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TypeScriptで単体テストを完璧に理解する7つのステップ

TypeScriptを用いた単体テストの手引きとサンプルコード TypeScript
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この記事では、プログラムの基礎知識を前提に話を進めています。

説明のためのコードや、サンプルコードもありますので、もちろん初心者でも理解できるように表現してあります。

本記事のサンプルコードを活用して機能追加、目的を達成できるように作ってありますので、是非ご活用ください。

※この記事は、一般的にプロフェッショナルの指標とされる『実務経験10,000時間以上』を満たす現役のプログラマチームによって監修されています。

※Japanシーモアは、常に解説内容のわかりやすさや記事の品質に注力しております。不具合、分かりにくい説明や不適切な表現、動かないコードなど気になることがございましたら、記事の品質向上の為にお問い合わせフォームにてご共有いただけますと幸いです。
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はじめに

近年、開発者の間でTypeScriptが注目されています。

TypeScriptを使用することで、JavaScriptの柔軟さを保ちつつ、型安全性を追求することができるのです。

また、大規模なアプリケーション開発においても、TypeScriptは効率的な開発をサポートしています。

しかし、いくら優れた言語や技術を使ってアプリケーションを開発したとしても、その品質を確保するためにはテストが不可欠です。

特に単体テストは、コードの品質を保つための基本的なテスト手法として知られています。

この記事では、TypeScript初心者でも単体テストをマスターできる7つのステップと、具体的なサンプルコードを表しています。

単体テストの基本から応用までを完全に理解することを目指しましょう。

●TypeScriptと単体テストの基本

近年、TypeScriptはその静的型付けのメリットにより、多くの開発者に支持されています。

単体テストの領域でも、TypeScriptは一段とその存在感を増しています。

ここでは、TypeScriptの概要から、単体テストの重要性、そしてTypeScriptでの単体テストのメリットまでを詳細に解説します。

○TypeScriptとは

TypeScriptは、JavaScriptのスーパーセットとしてMicrosoftによって開発されたプログラミング言語です。

JavaScriptのすべての機能を継承しつつ、静的型付けやクラスベースのオブジェクト指向、ジェネリクスなどの機能を追加しています。

これにより、大規模開発やリファクタリング時の安全性、コードの可読性や保守性が向上します。

○単体テストの重要性

単体テストは、コードの一部分(通常は関数やクラスのメソッド)が予期した通りの動作をするかを確認するテストのことを指します。

これにより、早期にバグを発見し、高品質なソフトウェアを効率的に開発することが可能となります。

また、新しい機能の追加やリファクタリングを行う際の安全性も確保されます。

○TypeScriptでの単体テストのメリット

TypeScriptを使用することで、単体テストにも次のようなメリットが生まれます。

  1. 静的型付けにより、テストの前にコンパイル時に多くのエラーを検出できる。
  2. 型情報を利用して、モックの作成やテストデータの生成が容易になる。
  3. より高度なリファクタリングがテストを安全に行うことで可能となる。

このコードでは、TypeScriptを使ってシンプルな関数の単体テストを行うコードを表しています。

この例では、足し算を行う関数をテストしています。

// 足し算を行う関数
function add(a: number, b: number): number {
    return a + b;
}

// テストコード
describe('add関数のテスト', () => {
    test('1 + 2 は 3', () => {
        expect(add(1, 2)).toBe(3);
    });
});

上記のサンプルでは、add関数が正しく足し算を行うかを確認するためのテストコードを記述しています。

describe関数でテストのグループを定義し、test関数で具体的なテストケースを記述しています。

このサンプルコードを実行すると、テストが成功することが確認できます。

これは、add関数が正しく1と2を加算して3を返すことを意味します。

●単体テストの準備

単体テストを実施する前に、しっかりとした環境構築が必要です。

これは、テストがスムーズに行えるようにするための基盤を整えることに他なりません。

ここでは、TypeScriptでの単体テストを効率的かつ効果的に進めるために必要なツールのインストールから設定方法まで、具体的なステップを踏んで説明していきます。

確実な環境構築が、単体テストの成功への第一歩となりますので、その重要性を理解しながら進めていきましょう。

○環境構築

単体テストを行うためには、最初に適切な環境の構築が不可欠です。特に、TypeScriptと単体テストツールを活用するための環境を整えることが重要です。

❶Node.jsのインストール

まず、TypeScriptを実行するためにはNode.jsが必要です。

公式サイトから最新版をダウンロードし、インストールを行いましょう。

❷TypeScriptのインストール

Node.jsがインストールされたら、npmを使ってTypeScriptをインストールします。

// TypeScriptのインストールコマンド
npm install -g typescript

このコードでは、npmを使ってTypeScriptをグローバルにインストールするコマンドを表しています。

この例では、Node.jsのパッケージマネージャであるnpmを使って、TypeScriptをインストールしています。

○必要なツールのインストール

単体テストを効率的に行うためには、適切なテストツールのインストールが必要です。

下記の手順で、主要なテストツール「Jest」をインストールしましょう。

❶Jestのインストール

JestはJavaScriptおよびTypeScriptのテストに適したツールです。

下記のコマンドでJestをインストールします。

// Jestのインストールコマンド
npm install --save-dev jest ts-jest @types/jest

このコードでは、Jestと、TypeScriptとの連携を強化するts-jest、さらに型定義ファイル@types/jestをインストールするコマンドを紹介しています。

この例では、npmを使って、開発用の依存関係としてJest関連のパッケージをインストールしています。

❷Jestの設定

JestをTypeScriptと連携させるためには、設定ファイルjest.config.jsをプロジェクトのルートに作成します。

// jest.config.jsのサンプル
module.exports = {
  preset: 'ts-jest',
  testEnvironment: 'node',
};

このコードでは、Jestの設定ファイルの基本的な内容を表しています。

この例では、ts-jestを使用することを指定し、テスト実行環境としてnodeを選択しています。

●実際のテストコードの書き方

単体テストは、アプリケーションを小さな部分(単体)に分割し、それぞれの部分が期待通りに動作するかを確認するテストのことを指します。

特にTypeScriptでの単体テストは、型の安全性と高度な機能を持ち合わせているため、非常に効果的にテストを実施することが可能です。

ここでは、TypeScriptでの単体テストの基本的な書き方から詳しく解説していきます。

○サンプルコード1:基本的なテストケースの作成

このコードでは、TypeScriptで簡単な関数のテストケースを書く方法を表しています。

この例では、数値を2倍にする関数を作成し、その関数が正しく動作するかをテストします。

// sample.ts
export function double(value: number): number {
    return value * 2;
}

// sample.test.ts
import { double } from './sample';

describe('double関数のテスト', () => {
    it('5を入力した場合、10が返ること', () => {
        expect(double(5)).toBe(10);
    });

    it('0を入力した場合、0が返ること', () => {
        expect(double(0)).toBe(0);
    });
});

このサンプルコードでは、doubleという関数が定義されています。

この関数は、引数として受け取った数値を2倍にして返すだけの簡単なものです。

次に、sample.test.tsというテストファイルにて、実際のテストケースを書いています。

describe関数を用いて、テストの大枠を定義し、その中にit関数を用いて具体的なテストケースを記述しています。

最初のテストケースでは、double関数に5を入力した場合、その返り値が10であることを確認しています。

同様に、次のテストケースでは、double関数に0を入力した場合、返り値が0であることを確認しています。

これを実際にテストツールを使って実行すると、2つのテストケースが正しく動作することが確認できます。

このように、TypeScriptで単体テストを書く際には、関数やクラスの動作を確認するためのテストケースを記述し、その結果をチェックする形になります。

今回紹介したテストコードを実行した際、2つのテストケースがすべて正しくパスすることが確認できます。

これにより、double関数が正しく動作していることが保証されました。

○サンプルコード2:モックを使ったテストケース

テストを書く過程で、外部のシステムやサービス、あるいは時間がかかる処理との連携部分を模倣(モック)することが多々あります。

モックを活用することで、テストの速度を向上させたり、外部の変動要因からテスト結果を保護することができます。

今回はTypeScriptでのモックの使用方法に焦点を当てて説明していきます。

このコードではJestのモック機能を使って外部のAPI呼び出しを模倣するテストケースを表しています。

この例では外部APIの代わりにダミーのレスポンスを返すモック関数を設定して、期待通りの動作をしているか確認しています。

// api.ts
export const fetchDataFromAPI = (): Promise<string> => {
    // 実際のAPI呼び出し処理
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            resolve("APIからのデータ");
        }, 1000);
    });
};

// api.test.ts
import { fetchDataFromAPI } from './api';
jest.mock('./api');

describe('APIテスト', () => {
    it('モックを使ったAPIのテスト', async () => {
        // モック関数の設定
        (fetchDataFromAPI as jest.Mock).mockResolvedValue("モックデータ");

        const result = await fetchDataFromAPI();
        expect(result).toBe("モックデータ");
    });
});

上記のサンプルコードでは、api.ts に実際のAPI呼び出しを模した関数fetchDataFromAPIを用意しています。

しかし、テストを行う際には実際のAPIを呼び出さずに、Jestのモック機能を使ってダミーのレスポンスを返すようにしています。

テストを実行すると、fetchDataFromAPI関数が”モックデータ”を返すことを期待しています。

モックの設定により、実際のAPI呼び出しの代わりに、設定したダミーデータが返されることを確認するテストとなっています。

このモックの活用によって、外部のサービスや実際のデータベース、あるいは時間がかかる処理といった要因から独立してテストを行うことができます。

このようにモックは、テストの安定性や速度の向上に非常に役立つツールとなっています。

Jestにはさまざまなモックの方法が提供されていますが、今回紹介した方法は最も基本的なものの一つです。

Jestの公式ドキュメントには、さらに高度なモックの方法や応用例が紹介されているので、興味があればぜひ参照してみてください。

このサンプルコードを実行すると、テストは正常にパスし、fetchDataFromAPIが正確に”モックデータ”を返すことが確認できます。

モックを使用することで、外部環境の影響を受けずに、関数やメソッドの動作を的確にテストすることができるのです。

○サンプルコード3:非同期関数のテスト方法

JavaScriptやTypeScriptの非同期処理は、特にWeb開発において、非常に一般的です。

APIからのデータ取得やデータベースへの問い合わせなど、非同期処理を活用する場面は数多くあります。

しかし、非同期処理のテストは同期処理とは少し異なり、その特性を考慮したテスト手法が求められます。

非同期関数をテストするための基本的なサンプルコードを紹介します。

このコードでは、Promiseを返す非同期関数asyncFunctionを表しています。

この関数は、指定された時間が経過した後に、メッセージを返すシンプルな機能を持っています。

// asyncFunction.ts
export const asyncFunction = (delay: number): Promise<string> => {
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            resolve("完了しました");
        }, delay);
    });
};

// asyncFunction.test.ts
import { asyncFunction } from './asyncFunction';

describe('非同期関数のテスト', () => {
    it('指定した時間後にメッセージを返すことを確認', async () => {
        const result = await asyncFunction(1000);
        expect(result).toBe("完了しました");
    });
});

このコードでは、asyncFunctionは引数としてdelay(遅延時間)を受け取り、その時間が経過した後に”完了しました”というメッセージを返します。

テストケースでは、この非同期関数が正しく動作するか確認しています。

非同期関数をテストする際は、async/awaitを活用して、関数が完了するまで待機させることが必要です。

テストを実行すると、asyncFunctionが指定した時間後に”完了しました”というメッセージを返すことが確認できます。

注意点として、非同期関数のテストではタイムアウトが考慮されるべきです。

テストフレームワークによってはデフォルトのタイムアウト時間が設定されているため、長い非同期処理をテストする際には、タイムアウトの時間を適切に設定することが推奨されます。

次に、非同期関数がエラーを返すケースも考慮することが重要です。

下記のサンプルコードでは、指定した条件下でエラーをスローする非同期関数のテスト方法を表しています。

// asyncFunctionError.ts
export const asyncFunctionError = (shouldThrow: boolean): Promise<string> => {
    return new Promise((resolve, reject) => {
        setTimeout(() => {
            if (shouldThrow) {
                reject(new Error("エラーが発生しました"));
            } else {
                resolve("問題なし");
            }
        }, 1000);
    });
};

// asyncFunctionError.test.ts
import { asyncFunctionError } from './asyncFunctionError';

describe('エラーハンドリングのテスト', () => {
    it('エラーがスローされることを確認', async () => {
        await expect(asyncFunctionError(true)).rejects.toThrow("エラーが発生しました");
    });

    it('エラーがスローされないことを確認', async () => {
        const result = await asyncFunctionError(false);
        expect(result).toBe("問題なし");
    });
});

このコードでは、asyncFunctionErrorは引数shouldThrowに基づいて、エラーをスローするか、メッセージを正常に返すかを決定します。

エラーをスローする場合としない場合の両方のシナリオをテストしています。

特に、expect().rejects.toThrow()を使用することで、エラーが適切にスローされるかを確認できます。

このテストを実行すると、asyncFunctionErrorが指定した条件に基づいてエラーをスローするか、または正常なメッセージを返すかが確認できます。

●テストツール「Jest」の活用

TypeScriptでの単体テストを行う上で、非常に強力なツールとして「Jest」が挙げられます。

Jestは、Facebookが開発を進めるJavaScriptのテスティングフレームワークで、TypeScriptとの連携も非常にスムーズです。

今回は、Jestの基本的な使い方から、TypeScriptでのテストケースの作成方法までを詳しく紹介していきます。

○Jestの基本的な使い方

Jestを使用するにはまず、プロジェクトにJestをインストールする必要があります。

次のコマンドでJestをプロジェクトに追加します。

// package.jsonが存在するディレクトリで実行
npm install --save-dev jest @types/jest ts-jest

このコードでは、npmを使ってJestと関連するTypeScriptの型定義やts-jest(TypeScriptでJestを動かすためのツール)を開発依存としてインストールしています。

インストールが完了したら、次にJestの設定ファイルを作成します。

jest.config.jsという名前でプロジェクトのルートに設定ファイルを作成し、次の内容を記述します。

module.exports = {
  preset: 'ts-jest',
  testEnvironment: 'node',
  roots: ['<rootDir>/src/'],
};

この設定ファイルには、ts-jestをプリセットとして使用し、テスト対象のソースコードがsrcディレクトリ内に存在することを示しています。

設定が完了したら、実際にテストを書いて実行してみましょう。

○サンプルコード4:Jestを使ったテストケースの作成

例として、簡単な関数のテストケースを作成します。

次の関数があると仮定してみましょう。

// src/sampleFunction.ts
export const add = (a: number, b: number): number => {
  return a + b;
};

この関数は、2つの数値を受け取り、その合計を返すシンプルなものです。

この関数のテストケースをJestで書くと次のようになります。

// src/__tests__/sampleFunction.test.ts
import { add } from '../sampleFunction';

describe('add関数のテスト', () => {
  it('正常に加算できる', () => {
    expect(add(1, 2)).toBe(3);
    expect(add(-1, 2)).toBe(1);
  });
});

上記のテストケースでは、describeでテストのグループを作成し、itで具体的なテストケースを記述しています。

expect関数を使用して、実際の関数の出力と期待する出力が一致するかをチェックしています。

このテストケースを実行するには、次のコマンドを実行します。

npx jest

Jestを実行すると、テストがパスしたかどうかの結果がコンソールに表示されます。

上記のテストケースでは、2つのテストが正常にパスすることが確認できます。

このように、JestはTypeScriptとの相性が非常に良く、シンプルなAPIで強力なテストケースを書くことができます。

今回紹介した以外にも、Jestには様々な機能やオプションが存在しますので、公式ドキュメントや関連書籍を参照して、さらに深く学んでみてください。

○サンプルコード5:Jestのモック機能を活用したテスト

テストの中で、特定の関数やモジュールの実際の動作を書き換えたり、取り込んだりするのが一般的です。

これを「モック」と呼びます。

TypeScriptとJestを組み合わせることで、効率的にモックを活用したテストを書くことができます。

このコードではJestのモック機能を使用して外部APIへの通信を模倣する関数をモックにするコードを表しています。

この例ではAPI通信の結果を固定の値で返すことで、通信の有無にかかわらず一定のテスト結果を得られるようにしています。

// api.ts
export const fetchData = async (): Promise<string> => {
  // 実際には外部APIへの通信を行います。
  return "実際のデータ";
};

// api.test.ts
import { fetchData } from "./api";
jest.mock("./api");

describe("fetchDataのモックテスト", () => {
  it("モック関数を使用してデータを取得する", async () => {
    // モック関数の動作を定義
    (fetchData as jest.Mock).mockResolvedValue("モックデータ");

    const result = await fetchData();
    expect(result).toBe("モックデータ");
  });
});

上のテストコードを実行すると、fetchData関数は外部APIへの通信を行わず、代わりに”モックデータ”という文字列を返します。

これにより、外部の通信状態やAPIの応答内容に左右されずにテストを行うことができるのです。

注意点として、モックはテストの範囲や目的に応じて適切に使用することが重要です。

モックを過度に使用すると、実際の動作環境との乖離が生じる恐れがあります。

したがって、モックの使用は必要最低限にとどめ、実際の環境での動作も確認することが推奨されます。

次に、Jestが提供するモック関数の一部を活用したカスタマイズ例を紹介します。

import { fetchData } from "./api";
jest.mock("./api");

describe("カスタマイズされたモック関数のテスト", () => {
  it("モック関数の呼び出し回数を確認する", async () => {
    (fetchData as jest.Mock).mockResolvedValue("カスタムモックデータ");

    await fetchData();
    await fetchData();

    expect(fetchData).toHaveBeenCalledTimes(2);
  });
});

この例では、モック関数がテスト内で何回呼び出されたかを確認しています。

これにより、関数の呼び出し回数が期待通りであるかをテストできます。

●テストのベストプラクティス

TypeScriptで単体テストを実施する際、テストの品質を確保し続けるために知っておくべきベストプラクティスについて、この章で深く掘り下げていきます。

○良いテストコードの特徴

テストコードは、ソフトウェア開発における品質を保証する上で極めて重要です。良質なテストコードを書くための特徴を紹介します。

  1. 明瞭さ:テストコードは他の開発者にとっても理解しやすくなければなりません。コメントや関数名、変数名を適切に使用して、何をテストしているのかを明確に示すことが重要です。
  2. 独立性:各テストは他のテストに依存してはいけません。1つのテストが失敗しても、他のテストが正常に実行されるようにすることが求められます。
  3. 再現性:テストは常に同じ環境、同じ条件で同じ結果を返す必要があります。

良いテストコードの一例として、TypeScriptを用いて実装された関数のテストコードを紹介します。

// 関数の定義
function add(a: number, b: number): number {
    return a + b;
}

// テストコード
describe('add関数のテスト', () => {
    // このコードではadd関数を使って数値の加算をするコードを紹介しています。この例では2と3を加算して5という結果を得ることをテストしています。
    test('2 と 3 の和は 5', () => {
        expect(add(2, 3)).toBe(5);
    });
});

このテストコードは、add関数が正しく動作していることを確認するもので、期待する出力値と関数の出力値が一致することを確認しています。

○テストケースの命名方法

テストケースの命名は、テストの目的や内容を簡潔に伝えるためのものです。

テストケースの命名に関するいくつかのヒントを紹介します。

  1. 動詞を使用する:例「取得する」「計算する」など、テストの主要なアクションを表す動詞を使用します。
  2. 期待する結果を明確にする:例「成功する」「エラーを返す」など、テストの期待値を簡潔に表現します。
  3. 短く、具体的であること:テストケースの名前は、テストの内容を簡潔に表す必要があります。

次のテストケース名は、これらのヒントを元に命名されています。

describe('ユーザー情報APIのテスト', () => {
    test('IDを指定してユーザー情報を取得すると、正しいデータが返る', () => {
        // テストの内容...
    });
    test('存在しないIDを指定すると、エラーメッセージが返る', () => {
        // テストの内容...
    });
});

○テストカバレッジの確認方法

テストカバレッジは、テストコードがソースコードのどの部分をカバーしているかを表す指標です。

高いテストカバレッジは、コードの多くの部分がテストで保証されていることを意味しますが、100%のカバレッジが必ずしも品質の高さを表すわけではありません。

TypeScriptプロジェクトでテストカバレッジを確認する一般的な方法は、テストツールであるJestのカバレッジ機能を使用することです。

Jestの設定ファイルにカバレッジの設定を追加し、テストを実行することで、カバレッジレポートを生成することができます。

次の手順でJestのカバレッジ機能を使用して、テストカバレッジを確認できます。

  1. Jestの設定ファイルに次の設定を追加します。
{
    "collectCoverage": true,
    "collectCoverageFrom": ["src/**/*.ts"]
}
  1. Jestを実行すると、カバレッジレポートがcoverageディレクトリに出力されます。
  2. 生成されたレポートを確認することで、どの部分がテストでカバーされているか、また、どの部分がカバーされていないかを知ることができます。

カバレッジレポートを参照して、テストが不足している部分や、テストの質を向上させるべき箇所を特定することができます。

●応用編:より高度なテスト技術

TypeScriptでの単体テストを一歩進めるために、高度なテスト技術を学ぶことで、さらなるテストの品質と柔軟性を追求することができます。

ここでは、JestとTypeScriptを用いてカスタムマッチャーを作成し、使用する方法について解説します。

○サンプルコード6:カスタムマッチャーの作成と使用

カスタムマッチャーとは、Jestで提供されている標準的なマッチャー(例:toBetoEqual)に加えて、自分自身で定義した独自のマッチャーを意味します。

このようなマッチャーを用意することで、テストケースの可読性や再利用性を高めることが期待できます。

このコードでは、カスタムマッチャーを使って特定の文字列がURLであるかを検証するコードを表しています。

この例ではtoBeURLというカスタムマッチャーを定義してURLの正当性を確認しています。

// カスタムマッチャーの定義
expect.extend({
    toBeURL(received: string) {
        const reg = /^(https?:\/\/)?([\w.]+)+(:\d+)?(\/([\w/_.]*(\?\S+)?)?)?$/;
        const pass = reg.test(received);

        // マッチャーの結果を返す
        if (pass) {
            return {
                message: () => `expected ${received} not to be a valid URL`,
                pass: true,
            };
        } else {
            return {
                message: () => `expected ${received} to be a valid URL`,
                pass: false,
            };
        }
    },
});

// テストケースの記述
describe('カスタムマッチャーを使用したテスト', () => {
    it('正しいURL形式であることを確認する', () => {
        expect('https://www.example.com').toBeURL();
    });
});

このテストケースでは、https://www.example.comが正しいURL形式であることをtoBeURLマッチャーを用いて確認しています。

もし、この文字列が正しいURLの形式でなかった場合、テストは失敗します。

このようにカスタムマッチャーを用意することで、標準のマッチャーよりも柔軟な条件でテストを実施することができ、テストケースの可読性や再利用性も向上します。

また、カスタムマッチャーはプロジェクトごとの独自の要件やルールに合わせて柔軟に拡張することが可能です。

実際に上記のテストコードを実行すると、https://www.example.comが正しいURL形式であることが確認され、テストは成功することが期待されます。

もし不正なURL形式であった場合、エラーメッセージとしてexpected ${received} to be a valid URLが出力され、テストは失敗となります。

注意点として、カスタムマッチャーを使用する場合、そのマッチャーの定義や動作をしっかりと理解していることが前提となります。

独自のロジックを持つマッチャーを多用すると、テストの保守や他の開発者との共有が難しくなる可能性も考慮する必要があります。

○サンプルコード7:テスト対象の大規模なアプリケーションのテスト方法

大規模なアプリケーションのテストは簡単なものとは異なり、多くの機能や部分が絡み合っているため、緻密な計画と戦略が必要となります。

ここでは、TypeScriptを用いた大規模アプリケーションの単体テストのアプローチを取り上げ、具体的なサンプルコードとともに紹介します。

1.テストの階層を設定する

大規模なアプリケーションのテストでは、テストの階層を明確に設定することが重要です。

例えば、モジュール、コンポーネント、サービスなどの階層ごとにテストを分けることで、効率的にテストを実施することができます。

2.依存関係をモック化する

大規模アプリケーションでは、多くのモジュールやサービスが依存関係を持っています。

これらの依存関係を実際のものでテストすると、テストの実行時間が長くなったり、エラーの原因追跡が難しくなる可能性があります。

そのため、依存関係をモック化して、隔離された環境でテストを行うことが推奨されます。

このコードでは、TypeScriptを使用してモジュールの依存関係をモック化する方法を表しています。

この例では、データベースのアクセス部分をモック化して、テストを行っています。

// データベースアクセスのモジュール
import { Database } from "./database";

// モック化するデータベースの関数
jest.mock("./database");

const mockedDatabase = Database as jest.Mocked<typeof Database>;

describe("大規模アプリケーションのテスト", () => {
    beforeAll(() => {
        // モックの戻り値を設定
        mockedDatabase.getData.mockReturnValue("モックデータ");
    });

    it("データベースからの取得テスト", () => {
        const result = mockedDatabase.getData();
        expect(result).toBe("モックデータ");
    });
});

このコードを実行すると、データベースの実際の処理ではなく、モック化した処理が実行され、”モックデータ”が返されることを確認できます。

3.テストの範囲を分割する

大規模なアプリケーションでは、一度に全てのテストを実行するのは非効率的です。

特定のモジュールや機能だけをテストするために、テストの範囲を分割することが有効です。

例えば、Jestのdescribeitを利用して、特定の機能やモジュールごとにテストのグループを作成することで、テストの管理や実行がしやすくなります。

まとめ

この記事を通して、TypeScript初心者であっても単体テストを効果的に活用する手法を解説いたしました。

単体テストは、ソフトウェア開発の品質を保証する上で欠かせない工程です。

定期的にテストコードを書く習慣を持ち、アプリケーションの品質を高めていきましょう。

最後に、TypeScriptと単体テストの組み合わせは、ソフトウェアの品質を一段階上げる力を持っています。

今回の内容を基に、更なる学びを深め、より高品質なソフトウェア開発を目指してください。