができます。

また、ジェネリック型を使用することで、型の安全性も維持できます。

例えば、ジェネリック型を使用しない場合、関数内で任意の型を受け取るためにany型を使用することが考えられます。

しかし、any型を使用すると、型の安全性が失われる可能性があります。

一方、ジェネリック型を使用すると、関数やクラスの内部で扱うデータの型が明確になるため、型のエラーを早期に検出することができます。

●ジェネリック型の使い方

TypeScriptの強力な機能の一つに、ジェネリック型があります。

これは、型を変数のように扱い、より柔軟なコードを書くのに役立ちます。

ここでは、ジェネリック型の基本的な使い方について詳しく説明します。

○サンプルコード1:基本的なジェネリック関数の作成

まずは、ジェネリック型の基本的な使い方から学んでいきましょう。

ジェネリック型を使うと、関数やクラスなどの宣言時に特定の型を固定せず、後から指定することができます。

下記のコードは、ジェネリック型を活用して、入力された値をそのまま返すシンプルな関数を作成する例です。

function identity<T>(arg: T): T {
    return arg;
}

このコードでは、<T>を使ってジェネリック型を宣言しています。

このTは、関数identityが受け取る引数の型や返り値の型として利用されます。

したがって、この関数はどのような型の引数も受け取ることができ、その型の値を返すことができます。

例えば、次のようにこの関数を使用することができます。

let outputString = identity<string>("myString");
console.log(outputString); // "myString"

let outputNumber = identity<number>(100);
console.log(outputNumber); // 100

最初の呼び出しでは、identity関数にstring型を指定して文字列を渡しています。

この例では、関数はstring型の値を返します。次に、number型を指定して数値を渡しています。

この場合、関数はnumber型の値を返します。

このように、ジェネリック型を使用することで、同じ関数で異なる型のデータを扱うことができるのです。

このコードを実行すると、次の出力が得られます。

まず、文字列”myString”が表示され、次に数字の100が表示されます。

この結果は、それぞれの関数呼び出しで指定した型と値に基づいています。

ジェネリック型を使用すると、型を指定せずにコードを再利用することができます。

これにより、冗長性が減少し、コードの可読性と保守性が向上します。

この例では、identity関数は任意の型のデータを扱うことができるため、さまざまな場面で使用することができます。

○サンプルコード2:ジェネリックインターフェースの利用

TypeScriptでのインターフェースは、オブジェクトが持つべき構造や契約を定義するための強力なツールです。

そして、ジェネリック型を組み合わせることで、さらに柔軟かつ再利用可能なインターフェースを作成することができます。

まず、基本的なジェネリックインターフェースのサンプルコードから見ていきましょう。

// ジェネリックインターフェースの定義
interface KeyValuePair<K, V> {
    key: K;
    value: V;
}

// 使用例
let item1: KeyValuePair<string, number> = { key: 'age', value: 25 };
let item2: KeyValuePair<number, string> = { key: 1, value: 'apple' };

このコードでは、KeyValuePairという名前のジェネリックインターフェースを定義しています。

この例では、KVという二つの型パラメータを取り、それぞれkeyvalueというプロパティに割り当てています。

使用例として、item1keyが文字列型、valueが数値型となるようにKeyValuePairを指定しています。

一方、item2ではkeyが数値型、valueが文字列型となるように指定しています。

これにより、同じインターフェースを使用しながらも、異なる型の組み合わせでデータを扱うことができるのです。

さて、このインターフェースを利用した実際の動作について解説します。

item1にデータを代入した際、keyは文字列の’age’、valueは数値の25として保存されます。

同様に、item2にはkeyに数値の1、valueに文字列の’apple’が代入されます。

このように、ジェネリックインターフェースを使用することで、一つのインターフェース定義をさまざまな型で再利用することが可能となります。

これにより、コードの冗長性が減少し、保守性も向上します。

○サンプルコード3:制約を持つジェネリック型

TypeScriptのジェネリック型は非常に強力な機能であり、型の再利用性を極大化することができます。

しかし、すべての型を許可するのではなく、特定の条件を持つ型のみを受け入れたい場合があります。

そのような場面で活躍するのが、制約を持つジェネリック型です。

制約を持つジェネリック型は、extendsキーワードを使ってジェネリック型の範囲を限定するものです。

この制約を活用することで、特定の型のプロパティやメソッドを持っていることを保証することができます。

制約を持つジェネリック型の基本的なサンプルコードを紹介します。

interface HasLength {
    length: number;
}

function getLength<T extends HasLength>(item: T): number {
    return item.length;
}

// このコードではHasLengthインターフェースを使ってlengthプロパティを持つことを制約しています。
// この例ではgetLength関数を定義し、引数itemがlengthプロパティを持っていることを保証しています。

このコードでは、まずHasLengthというインターフェースを定義しており、このインターフェースにはlengthという数値型のプロパティが定義されています。

次に、getLength関数をジェネリック関数として定義していますが、このジェネリック関数の型THasLengthインターフェースを継承しているため、この関数の引数itemは必ずlengthプロパティを持っていることが保証されています。

上記のコードを使用した場面のサンプルを紹介します。

let str = "Hello TypeScript!";
let arr = [1, 2, 3, 4, 5];

console.log(getLength(str)); // 文字列の長さを出力
console.log(getLength(arr)); // 配列の長さを出力

上記のサンプルコードでは、文字列strと数値の配列arrgetLength関数に渡して、それぞれの長さを取得しています。

このとき、文字列や配列は共にlengthプロパティを持っているため、エラーなく関数を呼び出すことができます。

そして、文字列の長さや配列の要素数がコンソールに出力されます。

逆に、lengthプロパティを持たないオブジェクトをgetLength関数に渡すと、TypeScriptはコンパイル時にエラーを出力します。

これにより、型の安全性が確保されていることがわかります。

○サンプルコード4:ジェネリッククラスの作成

ここでは、ジェネリッククラスの作成方法を紹介します。

// このコードでは、Tというジェネリック型を用いて、Boxというクラスを定義しています。
class Box<T> {
    private data: T;

    constructor(data: T) {
        this.data = data;
    }

    // この例では、getDataメソッドを通じてデータを取得できるようにしています。
    getData(): T {
        return this.data;
    }
}

// このコードでは、Boxクラスに数値を持たせる例を示しています。
const numberBox = new Box<number>(10);
console.log(numberBox.getData()); // 10

// このコードでは、Boxクラスに文字列を持たせる例を示しています。
const stringBox = new Box<string>("Hello");
console.log(stringBox.getData()); // Hello

上記のサンプルコードでは、Box<T>というジェネリッククラスを定義しています。

このクラスは、任意の型Tをデータとして持つことができます。

具体的には、Box<number>Box<string>のようにして、異なる型のデータを保持する箱を作成することができます。

上記のコードを実行すると、次のような結果が得られます。

まず、数値を持つnumberBoxからデータを取得すると、10が出力されます。

次に、文字列を持つstringBoxからデータを取得すると、”Hello”が出力されます。

●ジェネリック型の応用例

ジェネリック型は非常に柔軟であり、多くの応用例が考えられます。

ここでは、特に初心者にも理解しやすいように、具体的なサンプルコードとともにその一部を紹介します。

○サンプルコード5:複数のジェネリック型を持つ関数

このコードでは、複数のジェネリック型を持つ関数の作成方法を表しています。

この例では、2つの異なるジェネリック型TUを使用して、入力された2つの引数を結合してオブジェクトとして返す関数を作成しています。

function combineObjects<T, U>(first: T, second: U): T & U {
    return { ...first, ...second };
}

const obj1 = { name: 'Taro' };
const obj2 = { age: 30 };
const combinedObj = combineObjects(obj1, obj2);

この例での関数combineObjectsは、2つのジェネリック型を使用しており、それぞれの型TUは関数の引数firstsecondに関連付けられています。

この関数は、これら2つのオブジェクトを結合して1つの新しいオブジェクトを返します。

上記のコードを実行すると、combinedObj{ name: 'Taro', age: 30 }というオブジェクトを持つことになります。

このように、複数のジェネリック型を持つ関数を使用することで、さまざまな型の組み合わせで関数を再利用することができます。

○サンプルコード6:ジェネリック型を用いたマッピング型

マッピング型は、TypeScriptで既存の型から新しい型を作成するための非常に強力なツールです。

そして、ジェネリック型をマッピング型と組み合わせることで、さらに柔軟かつ再利用可能な型を作成することが可能になります。

まず、マッピング型についての基本を確認しましょう。

マッピング型は、ある型の各プロパティに対して何らかの操作を適用して、新しい型を作成する方法です。

このコードでは、ジェネリック型を使ってマッピング型を作成し、その使い方を表しています。

type Readonly<T> = {
    readonly [P in keyof T]: T[P];
}

interface User {
    name: string;
    age: number;
}

const tom: Readonly<User> = {
    name: "Tom",
    age: 25
};

// tom.age = 26;  // これはエラーになります。プロパティが読み取り専用になっているため

この例では、Readonlyというジェネリックマッピング型を定義しています。

Tというジェネリック型を受け取り、Tの各プロパティを読み取り専用にします。

そして、Userというインターフェースを定義し、tomという変数をReadonly<User>という型で定義しています。

この結果、tomのプロパティは読み取り専用となり、後から変更することはできません。

ここでのジェネリック型Tは、任意のオブジェクト型を受け取り、そのプロパティを読み取り専用に変換する役割を果たしています。

このように、ジェネリック型をマッピング型と組み合わせることで、非常に汎用的な型変換が可能になります。

もしあなたがこのコードを実際にTypeScriptで実行すると、tom変数のプロパティを変更しようとする行でエラーが発生することを確認できるでしょう。

これは、Readonly<User>という型により、tomのプロパティが読み取り専用になっているためです。

○サンプルコード7:条件付きジェネリック型

TypeScriptのジェネリック型の中でも、特に有用性が高いのが「条件付きジェネリック型」と呼ばれるものです。

これは、ある型が特定の条件を満たしている場合のみ、その型を持つように制約を加えることができる機能です。

具体的なコードを用いて詳しく解説していきます。

まずは、条件付きジェネリック型の基本的な形を示すサンプルコードから見てみましょう。

// このコードでは、TがArray<any>型である場合、string型を、そうでない場合、number型を返すジェネリック型を定義しています。
type ArrayOrNumber<T> = T extends Array<any> ? string : number;

let sample1: ArrayOrNumber<string[]>;  // この例では、string[]はArray<any>型であるため、ArrayOrNumber<string[]>はstring型として評価されます。
let sample2: ArrayOrNumber<number>;    // この例では、numberはArray<any>型ではないため、ArrayOrNumber<number>はnumber型として評価されます。

このコードでは、T extends Array<any> ? string : numberを使って、ジェネリック型TArray<any>型である場合はstring型を、そうでない場合はnumber型を返すように制約を加えています。

このように条件に応じて返す型を変えることができるのが、条件付きジェネリック型の大きな特徴です。

それでは、上記のコードを実際に使用するとどのように動作するのか見てみましょう。

コード内のlet sample1: ArrayOrNumber<string[]>;の部分では、ArrayOrNumberジェネリック型にstring[]型を渡しています。

string[]は配列型であるため、ArrayOrNumber<string[]>string型として評価されます。

一方で、let sample2: ArrayOrNumber<number>;の部分では、ArrayOrNumberジェネリック型にnumber型を渡しています。

numberは配列型ではないため、ArrayOrNumber<number>number型として評価されます。

ここまでの解説で、条件付きジェネリック型の基本的な動作と、その使い方のイメージを掴んでいただけたかと思います。

次に、もう少し応用的な例を見て、条件付きジェネリック型の使い方の幅を広げてみましょう。

// このコードでは、プロパティ'length'を持つ型の場合、その'length'の型を返すジェネリック型を定義しています。
type LengthType<T> = T extends { length: infer L } ? L : never;

let len1: LengthType<string>;   // この例では、string型はプロパティ'length'を持つため、LengthType<string>はnumber型として評価されます。
let len2: LengthType<number>;   // この例では、number型はプロパティ'length'を持たないため、LengthType<number>はnever型として評価されます。

このコードでは、型Tがプロパティlengthを持っている場合、そのlengthの型を返すジェネリック型LengthTypeを定義しています。

このように、特定のプロパティやメソッドを持つ型にのみ制約を加えることも、条件付きジェネリック型の強力な機能の一つです。

○サンプルコード8:推論されるジェネリック型

TypeScriptは非常に柔軟な言語で、型の推論が可能です。ジェネリック型も例外ではありません。

この節では、推論されるジェネリック型の使い方と、その活用方法をサンプルコードを交えて詳しく解説していきます。

ジェネリック型の推論を使用する主なメリットは、冗長性を減少させ、コードの簡潔性を向上させることができることです。

これにより、関数やクラスなどのジェネリック型のパラメータを明示的に指定する必要がなくなります。

function identity<T>(arg: T): T {
    return arg;
}

let outputString = identity("TypeScript");
let outputNumber = identity(123);

このコードでは、identityという関数を用意しています。

この関数は、引数として与えられた値をそのまま返す、いわゆる「恒等関数」となっています。

また、この関数はジェネリック型Tを用いて定義されています。

具体的には、関数identityは、引数argとして任意の型Tを受け取り、その型Tの値を返します。

この例では、outputStringには"TypeScript"という文字列が、outputNumberには123という数字が代入されます。

重要な点は、identity関数に型引数を明示的に指定していないにも関わらず、TypeScriptが型を自動的に推論していることです。

このように、TypeScriptは関数の引数や戻り値の型を見て、最も適切なジェネリック型を自動的に推論してくれます。

これにより、型の安全性を保ったままで、コードの簡潔性を追求することが可能となります。

上述のコードを実行すると、outputStringoutputNumberという二つの変数にそれぞれの型の値が代入されます。

具体的には、outputStringには文字列の"TypeScript"が、outputNumberには数値の123が代入されます。

○サンプルコード9:デフォルトジェネリック型の活用

TypeScriptのジェネリック型を使用する際、型パラメータにデフォルトの型を指定することができます。

このデフォルトジェネリック型の利点は、型を省略したときにデフォルトの型が自動的に適用されることです。

これにより、より柔軟なコード設計が可能になります。

ここで、デフォルトジェネリック型の実用的な使い方をサンプルコードとともに見ていきましょう。

まず、デフォルトの型を持つジェネリック関数を定義します。

下記のサンプルコードでは、関数createArrayはジェネリック型Tを持っていますが、このTにはデフォルトとしてnumber型が指定されています。

// このコードでは、createArray関数を使って、任意の型の配列を作成しています。この例では、デフォルトのnumber型が指定されているため、型引数を省略するとnumber型の配列を返します。
function createArray<T = number>(length: number, value: T): T[] {
    return Array.from({ length }, () => value);
}

// 以下のコードは、デフォルトのnumber型の配列を生成しています。
const defaultArray = createArray(3, 10);
console.log(defaultArray);  // [10, 10, 10]

// このコードでは、明示的にstring型を指定して、string型の配列を生成しています。
const stringArray = createArray<string>(3, 'hello');
console.log(stringArray);  // ['hello', 'hello', 'hello']

こちらのサンプルコードのポイントは、createArray関数の型パラメータTにデフォルト型としてnumberが指定されている点です。

これにより、createArray関数を呼び出す際に型を明示的に指定しないと、自動的にnumber型が使用されます。

このため、上記のサンプルコードのdefaultArraynumber型の配列として生成されます。

一方、stringArrayでは明示的にstring型を指定しているため、string型の配列として生成されます。

この機能を活用することで、関数やクラスなどのジェネリックな実装を行う際に、より柔軟で使いやすいAPIを提供することが可能となります。

○サンプルコード10:ジェネリック型を利用した高度なデータ構造

TypeScriptのジェネリック型は、型を動的に変更できる強力な機能の一つです。

今回は、ジェネリック型を利用した高度なデータ構造の作成について詳しく解説します。

// ジェネリック型を使った高度なデータ構造の定義
interface Node<T> {
    data: T;
    next: Node<T> | null;
}

class LinkedList<T> {
    head: Node<T> | null = null;

    add(data: T): void {
        const node = { data, next: null };

        if (!this.head) {
            this.head = node;
            return;
        }

        let current = this.head;
        while (current.next) {
            current = current.next;
        }
        current.next = node;
    }

    display(): T[] {
        const result: T[] = [];
        let current = this.head;
        while (current) {
            result.push(current.data);
            current = current.next;
        }
        return result;
    }
}

このコードでは、ジェネリック型を使ってリンクリストを表現しています。

この例ではNodeというインターフェースで、データと次のノードを指し示すnextを定義しています。

そして、LinkedListクラスでは、ジェネリック型Tを使用して、任意のデータ型を持つリンクリストを作成します。

addメソッドでは、リンクリストに新しいノードを追加します。

displayメソッドでは、リンクリストのデータを配列として取得します。

例として、このリンクリストに数値や文字列を追加して、その内容を表示することができます。

const numbers = new LinkedList<number>();
numbers.add(1);
numbers.add(2);
numbers.add(3);
const numArray = numbers.display();
// numArrayの内容は [1, 2, 3] です。

const strings = new LinkedList<string>();
strings.add("A");
strings.add("B");
strings.add("C");
const strArray = strings.display();
// strArrayの内容は ["A", "B", "C"] です。

このように、ジェネリック型を利用することで、柔軟で再利用可能なデータ構造を作成することができます。

特に、複雑なデータ構造を扱う際には、ジェネリック型の利用は欠かせません。

●注意点と対処法

TypeScriptのジェネリック型を使用する際、その強力さと柔軟性により多くのタスクを簡単に行うことができますが、それに伴いいくつかの注意点やエラーが生じることがあります。

ここでは、ジェネリック型を使用する上でよく遭遇する問題や注意点、そしてそれらを解消するための方法を詳細に解説します。

○ジェネリック型の常見のエラーとその対処法

□型引数が指定されていないエラー

このエラーは、ジェネリック関数やクラスを使用する際に、型引数が指定されていない場合に発生します。

例えば次のようなコードがあるとします。

function echo<T>(arg: T): T {
    return arg;
}

echo();  // エラー: 型 'undefined' の引数を型 'unknown' のパラメーターに割り当てることはできません。

この例では、echo関数を呼び出す際に型引数が指定されていないため、エラーが発生します。

対処法としては、関数を呼び出す際に型引数を明示的に指定するか、関数の定義時にデフォルトの型を指定してあげると良いです。

echo<string>("Hello"); // 正常に動作

または

function echo<T = any>(arg: T): T {
    return arg;
}

echo("Hello"); // 正常に動作

このコードでは、関数の型引数にデフォルト値としてanyを指定しています。

この例では、型引数が省略された場合でもデフォルトの型が使用されるため、エラーが解消されます。

□予期しない型推論の結果

時々、TypeScriptの型推論が予期しない結果をもたらすことがあります。

これは、ジェネリック型の型引数を省略して推論に任せた際に特に発生しやすいです。

例えば、次のようなコードが考えられます。

function merge<T, U>(obj1: T, obj2: U): T & U {
    return { ...obj1, ...obj2 };
}

const result = merge({ name: "John" }, { age: 25 });

このコードでは、merge関数を使って2つのオブジェクトをマージしています。

この例では、型推論の結果、resultの型は { name: string; age: number; } となりますが、複雑なオブジェクトや関数の場合、意図しない型が推論されることがあります。

対処法としては、型引数を明示的に指定することで、意図した型が使用されるようにすると良いでしょう。

○性能上の注意点

ジェネリック型は、コードの再利用性を高めるための強力なツールですが、適切に使用しないと性能上の問題が生じる可能性があります。

□ジェネリック型の過度な使用

ジェネリック型を過度に使用すると、コンパイル時の型チェックが複雑になり、コンパイル時間が増加する可能性があります。

また、非常に複雑なジェネリック型の型推論は、ランタイムパフォーマンスにも影響を与える場合があります。

対処法としては、ジェネリック型を必要な場合のみ使用し、不要な場面ではシンプルな型を使用することを心がけると良いでしょう。

□ジェネリック型と他の高度な型との組み合わせ

ジェネリック型を条件付き型やマッピング型などの高度な型と組み合わせると、型推論が非常に複雑になる場合があります。

これにより、コンパイル時間が大幅に増加する可能性があります。

対処法としては、高度な型の組み合わせを避ける、または型の組み合わせをシンプルに保つことを心がけると良いでしょう。

●カスタマイズ方法

TypeScriptのジェネリック型は非常に柔軟性が高く、それにより様々なカスタマイズが可能です。

この章では、TypeScriptのジェネリック型を独自にカスタマイズする方法を具体的に紹介します。

カスタマイズ方法を理解することで、ジェネリック型をより効果的に使用することができるようになります。

○独自のジェネリックユーティリティ型の作成

TypeScriptには既に多数のジェネリックユーティリティ型(例: Partial<T>, Required<T>, Pick<T, K>など)が提供されていますが、それだけでは不足と感じる場面もあるかと思います。

そのような場面で役立つのが、独自のジェネリックユーティリティ型の作成です。

例として、特定のキーのみを取得するOnlyというユーティリティ型を作成してみましょう。

type Only<T, K extends keyof T> = {
    [P in K]: T[P];
};

このコードでは、型Tとそのキーの部分集合であるKを受け取り、TからKに該当するキーのみを取得する新しい型を生成しています。

この例では、型Tの中からKに一致するキーのみを持つオブジェクトの型を生成しています。

例えば、次のようなオブジェクトがあるとします。

type Person = {
    name: string;
    age: number;
    address: string;
};

上記のOnlyユーティリティ型を使用して、nameageのみを持つ新しい型を作成することができます。

type NameAndAge = Only<Person, 'name' | 'age'>;

このように、独自のジェネリックユーティリティ型を作成することで、コードの再利用性を向上させるとともに、柔軟な型操作が可能となります。

実際に上記のコードを利用する場合、NameAndAge型はnameageの2つのプロパティを持つオブジェクトの型として利用されます。

これにより、他の部分で再利用する際の型の安全性も確保されます。

□独自のジェネリックユーティリティ型の活用のポイント

独自のジェネリックユーティリティ型を作成する際のポイントは、再利用性を高めることと、他のコードとの互換性を保つことです。

そのため、ユーティリティ型を設計する際には、一般的なケースを想定して設計することが重要です。

また、独自のユーティリティ型を公開する際には、その使用方法や目的、制約などをしっかりとドキュメント化することが推奨されます。

これにより、他の開発者とのコミュニケーションがスムーズに行えるようになります。

まとめ

TypeScriptは、JavaScriptに型の概念を持たせるための強力なツールです。

その中でも、ジェネリック型はTypeScriptを最大限に活用するための鍵となる部分です。

この記事では、ジェネリック型の基本的な理念から、さまざまな使い方、応用例、注意点、カスタマイズ方法までを10のステップで詳しく解説しました。

この記事を活用して、TypeScriptのスキルアップを図ってみて下さい。